【完結】推しの悪役にしか見えない妖精になって推しと世界を救う話

近藤アリス

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学園編

約束をする妖精

 私が姿を現すと、パーシヴァルはぐいっと距離を詰めてきた。

「レベルが言われた通り20になったでござる。これで拙者の妹の病気を治せる方法を、教えてくれるのでござるか?」

「うん。テストが終わってからの方がいいかなと思ったんだけど」

 そう言ってパーシヴァルを見ると、真剣な表情だ。風の国に行くのは夏の休暇にしても、先に説明だけはした方がよさそうだ。

「風の国に風雅の洞窟ってあるよね?」

「風雅の洞窟?拙者の里にあるダンジョンでござるな」

「その最奥にあるトリスの花が、あなたの妹さんを治すために必要なの。それさえあれば、私がエリクサーを作れるから」

 エリクサー。この世界でもどんな病でも治すと言われている薬だけれど、市場に出回ることはほとんどない。

 本当に信じても良いのか、不安げな表情を浮かべて、じっとパーシヴァルは黙り込む。

 そのまま数分ほど沈黙が続き、パーシヴァルがふぅと息をついて、笑い声をあげた。

「拙者がいくら考えても、分からないでござる。でも、妖精であるアリサ殿が言うのであれば、これ以上に信頼できる情報はないでござるな」

「信じてくれてありがとう。ダンジョン攻略自体は、私とベルるんで行くね。それで、申し訳ないんだけどテストがあるから、夏の休暇になったら行くことになるけどいいかな?」

「もちろん。今すぐにでも妹を助けたい気持ちはある。けれど、拙者のワガママばかり通すわけには、いかないでござるからな」

 それじゃあ約束ね!と手を差し出して、握手を求める。

「こんなに小さくて可憐な指に触れたら、簡単に壊れてしまいそうでござるな」

 そう言ってそうっと触れると、にっこりと微笑んでくれた。

「ところで、ベルンハルト殿とアリサ殿がダンジョン攻略をしてくださるのであれば、私のレベル20は何のためだったでござるか?」

「レベル20に私のシールドがあれば、万が一攻撃が当たっても二発くらいは耐えられるからね」

「なるほど?」

 私の言葉に、しっくりは来ていないながらも、頷くパーシヴァル。

「二人じゃなくて三人で行く理由としては、トリスの花が咲いている部屋に行くためには、パーシヴァルのスキルが必要だからだよ」

 トリスの花が咲いている部屋は、ラスボスを倒した後で壁に「風圧」という、パーシヴァルの固有スキルを当てることで行くことができる。

「助けてもらうのに聞くのもおかしいけど、なぜ拙者の妹を助けてくださるんでござるか?」

「1つお願いがあって。それは、妹さんを助けた後で聞いてほしい」

 妹を助けた時に、パーシヴァルの胸から生まれるのが風の珠だ。その風の珠を持って邪神との戦いを手伝ってほしい、と言うお願いは、妹の病気が治ってからするつもりだった。

 ゲームの世界とはいえ、現にこの世界で生きている彼らは死ねば、もう終わりだ。妹を助けるために、と行きたくもない戦いには連れて行きたくなかった。

 ちなみに、もしも邪神戦を断られれば、風の珠だけ借りるつもりだ。

「わかったでござる。何の願いかはわからないけれど、できる限りアリサ殿の願いを叶えると誓おう」

「うん。ありがとう」

「今からは忙しいでござるか?」

 話が終わったのでその場から立ち去ろうとすると、にこっと笑顔でパーシヴァルがそう聞いてきた。

「今ベルるんが勉強しているから、様子を見に図書館に行くつもりだよ」

「もしお時間があれば、拙者とデートをしないか?もう少しアリサ殿の可愛い顔を見ていたいのでござる」

 ひー!出たな女たらし!

 攻略キャラらしく整った顔立ちで、可愛い顔なんて言われたらドキッとしてしまう。

「べ、ベルるん待ってるから!」

 逃げるが勝ちだ、と透明化する。その場に残されたパーシヴァルは、肩を軽くすくめて笑った。
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