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第2話:コスプレショップ・イスルギ
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好奇の視線に晒されながら道を歩き、見慣れぬ建物が並んでいることに違和感を懐きながら、サナの後ろに付いて行き、サナの家とやらに着いた。
サナの家は商店を営んでいるようだ。
中に入ると魔法使いのためのローブや剣や斧、鎧が置かれており、ここは武具屋か、と思ったのだが、なんだかどれもオモチャっぽい。
こんなので魔物と戦うための力になるのか、と俺は密かに思ったが、それを言うのも失礼だろう。
何も言わず中の生活空間まで通される。
「おかえり佐奈。ってなんだいこの人は?」
奥にいたのはサナの父親だろう。俺の姿を見て仰天する。
「凄いよく出来たコスプレ衣装だねぇ……」
「それがお父さん、コスプレじゃないの」
え? とサナの父親は目を丸くする。さっきから『こすぷれ』とは一体何なのだ。よく分からんが俺を愚弄する気か。
「この人、なんと異世界からこの世界に来たの!」
「なんだって!」
さらにサナの父親は驚く。俺も驚いた。この世界は異世界ということか。すかさずサナに訊ねる。
「サナ、ここは異世界なのか? 俺は異世界に来てしまったのか?」
「私たちからすれば自分たちの世界だけどアドニスにとってはそうなるわね。この世界には魔法もなければ魔物もいない。平和な世界よ」
「だ、だが、この店では武具を売っているではないか!」
「あれは全部、コスプレ用品。私の家はコスプレショップをやっているの」
また出た。『こすぷれ』とは一体何なのか。それが気になって訊ねてみる。
「その『こすぷれ』とは一体何なのだ?」
「うーん、説明がちょっと難しいけど鎧やローブを着て、騎士や魔法使いに成り切る遊びかな?」
「成り切る……」
つまりこの世界には本物の騎士や魔法使いは存在していないということか?
「どうやら本当に異世界からやって来た人みたいだね」
そんなやり取りを見守っていたサナの父親が口を開く。
「僕の名前は石動陽一
いするぎよういち
。よろしくね、騎士さん」
「ヨーイチ……殿。この国、いや、この世界ではファミリーネームが前に来るのだな。俺はアドニス・トーベだ」
「アドニスさんか。どうせ行く宛なんてないんでしょ? この家でゆっくりしていったら?」
親切心で言ってくれたのだろうが、はい、頼みます、と言うのには躊躇がある。
自分とこの一家は今、知り合ったばかりなのだ。それが寝床を提供してもらというのは……。
「しかし、それは貴方がたに悪い」
「いいんだよ。その代わり、アドニスさんにはやってもらいたいことがある」
「ふむ。魔物退治か? 大型の魔物は流石に倒せんが中型までの魔物なら蹴散らせるぞ」
ヨーイチ殿の言葉に応えると、サナが頭を抱える。
「だから、この世界に魔物はいないんだってば」
「む、そうか、では要件とは? 俺は戦うことしか能のない身だぞ?」
「その鎧姿で店の前に突っ立ってくれるだけでいい。それで宣伝になる。まぁ、看板男と言うヤツだね」
ふむ。ただ立っているだけでいいのか。それで寝床を確保できる、と。
「了解した。寝床代はそれで払おう。食事は適当に獲物を狩ってくるから大丈夫だ」
「いや、大丈夫じゃないって」
俺の言葉にサナが突っ込みを入れてくる。
「この付近に食べられるような動物なんていないって。遠慮しなくても食事もこっちが出すわよ」
「しかし、そこまでしてもらうのは……」
「いいって、いいって、ねえ、お父さん?」
「ああ。構わないよ。ガチの異世界人さんを迎えられるんだから」
どうやら、寝床だけではなく食事の面倒も見てくれるようだ。
それの対価がただ店の前で突っ立っているだけでいいとはこんなにうまい話はあるのだろうか?
