『こすぷれ』とは一体、何なのだ? 異世界から現代日本に転移した騎士、鎧姿のためコスプレ屋の看板男になる

和美 一

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第13話:買い物からの帰還

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 休憩し、体がだいぶ楽になっていたが、サナとルリの二人の店巡りは止まらない。
 二人の小さな体のどこにそれだけの体力があるのだと疑問に思ってしまうくらい二人は人混みを掻き分け、次々に店を巡っていく。
 それでいて何も買わずに終わるんだから俺には訳が分からなかった。

 この世界の年頃の女の子とやらは全員こうなのだろうか? それともサナとルリが特別なだけか?
 疑問に思いつつも騎士としての訓練で鍛え上げられた肉体を持つ俺はへばることなく二人の後に続く。
 この二人は騎士になったら強い女騎士になるかもしれない。そんなことすら思ってしまう。

「ほらほら、アドニス、次行くわよ」
「アドニスさん。置いていきますよ?」
「あ、ああ、分かった」

 ちょっと気を抜いていると置き去りにされそうになる。
 この世界で女の子と付き合う男たちは皆、このようなことを乗り越えてきているのだろうか。大変だな、と他人事どころか、誰のことを思っている訳でもないのに思ってしまう。

 サナとルリの買い物は続き、俺はそれにひたすら従う。
 うぃんどぅしょっぴんぐとやらでこれまで物を買うことはなかったのだが、不意に、

「よし、それじゃあ、秋に備えて服を買うわよ!」

 サナがそう宣言し、服屋に入っていく。
 買い物を開始してから数時間が経っているがようやく実物を買うことにしたようだ。
 しかし、この店に入ってからが長かった。
 サナとルリは色々な服をとっかえひっかえしてシチャクしたりして試しに着てみるも、気に入らないから買わないということを繰り返し、目当ての服に辿り着くまで時間がおおいにかかった。
 結局、最後に着た服を俺に見せて、似合っているか? と訊ねられ、俺が似合っていると思うぞ、と答えるとそれを買うことにしたようだ。
 荷物持ちは俺だ。当然のように買った服の入った袋をサナとルリから押し付けられたので異論を挟む余地もなかった。

 これもこの世界の男の役目なのだろう、多分。やはり、同情してしまう……誰に同情しているのだ、俺は。
 変な気分になりながらもようやくシブヤでの買い物を終えて帰路につくことにしたようだ。

 サナとルリが先行して歩き、そこでブロンドの髪や赤髪の男たちがたむろしてサナとルリを囲んだ。
 俺は少し距離を取っていたのでかばい切れなかった。

「へっへっへっ、お嬢ちゃんたち可愛いね」
「オレたちと一緒に遊ばな~い?」

 一見しただけで悪漢と分かる下卑た男たちであった。俺はすかさず前に出て、男たちに声をかける。

「彼女らに何か手出しをするのなら俺が容赦しないぞ」
「なんだこいつ?」
「外人?」
「何調子乗ってんの?」

 俺を見て男たちは困惑しつつも強気な態度は崩さない。その内、一人が俺に近寄る。

「嬢ちゃんたちの知り合いかもしれないけど、口出さないでくれますぅ~?」
「いや、口を出させてもらう」
「こいつ……!」

 近寄ってきた男が拳を俺に繰り出す。
 それを俺は受け止め、逆に締め上げて、関節を決めた。
 異世界にこようが、鎧を脱ごうが騎士として鍛え上げた肉体と体術の技は鈍っていない。
 こんな連中、俺一人で全員、倒すくらいは余裕だった。

「う、ぐあっ……!」

 手を離し、解放すると男は他の男たちの群れに戻り、俺を睨む。
 ここで俺から手を出すことはできない。サナから教わった知識によると非が相手にあったとしても拳を打ち付けるような真似をすればケイサツという治安維持組織のお世話になってしまうという。
 それだけに俺は目で相手を睨み、威圧する。

「く、くそ、この外人、強えぞ……!」
「ちっ……」

 俺の実力を前にサナとルリに不逞の行為を働くのは無理だと判断したようだった。
 男たちは足早に去って行く。それを見送り、俺は二人に「大丈夫か?」と声をかけた。

「なんで私たちから離れているのよ、アドニス。おかげであんな奴らに囲まれちゃったじゃない」
「それはすまない。油断していた」
「でも、助けてくれてありがとうございます、アドニスさん。おかげであの人たちも逃げ帰ったみたいです」

 二人を助けるのは当然のこと。その役目をヨーイチ殿から仰せつかってこうして二人に付いてきている訳だしな。

「二人に怪我がなくてよかった。それじゃあ、キリもいいし、そろそろ帰るか」
「そうね、どの道帰ろうかと思っていたし。とんだケチが付いちゃったけど」
「帰りましょうか」

 俺たちは頷き合い、エキへの道を歩き出す。
 相変わらず人混みが凄かったが、サナとルリはそれを掻き分け進んでいく。
 その力があればさっきの男たち相手でも俺の助けはいらなかったんじゃないかな、などと思ってしまうものであったが。

 デンシャという鉄の箱に揺られ、アキハバラに帰って来る。
 アキハバラエキでルリとは別れるのかと思ったが、ルリもサナの家に遊びにくるようであった。

「佐奈と一緒に作っている新しいコスプレ衣装の仕上げをしたいので」

 ルリはそう言った。この二人はこすぷれの服を買うだけではなく自作もするようなのだ。

 自分で作って自分で着る、という訳だ。
 聞けば二人の知り合いの中国人こすぷれいやー・フェイフーにもこすぷれを提供しているらしい。その熱意は凄いと素直に感心してしまう。
 俺たちはサナの家のこすぷれしょっぷに帰還を果たすのであった。
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