いくよ一月あなたの許へ

古地行生

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人物
 与吉 裏長屋に住む左官職人
 お留 与吉の女房
 与助 与吉の息子
 お玉 与吉の娘

 ご隠居 長屋の大家

 法念 近所の寺の若い僧侶
 天蓋坊 風来坊の壮年僧侶

 雪女 物の怪
 貧乏神 神様


 時は文政、めでたき元日。ところは江戸、深川、棟続きの裏長屋。二間あるのがやれ嬉しい。頃合いは昼前も、朝からの大雪で一面白くお天道さまは遠く。

 舞台と見立ててながめれば、上手かみてに見えるは長屋路地、そのおく見やれば木戸があり。真ん中は、土間と流しと一間あり、年増女が一人出支度。下手しもては居間の奥の間に、布団にもぐった男がひとり。すみにはぽつんと葛籠つづらがひとつ。




 お留、土間で立ちあがりがけに奥へ向き声をかける。

お留 「あんた、それじゃあ行ってくるよ」


 返事なし。
 お留、気にせずに出ていき上手にハケる。
 しばらくのち、上手よりご隠居がゆったり出てき、長屋の戸を開け大声で中によびかける。


ご隠居 「与吉やい、生きとるか」


 返事なし。
 ご隠居、なれた様子であがり込んでふすまをあけ、与吉の枕元に坐りこむ。手近の煙草盆たばこぼん煙管きせるに火をつけようとするがつかないので諦め、与吉に話しかける。


ご隠居 「どうだい、与吉や、良くなったかい」


 返事なし。と思いきやよわよわしい声で、


与吉 「さっぱりだあ。このまま死んじまうかもしれねえよお」

ご隠居 「ぎっくり腰で死んだ奴はな、おらん」

与吉 「へえ、じゃあっしがはじめての死人になるんで」

ご隠居 「似合わないねえ。えらく気弱じゃないか」


 ご隠居、また煙管に火をつけようとするがうまくいかぬ。


与吉 「気弱にもなりゃあすよ。師走しわすのすえからなんもかんもてんでうまくいかねえでこの有様だ。煙管の火もつかないとくらあ。それでついさっき女房も出てっちまったんで」

ご隠居 「お前なあ、大げさにいうもんじゃないよ。お留は初詣に行っただけじゃないか。わしはお留がお前さんの様子見を頼んできたからこうしてきてやったんだ」

与吉 「だってご隠居、あっしとあいつは毎年一緒に初詣に行ってるのによ、つめてえじゃねえか」

ご隠居 「ガキじゃないんだからそんなことでむくれなさんな。やさしい女房がな、旦那のお前さんの身体と景気が良くなるように神さんに頼んでくるんだから」

与吉 「景気ねえ、そうだねえ。なんでこんないきなり物入りになって立ちいかなくなったんだか」

ご隠居 「そう悩んだって仕方ない。今は養生するんだよ。他の連中を見たらまたきてやるから。なんぞ目出度い話でもしようじゃないか」

与吉 「へえ」


 ご隠居、入ってきたのと同じような動きで出ていき、上手にハケる。ひとりきりの与吉が何やらうめき、布団がゆれる。しばしの静寂。
 と、上手から何者かが出てきたと思うとひと息に長屋の戸を開けて転がり込む。腰が抜けたのかよつんばいになって進んでふすまをあけて、


法念 「た、助けて下さい……」

与吉 「な、なんでえ、法念さんかい。いきなり飛び込んできやがって」

法念 「ああ与吉さん、助けて下さい。雪ゆき雪……」


 法念、要領を得ない物言い。与吉、困惑。そうこうしているうちにいつの間にか戸口に白い着物姿の女性がスッと立っている。


雪女 「法念はん、なにもそんなにおびえなくてもよいでっしゃろ」


 雪女、ケラケラ笑いながら入ってきて戸をきちんとしめ、あががまちに座る。法念、それを見て白目をむいて気絶、与吉の上にあおむけに倒れる。与吉、怖さではなくまた腰に落ちてきた雷の方がよっぽどこたえてこちらも気絶。


