1 / 1
ー1ー
しおりを挟む
「ここのお店好きだよな。」
黒いスーツを着こなして、右手にハイボールを持ちそう言った。ジョッキの氷が揺れカランという心地良い音が響いた。
彼はネクタイを緩めハイボールを一気に喉に流し込む。
「雰囲気がね。一見怪しいホストのようなお店に見えるんだけど入ってみると全然そんな
ことなくて。」私は周りを見渡して言った。
同時に甘い香りが私の鼻につく。甘ったるいものではないなにか。私がこのお店に来る理由はそれが好きだからかもしれない。
「レモンサワー一つ。」
目の前にいる30代前半位のハンサムな男性バーテンダーさんに注文をした。
もう1人居たのだが1番近い彼に頼んだ。
一緒に呑んでいるのは半年くらい前に逆ナンしたシュウというサラリーマンで、それから日が経つにつれ気付いたら付き合っていた。
バーテンダーさんが「どうぞ」と言いながらチューハイを置いてくる。ジョッキを、少し揺らすと氷がまた鳴って口に運んだ。
「こういうの久しぶりな気がする」
「前は烏龍茶だけだったよな」
そう言ってからソフトパックの煙草を振りながらこう言った。
「女性がお酒飲むところ、キュンとくるな」
たばこをくわえライターで火を付けた。シュウのその言葉に思わず笑いそうになりながらもチューハイを口にして返事をする。
「たばこを吸う男性って魅力的。」
匂いがキツイ。強いからなのかとても独特で甘い匂いとそのけむりが混ざった。嫌じゃなくとても好きな匂いだ。
「私にもたばこ頂戴」
彼は新品のたばこではなく自分の吸っているたばこを私の口に当てがった。呼吸が合わず思わず咳き込む。しかし再度吸い直す。
「ケチだね。」
「間接キス。」
呟いたように言って、その煙草をまた吸い始めた。
「そういうこと、まだしてなかったよね」
と、サラッと私は言ったけど恥ずかしくて穴があったら入りたい。
「…酔った?」
シュウは私の顔を伺ってニヤリと笑うとそう聞いてきた。
「かもね。……すいません、梅サワー1つ。」
気付かれてるとか気付かれてないとかもうどうでもいい。恥ずかしさなんてほんの一瞬だから。
私達は付き合って半年にもなったのに性行為にまで至っていない。先ほどの煙草の間接キスだけ。
私がそういう気持ちにならないのは、あの出来事があったから。
*
「お前酔いすぎ」
barを出ておぼつかない足で歩いていた。時刻は深夜の1時を回ったところで、人通りもあまりない。
「私強いはずなんだけどな」
「ピッチ早いんだよ、後半からハイボールガブ飲みするから…」
後半から自分の嫌なことを思い出してたくさんたくさん呑んでしまっていた。
シュウは近くの自販機から水を買って私に渡すとまた煙草を取り出した。
水はひんやりとしていてとても冷たい。
シュウの煙草を吸う姿をチラ見しながら水をゴクゴクと飲む。
「ねぇ、シュウ。元カノってどんな人だった?」
突然聞きたくなった。シュウは驚いた顔をしていたけどすぐ煙草を捨てて足で潰した。
「単純に、可愛い人だった…、俺にはもったいないくらい。高3の冬に彼女が俺に一目惚れしたらしくて。俺さ高校んとき結構モテてたんだけど最後の最後まで断ってて。でも進路決まってから少し余裕ができたていうか…恋がしたくなってその子と付き合うことにしたかな、1年も続かなかったけど」
「それって、何で?」
「浮気?卒業した年の夏か秋くらいに別の男がいるとかって言われて」
「シュウイケメンなのに。」
「顔だけだっつーの。それから今まで彼女無し。しのってこういう話聞けるんだ?」
「嫉妬しないからかな?」
右手に持っていた水を喉に流し込み話を続ける。
「今、私の事好き?」
「……好きていうか…愛してる?あ、今言う事じゃない?……俺さ逆ナンとか正直どうなんだって話だったけど…しのに出会えてよかったと思うよ。しのはさ~今まで付き合って来た人とは違う感じで。放っておけなくて。俺っていつも冷たく思われるけど意外にしのにゾッコン。
