『こすぷれ』とは一体、何なのだ? 異世界から現代日本に転移した騎士、鎧姿のためコスプレ屋の看板男になる

和美 一

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第4話:最高の逸品、はんばーぐ

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 日も暮れてきたので俺は石動家の人たち、といってもサナとヨーイチ殿の二人だけだが、と一緒に晩餐を食べることになった。
 店の奥にある生活スペースに案内される。
 父親と娘だけで他に家族はいないのかと思ったが、母親がいないことには突っ込まない方がいいだろう。
 この国の常識に疎い俺でもそれくらいは分かった。
 鎧を上半身も下半身も脱ぎ、代わりにヨーイチ殿のてぃーしゃつとじーぱんという格好に着替えさせられた。
 このてぃーしゃつにじーぱんという服とズボン、動きやすい、良い服とズボンだ。この姿で戦場に出るのはゴメンだが。

「アドニス、お箸使える?」
「オハシ? 何だ、それは?」
「あー、やっぱ無理か。じゃあ、フォークとスプーンでいいかしら?」
「ああ。フォークとスプーンなら使える」

 オハシなるものがどういうものか気になったがとりあえず答える。
 料理がテーブルに並んでいく。見たこともない豪華な料理だ。

「これは……凄く美味そうだな」
「うちの娘は料理上手でね。アドニスくんも満足できると思うよ」
「白米よりパンの方がいいかしら、アドニス?」
「ハクマイ……ライスか。どちらでもいいが、どちらかと言えばパンの方が馴染み深いな」
「了解っ」

 そうして、料理が全て並ぶ。サナとヨーイチの前にはライスが茶碗に注がれ、俺の前にはパンだ。
 メインディッシュであろう料理ははんばーぐという名らしかった。
 そこに野菜のサラダが並び、スープが用意される。やはり見たこともない豪勢な料理だ。

「これは凄いな! サナは料理人なのか?」
「お褒めの言葉、ありがとう。でも、これくらいこの世界……この国じゃ普通に出て来る料理よ。そこまで驚くほどのものでもないわ」
「そうなのか」

 どうやらこの国の料理のレベルの水準はかなり高いようだった。
 このような豪華な料理を貴族でもないのに食べられるとは。

 俺は驚きを覚えつつもサナとヨーイチ殿と一緒に「いただきます」の挨拶をする。サナが「異世界でもやっぱりいただいますはあるんだ……」などと言っていたが。

 そうして、まずパンに口をつける。

「う、美味い……!」

 これ程、柔らかくて豊満な味を閉じ込めたパンを俺は知らない。
 スナイバル王国の安物のパンはこれとは比較にならないくらいまずかった。
 パンの異常な美味さに思わず、「高かっただろう、これ」と訊ねてしまう。

「パン屋さんで80円で買ったものだけど」
「そうか」

 80円というのがどのくらいの価値かは分からないがこんな美味しいパンだ。
 さぞ大金だったのだろう。そんなものを食べさせてもらって悪いという気持ちが溢れてくる。

 次にメインディッシュらしいはんばーぐに手を付けた。フォークで突き刺し、口の中に運ぶ。
 ……美味すぎる!
 俺は思わず感激してしまう。しっかり焼かれた肉の触感にソースが絡み合い、絶妙なハーモニーを形成している。
 肉も美味く、これも高かっただろうと思われた。

「このはんばーぐとやらは最高だな!」
「ありがと、アドニス。私の得意料理なの」
「そうか。しかし、これも高かっただろう」
「や、せいぜい200円くらいしかお金かかってないから。セールで買ったひき肉だし」

 先の80円より多くなっている。円という通貨がどれだけの価値を持つかは知らないが高級品を食べているのだな、と実感する。

 サラダも健康さあふれる瑞々しい野菜が使われており、これも高級品だな、と俺は思う。

 スープも絶品で何から何までこれまで俺が食べてきた料理と比べると別物であった。
 これまで俺がスナイバル王国で食べていた料理などこの料理の足元にも及べまい。

 全部、食べ終わり、「ごちそうさまでした」と三人で手を合わせる。

「いやあ、ホントに美味かったぞ、サナ」
「そんなに大したもんじゃないんだけどね……やっぱり異世界……アドニスの国の料理レベルはこれより低いの?」
「比べ物にならないな」
「そう」

 そうして、サナは手早く食器を片付けると奥の台所に行った。好奇心で付いていった俺だが、

「うお! 水がこんな所から出た!? 魔術か?」
「ただの水道だって。そんなに凄いもんじゃないわよ」
「スイドウ、と言うのか。これは自由自在に水を操るのか?」
「そんな言い方をしたら大袈裟だけど、まぁ、そんな所ね」

 スイドウとやらから出た水でサナは三人分の食器を洗っていく。その動作は手慣れたものであった。

「この世界は凄いのだな」

 この世界に来て一日目、それを実感する一晩になるのであった。
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