雪女 「あらこれは……こちらの旦那様でっしゃろか。すまないことをしてしまいましたな」


 与吉、うんうん唸って三途の川の幻がまぶたの裏に浮かぶがごとき有様。
 そこへまた上手より長屋へ飛び込んでくる者あり。かの者、戸を開けずにぶち破って入ってき、雪女の前に仁王立ち。


天蓋坊てんがいぼう 「ようやく追い詰めたぞ、この物の怪が!」


 天蓋坊、無精ひげをぼうぼうに生やした乞食坊主のいで立ちにくわえ、その手にはわらべが遊びに使う手毬てまりほどの大きさのある木の球を繋げた数珠じゅずをもつ。


天蓋坊 「やっ、これは遅かったか……物の怪、また尊い命を一つ、無下むげに奪いおったな」

雪女 「うちはそんなものとっておりゃしませんどすえ。こんなしちめんどうな取り方するくらいなら、『死ねどす』の一言で凍らせております。それに、もしとったと云いはるなら一つではなく二つどす」

天蓋坊 「なんだと!」


 天蓋坊、雪女を恐れる様子なくよこぎって奥の間に駆け込み、かけ布団をめくる。


天蓋坊 「ややっ、たしかにもう一人。おのれ物の怪、今日こそ逃がさんぞ」


雪女 「逃げた覚えもありゃしません」


天蓋坊 「おのれ、この期に及んで口ごたえか命乞いか」


雪女 「あんさんもどうにもこうにもいかんお方ですなあ。それでもお坊様の御心はお持ちなのは知っとりますから云いますえ。まずはそのお二人を介抱するのがよろしゅうどすえ」

天蓋坊 「ん、んむぅ、こやつ、物の怪の癖に道理を見抜いておるのはさすが伊達だてにながき年月を生きておらんな。一理あるわい」


 天蓋坊、雪女に坊主の心を持っていると言われまんざらでもない様子で、かたわらにぐんにゃりと倒れている法念を抱き起こすとゆさゆさと大雑把おおざっぱにゆする。


天蓋坊 「おい若人わこうどよ、御坊ごぼう、大事ないか」


法念、目を覚ますや眼前に迫る天蓋坊の鬼のような容姿に驚愕、また気絶しかけながら、


法念 「ヒエッ、鬼さん!? もう地獄? 三途の川の渡し船はよく揺れるがすぐ着くとは噂通り。それにしても修行が足りないうちにこんなことに……むぅん」

天蓋坊 「む、ここは地獄ではなし。拙僧も獄卒ではござらん。ここは江戸深川ぞ。しっかりせい」

法念 「ああ、そうだ、そうでした。あの女、雪女が私を襲って江戸まで」

天蓋坊 「そのことなら安心せい。わしは物の怪追って十余年、日ノ本の人里守って諸国を巡るを生業なりわいとする乞食坊主、天蓋坊よ。ここには雪女なる物の怪を追ってきたのだ。ついに追い詰めたとおもったところよ」

