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18、「冷酷」(1)
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テロ発生直後 ペナン島 マレーシア
近年、高級ホテルが建設され、多くの観光客が訪れるペナン島。
マレーシアの首都・クアラルンプールから飛行機で1時間の距離にあるこの島に、久しぶりに休暇できた男は、ガーニー・ドライブ(ペナン島最大の屋台村)で、ちょっとしたトラブルに巻き込まれていた。
目の前には、4人の白人男性。話す言語から同国人(合衆国)で、東部の出身だと思われる。洋服も小物も金がかかっている。ニューヨーク在住の株のディーラーで、男の主観では「机の上だけで稼ぐ、くそったれ野郎」に分類される職種だった。
休暇でたかがはずれ、アルコール摂取量が過多になった。ペナンにも体を売る女性は多い。大方、それと間違えて、屋台にいた少女に絡んだのだ。
男とて、久しぶりの休暇だ。面倒ごとには巻き込まれたくはない。しかし、理不尽なことをする奴らは、放ってはおけないのが、男の性分だった。
酔っ払いたちは、止めに入った男に最初は驚き、次に値踏みをして、最後にわざと鼻で笑った。
正義のヒーローが、轢かれたカエルのような顔面だったら、酔っ払いも必要以上に絡まなかっただろう。
しかし、少女のヒーローは、大理石の彫像のごとく、計算して配置したような顔立ちだったのだ。付け加えるなら、能書きには「作・天才彫刻家」と、あるに違いない。
見上げるほどの高身長でバランスのとれた体、ブロンドでヘーゼルの瞳、そして美術館以外では見たくもない精悍な顔面には、「嫉妬」を包んだ握りこぶしで、一発お見舞いしてやろう。酔っ払いたちは、そんなことを思ったのかもしれない。
酔っ払いの一人が、勢いのまま、調子に乗って男の顔を殴った。男は殴られたままにしている。男にとっては、弱いファンの風が吹き抜けたぐらいにしか感じなかった。
そして、男はリアクションもしない。それはもっての他なのだ。かりに、男が50%の力で殴り返しても、相手は顔面陥没で、恐らく一生、鏡をみたいとは思わないだろう。
この男は、存在そのものが凶器だった。
男の様子を見誤った酔っ払いは、さらに調子に乗ってはやし立て、男に暴力を振るおうとした。
その時、「大尉」と大声を上げて、制服の仕官二人が人ごみを掻き分けて駆け寄ってきた。その後ろに大勢の警察官も引き連れて。
「至急、ワシントンにお戻りください!大統領からの命令です!」
一瞬で、喧騒が静まった。
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見上げるほどの高身長でバランスのとれた体、ブロンドでヘーゼルの瞳、そして美術館以外では見たくもない精悍な顔面には、「嫉妬」を包んだ握りこぶしで、一発お見舞いしてやろう。酔っ払いたちは、そんなことを思ったのかもしれない。
酔っ払いの一人が、勢いのまま、調子に乗って男の顔を殴った。男は殴られたままにしている。男にとっては、弱いファンの風が吹き抜けたぐらいにしか感じなかった。
そして、男はリアクションもしない。それはもっての他なのだ。かりに、男が50%の力で殴り返しても、相手は顔面陥没で、恐らく一生、鏡をみたいとは思わないだろう。
この男は、存在そのものが凶器だった。
男の様子を見誤った酔っ払いは、さらに調子に乗ってはやし立て、男に暴力を振るおうとした。
その時、「大尉」と大声を上げて、制服の仕官二人が人ごみを掻き分けて駆け寄ってきた。その後ろに大勢の警察官も引き連れて。
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一瞬で、喧騒が静まった。
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