ラブレター

shoichi

文字の大きさ
87 / 121
缶コーヒー

ピアノの音色

しおりを挟む
また、ネックレスを付けてない。とか、どうとかで、喧嘩してしまった。

「大事な時に、付けるから。」

「それが、いつなんだよ!!」

本当に、何もかもが思い通りにいかないことが、とても寂しかった。

「今度の、ピアノの演奏会の時に、付けるから。」

僕が、バイトだってこと、君は知ってるはずなのに。

「俺が見なきゃ、意味ない。」

「大事な物だからこそ、普段、身に着ける物じゃないでしょ?」

変な言い訳のような言葉に、丸めこまれた。

『ゆうくん、あいの演奏会、見に行く?』

あいの友達からのメールが、その当日の朝に入ってきた。

『今、もう、バイトだからね。分かんない。時折り、状況を教えてよ。』

分かったよ。と、可愛らしい絵文字を見て、携帯を閉じる。

『あいの番まで、まだまだだよ。』

バイクのメーターを、いつもより上げて。

『今、全体の休憩みたい。そろそろなんじゃないかな?』

「ありがとうございます!!また、宜しくお願いします!!」

器用な笑顔を、作りながら。

『次の次!!』

「これを配達した後、一旦、あがっていいぞ。ほら、これは昼飯代だ。」

ヘルメットを被るスピードまで、急ぐ気持ち。
 
『始まったよ。来れないの?一緒に見たかったね。』

君には、届かないのかな。

息を切らし、大きなホールへの大きな扉へ、タックルするようにし、一番下の階から、あいを見つけた。

~♪~~♪♪

もう、終わり頃だったけど、流れる汗が、少し利いた冷房に冷やされ、だけど、何故かな。

その綺麗な音に、メロディーに、涙が出そうになったんだ。

弾き終えたあいが、大勢の観客の前で一礼をし、凄い拍手の雨が降り注いだ。

「あっ…。」

小さく声が漏れたことに、僕と同じように立ち見をしていた近くのおばさんが、僕へ、振り返った。

そこに…その首元に…、確かにそれは光っていたんだ。

その場を、急ぎ足で隠れようとするあいを見た後に、また、扉を開け、眩しい日に、目が眩(くら)んだ。

『ラスト、少し失敗した人、手挙げて。』

また、強がりのメールを君に打ってしまう。

『あい、終わったよ。』

同時に貰う、そのメールには、

『上手だったね。』

そんな、返事を返してた。

『え?来てたの?』

『ごめん、間に合うようにしたかったから、一通も、メール入れれなかった。』
 
ホールの外には、まだ、僕一人で、そんな時、あいが現れて、

「ゆうくん!!」

と、可愛い笑顔で、おう。とかカッコつけ、頭を撫で、まぁまぁだったかな。とか、そんなドラマのような、漫画のようなことを、夢見てた。

駐車場へ歩きながら、バイクへ跨(またが)り、エンジンをおもいっきり、ぶっ放した。

『見に来てたの?声、かけてくれたら、良かったのに。』

思い描くのは、そんなメールじゃなくて、バイトは?とか、びっくり。だとか、あいの近くにいることを、当たり前に思ってほしくないような、内容がいいんだけれど。

『どこにいるか、分かんないし、なら、今から会えんの?』

分かってる。

だから、音を立てるバイクと共に、その場を去った。

昼飯を買うために、昔、あいとの、初デートに使ったコンビニへ行き、いろいろ見て回った。

『ごめん。共演者や、友達がいるから。』

パンとジュースと、シュークリームを、一コインで買った。

『へいへい。今日は、お疲れ。ぢゃ、またね。』

共演者より、友達より、僕は格下なのかな。

『暇になったら、メールする。』

『いらない。どうせ、すぐバイトだし。今日は、ゆっくりしな。』
 
もっと、喜んでほしかったな。なんて、思いながら、家へ着き、テレビを付け、パンを頬張った。

そのせいか分からないけれど、少しだけ、頬を膨らませた。

『ゆうくんが、バイト終わったら、メールしたいな?』

その言葉に、素直になれない想いが交差する。

『いや、いい。ただ、ちゃんと、約束、覚えてくれてたんだ?』

面白くもない番組を消し、飲み物を口に含んだ後、ポケットから、クシャクシャになった煙草を取り出し、火を点けた。

『うん!!』

ありがと。なんて、送るのは、僕で間違ってないよね?

溜め息混じりに吐き出された煙が、明るい日差しへ、消えていく。

『ぢゃ、終わったらな。』

可愛いあいが、今日は綺麗に見えたから、大勢の客に、少し、妬いたんだ。

僕のあいなんだ!!って、駄々(だだ)をこねたいくらいに。

『ありがと。』

シュークリームが、少し、型崩れになりながらも、不器用に、それを食べた。

手を拭き、あいを思い浮かべ、部屋に置いてあるピアノに手をかけ、二人とも、片思いじゃないのに。なんて、そんな怒りを乗せ、弾かれる僕のメロディーは、君の耳に入ることはあるのかな。

ただね、今日だけは…あいがいた、あの場所には…。

二人で作ってきた永遠が、あった気がしたんだ。 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

堅物御曹司は真面目女子に秘密の恋をしている

花野未季
恋愛
真面目女子が、やはり真面目で堅物な御曹司と知り合う純愛もの。 サラッと読める短編です♪

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

曖昧な距離で愛している

山田森湖
恋愛
結婚4年目のアラサー夫婦、拓海と美咲。仲は悪くないが、ときめきは薄れ、日常は「作業」になっていた。夫には可愛い後輩が現れ、妻は昔の恋人と再会する。揺れる心、すれ違う想い。「恋人に戻りたい」――そう願った二人が辿り着いた答えは、意外なものだった。曖昧で、程よい距離。それが、私たちの愛の形。

処理中です...