与吉 「いてええ……」

天蓋坊 「おおすまぬすまぬ、御仁ごじんのことを忘れておったわい」

法念 「アッ、与吉さん、申し訳ありません」


 与吉、目は覚めたらしいが死にかけのコオロギのように高く上げた両手をぴくぴくと震えさせている。


天蓋坊 「おのれ、これも雪女めの仕業か!」

法念 「いえ、こちらの与吉さんのこれはぎっくり腰でして、年の瀬に急に痛めてこうなったのです」

天蓋坊 「いやいや若人よ、それは矢張やはり雪女の仕業ということだ。急な寒さで腰をやられたのだろうよ」

法念 「なるほど、いわれてみれば。天蓋坊さん、わたくし、法念と申します。なさけない所をお見せしました」


 法念、畳の上に正座して深く礼。天蓋坊、それを制止し、与吉をうつ伏せにするとその腰を両の親指で押す。


天蓋坊 「えいやっ」


 与吉、この世のものとは思えぬ悲鳴をあげてまた気絶するも、すぐにハッと起き上がる。


与吉 「こ、腰が治った」

法念 「すごい」

天蓋坊 「なに、造作ぞうさもないことよ。拙僧は調伏ちょうぶくのほかに指圧鍼灸しあつしんきゅうの心得もあるのでな、この程度であれば治せるのだ」


 与吉、地獄に仏と天蓋坊を拝み倒す。


天蓋坊 「なになにご主人、謝礼の話はあとで良い」


 与吉、青菜に塩と顔をくもらす。


与吉 「す、すまねえことにあっしはここんとこ金がねえんで」

天蓋坊 「いやいやご主人、それはずっと後でも構わぬのだ。それよりも今は雪女よ」


 三人、土間の方を見るも誰もおらず、天蓋坊を先頭に戸口までいき中も外も見渡す。しかし見当たらぬ。


天蓋坊 「逃げられたか」

与吉 「おいおい、なんでうちの戸がバラバラになってんだ」

法念 「きっと雪女の仕業ですよ。しかしもういないようですね」


 天蓋坊、悔し気な、法念、ほっとした、与吉、狐につままれた面持ち。と、そこに雪女の透き通った声が響き渡る。


雪女 「逃げてはおらんどすえ」


 雪女、空中から路地へふわりと降り立つ。


雪女 「それから戸を壊したのはうちでのうて天蓋坊さんです。与吉さんはきっちり修理の掛かりをとられるとよろしゅうどすえ」

天蓋坊 「こやつ、物の怪のくせに筋を通すのがまた憎い」

法念 「ひいい」

与吉 「美人だねこりゃ」

雪女 「江戸見物くらいさせてくださいな、まずいぼうさん」

天蓋坊「わしの名は天蓋坊じゃ! なんだその間違え方は! ボウしかあっとらんからひとっつもかぶっておらんも同然じゃ! そのボウも貴様、まずい棒は名高い呪い絵師の日野日出斎が関わった下総菓子で坊主のボウではないだろう! わざと選びおったな!」

法念 「ひいい」

雪女 「やれやれ、どちらのお坊さんも話を聞く気がないんでは困りますのう」

与吉 「べっぴんさん、俺で良かったらきくがよう」


 与吉、フラフラと雪女に近づこうとするが天蓋坊の太い腕で止められる。


与吉 「な、なにするんでえ、とめねえでくだせえよ、うまいぼうさん、後生だ」

天蓋坊 「元祖の方にしてもわしの名前ではない! ご主人、奴は美しくとも物の怪であるぞ。それに、腰に良くない」

雪女 「それにはわたしも同意どす」

与吉 「なんだって……アッ、つめてえ。いてててて」


 与吉、雪女に近づくと冷えがひどくなり腰が痛むことに気づき後ずさる。


与吉 「畜生、生殺しかい」


 ご隠居、上手より出てくる。


ご隠居 「おい、与吉、正月だからとなーにをバカ騒ぎをしとるんじゃ。長屋中にお前の声がひびいたぞ。だいたいおぬし腰はよくなったのかえ。ん?」


 ご隠居、揉めてる最中の四人をみやって首を傾げる。しかしそこは亀の甲より年の功。


ご隠居 「法念さんは知っとるが、あんたら二人ははじめて見る顔じゃのう、与吉の飲み仲間かね。まあ、ともかく、皆さん明けましておめでとう」

法念 「あけましておめでとうございます」

天蓋坊 「これはご丁寧にどうも。あけましておめでとうございます」

雪女 「おめでとうございますう」

ご隠居 「おお、あんたは別嬪べっぴんさんじゃのう。なんと色白な、出雲伯耆いずもほうき越後えちごかと思わせる」

雪女 「またまたお上手で。がっかりさせてしまいますが堪忍どすえ。うちは山城やましろという田舎の出どす」

ご隠居 「ハッハッハッ、そっちじゃったか。さ、とにかく皆もあんたも遠慮せずに中にお入りなさい」

雪女 「ですけども、うちが入ると家の中が余計さむうなってしもうて、与吉はんが難儀されますのよ」

ご隠居 「ほう? じゃがそれならなぜ与吉の家を訪ねなさった」

天蓋坊 「ご老人、これなる女は物の怪の雪女である。おそらくはこの法念なる若き坊主を慕い、今冬こんとうの寒さこれ幸いと江戸の中まで飛んできたのであろうよ。わしは物の怪退治を生業としておるから、こやつめを追ってここまできたからよくわかっておる」