で、しのは?」
「愛してる…?かな。」
本当にそうなのかという自分の言葉を疑う。
シュウはそれに気付き「なんだそれ」と笑う。
「愛してるのは…俺だけか~」
「…ごめん、そうじゃなくて」
下を向いたまま持っていたペットボトルをぎゅっと握りしめ、メキメキと音が鳴った。
私の言葉にシュウは鼻で笑って私の頭に手を置いてポンポンと触った。
ゴツゴツした大きい手が当たった。
「今日はもう帰ろう。明日も仕事でしょ。おくってくよ」
黙って頷くことしかできず、そのまま足を進めた。
私の仕事は憧れていたOLで、当時は楽しかったけれど今じゃ大変で忙しい。だけれど安定しているからそんな簡単に辞めることができない。
そのストレスでほぼ毎日シュウと飲みに行くことが多い。私達は恋人だからそれしかシュウといれる時間がない。シュウはサラリーマン。
「先輩…大丈夫ですかー?」
「え?」
「最近ずっと体調悪そうですよ」
話しかけてきたのは今年入社したばかりの二つ下の後輩の相田美子ちゃん。
昨日の二日酔いからか表情に出ているらしい。自分でも分かる、頭重いし、体はだるくフラフラする。
「昨日呑みすぎちゃってさ、」
「またですか!お昼どうします?最近この近くに新しい定食屋できたんですよ、行きます?」
「んー、また今度にする。ごめんね、同僚だちと行きな。」
さすがにこの具合の悪さだと食事は食べれない。だけど何か食べないとと思い、私は会社の近くにあるコンビニに向かうと決めた。
黒いスーツを着こなして、右手にハイボールを持ちそう言った。ジョッキの氷が揺れカランという心地良い音が響いた。
彼はネクタイを緩めハイボールを一気に喉に流し込む。
「雰囲気がね。一見怪しいホストのようなお店に見えるんだけど入ってみると全然そんな
ことなくて。」私は周りを見渡して言った。
同時に甘い香りが私の鼻につく。甘ったるいものではないなにか。私がこのお店に来る理由はそれが好きだからかもしれない。
「レモンサワー一つ。」
目の前にいる30代前半位のハンサムな男性バーテンダーさんに注文をした。
もう1人居たのだが1番近い彼に頼んだ。
一緒に呑んでいるのは半年くらい前に逆ナンしたシュウというサラリーマンで、それから日が経つにつれ気付いたら付き合っていた。
バーテンダーさんが「どうぞ」と言いながらチューハイを置いてくる。ジョッキを、少し揺らすと氷がまた鳴って口に運んだ。
「こういうの久しぶりな気がする」
「前は烏龍茶だけだったよな」
そう言ってからソフトパックの煙草を振りながらこう言った。
「女性がお酒飲むところ、キュンとくるな」
たばこをくわえライターで火を付けた。シュウのその言葉に思わず笑いそうになりながらもチューハイを口にして返事をする。
「たばこを吸う男性って魅力的。」
匂いがキツイ。強いからなのかとても独特で甘い匂いとそのけむりが混ざった。嫌じゃなくとても好きな匂いだ。
「私にもたばこ頂戴」
彼は新品のたばこではなく自分の吸っているたばこを私の口に当てがった。呼吸が合わず思わず咳き込む。しかし再度吸い直す。
「ケチだね。」
「間接キス。」
呟いたように言って、その煙草をまた吸い始めた。
「そういうこと、まだしてなかったよね」
と、サラッと私は言ったけど恥ずかしくて穴があったら入りたい。
「…酔った?」
シュウは私の顔を伺ってニヤリと笑うとそう聞いてきた。
「かもね。……すいません、梅サワー1つ。」
気付かれてるとか気付かれてないとかもうどうでもいい。恥ずかしさなんてほんの一瞬だから。
私達は付き合って半年にもなったのに性行為にまで至っていない。先ほどの煙草の間接キスだけ。
私がそういう気持ちにならないのは、あの出来事があったから。
*
「お前酔いすぎ」
barを出ておぼつかない足で歩いていた。時刻は深夜の1時を回ったところで、人通りもあまりない。
「私強いはずなんだけどな」
「ピッチ早いんだよ、後半からハイボールガブ飲みするから…」
