13 / 24
第十三話
隣国の使者が去ってからというもの、アリスターの過保護ぶりにはさらに拍車がかかっていた。
公務の間も俺を自分の執務室に座らせておきたがるし、少しでも俺が視界から消えると、すぐにカイルさんを遣いに寄越してくる。
そんなある日の夜。俺たちがいつものように主寝室で寛いでいると、アリスターが「シオン、渡したいものがあるんだ」と言って、小さな箱を取り出した。
「これ、使者が帰った後に用意させたんだ。開けてみてくれるかい?」
「俺に……ですか?」
受け取った箱を開けると、そこには銀の台座に嵌め込まれた、一粒の美しい宝石の指輪が収まっていた。
深く、吸い込まれるような深緑色の石。それは、灯りを受けて複雑な輝きを放っている。
「すごく綺麗だ。でも、これ、どこかで見たことがあるような……」
「気づいたかい?僕の瞳の色と同じ石を選んだんだ」
アリスターは俺の手をそっと取ると、箱から指輪を取り出し、俺の薬指へと滑らせた。
ひんやりとした金属の感触のあとに、アリスターの体温が伝わってくる。
「シオン。この石は、僕の代わりに君を見守る魔法の印だと思ってほしい」
「見守る……?」
「ああ。公務で僕がそばにいられない時も、これを見れば僕に見つめられていると思って。そして思い出して。君が、誰のものなのかをね」
アリスターの指先が、指輪を嵌めたばかりの俺の指をなぞる。
爽やかな微笑みを浮かべているけれど、その言葉には、逃げ場を塞ぐような甘く重い響きがあった。
「あの……これ、俺が持っていてもいいんですか?なんだか、すごく特別なものに見えますけど」
「特別だよ。これは、僕の伴侶になる者に渡すと決めていたものだから」
さらりと言われた言葉の重みに、心臓が跳ねた。
伴侶。つまり、それは一生を共に歩むという誓いだ。
前世で社畜として使い潰された俺にとって、誰かの「特別」になるなんて、想像もしていなかった。
(……アリスターは、本気なんだな)
彼を見つめ返すと、深い緑の瞳が俺を真っ直ぐに捉えていた。
その熱量に当てられたように、背中の「隠した羽」の付け根が、かつてないほど激しくドクンと波打った。
熱い。熱くて、疼いて、今にも真っ白な羽がこの場に溢れ出してしまいそうだ。
「シオン、顔が赤いよ。……嫌だったかな?」
「……嫌じゃないです。ただ、その、アリスター様の気持ちが、すごく伝わってきて……」
俺が指輪を見つめながら呟くと、アリスターは満足そうに目を細め、俺の手の甲に優しく唇を落とした。
「よかった。これからずっと、それを身につけていて。君が僕の視線を感じてくれていると思うだけで、僕はどんな仕事も頑張れる気がするよ」
アリスターの独占欲は、もはや隠すことすらされなくなっている。
けれど、指輪に込められたその重すぎるほどの愛情が、今の俺にはたまらなく心地よかった。
俺は、彼に見つめられ、愛されるこの場所から、もう一生離れたくないと本気で思い始めていた。
公務の間も俺を自分の執務室に座らせておきたがるし、少しでも俺が視界から消えると、すぐにカイルさんを遣いに寄越してくる。
そんなある日の夜。俺たちがいつものように主寝室で寛いでいると、アリスターが「シオン、渡したいものがあるんだ」と言って、小さな箱を取り出した。
「これ、使者が帰った後に用意させたんだ。開けてみてくれるかい?」
「俺に……ですか?」
受け取った箱を開けると、そこには銀の台座に嵌め込まれた、一粒の美しい宝石の指輪が収まっていた。
深く、吸い込まれるような深緑色の石。それは、灯りを受けて複雑な輝きを放っている。
「すごく綺麗だ。でも、これ、どこかで見たことがあるような……」
「気づいたかい?僕の瞳の色と同じ石を選んだんだ」
アリスターは俺の手をそっと取ると、箱から指輪を取り出し、俺の薬指へと滑らせた。
ひんやりとした金属の感触のあとに、アリスターの体温が伝わってくる。
「シオン。この石は、僕の代わりに君を見守る魔法の印だと思ってほしい」
「見守る……?」
「ああ。公務で僕がそばにいられない時も、これを見れば僕に見つめられていると思って。そして思い出して。君が、誰のものなのかをね」
アリスターの指先が、指輪を嵌めたばかりの俺の指をなぞる。
爽やかな微笑みを浮かべているけれど、その言葉には、逃げ場を塞ぐような甘く重い響きがあった。
「あの……これ、俺が持っていてもいいんですか?なんだか、すごく特別なものに見えますけど」
「特別だよ。これは、僕の伴侶になる者に渡すと決めていたものだから」
さらりと言われた言葉の重みに、心臓が跳ねた。
伴侶。つまり、それは一生を共に歩むという誓いだ。
前世で社畜として使い潰された俺にとって、誰かの「特別」になるなんて、想像もしていなかった。
(……アリスターは、本気なんだな)
彼を見つめ返すと、深い緑の瞳が俺を真っ直ぐに捉えていた。
その熱量に当てられたように、背中の「隠した羽」の付け根が、かつてないほど激しくドクンと波打った。
熱い。熱くて、疼いて、今にも真っ白な羽がこの場に溢れ出してしまいそうだ。
「シオン、顔が赤いよ。……嫌だったかな?」
「……嫌じゃないです。ただ、その、アリスター様の気持ちが、すごく伝わってきて……」
俺が指輪を見つめながら呟くと、アリスターは満足そうに目を細め、俺の手の甲に優しく唇を落とした。
