魔法少女は訳アリ敵幹部に溺愛されている!

御鈴

文字の大きさ
29 / 73
第3話 お嬢様と秘密のメロディ

雑音を掻き消して

しおりを挟む

「……って来たはいいけど、キルシェ、音響室の機械いじったことある?」

「ううん、全然‼︎」

自信満々に答えるキルシェに、シトラスとポメポメは脱力する。

「そんなことだと思った……私もないけれど。どうすればいいんだろう……」

音響室という名前だけあって、室内にはホール内のマイクやスピーカーの音量を制御するためであろうミキサーや、CDの音源を流すためのプレイヤーといった様々な機材が並んでいる。

しかし、こういった設備と普段は無縁なシトラスとキルシェにとっては、何をどうすればいいのかさっぱり分からない。

「とりあえず、いじってみる?」

「闇雲に触ったりしたら壊れ……ってもう触ってる!?」

シトラスが言い終わる前に既にキルシェは機械をいじり始めていた。

「えーっと、これが電源ボタンでしょ?そんでもって……あった!これだ!」

「ま、待ってキルシェ!ほんとにそれで合ってるの!?」

「だって書いてあるよ?ほら」

キルシェが指さす先を見ると、ミキサー盤には何やら印字のあるラベルが数枚貼り付けられていた。

そこにそれぞれ「ワイヤレスマイク音量」「会場内スピーカー」「音量7以上はハウリングの恐れあり」など、誰が見てもどこを操作すれば良いのかわかるよう簡潔な指示が書かれている。
どうやら音響の専門知識のない教員や生徒が操作することを想定していたらしい。キルシェはそれを見ながら操作したようだ。

「よ、よかった……ちゃんと書いてあったんだ」

「親切ポメ……」

シトラスとポメポメが安堵したその時だった。





─ドンドンドン!!


「っ!?」

音響室に自分たちがいることに気付かれたのだろうか。凄まじい勢いで、外から扉を激しく叩く音が聞こえる。

「まずいポメ!早く音色を掻き消さなきゃポメ!!」

「うん!キルシェ、スピーカーの音量を上げて!」

「了解!」

キルシェはミキサー盤の中から「会場スピーカー」と書かれたボリュームバーのつまみを思い切り引き上げた。すると会場内スピーカーから大音量でロゼの優雅なバイオリンの音色が流れだすが、急激に音量を上げたせいかキィーン、という高い音が響きわたる。

「き、キルシェ!上げ過ぎかも!」

「耳が痛いポメ~!」

「ごめんごめん!待ってて!」

シトラスとポメポメが耳を塞ぐのを見て、キルシェはスピーカー用のボリュームバーを下げる。するとすぐにハウリング音は収まり、ロゼのバイオリンの優雅な音色がホール全体に流れ始めた。

ピアノの伴奏の音が掻き消される音量に調整し、キルシェは顔を上げる。

「これで大丈夫……かな?」

キルシェと顔を見合わせたシトラスは不安げに呟く。その直後、 





─バンッ‼︎


扉が蹴破られて数名の生徒たちが雪崩れこんできた。

彼らの目は血走っており、どう見ても正常ではない。中には手に掃除道具の箒や野球バッドなど、使いようによっては人を傷付けかねないものを構えている者もいる。

「うっそ!?全然ダメじゃん!!」

「二人とも、早く変身するポメ!!」

が、ポメポメが叫んだのとほぼ同時に、押し寄せてきた生徒たちの動きはだんだんと鈍くなっていく。猛るような怒鳴り声は次第にか細くなり、やがて押し入って来た生徒たちは次々とその場に倒れ伏していった。


「え……?」

キルシェは恐る恐る倒れた生徒の一人に近付き、様子を伺う。肩を揺すっても反応は無く完全に意識を失っているが、苦しそうな様子はない。ただ眠っているだけのように見えた。

