皇女の私が下級貴族の娘と精神入れ替わり!? 美貌も立場も婚約者も奪われたけど下級貴族の娘として強く生きます! 今更、元に戻ってとか言われても

和美 一

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第11話:ルグベドとランスロット

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 ルグベドを前に私は躊躇う。
 ルグベドは自分ではなくランスロットと婚姻を結べ、と言う。それが私のためになるから、と。

 しかし、そんな事を言われても私はルグベドが好きなのだ。

 安易に決断を下せる訳がない。

 無論、ランスロットも好きだ。このエリカの体になる前、皇女エルミリアであった頃はその時の婚約者のランスロットと共に日々を過ごして来た。

 そのランスロットへの恋慕の念が消えてなくなった訳ではない。

 ただ、エリカになった後、ルグベドと共に過ごす中でルグベドにも心惹かれている自分がいるのだ。

 その二人の内、どちらか一人を選んで結婚するなんて事、私には出来ない。そんな決断はとても出来ない。

「お優しくなられましたな」

 そう思っているとルグベドが笑みを浮かべて私を見ていた。

「以前のエリカ様であったなら私の事などあっさり忘れてランスロットを選んでいたでしょう。それが私にそんな心遣いを見せてくれるようになるとは……。それだけで私は充分です」
「それは……」

 以前のエリカ。本物のエリカは相当、酷い性格をしていたのだろう。

 エリカとして過ごす中でそれは何度も実感した事だ。

 そのエリカが私の体・エルミリアの体の中に入っているのなら、宮廷内で不興を買っているかもしれない。

 ランスロットがエルミリアと婚約を破棄し、私、エリカに婚約を申し込んで来たのもそのせいかもしれない。

 単に精神が入れ替わっている事を知ったからだけでなく、今のエルミリアに耐えられないから婚約破棄に踏み切ったのかもしれない。

 エルミリアはどうしているのか。最初は皇女の立場になれて浮かれていたようだが、皇女としてこなす執務の多さに悲鳴を上げ、挙句の果てには婚約者のはずのランスロットにも見限られた。

 元の体に戻りたいと思っているかもしれない。

 私は元の体に戻りたいとはあまり強く思わなかった。

 下級貴族の令嬢としての生活はそう悪いものではなかったし、ルグベドというよく出来た婚約者もいる。

 そうルグベドが今の私の婚約者なのだ。

「ルグベド、貴方は私の婚約者なのよ。それを捨てて、ランスロットに乗り換えるなんて真似、私には出来ないわ」
「私は構いません。ランスロットと共に幸せになってください。それがエリカ様のためです」
「ルグベド……」

 ここまで言い切るルグベド・ガウマンという男はどれだけよく出来た男なのだ。

 この婚約話はルグベドにとっても悪くはないはずだ。

 単なる一平民の傭兵から底辺とはいえ、貴族の一員になる事が出来、成り上がれる。

 それを思えばルグベドは何が何でも私との婚約にしがみついて、婚姻を望むべきなのだ。

 それなのにルグベドは私の幸せを考え、ランスロットと婚姻しろ、と言う。

 なんという好漢か。そんなルグベドを捨てる事などとても出来ない。

 そんな思いを抱いているとルグベドは帰って行く。

 あくまで自分の事は忘れてランスロットを選ぶように、と言い、それに迷っていると今度はランスロットが訪問して来た、と侍女が私に告げた。

 ランスロットが私に……! また私の心はかき乱されるのを感じる。

 客間でランスロットは相変わらず紳士然として一礼し、私に声をかける。

「エルミリア」
「今の私はエリカです。そう呼んで下さい」
「そうか、分かった。エリカ」

 さて、ランスロットはどんな話を持って来たのか。そう思いつつ、私も椅子に着くのであった。

「迷っているようだね、エリカ」
「……ええ、そうですわね。私はランスロット。貴方の事が好きです。ですが、エリカとして過ごしている時間の中でルグベドにも心惹かれるようになったのです」
「……そうか。思えば精神の入れ替わりを見抜けなかった私に全ての非がある。私ではなくルグベドを選んでもそれがエリカの選択なら私は受け入れよう」

 なんとランスロットまで自分を選ぶ必要はないと言い出したのだ。

 これに私はますます困惑する。二人の男性は私を巡って争う仲にあるはずだ。それがお互いに譲り合いをするとは。

 私はランスロットの話をもう少し聞こうと思い、ティーカップに口を付けた。
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