25 / 80
第25話:ヒュドラ毒の解毒剤
しおりを挟む危険な依頼であることは分かっていた。
コーラル王国のサリバスト山脈でヒュドラが出没したという。
同山脈を冒険した冒険者によってもたらされた情報であり、今はヒュドラは山脈の洞窟の中でおとなしくしているものの、いつ人里に出て来るか分かったものではない。
迅速な討伐が必要な場面だった。コーラル王国王都にある冒険者ギルドにヒュドラ退治の依頼が出され、報酬は破格の値段であった。
ヒュドラという魔物の危険性を考えるとそれは当然であるのだが。
これを受けることができるのは個人の冒険者ではなく、パーティーを組んでいる冒険者たち、その中でも実績を残したパーティーだけに限られた。
ヒュドラという危険極まりない魔物を相手にするのだ。それは当然のことであった。
この依頼を受けることにしたパーティーがあった。
熱血漢にして正義感である剣士ケイをリーダーにしたパーティーだ。
このパーティーは腕利き揃いで知られており、今回のヒュドラ退治にも自ら名乗りを上げて、依頼を受けることにした次第だ。
冒険者ギルドもこのパーティーならヒュドラ相手にも遅れは取らないだろうと思い、依頼する。
ケイをリーダーにした面々は早速、サリバスト山脈に向かった。
山脈まで辿り着き、魔物を蹴散らしながら、ヒュドラがいるという洞窟を目指す。
そこにヒュドラはいた。巨大な蛇である。見かけだけでは大きいだけの蛇にしか見えないがその吐く息や口を開くと剥き出しに見える牙には猛毒がある。
ケイをリーダーにしたパーティーは警戒しつつ、ヒュドラに挑んだ。
まず魔法使いたちが遠距離攻撃をし、弓使いもそれに続く。
それらがヒュドラの体に当たったのを機にケイたち前衛が前に飛び出し、ヒュドラに攻撃を浴びせる。
順調にヒュドラにダメージを与えていっていた。
ヒュドラも反撃の毒息や牙を繰り出そうとするも前衛のメンバーは素早く退避し、後衛が魔法や矢を放ち攻撃する。
ヒュドラ相手に理想的な戦い方でケイのパーティーは戦っていた。しかし、
「ぐわっ!」
前衛の一人、戦士クレストが猛毒の息吹を浴びてしまう。
クレストの全身に毒が回り、クレストは地面に倒れ伏して猛毒の痛みにもがき苦しんだ。
「クレスト!」
ケイが名を呼ぶがクレストから声が返って来ることはない。
なんとか治療しなければならない。そう思いつつも今は目の前のヒュドラを退治しなければ第二のクレストを生むだけだ。
ケイは剣を振るい、ヒュドラの頭部に突き立て、ヒュドラの息の根を止めた。
「大丈夫か!? クレスト!」
メンバーはヒュドラの毒息に犯されたクレストの元に駆け寄るが、大丈夫そうには見えなかった。
とりあえず肩を貸し、なんとか下山。王都のクレストの家まで運びベッドで寝かせたもののクレストは苦しみ続けるだけで猛毒が彼の体を蝕んでいるのは確かであった。
ヒュドラ毒の解毒剤など存在しない。パーティーの治癒師(ヒーラー)が毒を解除する魔法をかけるも、それらでもヒュドラ毒は解除できないようだった。
このままではクレストは死んでしまう。それを恐れたパーティーメンバーたちはどうしたものかと解決策がないかを訊いて回った。
そこで噂の店の話を聞いた。赤髪の店主の店。
そこにはあらゆるものがあるという。信じられた話ではないが、今は他に手もない。
リーダーのケイが一人でその店に行くことにした。
「いらっしゃい」
赤髪を肩まで垂らした店主がケイを出迎えてくれる。ケイは単刀直入に要件を話した。
「ヒュドラ毒の解毒剤が欲しい。この店にあるか?」
「ヒュドラ毒とはこれまた厄介なものだね」
「ないのか?」
「そうは言っていないだろう。少し待ってくれ」
店主は店の奥に引っ込んでいく。帰って来た時には小瓶を持っていた。
「この中にあらゆる毒に対する特効薬が入っている。ヒュドラ毒も解毒できるはずだ」
「確かなのだな?」
怪しげな店に怪しげな店主。そして、解毒不可能と言われるヒュドラ毒という要素が重なり、ケイを疑わせる。
だが、店主は頷いた。
「確かだよ」
「分かった。これを貰おう」
「金貨2枚でいいよ」
大事なパーティーメンバーの命がかかっているのだ。金に糸目は付けていられない。
ケイは金貨2枚を店主に渡すと小瓶を受け取る。
「毎度あり」
そうして、店を出てクレストの家に戻る。そこにはパーティーメンバーが一堂に会していた。
「リーダー! 解毒剤は?」
「買ってきた。あの店主に嘘がなければこれでヒュドラ毒も解毒できるはずだ」
ケイはクレストに小瓶を与え、中の液体を飲ませた。
すると、息も荒く、見るからに苦しそうだったクレストの表情が安らいでいく。
ヒュドラ毒が浄化されつつある。それは確かなことであった。
「クレスト!」
ケイは仲間の名を呼ぶ。クレストは目を開けて、体の上半身を起き上がらせた。
「リ、リーダー……オレの毒は、治ったのか……?」
「どうやらそのようだな。あの赤髪の店主、胡散臭いと思っていたが……」
噂は本当だったということであろう。回復した仲間にパーティー一同が喜びの表情を浮かべる。
あの噂の店。眉唾ものだと思っていたが……。ケイは思う。今後も世話になるかもしれないな、と。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~
ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。
コイツは何かがおかしい。
本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。
目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。
異世界転生したおっさんが普通に生きる
カジキカジキ
ファンタジー
第18回 ファンタジー小説大賞 読者投票93位
応援頂きありがとうございました!
異世界転生したおっさんが唯一のチートだけで生き抜く世界
主人公のゴウは異世界転生した元冒険者
引退して狩をして過ごしていたが、ある日、ギルドで雇った子どもに出会い思い出す。
知識チートで町の食と環境を改善します!! ユルくのんびり過ごしたいのに、何故にこんなに忙しい!?
99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える
ハーフのクロエ
ファンタジー
夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。
主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた
りゅう
ファンタジー
異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。
いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。
その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる