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25. マルコの同僚、レオナルド田中くん⑤
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オリアナに奴隷はいない。しかし奴隷のいる国はある。
マルコの400人の師匠のうち、元は奴隷だった師匠がいたのだ。ヘビー級の力持ちでチコリ師匠よりは小さいが歩く壁のような大男、ボッシュ師匠だ。
ボッシュ師匠は、横にも縦にも大きいが運動神経は抜群。お相撲さんが驚くほど足が速いのと同じだ。
ちっちゃなマルコの大切な遊び相手だったボッシュ師匠。全身入れ墨で、その凶悪な顔面からは想像できないほどつぶらな瞳。
ボッシュ師匠は主にマルコにサバイバル技術を伝授してくれた。匂いで獣は嗅ぎつけるから、逃げる時は風下に逃げろ、川沿いをいけば死ぬことはないと。
ボッシュ師匠は逃げ足も速かった。あまりに早いので、マルコは「どうしてボッシュ師匠はそんなに逃げ足が速いの?」と聞いた。
師匠はちょっと寂し気な顔をして「俺は元奴隷だから。捕まったら最後、また奴隷になっちまう。だから捕まるわけにはいかなかったんだ」と答えた。
奴隷。
マルコにとって奴隷とは、チコリ師匠が作ってくれた紙芝居「チッチと仲間たち」の中に出てきて、最後は死んでしまう可哀そうな奴隷キキだ。この時、5歳だったマルコは大泣きしながらボッシュ師匠に抱き着いた。
「やだ、やだ、ボッシュ師匠!師匠が捕まったら、僕も一緒に捕まる!」
一緒に逃げるではなく一緒に捕まるというところがボッシュ師匠及び他399人の師匠のツボに入った。
「マルコぼん(マルコぼっちゃんの意)!」
みんなでヒシっと抱き合った。
日常的にこういうやり取りを繰り返していたので、教団?の結束は日々高まったのであるが、いずれにせよこれが「奴隷」とは人としてあり得ないほど悲惨な身分で、奴隷制度のある国は野蛮人の国とマルコが認識するに至るエピソードである。
大事な先輩、レオナルドのいた「にほん」は、奴隷のいる野蛮人の国とのマルコの事実誤認はこうして起きたわけだ。
マルコの「にほん」の印象の三つ目、「拷問器具の中に多くの人を詰め込む」とは、言わずもがなの満員電車のことだ。
サラリーマンだった前世のレオナルドは、常に満員電車で通勤していた。東京の郊外に住んでいた彼は1時間かけて都内へ出勤。往復で2時間。雨の日は最悪で傘の処理に困る。雨じゃなくても感染症が蔓延したテレワーク期間以外は、ずっと満員電車。ギューギューなので体が浮くとか、バックがどこにいったのか分からないことがあった、痴漢に間違えられないように手は上になど。
聞いているマルコが拷問器具に詰め込まれたと勘違いしたのも無理はない。
こんなわけで、マルコの「にほん」の印象は最悪になった。
チコリ師匠が持ってきた書類をチェックしながら、レオナルドから今度はどんな可哀そうなエピソードを聞かされるのだろうと思うマルコであった。
マルコの400人の師匠のうち、元は奴隷だった師匠がいたのだ。ヘビー級の力持ちでチコリ師匠よりは小さいが歩く壁のような大男、ボッシュ師匠だ。
ボッシュ師匠は、横にも縦にも大きいが運動神経は抜群。お相撲さんが驚くほど足が速いのと同じだ。
ちっちゃなマルコの大切な遊び相手だったボッシュ師匠。全身入れ墨で、その凶悪な顔面からは想像できないほどつぶらな瞳。
ボッシュ師匠は主にマルコにサバイバル技術を伝授してくれた。匂いで獣は嗅ぎつけるから、逃げる時は風下に逃げろ、川沿いをいけば死ぬことはないと。
ボッシュ師匠は逃げ足も速かった。あまりに早いので、マルコは「どうしてボッシュ師匠はそんなに逃げ足が速いの?」と聞いた。
師匠はちょっと寂し気な顔をして「俺は元奴隷だから。捕まったら最後、また奴隷になっちまう。だから捕まるわけにはいかなかったんだ」と答えた。
奴隷。
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「やだ、やだ、ボッシュ師匠!師匠が捕まったら、僕も一緒に捕まる!」
一緒に逃げるではなく一緒に捕まるというところがボッシュ師匠及び他399人の師匠のツボに入った。
「マルコぼん(マルコぼっちゃんの意)!」
みんなでヒシっと抱き合った。
日常的にこういうやり取りを繰り返していたので、教団?の結束は日々高まったのであるが、いずれにせよこれが「奴隷」とは人としてあり得ないほど悲惨な身分で、奴隷制度のある国は野蛮人の国とマルコが認識するに至るエピソードである。
大事な先輩、レオナルドのいた「にほん」は、奴隷のいる野蛮人の国とのマルコの事実誤認はこうして起きたわけだ。
マルコの「にほん」の印象の三つ目、「拷問器具の中に多くの人を詰め込む」とは、言わずもがなの満員電車のことだ。
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聞いているマルコが拷問器具に詰め込まれたと勘違いしたのも無理はない。
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