俺は少し怪訝に思ったが、この親子からは善意が感じられ、二心ないように思える。俺は頷いた。
「分かった。看板男とやらの役目を果たさせてもらう」
早速、俺は席を立つと店の前に行く。
サナも付いて来る。店の前で俺はサナから渡された板を持たされた。
そこに書かれた文字は読めないが、この店の宣伝文句が書かれているのだろうと察する程度の頭はある。
板を持って、店の前に立つ。自然と視線が集まるが、先程までと違い『こすぷれしょっぷ』とやらの前にいることでそこまで驚きの視線は少ない。
とりあえず看板男としての役目は全うできているかな、と思う。
「すげえなぁ、まるで本物だ」
「すみません、写真、いいですか?」
シャシン? 『シャシン』とは一体何なのか。
分からなかったが、頷く。するとその女性は薄い長方形の板を俺に向けて、パシャ、という音。
「ありがとうございます」といいその女性は去って行った。
ふむ。シャシンというものが何なのかよく分からんな。
しかし、元の世界には戻れないものか。俺は両親を亡くし兄弟もいない身ではあるが、いとこはいるし、天涯孤独という訳ではない。
元の世界への未練もあり、こんな異世界でずっと過ごすことになるのは勘弁願いたい。かといって戻る方法は分からない。
どうしたものか。
そうして突っ立っていると、
「あれ、貴方、佐奈の家のバイトの人ですか?」
新たな少女が俺の前に来るのであった。
サナの家は商店を営んでいるようだ。
中に入ると魔法使いのためのローブや剣や斧、鎧が置かれており、ここは武具屋か、と思ったのだが、なんだかどれもオモチャっぽい。
こんなので魔物と戦うための力になるのか、と俺は密かに思ったが、それを言うのも失礼だろう。
何も言わず中の生活空間まで通される。
「おかえり佐奈。ってなんだいこの人は?」
奥にいたのはサナの父親だろう。俺の姿を見て仰天する。
「凄いよく出来たコスプレ衣装だねぇ……」
「それがお父さん、コスプレじゃないの」
え? とサナの父親は目を丸くする。さっきから『こすぷれ』とは一体何なのだ。よく分からんが俺を愚弄する気か。
「この人、なんと異世界からこの世界に来たの!」
「なんだって!」
さらにサナの父親は驚く。俺も驚いた。この世界は異世界ということか。すかさずサナに訊ねる。
「サナ、ここは異世界なのか? 俺は異世界に来てしまったのか?」
「私たちからすれば自分たちの世界だけどアドニスにとってはそうなるわね。この世界には魔法もなければ魔物もいない。平和な世界よ」
「だ、だが、この店では武具を売っているではないか!」
「あれは全部、コスプレ用品。私の家はコスプレショップをやっているの」
また出た。『こすぷれ』とは一体何なのか。それが気になって訊ねてみる。
「その『こすぷれ』とは一体何なのだ?」
「うーん、説明がちょっと難しいけど鎧やローブを着て、騎士や魔法使いに成り切る遊びかな?」
「成り切る……」
つまりこの世界には本物の騎士や魔法使いは存在していないということか?
「どうやら本当に異世界からやって来た人みたいだね」
そんなやり取りを見守っていたサナの父親が口を開く。
「僕の名前は石動陽一
いするぎよういち
。よろしくね、騎士さん」
「ヨーイチ……殿。この国、いや、この世界ではファミリーネームが前に来るのだな。俺はアドニス・トーベだ」
「アドニスさんか。どうせ行く宛なんてないんでしょ? この家でゆっくりしていったら?」
親切心で言ってくれたのだろうが、はい、頼みます、と言うのには躊躇がある。
自分とこの一家は今、知り合ったばかりなのだ。それが寝床を提供してもらというのは……。
「しかし、それは貴方がたに悪い」
「いいんだよ。その代わり、アドニスさんにはやってもらいたいことがある」
「ふむ。魔物退治か? 大型の魔物は流石に倒せんが中型までの魔物なら蹴散らせるぞ」
ヨーイチ殿の言葉に応えると、サナが頭を抱える。
「だから、この世界に魔物はいないんだってば」
「む、そうか、では要件とは? 俺は戦うことしか能のない身だぞ?」
「その鎧姿で店の前に突っ立ってくれるだけでいい。それで宣伝になる。まぁ、看板男と言うヤツだね」
ふむ。ただ立っているだけでいいのか。それで寝床を確保できる、と。
「了解した。寝床代はそれで払おう。食事は適当に獲物を狩ってくるから大丈夫だ」
「いや、大丈夫じゃないって」
俺の言葉にサナが突っ込みを入れてくる。
「この付近に食べられるような動物なんていないって。遠慮しなくても食事もこっちが出すわよ」
「しかし、そこまでしてもらうのは……」
「いいって、いいって、ねえ、お父さん?」
「ああ。構わないよ。ガチの異世界人さんを迎えられるんだから」
どうやら、寝床だけではなく食事の面倒も見てくれるようだ。
それの対価がただ店の前で突っ立っているだけでいいとはこんなにうまい話はあるのだろうか?
俺は少し怪訝に思ったが、この親子からは善意が感じられ、二心ないように思える。俺は頷いた。
「分かった。看板男とやらの役目を果たさせてもらう」
早速、俺は席を立つと店の前に行く。
サナも付いて来る。店の前で俺はサナから渡された板を持たされた。
そこに書かれた文字は読めないが、この店の宣伝文句が書かれているのだろうと察する程度の頭はある。
板を持って、店の前に立つ。自然と視線が集まるが、先程までと違い『こすぷれしょっぷ』とやらの前にいることでそこまで驚きの視線は少ない。
とりあえず看板男としての役目は全うできているかな、と思う。
「すげえなぁ、まるで本物だ」
「すみません、写真、いいですか?」
シャシン? 『シャシン』とは一体何なのか。
分からなかったが、頷く。するとその女性は薄い長方形の板を俺に向けて、パシャ、という音。
「ありがとうございます」といいその女性は去って行った。
ふむ。シャシンというものが何なのかよく分からんな。
しかし、元の世界には戻れないものか。俺は両親を亡くし兄弟もいない身ではあるが、いとこはいるし、天涯孤独という訳ではない。
元の世界への未練もあり、こんな異世界でずっと過ごすことになるのは勘弁願いたい。かといって戻る方法は分からない。
どうしたものか。
そうして突っ立っていると、
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新たな少女が俺の前に来るのであった。
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