「よかった。これからずっと、それを身につけていて。君が僕の視線を感じてくれていると思うだけで、僕はどんな仕事も頑張れる気がするよ」
アリスターの独占欲は、もはや隠すことすらされなくなっている。
けれど、指輪に込められたその重すぎるほどの愛情が、今の俺にはたまらなく心地よかった。
俺は、彼に見つめられ、愛されるこの場所から、もう一生離れたくないと本気で思い始めていた。
あなたにおすすめの小説
人気アイドルの俺、なぜかメンバー全員に好かれてます
七瀬
BL
デビュー4年目の人気アイドルグループ「ECLIPSE(エクリプス)」に所属する芹沢 美澄(せりざわみすみ)は、昔からどこか抜けていてマイペースな性格。
歌もダンスも決して一番ではないはずなのに、なぜかファンからもメンバーからも目を離されない存在だった。
世話焼きな幼なじみ、明るく距離の近い同い年、しっかり者で面倒見のいい年上、掴みどころのない自由人、そして無言で隣にいるリーダー——。
気づけば、美澄の周りにはいつも誰かがいて、当たり前のように甘やかされていく。
愛を感じないのに絶対に別れたくないイケメン俳優VS釣り合わないので絶対に別れたい平凡な俺
スノウマン(ユッキー)
BL
平凡顔・ヒモ・家事能力無しの黒は、恋人であるイケメン俳優の九条迅と別れたがっている。それは周りから釣り合ってないと言われたり、お前の事を愛してない人間なんて止めておけと忠告されたからだ。だが何度黒が別れようとしても、迅は首を縦に振らない。
迅の弟である疾風は、兄は黒の事を特別扱いしてると言うが――。黒は果たして迅と別れることが出来るのか!?
最悪の婚姻から始まるただ一つの愛
統子
BL
最悪の婚姻だった。
皇太子の正室として迎えられながら、
与えられたのは祝福ではなく、冷たい部屋と拒絶だけ。
触れられることすら恐ろしく、
ただ静かに時間が過ぎるのを待つしかなかった。
けれど——
差し出された手は、思っていたものとは違っていた。
無理に触れない。
急がない。
ただ、こちらの様子を確かめるように、少しずつ距離を縮めてくる。
気づけば、隣に座ることが当たり前になり、
言葉を交わす時間が、夜の習慣になっていた。
触れられるたびに怖さは消え、
代わりに残るのは、離れがたい温もり。
これは、最悪の婚姻から始まった関係が、
やがて“ただ一人”へと変わっていく物語。
望まれなかったはずのはじまりが、
いつしか、何よりも大切なものになるまでの——
静かで、優しい、溺れるような愛の記録。
番になって十年、今さら君の好きが欲しい
ふき
BL
高校生にして番になって十年。
朝比奈翠は、一條要の愛情を疑ったことなどなかった。瞳も、触れ方も、独占欲も、全部が自分に向いていると知っていたからだ。
けれどある日、要から一度も「好き」と言われたことがないと気づいてしまう。
愛されている。求められている。それは分かっている。
それでも、たった一言が欲しかった。
今さらそんな言葉を欲しがるなんて、ワガママかもしれない。
一度知ってしまった足りなさは、もう無かったことにはできなくて――。
※独自オメガバース要素あり
長年仮番として務めてきましたが、王子は正式な番を娶るそうです
けふ
BL
王都を守る巨大結界は、王族の魔力によって維持されている。
第二王子アデルの傍らには、常に一人の騎士がいた。
近衛騎士レオン。
彼は長年、王子の「仮番」として特別な任務を担っている。
しかし王子は、他国の王女との正式な番契約が決まってしまった。
仮番の役目は、そこで終わるはずだった。
だが結界塔で行われる儀式の中で、
二人の関係は次第に変わり始める。
王族と騎士。
主と臣下。
越えてはならない境界を前にしても、
王子は騎士の手を取る。
「共に立て」
※オメガバースではありません
※ふんわり読んでください
※なんでも許せる方向け
※イラストはChatGPTさん
売れ残りオメガの従僕なる日々
灰鷹
BL
王弟騎士α(23才)× 地方貴族庶子Ω(18才)
※ 第12回BL大賞では、たくさんの応援をありがとうございました!
ユリウスが暮らすシャマラーン帝国では、平民のオメガは18才になると、宮廷で開かれる選定の儀に参加することが義務付けられている。王族の妾となるオメガを選ぶためのその儀式に参加し、誰にも選ばれずに売れ残ったユリウスは、国王陛下から「第3王弟に謀反の疑いがあるため、身辺を探るように」という密命を受け、オメガ嫌いと噂される第3王弟ラインハルトの従僕になった。
無口で無愛想な彼の優しい一面を知り、任務とは裏腹にラインハルトに惹かれていくユリウスであったが、働き始めて3カ月が過ぎたところで第3王弟殿下が辺境伯令嬢の婿養子になるという噂を聞き、従僕も解雇される。
また恋人に振られたので酒に呑まれていたらゴツい騎士に求婚していた件
月衣
BL
また恋人に振られた魔導省のエリート官吏アルヴィス。失恋のショックで酒に溺れた彼は勢いのまま酒場に現れた屈強な王宮騎士ガラティスに求婚してしまう。
翌朝すべての記憶を保持したまま絶望するアルヴィスだったが当のガラティスはなぜか本気だった。
「安心しろ。俺は誠実な男だ。一度決めたことは覆さない」
逃げようとするエリート魔導師と絶対に逃がさない最強騎士
貢ぎ体質な男が捕まる強制恋愛コメディのつもりです!!