法念 「そ、そうですそうです。五年前に京の山で雪女にあったという話をご隠居にもしたことがあるでしょう。あの雪女がこうして私を追ってきたのです、ああ私は殺される。きっと将軍様の氷室ひむろの中に閉じ込められたように血肉が凝り固まって、うう」

雪女 「と、こんなようにお坊様が二人おっても話が全くとおりませんで。これでは知らぬ陀羅尼だらにの方がよほどとおります」

天蓋坊 「なんだと!」

法念 「なんですって!」

ご隠居 「これこれお前さま方、ここはわしにまかせなさい。どうやら皆それぞれに事情があってもつれているようじゃ。わしがほどいていこうじゃないか。部外者ぶがいものじゃからこそできるというものよ」

雪女 「ありがたやあ」

天蓋坊 「む、異存はないぞ」

法念 「お願い致します」

与吉 「ちくしょう、俺の役目をとられちまったい」

 ご隠居、ぼやく与吉を見て感嘆してうなずく。

ご隠居 「与吉の方は大丈夫そうじゃの。お留さんがもうでたご利益が早速きたんじゃろう」

与吉 「へえ、あっしはもうこのとおりですからお気になさらずやってくだせえ。もめ事はチャキチャキッと片づけてしまうのが一番でさ」

ご隠居 「うむ、そうじゃの。なにすぐ終わるよ。ときに雪女さんや、あんたが山城からこの深川くんだりまで来たのは何かわけがあろうてじゃが、それは法念坊にも与吉にも関わり合いなきところとみた」

雪女 「さすがでございます。そのとおりどす」


 与吉、法念、天蓋坊の三人、みなおどろきを隠せず。


ご隠居 「なに、様子を見ておればそうとしか思えぬ。じゃがその訳が何なのかまではわしにもわからん。わしも年取って気が短くなってのう。あんたの口からじかに教えてはもらえんかね」

雪女 「ええ、それはもう。こうしてご隠居さんが間に入ってくれたおかげで話せますえ。天蓋坊さん、あんさんは人外の気配がわかる方でっしゃろ」

天蓋坊 「いかにも」

雪女 「じゃから私以外に気を向ければ、この長屋に他の気配があるのがわかるはずどすえ」


 天蓋坊、怪訝けげんそうに雪女とご隠居を交互に見てから目を閉じて念仏を唱え始める。


与吉 「なんだってんだ。おい法念さん、あんたはわかるかい」

法念 「すみません、わたしはこっち方面は疎くてどうにも」


 天蓋坊、カッと目を見開くと下手の居間へ駆け込み、布団の上で天井に向けて数珠を持った右手を振り上げる。


天蓋坊 「出ませい!」


 途端、天井がバリバリバリッと派手な音を立てて割れると……いうことはなく、何も起こらず。


天蓋坊 「……」

一同 「……」


 ばつの悪い空気がただよって誰も何も言い出せずにいる中、居間のすみに置かれている葛籠が激しくゆれて蓋がぽーんと宙に舞い、中からぼろをまとった男が現れる。
 天蓋坊、出てきた男に向き直ってねめつけるが、すぐに意外心外という表情を浮かべ男にたずねる。


天蓋坊 「ぬ、おぬし、人ならざぬ者には違いなし、さりとて悪しきものでないどころか物の怪でもない。むしろこう、神々しさを感じるぞ」

雪女 「ほれあなた、己で名乗ってみなされ」


 葛籠男、直立して名乗る。


貧乏神 「は、それがしは貧乏神と申します」
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