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第4章

お風呂でドタバタ? No.1

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 隠れ里レイアに到着した俺達の眼前には、大きな木で出来た門がそびえ立っていた。

「デカイ門ッスね。」
 リンドウが門を見上げながら口を開く。

「確かに、隠れ里って割には大きくて、隠れてる感じはしないね。」
 デイジーもイメージしていた隠れ里と違ったため、驚いていた。

「なぁクロ、どうやって入るんだ?」
 サクラは、入り口らしいものが見当たらないため、クローバーに里への入り方を聞いたのである。

「暗号型転移装置があるんだよ。」
 クローバーは、そう言うと門へと片手を触れた。

「クロに触って無いと転移出来ないから、肩とか腕に捕まって下さい。」
 クロの言葉に従って、俺達はクロの肩や腕に捕まった。

「行きます。……レイア様の下へ導きたまえ。」
 クロの言葉が言い終わると、視界がガラリと変わり、俺達は隠れ里の中へ転移していた。

 里の中は、舗装されていない道を行き交う人々や畑仕事をしている者、店先で客を呼び込んでいる者など、活気に満ちている。

「取り敢えず、クロの家なら部屋が余ってるのでそこで休みましょう。」
 サクラ達は、クローバーの提案に従い、クローバーの家に泊めてもらえるか、クローバーの家に向かった。

「あら、クローバーじゃない!?  学校はどうしたの?」
 クローバーに、40歳くらいの細身の女性が話し掛けて来た。

「ただいま。今は学校の旅行で各国を回ってるところなんだ。この近くを通りかかったから、今日はここで休もうと思って来たんだ。みんなも泊めて良いよね?」
 クローバーは、母親に簡単に事情を説明して、俺達の宿泊についても聞いてくれた。

「そうなのね。クローバーの友達なら大歓迎よ。中にパパが居るから挨拶して来なさい。」
 クローバーの母親にサクラ達は挨拶を交わして、クローバーの家に入り、里長であるクローバーの父親へ挨拶に向かった。

「おお、クローバー久しぶりだな。友達も連れて来たのか?」
 40代のかなり恰幅の良い緑髪の男性がニコニコしていた。

「父さん、お久しぶりです。学校の旅行で王都へ向かう途中でして、一日ここに泊まりたいと考えています。」

「構わんぞ。みんなで温泉にでも行って、疲れを癒してくると良い。」
 クローバーの父親は、快くサクラ達を受け入れてくれ、温泉に入るよう進めたのである。

 俺達は、クロの母親に案内され、広い部屋に通された。

「?」
 疑問に思ったのは、俺だけじゃない。
 みんな首を傾げたり、周りを見回したりしていた。

「か、母さん?」
 クローバーは、動揺を隠せず母親を見た。

「ごめんなさいねぇ~。今は他の部屋も使っていて、この部屋だけなのよ~。広いからみんなでワイワイ出来るでしょ?」
 クローバーの母親はそう言うと、サッといなくなっていたのである。

「まぁ野宿の時もみんなで寝てるようなもんだしな。」
 俺の意見にみんなも同意し、取り敢えず温泉に行くことになった。

 そして、俺達は問題にぶち当たった。

「工事中で、混浴しかやってないぃーー!?」
 まさかの工事休業で、混浴しか営業していないとのこと。

「すいません。休業に当たるとは考えてませんでした。」
 クロの所為では無いので、仕方がない。

「混浴タイムだーー!」
 ストックのテンションはマックス状態だった。

「混浴だから、全裸は禁止です。数年前に発売され始めた水着かタオルを巻いて入るんですよ。」
 クロの説明に、ストックのテンションはかなり下がっていた。

「混浴なら当然よね。」
 カトレアは、クローバーの説明を当たり前と答えた。

「まだだーー!  タオルならポロリやチラリがある筈だ!」
 ストックはめげない!

「「「「「サイテー。」」」」」
 女性陣からは非難殺到である。

「俺様の裸も見たいのか?」
 オロチは、ストックに見えるように服を引っ張って、谷間をアピールして見せた。

「勿論であります!」
 ストックは即座に敬礼して答えていた。

「アホ言ってんじゃねぇよ。」
 俺はオロチの頭にチョップを喰らわせ、オロチは頭を抑えて俺を睨みつけて来た。

「でも困ったアルね。水着の待ち合わせなんて無いアルよ。タオルを巻いて入るのはちょっと恥ずかしいアルね。」
 ボタンも今回はふざけたことを言わず、真面目なことを言っていた。

「あ~。俺が水着ならそれなりに持ってるから、好きなのをあげるよ。」
 サクラは、ネペンテスからシートを取り出し、その上に大量の水着を並べた。

「おーー!  凄いアル!  こんなに沢山あるなんてびっくりアル!  店並の品揃えアルよ!」
 ボタンは、並べられた水着の数に興奮して、色々と手に取って体に合わせて始めた。

「……女性物がこんなにあるなんて、サクラってもしかしてヘンタ「言わせねぇよぉ!」」
 ウメがあまりの女性物の水着の数に、サクラを変態と呼ぼうとしたのを、サクラは必死にウメの口を押さえた。

「サクラが水着の開発者よ。」
 アイリスの言葉に一同はサクラへと驚愕の目を向けた。

「そう言うこと。色んな所に商品を広めるためにかなりストックしてあるんだよ。」
 変態の疑惑を何とか解消出来た俺は一安心した。

 この後、みんなで気に入った水着を選び混浴へと向かったのだった。

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