皇女の私が下級貴族の娘と精神入れ替わり!? 美貌も立場も婚約者も奪われたけど下級貴族の娘として強く生きます! 今更、元に戻ってとか言われても

和美 一

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第7話:王城パーティーで簒奪者と遭遇。簒奪者の悲鳴

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 その日は王城でパーティーが催された。

 最底辺貴族のフォーン家といえど出席する資格はある。
 私は今の父上とルグベドと共にパーティーに出席した。

 最底辺といえどもそこは貴族。私のドレスはそこまで高価なものではないものの、不満はない。

 そうしてパーティーに出席したものの、やはり成り上がりの最底辺貴族。

 挨拶に来る相手も少なく止むを得ず立食形式の食事を摂っていた。

「いや、美味いな。俺ごときがこんなパーティーに出られるなんて思ってもいなかった」

 ルグベドはそう言って、着慣れないスーツ姿を私に見せる。

 一介の傭兵隊長としては破格の扱いであろう。私はそんなルグベドに笑みを浮かべた。

「好きなだけ食べてもいいのですよ。皇室が主催するパーティーなのですから」
「それならお言葉に甘えさせてもらう事にしよう」

 そう言うとルグベドはいずこかへと消えて行った。

 私は一人でワインを飲んで、過ごしていると、エルミリア皇女が私の前に現れた。

 かつての私の体! 思う事がない訳ではなかったが、必死な顔で私を見るエルミリアを見ているとそれを指摘する気も薄れた。

「ちょっとあんた。元の体に戻ってよ。皇女の責務ってあんなに大変だったの!? 私は上手くこなせなくて皇帝陛下に怒られてばかりよ! 元の体に戻して! これなら底辺貴族だった頃の方がマシよ!」

 エルミリアになったエリカはそう言って私に言い寄って来る。

 そう言われても困る。私とて望んで体を交換した訳ではないのだから。

「そんな事を言われても困ります」
「何よ! 私の体に入って! 気楽な貴族令嬢の日々を過ごしているんでしょう! 私の体を返して!」
「返しても何も……」

 不可抗力でお互いの体と立場は入れ替わったのだ。それを戻す方法など私には分からない。

「エルミリア。そんな事は言わずに」

 いつの間にかやって来ていたランスロットがエルミリアをたしなめる。
 エルミリアはまだ私に噛み付いてきかねない勢いであったが、ランスロットに止められる。

「君は今は皇女だ。皇女の執務をこなす必要がある」
「皇女があんなにハードワークだなんて思ってもいなかったわ! 私には限界よ!」
「そうは言うが……」

 不平不満を訴えるエルミリアにランスロットは困った顔を見せる。

 やはり中身がエリカでは皇女としての責務を果たす事は難しかったか。

 それは分かるが、エリカにこの体を返す方法が分からない以上、私にはどうする事も出来ない。

「エルミリア様には頑張って公務をこなしていただかないと……」
「何よ! あんたがエルミリアでしょう!」
「エルミリア!」

 エルミリアの言葉にランスロットが止めに入る。

 彼のサポートで上手く、今のエルミリアが執務をこなす事が出来るようになればいいのだが。

「どうした、騒がしいな……おお、エルミリア皇女」
「ルグベド! 私よ! エリカよ!」
「エルミリア皇女? 何を仰っているのです?」

 自分がエリカだと訴えるエルミリアにルグベドは困惑した表情を浮かべる。

 お互いの入れ替わりなどまるで知らないルグベドにとっては何の事だかさっぱり分からないだろう。

「貴殿はルグベド傭兵隊長か」
「おお、そう言う貴殿はランスロット・フォン・カーレル殿。エルミリア皇女の婚約者でありますな」
「そうでは……あるのだがな……」

 ランスロットは事情を知っている。
 今のエルミリアがエルミリアではないと言う事も。

 それでもどうしようもないだろう。こんな真実、声を大にして言える事でもないし、信じて貰える事でもない。

「エルミリア皇女とランスロット殿が、私やエリカ様に何か用でしょうか?」
「う……ぐ……」

 エルミリアが悔しそうに黙り込む。真実を話したいが話せない葛藤だろう。

 とはいえ、エリカにはエルミリアになってしまった以上、皇女として執務をこなしつつ、ランスロットと結婚してもらう必要がある。

 エリカになった私はその間、のんびり貴族令嬢としての日々を過ごしながらルグベドと結婚する事であろう。

 私とエリカ。お互いの立場は入れ替わってしまったが、それがエリカだった者にとって必ずしも嬉しい事であったとは限らないようであった。
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