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逃走〜悪魔王ルシファー〜

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 バラキエルへトドメを刺すところを、突如現れた者に邪魔されたマルス達。

 そして、バラキエルへと攻撃を阻止したのは、倒したと思われていたアザゼルだったのだ。

「お前、生きていたのか!?」
 マルスは、乱入してきたアザゼルへと声を荒げる。

 悪魔化したアザゼルは、マルスが支援魔法を施したテュールの雷神の鉄槌トールハンマーによって、討伐していたと思われていたのだ。

 そのアザゼルが生きていたことに、動揺を隠せないマルス。

「俺が生きていて、残念だったな。」
 そんなマルスの動揺を知って、アザゼルは愉快そうな笑みを浮かべる。

「前に、マルスが言っていた、悪魔化した子か?」
 乱入者とマルスが会話しているのを聞いたゼウスが、マルスへと尋ねる。

「うん。テュールさんの魔法で倒したと思っていたのに。」
 マルスは悔しげに、唇を噛み締める。

「何しに来たのかしら?」
 ヘラは、乱入して来たアザゼルへと剣を構える。

「そこのを、回収しに来たんだよ。」
 アザゼルは、バラキエルへと視線を向けた。

「ふざけるな!?  コイツらはここで殺す!」
 バラキエルは、アザゼルの言葉に憤慨する。

 自分の片腕を斬り落とされたのだ。

 バラキエルに、このまま引き下がるつもりは無かった。

「あはははは!  いや、あんたコイツらに腕斬り落とされてんじゃん。」
 アザゼルは、バラキエルの言葉を嘲笑う。

「黙れ!  【雷魔法:黒雷光ヘルケラヴノス】!」
 アザゼルに馬鹿にされたことに腹を立てたバラキエルは、アザゼルへと魔法を放つ。

「おっと。  んだよ。助けてやった恩人に向かって魔法を撃つとか。あんた常識無い訳?」
 バラキエルの魔法を軽々と避けたアザゼルは、バラキエルを睨み付けた。

「お前が勝手にやったことだ。助けてくれなんて、言っていない。」
 バラキエルは、アザゼルを無視して、マルス達へと向き直る。

「はぁーー。めんどくせえな。」
 アザゼルは、自分に背中を向けているバラキエルに対して、ため息を吐く。

 言葉とは裏腹に、アザゼルはバラキエルの横へと移動する。

「今のお前じゃ、あいつらには勝てねぇよ。」
「この力があれば、奴らを殺せる!」
「あいつが、あの二人に支援魔法を使ったら、あんたは確実に殺されるぜ?」
 アザゼルは、マルスがゼウスとヘラに支援魔法を使ったら、バラキエルに勝ち目が無いことを説明する。

「くっ!?」
 バラキエルは、先程の戦闘で、マルスの全大天使アークエンジェル状態でも、かなり厄介だと感じていたのだが、それと同様に、ゼウスとヘラの力も脅威だと感じていた。

 マルスの支援魔法無しに、悪魔化した自分に攻撃を通す程の実力を有しているのだ。

 そんな二人に支援魔法を掛けられたら、太刀打ち出来ないことは理解出来ていた。

「別に、俺はあんたがどうなろうが知ったこっちゃねぇんだが、様が、連れて来いって言うんだから、嫌でも連れて帰るぞ。」
 アザゼルの口から、マルス達が聞いたことの無い名が発せられた。

「ルシファー?  誰だそれは?」
 バラキエル自身、ルシファーの存在を知らないことから、アザゼルへと尋ねる。

「俺やあんたを悪魔化した方だ。」
 アザゼルの口から、衝撃の事実が語られた。

「なんだと!?」
 バラキエルの脳裏に、地下牢で聞いた声が蘇る。

「コイツらへの復讐は、レベルを上げてからやればいいさ。」
「……ふむ。よかろう。」
 バラキエルは、自分を悪魔化させたルシファーに興味が湧いたことや、現時点で四人を相手にするのは危険だと判断し、撤退を決める。


