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shoichi

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ラッキーボーイ

素直になれなくて

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新着メール1件。

大切な人。のフォルダに、2件のメールが届いていた。

『ゆうくん、元気?』

取りあえず、古い方から見てみた。

こっちに来てから、なかなか見る機会を失っていた、頑張ったような顔文字が、突然描かれてもあった。

連絡が来て、嬉しい。ではなく、どうしたのだろう。と、心配になった。

『どうした?元気だよ。』

遅れた返事を、僕は親指でなぞって送った。

次に、新しいメールを開いて、見てみた。

『怒ってるのかな?』

やっぱり、何かがおかしい。と思いながらも、

『怒ってないよ。』

先に使った顔文字を、また使って、送り返していた。

ブーブ…。

小一時間ほど経った後、震える携帯電話。

テーブルに置かれた、ギターの弦で作った犬の形をした物。

紙パックに入ってある、100%の葡萄のジュース。

フローリングに投げ捨ててあった携帯の振動音が、静かな部屋に大きく響いた。

一口、葡萄ジュースを含み、携帯電話を開く。

『そっか。』

一言で終わってある文章に、本当に、何なのだろう。と、イライラにも似た感情。

最近、値上げされた煙草を取り出して、一本口に咥え、火を点けた。

落差がありすぎる返事。

僕は、ベットの上に座って、登っていく煙を見上げていた。

「あっ、そうだ。」

独り言を呟きながら、再度、大切な人。に文字を打っていた。

『この歌、聞いてみて?凄く良いから。』

皮肉な言葉を言いそうになりながらも、適当に、楽しそうな顔文字を付けて、そんな言葉を送った。

洋楽の古い歌のタイトルを添えて。

最近、暇ができては、CDショップに出掛けては、視聴することばかり。

そんなことが増えていたから、見付けた曲を、聞いてほしくて。

『わかった。』

それに、返事も出さずに、また、携帯を投げ捨てる。



感情を左右されるくらい、僕の全ては…

あいで、できていたんだな。

再度気付かされる気持ちと、短くなった煙草を、灰皿の中へ閉まった。

壁に飾った時計の短針が、西の方角を向いていた、ある晴れた日のことだった。 
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