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第4章

神レイア〜タイタンの盾〜

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 色々起きた混浴温泉を終えたサクラ達は、クローバーの家の大部屋で寛いだ。

 大部屋では、激しい枕投げ合戦やサクラの怪談話で盛り上がり、気がつくと朝を迎え、皆目をこすり欠伸をしていた。


「クローバー里を出る前に、レイア神様にお祈りして行くんだぞ。」
 クロの父親にそう言われて、俺達はクロの案内でレイア神様の神像が祀られている洞窟に向かっている。

 クローバーが案内したのは、里の奥地にある山の側面に出来た洞窟だった。

「ここがレイア神様の神像がある洞窟だよ。」
 クローバーは洞窟の中へと足を進め、サクラ達もクローバーの後を追った。

 洞窟の奥には、女性の像が祀られていたのだが、この女性は、あまりにも幼かった。

「クロ……この像がそうなのか?」
 俺は、流石にこの幼女姿の像がレイア神様の神像だとはと思えなかった。

「そうですよ。可愛いですよねレイア神様!  この幼い感じが良いですよね!?」
 クロは顔を蒸気させ興奮している。

「ま、まぁ、可愛いとは思うけど。」
 見た目は確かに可愛いと思うが、そこまで興奮しなくても、まさかクロって、ロリコンなのか?

「流石サクラです!  レイア神様の素晴らしさを理解出来るなんて!  今日からサクラもレイア神様に祈りを捧げましょう!」
 やっぱりクロは、ロリコンなんだな。

 クローバーの発言に、一同はかなり引いていた。

「もう、いいから早くお祈りして行こうぜ。」
 俺はこのやり取りを長く続けたく無かった為、早急にお祈りしてここから出ようと提案したのである。

「もっとゆっくりして行きましょうよ!」
 クローバーは、サクラの話を聞き流そうとしたが、他のみんなもクローバーを止めに入り、クローバーは祈りを始めた。

 《やっと、私の声が聞こえるまでに成長したのね。》
 幼い女の子の声がクローバーの頭へと響いた。

「ん?」
 クローバーは、何が起きているのか分からずに辺りを見回し、そんなクローバーの様子をサクラ達は不思議そうに見ていた。

「どうしたんだ?」
 俺がクロへ声を掛けると、誰か話しかけたのか聞かれたので、誰も喋っていないと答えると、クロは更に辺りを見回していた。

 《私だよ。わ、た、し!  目の前にいるのね。》

「え?  レイア神様?」
 クロは目の前にあるレイア神像へと目を向けた。

 《やっとこっちを見たのね。ずっと声を掛けていたのに、今迄気付きもしないのね。》

「本当に、レイア神様なのですか?」
 クローバーは未だに現実が認められず、困惑していた。

 《そう言ってるのねクローバー。》

「うおぉぉーー!  レイア神様万歳ーー!」
 クローバーはキャラを崩壊させる勢いで、雄叫びを上げて万歳をしている。

 《おおーーい、戻って来ーーいなのね。》

「はっ!?  失礼しました。」
 クローバーは、レイア神の声に目を覚ました。

 《クローバー、貴方は私の声が聞こえるまでに無事成長したのね。何か力を授けてやるのね。何か希望はあるのね。》

「では、レイア神様の姿を見る力を下さい!」
 クローバーは、本気でそんな力が欲しいと言った。

 《却下なのね。ふざけてるなら、何もあげないのね。》

「ふざけてはいないのですが。……それでは、クロはみんなを守る為に盾を使っています。出来れば盾を戴きたいです。」
 クローバーは真剣な表情になり、レイア神様に答えた。

 《分かったのね。》

 突如、クローバーの目の前に銀白色の盾が現れた。

「う、美しい!  それに凄い軽い!」
 クローバーは盾を手に取り、感触を確かめた。

 《その盾の名は、タイタンの盾なのね。私のペットのタイタンって名前の銀白色をした巨大なゴーレムの身体から作った物なのね。盾の効果は、物理や魔法を半減出来るのね。それと念じればタイタンを呼び出せるのね。》

「タイタンって、八岐大蛇と同じ大昔に居たって言うSSランクの魔物の名前では?」
 クローバーは、冷や汗を掻きながらレイア神様に尋ねた。

 《そうなのね。タイタンは良い子だから、可愛がるのね。ちゃんと言うこと聞くように言っておいたのね。》

「あ、ありがとうございます。」
 クローバーは、自分の力でタイタンを扱い切れるか不安であったが、強力な盾を手に入れ、これからは今よりもみんなを守れると思った。

 こうして、まさかの展開で強力なタイタンの盾を手に入れたサクラ達は、隠れ里を後にして、メロヴィング王国の王都へと向かったのだった。


 《あの子達なら、きっと世界を守ってくれるのね。頑張るのね。》

 クローバー達の立ち去った後のレイア神像は、微笑んでいるように見えると里の者達の話題となったのだった。




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