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うぅん、と小さな唸り声を上げながら、花梨は寝返りをうった。ガンっと頭に衝撃が走り、花梨は目を慌てて開けた。
「ん~。ってヴィラ、どうしたの?」
「な、なんでもないです」
額を両手で押さえて、ヴィラが引きつったような笑みを浮かべた。指の隙間から見える額は微かに赤くなり、何故か頬まで赤い。その横には何故か嬉しそうなミケ
『押しが足りないです~』
「押し?」
「ミケ! なんでもないですよ」
多分、ミケが聖獣だということは今のヴィラの頭にはないんだろう。片手でミケの顔面を、思いっきり押している。
「ここが、ヴィラの部屋?」
体を起こして、部屋を見渡す。
広い部屋だが、妙に質素だ。青色で統一されている部屋の中に、花梨が眠っていた白色のベットはどこか不釣合いだった。白のベットの横には、青色のベット。
「隣同士なんだ」
何だか、小学生の時の合宿を思い出させた。花梨は小学生時代、野球部に所属し、その際に海の近くで合宿をしたことがあったのだ。
花梨の何気ない一言に、何故かヴィラが固まり、ミケが笑い声を上げた。
「ど、どうしたの?」
二人の突然の反応に、少し戸惑いながら首を傾げる。
「いえ……何でもないですよ」
居心地悪げに視線を逸らして、ヴィラは俯いた。
何となく花梨も黙り込んで、二人の間に沈黙が広がる。
(――うわ~。何か話さなきゃだけど、何か妙に緊張する)
ヴィラと一緒に居て、今までこんな妙な緊張はしただろうか? と考えながら
助けを求めるように、ミケに視線を動かす。
『そういえば。ドヒュルさんはどうなったんですか~』
「あぁ、兄上なら身分を剥奪しておいた。これで何も出来ないでしょう」
苦々しい表情と声に、好意などはけして抱いていないと分かる。余計、空気が重くなるのを花梨は感じた。
居心地悪い、そんな沈黙だが、何故か嫌いな沈黙ではなく花梨にはそれが不思議だった。
このままで居たいような、早く動き出してしまいたいような。じわじわと何かが広がる、そんな感じ。
『ご主人様、そろそろ時間ですよ~。チュイさんが泣いちゃいますよ』
「え? もうそんな時間?」
花梨がもし遅れていけば、きっと自分が何かをしてしまったんだ! と考えかねないチュイを頭に浮かべて、慌てて立ち上がった。
「それじゃあ、行ってきます」
「え?……行ってらっしゃい」
ミケが肩に乗ったのを確認すると、そのまま部屋から飛び出た。
一人残ったヴィラが、赤い顔を手のひらで覆い隠した。
この世界は、凄く綺麗だと思う。
窓から見下ろす町並みは、現代で見た物とは全く違う。機械的な光はなく、淡い赤色がゆらゆら揺れるだけ。
夜空は隠すものもなく、きらきらと星が光り、月が優しい光で町を照らしている。
「綺麗、だよね」
ほぅ、と感嘆しながら、思わずそう呟いた。
『そうですか?』
ミケにとっては、いつでも目にする当たり前の光景。ミケの反応に花梨は微苦笑し、くしゃと頭を撫でた。
「もうそろそろ10時くらいかな。ヴィラ遅いなぁ」
はぁ、と吐いた息は白く染まり、空気に溶ける。その様子を見て、少し花梨は驚いてしまった。
この世界に来た時は秋だった。この世界に春夏秋冬があるかは花梨には分からなかったが、肌で感じる気温は秋のものだったのだ。そして今、ゆっくりと寒くなっていっている。
「寒くなるよね」
窓を閉めて、季節が動いているのを妙に心打たれて小さな声で言った。
『はい~。もし寒くなっても大丈夫ですよ。僕が元に戻って布団代わりになってあげます~。毎日毛の手入れは欠かしてませんから!』
そりゃ、猫なんだから。という言葉を飲み込んで、少し笑う。ミケを抱き上げて、そのままベットに倒れこんだ。
(――色々話そうって思ってたんだけどなぁ。でも、早く寝ないと明日の治癒にも関わるし。残念だけど……明日、明日の朝とかゆっくり話そう!)
