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短めな話
ぷつん
しおりを挟む洗面台の鏡にむきあって、自分の歯を眺めてみた。犬歯だけちょこっと尖って、伸びている。あいつみたいな何か噛み切れそうなんじゃないなあ。けどちょっとばかし牙っぽい。
下唇の端を歯で挟んでみる。えいっと力を入れるとぷつん、という感触とともに、じわ......と痛みが走る。鏡で見ているとみるみる傷口から血が滲んでくる。
「シアン、うがいするからそこ、代わって」
歯でも磨いていたようだ。横によけると蛇口をひねり、口をゆすいで、そうしてちらっとオレの顔を見て、ぎょっとした。
「へ、お前、それど、どうした」
「んー、切れちゃった」
嘘を吐く。切れた、じゃなくて切ったが正解。普段あまり口を大きく開けないシルフが慌てたように口をぱくぱくさせるから、磨きたての牙がちらちらと覗く。やっぱり魅力的。オレは微笑んで、
「めしあがれ」
「......歯、磨いたばっかなんだけど」
そういいつつも正直に顔を寄せ、ぺろ、と拭うように血を舐める。あとからあとから、流れてくる血液を、残さず飲み込んでいく。キスをするように、オレはお前の唾液を、お前はオレの血を求めて。
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