『こすぷれ』とは一体、何なのだ? 異世界から現代日本に転移した騎士、鎧姿のためコスプレ屋の看板男になる

和美 一

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第7話:披露会に赴き

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 俺、サナ、ルリ、フェイフーの四人でこすぷれの披露会とやらに行く。
 俺の他三人は現地で着替えるらしいが、俺は始めから鎧姿だ。
 持ち運びできるものでもないし、着るのにも手間がかかる。
 ならば、始めから鎧姿で行った方がいいだろうという判断だが、周りから注目を集めに集めてしまっているようであった。

 無理もないか。この国は平和なようで、鎧姿の人間など俺一人しかいない。
 周りから「何あれ」だの「コスプレ?」だと囁かれつつ、俺たちは移動した。

 チカテツなるものに乗って現地に行くらしい。階段を下りて地下に下って行った時には驚いたし、そこを鉄の箱が繋がったものが往来し、その鉄の箱に乗って移動するのはもっと驚いたが、この世界ではこれが普通のようであった。

 この世界に少しは慣れてきたつもりだが、まだまだ驚くべきことは多い。
 この世界の住民は地下をも支配下に置いているというのか。
 そうしてチカテツとやらで数駅移動し、会場に行く。

 サナとルリとフェイフーは着替えに更衣室に行ってしまい俺一人残されて先に会場入りすると勇者のようなマントを羽織った上質な仕立てと思われる服を着た者や魔法使いのローブを纏った者。俺と同じような、だが、比べると遥かにチャチい鎧を着た男の姿もあった。

 こすぷれ会場の中でも俺は注目を集めた。すごい出来の鎧だ、と感嘆を持ってこすぷれいやー、とやらたちは俺に言葉をかける。
 俺のはこすぷれではなく本物なのだが。そうしている内に着替え終わった三人が出て来る。

 サナは軽鎧を纏った戦士姿、ルリは魔法使いのローブを着て、フェイフーは色気の目立つ胸の上半分がむき出しになった服に下半身は短いスカートに腰布として前垂れと後垂れを垂らした服装だった。

「みんなよく似合っているぞ」

 俺が思わず称賛を届けると三人は照れ臭そうに笑った。

「アドニスにそう言ってもらえると自信が持てるわ」
「アドニスさんの鎧の着こなしは流石ですね」
「やるわねぇ。このコスプレ会場の中でも屈指の出来だわ」

 俺のはこすぷれではないんだが。ともあれ、この会場なら俺の格好も浮かなくて済む。
 それはありがたいことであった。この世界に来てからというものの、町中を出歩く必要がある時はヨーイチ殿の服を借りていたが、やはり俺にはこの鎧姿がしっくりくる。

 てぃーしゃつ、というものと、じーぱん、というものの着心地の良さには素直に敬意を表するが。

「よう石動さん」

 そんなことを思っているとサナたちとは別のこすぷれをした一団が挨拶に来る。
 リーダー格らしき男は鎧姿であった。勿論、こすぷれだろうが。

「佐藤さん。こんにちは」
「いやぁ、三人とも見事なコスプレ姿で見ない顔もいるね。新しいコスプレ仲間? その鎧、出来が神がかっているなぁ」

 サトウと呼ばれた男は多弁に喋り、俺に視線を向ける。
 へー、ほー、と俺に近付き鎧を見て回る。好奇心ゆえの行動と分かってたので嫌な気はしなかったが、「佐藤、失礼だぞ」とサトウの仲間が言い、サトウは引っ込んだ。

「しかし、ホントによく出来た鎧だなぁ。石動さんたちの新しいコスプレ仲間」
「あはは……コスプレ仲間っていうと厳密には違うんだけどね」

 サナが苦笑いする。そうだ。俺のこの格好はこすぷれなどではない。正真正銘、騎士の証だ。

「見た所、外人さんみたいだけど、日本語もペラペラだし」
「翻訳薬の効果だな。本来、俺はこの国の言葉は喋れん」
「翻訳薬……?」

 事実を言っただけなのだが、サトウたちの表情が訝しむようになる。
 そこにサナが割って入り、「日本語の勉強しっかりしてきたみたいだから!」と大声でいい、強引に、この話題を終わらせた。
 ふむ。翻訳薬はこの世界にないのか。ならば俺はこの国の言語を勉強してきたことにしておこう。

「ああ。この国の言葉を頭に叩き込んでおいた」
「なーんだ。そうなのか」

 納得した様子でサトウたちは笑みを浮かべる。
 それからも穏やかな調子でこすぷれの披露会は進み、あちこちでかめらを使ってシャシンが撮られる。
 俺も多くの人に鎧姿をシャシンで写された。

 最後にはみんなでキネンサツエイをするらしいのだが、その中心に立つ大役に俺は選ばれてしまった。
 俺の鎧が一番出来がいいから、らしい。撮ったシャシンは後でいんたーねっとにあっぷするとのこと。よく分からないが。

「はい、それじゃあ、撮りますよー」

 まとめ役の男がそう言い、かめらとやらを操作し、俺たちをシャシンに撮る。
 そうしてこすぷれの披露会は終わり、皆は帰路に就く。
 俺も三人と一緒に帰り道を歩いた。やはり鎧姿で注目を集めてしまったが。

「楽しい時間だったな」

 俺はそう言う。本音だった。あのこすぷれの披露会にいる間は鎧姿も気にせずに過ごせた。

「ええ、楽しかったわね」
「はい!」
「これだからコスプレはやめられないわね」

 三人とも楽しんだようだ。俺たちは笑みを交わし合いながら帰路を行くのであった。
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