体にかかる疲れのため、花梨の意識がゆっくり落ちていく。
(――敬語が癖かぁ。でもライヤさんが少し、羨まし……な……)
完全に花梨の意識が夢の中へ言った時、バタバタバタと音がしてミケが目を細めた。
書類を手に駆け込んできたのは、ヴィラだった。花梨がベットに横になる姿を見ると、ガックリと肩を落とす。
「花梨……」
そっと静かに、静かに近寄るヴィラの姿に、ミケはそっと目を閉じてあげた。
「ミケも、珍しい。寝ているな」
ふわ、と微笑を浮かべると、花梨の顔をそっと撫でた。
そっと寝顔を見ると、ゆっくりと顔を近づけた。花梨の口元で顔を止めると、何かを躊躇するように止まり、結局額に軽く唇を落とした。
「おやすみなさい。花梨」
少し微笑んで、ヴィラは机の元に書類を片付けに行った。
『やっぱり、押しが足りないです』
クスクスと楽しそうに言うミケの声。既に真剣な表情で書類を片付けているヴィラには聞こえなかった。
「ん~。ってヴィラ、どうしたの?」
「な、なんでもないです」
額を両手で押さえて、ヴィラが引きつったような笑みを浮かべた。指の隙間から見える額は微かに赤くなり、何故か頬まで赤い。その横には何故か嬉しそうなミケ
『押しが足りないです~』
「押し?」
「ミケ! なんでもないですよ」
多分、ミケが聖獣だということは今のヴィラの頭にはないんだろう。片手でミケの顔面を、思いっきり押している。
「ここが、ヴィラの部屋?」
体を起こして、部屋を見渡す。
広い部屋だが、妙に質素だ。青色で統一されている部屋の中に、花梨が眠っていた白色のベットはどこか不釣合いだった。白のベットの横には、青色のベット。
「隣同士なんだ」
何だか、小学生の時の合宿を思い出させた。花梨は小学生時代、野球部に所属し、その際に海の近くで合宿をしたことがあったのだ。
花梨の何気ない一言に、何故かヴィラが固まり、ミケが笑い声を上げた。
「ど、どうしたの?」
二人の突然の反応に、少し戸惑いながら首を傾げる。
「いえ……何でもないですよ」
居心地悪げに視線を逸らして、ヴィラは俯いた。
何となく花梨も黙り込んで、二人の間に沈黙が広がる。
(――うわ~。何か話さなきゃだけど、何か妙に緊張する)
ヴィラと一緒に居て、今までこんな妙な緊張はしただろうか? と考えながら
助けを求めるように、ミケに視線を動かす。
『そういえば。ドヒュルさんはどうなったんですか~』
「あぁ、兄上なら身分を剥奪しておいた。これで何も出来ないでしょう」
苦々しい表情と声に、好意などはけして抱いていないと分かる。余計、空気が重くなるのを花梨は感じた。
居心地悪い、そんな沈黙だが、何故か嫌いな沈黙ではなく花梨にはそれが不思議だった。
このままで居たいような、早く動き出してしまいたいような。じわじわと何かが広がる、そんな感じ。
『ご主人様、そろそろ時間ですよ~。チュイさんが泣いちゃいますよ』
「え? もうそんな時間?」
花梨がもし遅れていけば、きっと自分が何かをしてしまったんだ! と考えかねないチュイを頭に浮かべて、慌てて立ち上がった。
「それじゃあ、行ってきます」
「え?……行ってらっしゃい」
ミケが肩に乗ったのを確認すると、そのまま部屋から飛び出た。
一人残ったヴィラが、赤い顔を手のひらで覆い隠した。
この世界は、凄く綺麗だと思う。
窓から見下ろす町並みは、現代で見た物とは全く違う。機械的な光はなく、淡い赤色がゆらゆら揺れるだけ。
夜空は隠すものもなく、きらきらと星が光り、月が優しい光で町を照らしている。
「綺麗、だよね」
ほぅ、と感嘆しながら、思わずそう呟いた。
『そうですか?』
ミケにとっては、いつでも目にする当たり前の光景。ミケの反応に花梨は微苦笑し、くしゃと頭を撫でた。
「もうそろそろ10時くらいかな。ヴィラ遅いなぁ」
はぁ、と吐いた息は白く染まり、空気に溶ける。その様子を見て、少し花梨は驚いてしまった。
この世界に来た時は秋だった。この世界に春夏秋冬があるかは花梨には分からなかったが、肌で感じる気温は秋のものだったのだ。そして今、ゆっくりと寒くなっていっている。
「寒くなるよね」
窓を閉めて、季節が動いているのを妙に心打たれて小さな声で言った。
『はい~。もし寒くなっても大丈夫ですよ。僕が元に戻って布団代わりになってあげます~。毎日毛の手入れは欠かしてませんから!』
そりゃ、猫なんだから。という言葉を飲み込んで、少し笑う。ミケを抱き上げて、そのままベットに倒れこんだ。
(――色々話そうって思ってたんだけどなぁ。でも、早く寝ないと明日の治癒にも関わるし。残念だけど……明日、明日の朝とかゆっくり話そう!)
体にかかる疲れのため、花梨の意識がゆっくり落ちていく。
(――敬語が癖かぁ。でもライヤさんが少し、羨まし……な……)
完全に花梨の意識が夢の中へ言った時、バタバタバタと音がしてミケが目を細めた。
書類を手に駆け込んできたのは、ヴィラだった。花梨がベットに横になる姿を見ると、ガックリと肩を落とす。
「花梨……」
そっと静かに、静かに近寄るヴィラの姿に、ミケはそっと目を閉じてあげた。
「ミケも、珍しい。寝ているな」
ふわ、と微笑を浮かべると、花梨の顔をそっと撫でた。
そっと寝顔を見ると、ゆっくりと顔を近づけた。花梨の口元で顔を止めると、何かを躊躇するように止まり、結局額に軽く唇を落とした。
「おやすみなさい。花梨」
少し微笑んで、ヴィラは机の元に書類を片付けに行った。
『やっぱり、押しが足りないです』
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