後半から自分の嫌なことを思い出してたくさんたくさん呑んでしまっていた。
シュウは近くの自販機から水を買って私に渡すとまた煙草を取り出した。
水はひんやりとしていてとても冷たい。
シュウの煙草を吸う姿をチラ見しながら水をゴクゴクと飲む。
「ねぇ、シュウ。元カノってどんな人だった?」
突然聞きたくなった。シュウは驚いた顔をしていたけどすぐ煙草を捨てて足で潰した。
「単純に、可愛い人だった…、俺にはもったいないくらい。高3の冬に彼女が俺に一目惚れしたらしくて。俺さ高校んとき結構モテてたんだけど最後の最後まで断ってて。でも進路決まってから少し余裕ができたていうか…恋がしたくなってその子と付き合うことにしたかな、1年も続かなかったけど」
「それって、何で?」
「浮気?卒業した年の夏か秋くらいに別の男がいるとかって言われて」
「シュウイケメンなのに。」
「顔だけだっつーの。それから今まで彼女無し。しのってこういう話聞けるんだ?」
「嫉妬しないからかな?」
右手に持っていた水を喉に流し込み話を続ける。
「今、私の事好き?」
「……好きていうか…愛してる?あ、今言う事じゃない?……俺さ逆ナンとか正直どうなんだって話だったけど…しのに出会えてよかったと思うよ。しのはさ~今まで付き合って来た人とは違う感じで。放っておけなくて。俺っていつも冷たく思われるけど意外にしのにゾッコン。
で、しのは?」
「愛してる…?かな。」
本当にそうなのかという自分の言葉を疑う。
シュウはそれに気付き「なんだそれ」と笑う。
「愛してるのは…俺だけか~」
「…ごめん、そうじゃなくて」
下を向いたまま持っていたペットボトルをぎゅっと握りしめ、メキメキと音が鳴った。
私の言葉にシュウは鼻で笑って私の頭に手を置いてポンポンと触った。
ゴツゴツした大きい手が当たった。
「今日はもう帰ろう。明日も仕事でしょ。おくってくよ」
黙って頷くことしかできず、そのまま足を進めた。
私の仕事は憧れていたOLで、当時は楽しかったけれど今じゃ大変で忙しい。だけれど安定しているからそんな簡単に辞めることができない。
そのストレスでほぼ毎日シュウと飲みに行くことが多い。私達は恋人だからそれしかシュウといれる時間がない。シュウはサラリーマン。
「先輩…大丈夫ですかー?」
「え?」
「最近ずっと体調悪そうですよ」
話しかけてきたのは今年入社したばかりの二つ下の後輩の相田美子ちゃん。
昨日の二日酔いからか表情に出ているらしい。自分でも分かる、頭重いし、体はだるくフラフラする。
「昨日呑みすぎちゃってさ、」
「またですか!お昼どうします?最近この近くに新しい定食屋できたんですよ、行きます?」
「んー、また今度にする。ごめんね、同僚だちと行きな。」
さすがにこの具合の悪さだと食事は食べれない。だけど何か食べないとと思い、私は会社の近くにあるコンビニに向かうと決めた。
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
貴方なんて大嫌い
ララ愛
恋愛
婚約をして5年目でそろそろ結婚の準備の予定だったのに貴方は最近どこかの令嬢と
いつも一緒で私の存在はなんだろう・・・2人はむつまじく愛し合っているとみんなが言っている
それなら私はもういいです・・・貴方なんて大嫌い
【書籍化】番の身代わり婚約者を辞めることにしたら、冷酷な龍神王太子の様子がおかしくなりました
降魔 鬼灯
恋愛
コミカライズ化決定しました。
ユリアンナは王太子ルードヴィッヒの婚約者。
幼い頃は仲良しの2人だったのに、最近では全く会話がない。
月一度の砂時計で時間を計られた義務の様なお茶会もルードヴィッヒはこちらを睨みつけるだけで、なんの会話もない。
お茶会が終わったあとに義務的に届く手紙や花束。義務的に届くドレスやアクセサリー。
しまいには「ずっと番と一緒にいたい」なんて言葉も聞いてしまって。
よし分かった、もう無理、婚約破棄しよう!
