ラブレター

shoichi

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レッドゾーン

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「マジ、ヤベェよ。」

友達の家へ、遊びに来ていた。

「ふーん。」

『今日は、学校疲れたぁ!!』

「お前も、しない?」

『お疲れ。よしよし。今度の土曜は、暇?』

「しねーよ。彼女、不安にさせたくないし。」

『今度の土曜は、バイトなんだ。ゴメンね!!来週、会いたいな!!』

会えるよ。から、会いたい。と、言ってくれるようになった彼女がいたから、気を使ってくれてるのかな?なんて、想いながら、いつものメールを返してた。

「これしたまま、女とやると、マジ、別格だって!!」

『また、あいと会えない。二週間も会えないとか、死んじゃう。』

「肝心の、女がいねーじゃん。」

『だって、だって…。ゴメンね!!』

「じゃ、呼ぶ?」

『いいよ。ウサギさんは、寂しくて死んじゃうんだよ。』

「勝手にしとけ。」

『だって、会えない分、会えた時、いっぱい嬉しいでしょ?』

「あっ、もしもし。久しぶり!!あっ?そうそう!!」

『いーやーだー。いつでも、会いたいもん。』

「あっ、じゃぁ、待ってまーす!!」

『我慢して!!』

「来るって!!」

『はーい。』

「アホな女。」

「まぁな。」
 
おやすみ。と、返事を付け足した後に、煙草を一本取りだし、付けっ放しの面白くないテレビを見ながら、火を点(つ)けた。

「今のうちに、やっておく?」

「俺は、やんねーから。」

「根性無し。」

ソファーに座り、吸った煙を友達に向け、吐き出しては、パンチを貰い、同じことをされては、キックを返していた。

ピンポーン…。

インターフォンが鳴ったと同時に、また、携帯を開いていた。

『やっぱり、会いたい。今度の土曜日は我慢するけど、今、どうしても、会いたいよ。』

他人がどうしても嫌いで、女は特にそうだったから、逃げ出したかったのかもしれない。

「こんばんわー!!」

「はいはい、こんばんわ!!」
「どうも。」

顔も知っていたし、話したこともある年下の女の子だったが、どうしてもテンションが上がらず、一見し、携帯をずっと見ていた。

「ゆうさんもいるー!!」

六畳くらいの部屋の隅っこに置かれたソファーに座っていた僕と、ベッドで寝転がった友達たち。

その女の子は、居場所が無くなったように真ん中へ座った。

「ってか、俺、帰るわ。」

その、何とも言えない雰囲気が嫌いで、短くなった煙草を、灰皿へ押しつけた。
 
「まだ、来たばかりですよ?」

脳天気な、そいつの頭の中を、一度見てみたいものだ。と、思ったことを、鼻で笑った。

「何でいきなり?」

まだ、寝転がる友達に、じゃーな。と言い、玄関へ、足を向けた。

「ちょ、待て!!」

玄関に慌てて引き留めに来た友達が、いきなり声を細めた。

「今からが、楽しい時間だろ?」

「興味ねーよ。二人で、楽しでろ。」

そんな時に、タイミング良く、携帯とか鳴り出すんだ。

『ゴメン。もう、寝る準備したから。明日、会おうか?』

「へー。もう、予定ねーじゃん。」

友達がニヤケ、断る理由が無くなった僕は、また、ソファーに座った。

「用事無くなったんですか?」

「ゴメン、そいつとだけ、話してろ。」

「まぁまぁまぁ。ねー。これ知ってる?」

先ほどまで、僕の目の前にちらついていた物を、女の子の前で見せていた。

「知ってまーす!!」

液体の入った、小さな瓶だった。

『あのさ、どうなっても、俺は、お前、好きだから。それは、忘れないで。』

大袈裟だったかもしれないけれど、

「一緒にやろう?」

怪しく笑う二人が、僕を誘う。

「面倒くせーな。」
 
軽い物だと知りつつも、手を出したんだ。

「ヤバくね?」

「大したことねーよ。」

初めて煙草を吸った、小学生の頃と同じように、特に何の感情さえも無かった。

「きゃ~!!」

ベッドの上で騒ぎだす二人を無視し、携帯に文字を打っていた。

『どんな俺でも、愛してくれますか?』

すぐに返事が無いことを確認して、携帯を閉じた。

「混ざる?」

「いらね。」

煙草を、また、吸い始めてから、意識が朦朧(もうろう)と、し出した。

「一気にするからだよ。今のうちに、お前もする?」

「自分の女としか、しねーって決めてるから。」

へいへい。と耳にし、そいつらを余所(よそ)に、また、テレビだけを見ていた。

突然の吐き気や、頭痛が僕を襲ったが、ソファーの上で寝入ることしかできなかった。

寂しさから、逃げたかった。

我慢する気持ちを、助けてほしかった。

それでも、他の女を抱きたくなくて、君の笑顔が誰かの物になることを考えたくなくて、甘えないようにするために、嫌われないようにするために、『ドラッグ』で、気持ちを誤魔化していたんだ。

『ゴメン。寝てた。』

好きになればなるほど、不安と寂しさが、心の中でループしていた。

その天然さが、僕の感情を左右させること。

君は、知らないよね。 
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