「もしかして、うまくいったの……?」

シトラスが疑問を口にすると、ポメポメは確信に満ちた声で言う。

「……みたいポメ。会場から殺気を感じなくなったポメ。みんなにかかってた魔法は解けているポメ」

「よかった……」

生徒たちの暴動を止めることが出来たことに、ひとまず安心するシトラスとキルシェ。だが、スピーカーから流れるロゼのバイオリン演奏はまだ続いていた。

それは同時に、ピアニストの魔獣がまだピアノを奏で続けていることを意味する。

「ロゼ先輩を助けに行かなきゃ!!」

「おっけー!カッコよくロゼ様を救って、魔獣もばばーんっとやっつけちゃお!」

シトラスとキルシェは、それぞれ制服のポケットから変身ブローチを取り出す。

二人の意志に呼応するように、表面を飾る宝石がキラリと光を投げかけた。

「シトラス─」

「キルシェ─」


「『変身(コンベルシオン)』!!!」

瞬間、音響室内は眩い光に包まれた。






幻想的な光が煌めく空間に二人の少女が浮かび上がる。



外からの干渉を受けないこの空間は、少女たちに特別な力を授け、使命を与える場所でもあるのだ。

シトラスの着ていたえんじ色の制服が、光の粒子に変化する。折れてしまいそうなほど華奢で線の細い、だけど慎ましい膨らみと柔らかさのある身体が露わになった。

キルシェの着ていたピンク色のカーディガンと制服のスカートもまた、光の粒子に変化する。普段の彼女の雰囲気に反してしなやかで瑞々しい、少しだけ大人びた肢体が姿を現した。

程なくして、一糸纏わなくなった二人の胸元に浮かぶブローチから二人の魔力光の色に染まったリボンの束が溢れ出す。


シトラスは太陽の温かさを思わせるオレンジ。
キルシェは女の子のときめきを形にしたようなピンク。

二色のリボンが少女たちの身体を包み込んでいき、魔装ドレスを形成していく。

シトラスの身体を包み込んだリボンは、オレンジを基調としたパフスリーブの愛らしいワンピースに。
キルシェの身体を包み込んだリボンは、ピンクを基調としたフリルがたっぷりのセパレートドレスに変化した。

魔装ドレスが完成するその瞬間、二人のブローチからもう一度光が放たれた。

その光はやがて、彼女たちが魔に立ち向かうための力となる武器を形作る。

オレンジの切り口を模したハンマー、魔槌オレンジ・スプラッシュはシトラスの手に。

桜色のキャンディのようなスピア、魔槍ピンキー・スイートはキルシェの手に。

つい先ほどまで普通の女子高生だった二人の少女は、悪しき魔獣に立ち向かう魔法少女へと変身を遂げた。




「シトラス、キルシェ!ここからステージに移動出来るポメ!」


変身を終えた二人が床に降り立つと、人間の少女のような姿に変身したポメポメが魔法陣を展開して移動先を確保していた。

ポメポメの正体は、天界から「女神」の指令で人間界に降り立った聖獣族の少女。聖獣族はヒトと動物の二つの姿を自在に変身することができる種族で、今のポメポメはヒトの姿を取っていた。

「ありがとう、ポメポメ!」

シトラスはお礼を言って魔法陣の中に飛び込み、キルシェとポメポメもその後に続く。


魔法陣の行先は、未だにロゼのバイオリンと魔獣ピアノの音色が拮抗するステージの上だ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている

井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。 それはもう深く愛していた。 変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。 これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。 全3章、1日1章更新、完結済 ※特に物語と言う物語はありません ※オチもありません ※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。 ※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

ママはヤンママ女子高生! ラン&ジュリー!!

オズ研究所《横須賀ストーリー紅白へ》
キャラ文芸
神崎ランの父親の再婚相手は幼馴染みで女子高生の高原ジュリーだった。 ジュリーは金髪美少女だが、地元では『ワイルドビーナス』の異名を取る有名なヤンキーだった。 学校ではジュリーは、ランを使いっ走りにしていた。 当然のようにアゴで使われたが、ジュリーは十八歳になったら結婚する事を告白した。 同級生のジュリーが結婚するなんて信じられない。 ランは密かにジュリーの事を憧れていたので、失恋した気分だ。 そう言えば、昨夜、ランの父親も再婚すると言っていた。 まさかとは思ったが、ランはジュリーに結婚相手を聞くと、ランの父親だと判明した。  その夜、改めて父親とジュリーのふたりは結婚すると報告された。 こうしてジュリーとの同居が決まった。 しかもジュリーの母親、エリカも現われ、ランの家は賑やかになった。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

処理中です...