「マルス!  二人をこのまま逃がす訳にはいかないわ!」
 イリスは、悪魔化した二人を逃しては今後に不安が残ると思い、直ぐにマルスへ声を掛けた。

「ああ!  ゼウスさん、ヘラさん!」
「任せろ!」
「任せて!」
 マルスは、ゼウスとヘラへ声を掛けると、ゼウスに大天使の頭脳ウリエルを施し、ヘラに大天使の力ミカエルを施す。

 強化状態のヘラは、負傷しているバラキエルへと狙いを付けて、飛びかかる。

「死ね!  【雷魔法:死雷デスケラヴノス】!」
 バラキエルは、迫るヘラへと魔法を放つ。

「【剣技:神剣カムイ】!」
 ヘラは、神級剣技を発動し、バラキエルの放った魔法を斬り払い、そのままバラキエルへと肉薄する。

「がぁーー!  馬鹿な!?」
 驚くバラキエルへと、死雷デスケラヴノスを斬り伏せたヘラが攻撃を繰り出し、咄嗟に残った腕でガードした、バラキエルの腕を斬り落とした。



 時を同じくして、ゼウスはアザゼルへと魔法を放つ。

「【火魔法:太陽の光アポロン】!」
「チッ!  【火魔法:死炎デスフレイム】!」
 アザゼルは、ゼウスの放った魔法に魔法を放つ。

 若干の拮抗はしたものの、強化状態のゼウスの魔法の方が威力が勝り、アザゼルの魔法を突き破る。

「まだ力不足か。【槍技:全てを貫く槍ゲイボルク】!」
 アザゼルの投擲した槍が、ゼウスの魔法を突き破り、槍が貫いた部分を利用して、アザゼルはゼウスの魔法を回避して見せた。

「何!?」
 ゼウスは、自分の魔法が回避されたことに驚愕したのだった。

                     ▽

 ゼウスとヘラの戦闘を見ていたマルスとイリスは、アザゼルが以前よりも成長していることに気が付く。

 その為、先ずはバラキエルを倒し、四対一でアザゼルと戦うべきだと判断する。

「イリス!  バラキエルから倒すぞ!」
「分かったわ!  【火魔法:地獄の炎インフェルノ】!」
 イリスは、バラキエルへと魔法を放つ。

 両腕を失ったバラキエルは、イリスの魔法を背中の翼を羽ばたかせて回避する。

「逃すかよ!  【力の剣:建御雷神タケミカヅチ】!」
 マルスは転移魔法でバラキエルの上空へと転移し、攻撃を繰り出す。

 バラキエルは、慣れない飛行の為、マルスの攻撃に反応出来なかった。

(やれる!)
 マルスが、そう確信した瞬間。

 バラキエルに、剣が触れるかと言うところで、紫色の結界が突如展開され、マルスの攻撃が阻まれる。

「何!?」
 マルスの剣が結界に衝突すると、マルスの剣が弾き飛ばされてしまったのだ。

 バラキエルも、やられると思った瞬間に、自分の目の前に結界が展開されたことに驚いていた。

 いち早く、その結界を展開した人物に気が付いた者がいた。

「ルシファー様!」
 アザゼルが、バラキエルの横に突如現れた、フードを被った人物の名を叫ぶ。

(コイツがルシファー!?  二人を悪魔化させた奴か!)

 マルスは、イリスやヘラ達の下へ戻り、新たに現れた人物に目を向ける。

「アザゼル。バラキエルを連れて来いと指示した筈だが?」
 ルシファーが、黄金に輝く瞳をアザゼルへ向けると、アザゼルは身体を縮こませてしまう。

「申し訳ありません。」
 アザゼルは、バラキエルがゴネたことから、直ぐに撤退出来なかったと説明したいが、ルシファーにその様な言い訳は通じないと、素直に頭を下げる。

「まぁいい。随分とやられた様だなバラキエルよ。」
 ルシファーは、バラキエルの切断された両腕に目を向けた。

「ぐぅ。」
 バラキエルは、ルシファーのとてつもない威圧感を前に、押し黙ってしまう。

「お前達は、人間にしては楽しめそうだな。」
 ルシファーは、ゼウス、ヘラと視線を動かし、最後にマルスに目を向けた。

「帰るぞ。【転移魔法:空間跳躍ワープ】。」
 ルシファーが魔法を発動すると、アザゼルとバラキエルも姿を消してしまうのだった。
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