ラブレター

shoichi

文字の大きさ
上 下
42 / 121
冷たい雨

初めてのチュー

しおりを挟む
「したよ。」

そうだよなぁ。って思ったけれど、不思議と、妬いたりすることはなかった。

「そっか。」

気持ちは落ち着いているが、思考回路を邪魔するほどでもなく、切なさ混じりの言葉を、吐いてしまった。

「ゴメン。」

謝られると、何故だか苛々としたが、一度決めた事は守らなければ。とも思った。

「彼氏なんだし、何で謝るの?エッチしてなきゃいいや。」

再度、謝ったあいは、あまり好きじゃない。

笑う君が、好きだよ。

「自分からキスしたの?」

あいに限って、それはない。

「まさか。」

うん、知ってる。
 
「なら、俺にキスして?そしたら、許すよ。」

困らせてるのは分かっているが、笑ってほしい。なんて言い訳で、僕の不安を打ち消してほしかった。

「え~。」

恥ずかしそうに答えるあいが、可愛い。

「ふ~ん。ならいいや。帰ろう。」

分かってる。

あいが、次にどんな言葉を言ってくれるのか。

だから、甘えるんだよ?

「ゴメン、待って。」

椅子から立ち上がった僕に次ぐように、あいも立ち上がった。

「何?」

笑って、あいの髪を撫でる僕は、意地悪なのかな。
 
うぅ~。と、言葉とは言えない声を出しているあい。

「なら、目閉じててあげるから。」

と言って目を閉じたが、何故だか、自分が惨めだ。と思った。

いつも自分からしているからなのか、不覚にも心がドキドキしているのが分かるからだ。

しかし、なかなか待っていても、キスはされないので、目を開けてしまった。

「もう、いいよ。」

自分が、目を閉じた恥ずかしさもあったせいか、あいからされない寂しさもあったせいか、あいの家の方へ、自然と足が向く。

「ゴメン、違う。」

もう謝ってほしくなくて、
 
「本当にいいから。」

彼女の頭を撫でて、上手く笑ったつもりなんだけど、あいにはそうは写らなかったのかな。

「目閉じて。」

その言葉で満足したから、嬉しくて、困らせたくなくて、

「ありがと。そんなに頑張らなくていいよ。」

って言ったけれど、微動だにしないあいがいて、そっと目を閉じる自分がいた。


















…月夜に照らされ、手を繋いで歩き出す二人。

「よく分かったよ。」

こんなに愛されてるんだな。

「ありがと。おやすみ。」

「おやすみ。」







我輩…幸せ……なり。 
しおりを挟む

処理中です...