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第八話
王宮での生活は、俺が前世で夢想していた「究極のニート生活」そのものだった。
朝は心地よい日差しで目が覚め、三食はテレーズさんの絶品料理。仕事もなければ、誰かに急かされることもない。
午後の穏やかな時間。俺はテラスのソファに身を預け、手元にある本を眺めていた。文字はまだ半分も読めないが、紙の質感が良くて捲っているだけで心が落ち着く。
窓から吹き込む風が、カーテンを優しく揺らしていた。
(あぁ……最高に眠い……)
まぶたが重い。
俺は本を閉じ、クッションを抱え直して目を閉じた。意識がゆっくりと遠のき、陽だまりのような温かさに包まれていく。
どのくらい時間が経っただろうか。
ふわり、と鼻先をかすめたのは、アリスターの匂いだった。清潔な石鹸と、甘い花の香りが混ざった、あの特有の香りだ。
「シオン、こんなところで寝ていたら風邪を引いてしまうよ」
耳元で囁かれる柔らかな声。
俺は薄く目を開けた。逆光の中に立つアリスターが、笑みを浮かべて俺を見下ろしている。
「あ、アリスター様……仕事は、終わったんですか?」
「うん。君に会いたくて、急いで片付けてきた。隣、いいかな?」
俺が少し体をずらすと、アリスターは当然のようにソファに腰を下ろした。それどころか、彼は俺の頭を優しく抱き上げ、自分の膝の上に乗せた。
「えっ、ちょ、アリスター様!?」
「静かに。せっかくいい気持ちで寝ていたんだろう?ベッドまで運んでもいいけれど、ここで少しだけ、僕に君の寝顔を見せておくれ」
アリスターの手が、俺の銀髪を梳く。指先が地肌に触れるたび、ゾクりとした甘い震えが全身を走った。
彼の膝はほどよく硬く、けれどズボンの生地越しに伝わる体温が驚くほど心地よい。
「……恥ずかしいです」
「どうして?僕はただ、大好きな君のお手伝いをしているだけだよ。ほら、力を抜いて」
アリスターの指が、耳の後ろから首筋へと滑り落ちる。
その瞬間、背中の「隠した羽」の付け根が、かつてないほど激しくドクンと波打った。
熱い。そして、ひどくむず痒い。
消えているはずの羽が、アリスターの温もりに反応して、今にもその場に溢れ出してしまいそうだ。
(まずい、これ以上触れられたら……!)
俺は身悶えしたい衝動を必死に抑え、アリスターの膝に顔を押し付けた。
顔を隠しているつもりだったが、これでは余計に密着している。
アリスターは小さく「ふふっ」と笑うと、今度は俺の背中に手を回し、ゆっくりと撫で始めた。
「シオンの体は、本当に柔らかいね。……なんだか、ここから何か温かいものが溢れている気がする」
「そ、れは気のせいです。ただの居眠りのせいで、のぼせてるだけです……」
必死の強がりに、アリスターの愛撫がさらに優しさを増す。
アリスターの指先が、ちょうど羽の付け根のあたりを円を描くように動く。そのたびに俺の脳内は真っ白になり、吐息が熱く、浅くなっていく。
もう、逃げ場がない。
アリスターという巨大な優しさに包み込まれ、俺の理性はとろとろに溶かされていく。
「おやすみ、シオン。君の平穏は、僕がずっと守ってあげるから」
落とされた、柔らかいキスの感覚。
俺は、アリスターの温もりの中で深い眠りへと引きずり込まれていった。
朝は心地よい日差しで目が覚め、三食はテレーズさんの絶品料理。仕事もなければ、誰かに急かされることもない。
午後の穏やかな時間。俺はテラスのソファに身を預け、手元にある本を眺めていた。文字はまだ半分も読めないが、紙の質感が良くて捲っているだけで心が落ち着く。
窓から吹き込む風が、カーテンを優しく揺らしていた。
(あぁ……最高に眠い……)
まぶたが重い。
俺は本を閉じ、クッションを抱え直して目を閉じた。意識がゆっくりと遠のき、陽だまりのような温かさに包まれていく。
どのくらい時間が経っただろうか。
ふわり、と鼻先をかすめたのは、アリスターの匂いだった。清潔な石鹸と、甘い花の香りが混ざった、あの特有の香りだ。
「シオン、こんなところで寝ていたら風邪を引いてしまうよ」
耳元で囁かれる柔らかな声。
俺は薄く目を開けた。逆光の中に立つアリスターが、笑みを浮かべて俺を見下ろしている。
「あ、アリスター様……仕事は、終わったんですか?」
「うん。君に会いたくて、急いで片付けてきた。隣、いいかな?」
俺が少し体をずらすと、アリスターは当然のようにソファに腰を下ろした。それどころか、彼は俺の頭を優しく抱き上げ、自分の膝の上に乗せた。
「えっ、ちょ、アリスター様!?」
「静かに。せっかくいい気持ちで寝ていたんだろう?ベッドまで運んでもいいけれど、ここで少しだけ、僕に君の寝顔を見せておくれ」
アリスターの手が、俺の銀髪を梳く。指先が地肌に触れるたび、ゾクりとした甘い震えが全身を走った。
彼の膝はほどよく硬く、けれどズボンの生地越しに伝わる体温が驚くほど心地よい。
「……恥ずかしいです」
「どうして?僕はただ、大好きな君のお手伝いをしているだけだよ。ほら、力を抜いて」
アリスターの指が、耳の後ろから首筋へと滑り落ちる。
その瞬間、背中の「隠した羽」の付け根が、かつてないほど激しくドクンと波打った。
熱い。そして、ひどくむず痒い。
消えているはずの羽が、アリスターの温もりに反応して、今にもその場に溢れ出してしまいそうだ。
(まずい、これ以上触れられたら……!)
俺は身悶えしたい衝動を必死に抑え、アリスターの膝に顔を押し付けた。
顔を隠しているつもりだったが、これでは余計に密着している。
アリスターは小さく「ふふっ」と笑うと、今度は俺の背中に手を回し、ゆっくりと撫で始めた。
「シオンの体は、本当に柔らかいね。……なんだか、ここから何か温かいものが溢れている気がする」
「そ、れは気のせいです。ただの居眠りのせいで、のぼせてるだけです……」
必死の強がりに、アリスターの愛撫がさらに優しさを増す。
アリスターの指先が、ちょうど羽の付け根のあたりを円を描くように動く。そのたびに俺の脳内は真っ白になり、吐息が熱く、浅くなっていく。
もう、逃げ場がない。
アリスターという巨大な優しさに包み込まれ、俺の理性はとろとろに溶かされていく。
「おやすみ、シオン。君の平穏は、僕がずっと守ってあげるから」
落とされた、柔らかいキスの感覚。
俺は、アリスターの温もりの中で深い眠りへと引きずり込まれていった。
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