誤解から婚約破棄を申し出て自制していた番を怒らせ、執着溺愛のブーメランを食らうユリアンナの運命は?
全十話。一日2回更新 完結済
コミカライズ化に伴いタイトルを『憂鬱なお茶会〜殿下、お茶会を止めて番探しをされては?え?義務?彼女は自分が殿下の番であることを知らない。溺愛まであと半年〜』から『番の身代わり婚約者を辞めることにしたら、冷酷な龍神王太子の様子がおかしくなりました』に変更しています。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
壊れていく音を聞きながら
夢窓(ゆめまど)
恋愛
結婚してまだ一か月。
妻の留守中、夫婦の家に突然やってきた母と姉と姪
何気ない日常のひと幕が、
思いもよらない“ひび”を生んでいく。
母と嫁、そしてその狭間で揺れる息子。
誰も気づきがないまま、
家族のかたちが静かに崩れていく――。
壊れていく音を聞きながら、
それでも誰かを思うことはできるのか。
愛してないから、離婚しましょう 〜悪役令嬢の私が大嫌いとのことです〜
あさとよる
恋愛
親の命令で決められた結婚相手は、私のことが大嫌いだと豪語した美丈夫。勤め先が一緒の私達だけど、結婚したことを秘密にされ、以前よりも職場での当たりが増し、自宅では空気扱い。寝屋を共に過ごすことは皆無。そんな形式上だけの結婚なら、私は喜んで離婚してさしあげます。
幼馴染の許嫁
山見月あいまゆ
恋愛
私にとって世界一かっこいい男の子は、同い年で幼馴染の高校1年、朝霧 連(あさぎり れん)だ。
彼は、私の許嫁だ。
___あの日までは
その日、私は連に私の手作りのお弁当を届けに行く時だった
連を見つけたとき、連は私が知らない女の子と一緒だった
連はモテるからいつも、周りに女の子がいるのは慣れいてたがもやもやした気持ちになった
女の子は、薄い緑色の髪、ピンク色の瞳、ピンクのフリルのついたワンピース
誰が見ても、愛らしいと思う子だった。
それに比べて、自分は濃い藍色の髪に、水色の瞳、目には大きな黒色の眼鏡
どうみても、女の子よりも女子力が低そうな黄土色の入ったお洋服
どちらが可愛いかなんて100人中100人が女の子のほうが、かわいいというだろう
「こっちを見ている人がいるよ、知り合い?」
可愛い声で連に私のことを聞いているのが聞こえる
「ああ、あれが例の許嫁、氷瀬 美鈴(こおりせ みすず)だ。」
例のってことは、前から私のことを話していたのか。
それだけでも、ショックだった。
その時、連はよしっと覚悟を決めた顔をした
「美鈴、許嫁をやめてくれないか。」
頭を殴られた感覚だった。
いや、それ以上だったかもしれない。
「結婚や恋愛は、好きな子としたいんだ。」
受け入れたくない。
けど、これが連の本心なんだ。
受け入れるしかない
一つだけ、わかったことがある
私は、連に
「許嫁、やめますっ」
選ばれなかったんだ…
八つ当たりの感覚で連に向かって、そして女の子に向かって言った。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる