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第15話:アストラルソード その1

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 コーラル王国王都の少し外れ、森に少し踏み入った所にその店はある。
 曰く、あらゆる武器防具アイテムが揃い、来客の注文に確実に応えてくれるという。

 本当にそんな店があるのか。疑問に思いつつも冒険者アルスは店を訪れた。
 アルスの剣はブロンズゴーレムとの戦いではこぼれしてしまっており、新たな剣を必要としていたのだ。

 願わくばブロンズゴーレムの装甲も斬り裂ける程の名剣を。
 その思いで店を訪れたアルスを赤髪を肩まで垂らした店主は出迎えた。

「いらっしゃい」
「ここが噂の店か。俺に剣をくれ。ブロンズゴーレムの装甲も斬り裂ける剣を」
「ああ、あんたもブロンズゴーレム相手の武器をお求めかい」
「あんたも、か」

 ここ最近、コーラル王国ではブロンズゴーレムが脅威として存在している。
 自分の他にもブロンズゴーレム相手の武器を求めた者はいたのであろう。その思いで店主を見返す。

「剣ならあんたの他にもご所望の冒険者がいた。まだブロンズゴーレム対策の剣は残っている。それを売ろう」
「ああ。よろしく頼む」

 そう言うと店主は店の奥に引っ込んでいき、しばらくして、鞘に収められた一振りの剣を持って店主はやって来た。
 鞘から剣を抜き放つ。しかし、その剣には刀身がなかった。

「ふざけているのか? 柄だけの剣など使い物にならん」
「まぁ、そう焦りなさんな。あんたは見た限り魔法も使えるようだ。それならこの剣を使うことができる」
「どういうことだ?」

 確かにアルスは魔法も使える剣士であった。
 しかし、柄だけの剣を使うことができるというのはどういう理屈か。
 疑問に思うアルスに店主は「とにかく柄を握って魔力を込めてみてくれ」と言う。

 怪訝に思いつつも柄を握り、魔力を込める。すると光の刃が柄から伸びて刀身を形成した。

「ほう。これは……」

 アルスは感嘆の声を漏らす。魔力を刀身とする光の剣か。これなら確かにブロンズゴーレムにも立ち向かえると思える。

「切れ味は良いのだろうな?」
「ブロンズゴーレムの装甲も斬り裂けるよ。それは保証する。単に斬るだけじゃなく刀身を飛ばして攻撃することも可能だ」
「それはありがたいな」

 ブロンズゴーレムの装甲も斬り刻める剣であり、魔法攻撃もできる剣。
 それならアルスとしても文句はない。少し風変わりな剣であるが、早速、この剣を買おうとアルスは思った。

「いくらだ?」
「金貨3枚に銀貨15枚といった所かね」
「分かった」

 それなら払えない額ではない。アルスは代金を取り出すと店主に渡す。

「毎度あり」

 そして、受け取った剣を見る。

「この剣の銘は?」
「アストラルソード、といった所かな」
「そうか」

 アストラルソード。自分の新たな愛剣を握り、アルスは満足げに頷く。
 柄から伸びた光の刀身は頼もしい輝きを放っている。この剣ならばブロンズゴーレムとて敵ではない。その思いを抱く。

「それではさらばだ、店主。いや、いい買い物をした」

 アルスは店を後にし、冒険者ギルドに行くとブロンズゴーレム討伐の依頼を探す。
 そこで顔見知りの冒険者と会った。

「おう。アルスじゃねえか」
「イグルトさん。貴方もブロンズゴーレム討伐の依頼を受けに?」
「まぁな。オレには礼の店で買った貫きの槍がある。ブロンズゴーレムも楽勝ってもんだ」
「イグルトさんも赤髪の店主の店に行ったんですか」
「ほう? そう言うからにはお前も?」

 アルスは頷いた。

「じゃあ、一緒にブロンズゴーレム討伐の依頼を受けるか。あの店で買った武器ならブロンズゴーレムも楽勝のはずだ」
「そうですね、受けましょう」

 そして、アルスはイグルトと共にブロンズゴーレム討伐の依頼を受け、現地に赴いた。

「それじゃあ、行くか」

 イグルトが貫きの槍を振るい、ブロンズゴーレムの装甲を貫く刺突を放つ。
 それはブロンズゴーレムを機能停止に追い込んだ。

「俺も……!」

 アルスもアストラルソードを振るう。柄に魔力を込めると光の刀身が形成される。
 それを振るうと刀身から魔法の斬撃が放たれる。それを受けたブロンズゴーレムは装甲を削り取られ、地にひれ伏した。

「凄い……!」

 このアストラルソードはブロンズゴーレムも楽に倒せる力を秘めている。
 アルスは前に出て、光の刀身で直接、ブロンズゴーレムを斬り付けてもみた。

 剣はブロンズゴーレムを斬り裂き、その機能を停止させる。

「お前の剣もやるじゃねえか。かなり変わった剣だがな」

 貫きの槍を振るうイグルトがそう言いつつ、自身もブロンズゴーレムを刺突で撃破していく。
 アルスはアストラルソードを振るい、そこから魔力の斬撃を飛ばし、ブロンズゴーレムを撃破する。

 アストラルソードの威力は絶大だった。
 強敵のブロンズゴーレムも次々に倒せて行く。

 刀身から飛ばす魔力の斬撃も直接刀身で斬り付けるもブロンズゴーレムの装甲を破壊し、その機能を停止させる。
 貫きの槍を振るうイグルトに続き、アルスもアストラルソードを振るい、次々のブロンズゴーレムを撃破していった。

 そうして、気が付けば全てのブロンズゴーレムを倒し終えていた。

「お前の剣も最高の一品だな」

 イグルトが感心したように言う。

「イグルトさんの槍も凄いですね」
「まぁな。この槍ならブロンズゴーレムも楽勝よ」

 お互い自分の武器に上機嫌にになり、笑みを交わし合う。

「あの赤髪の店主の店。眉唾ものだと思っていましたけど、本当に何でもあるんですね」
「そうだな。オレも最初は信じてなかったが……この貫きの槍があるのならあの店は本当に凄い店なんだろうよ」
「俺もこのアストラルソードに不満はありません」

 いい買い物をした。その確信は二人の間の共通事項だった。
 これならブロンズゴーレム相手の依頼も楽にこなすことができる。
 そう思うアルスであった。
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