33 / 197
本編
悪魔くんとつれない同居人
しおりを挟む*前回までのあらしじ(特に気にしなくてもOK)
悪魔くんと吸血鬼さんが悪い吸血鬼を捕まえた!しかし場所が悪く、たくさんの人間に見られてしまう!事件のヒーローとして一躍有名人に、しかも顔バレ!いやでもオレたち人外だから目立つわけには......そうだ、別の街に住もう!
「ここ?」
「ここだな」
「ふーん、まぁ良いんじゃない?」
そこそこ人通りのある通り、そのうちの1軒のこぢんまりとした3階建てアパートメント。雰囲気としては、ポロロッカの店に付属した下宿とそう変わらないだろう。その一番上のワンルーム(風呂とトイレは別)が、オレたちの新しい住処になる。
ここを決めてくれたのはロロ。何なら賃貸料を払っているのも彼女。だってオレたちが人外の悪者を捕まえ、それを人間に見られることになったのは、雇い主ロロの責任だしな。
......にしてもさぁ。
「お前、オレと同じ部屋に住むの、何も思わんの?」
オレは......。ちらっと隣を見る。正直惹かれてやまないその姿。出会った当初は顔や姿体が好みだと思っていたが、接していくにつれなんかもう全体的にオレの中で完璧だ。だから......思春期の人間かと思うくらい意識してしまう。借りたのはワンルーム。
__これ、同棲だよな?
「前も、同じ家にいたから。今日からも」
一緒に住めるのは、嬉しい。__彼がその言葉を言わずに恥じらったのを、シアンは知らない。
「ふーん。まぁお前にとっちゃあんまり変わらないか」
早く入って荷解きしよう。そう言ってオレはシルフを急かして玄関に向かった。
*
オレは今、複雑な感情がバクハツしそうになっていた。
「あ......あいつ......!」
あいつ、とはロロのことだ。部屋を選んで与えてきた魔女。そしてその感情は、部屋の隅に置かれたとある家具に対して起こっていた。
「これ、ダブルベッドじゃん......!」
横に2人並んで寝られるやつ。もうちょっと心が純粋なら、広いね~、と喜べただろう。だけど。
「何が問題なんだ?」
この天然は話にならない。オレ、どういう気持ちで毎晩並んで寝ればいいんだよ......。隣が尊すぎて死にたくなるわ。
「お前はそのっ、また聞くけどなんとも思わないのっ?並んで寝るのっ」
何度もどうしたんだ、という目で見ないでほしい。お前はオレをどう思ってるんだ、と直球で聞く勇気はないし、せめてこのベッドについての感想くらいは聞かせてくれ。
「えっ......並んで。その、小さい頃は、兄と雑魚寝してたから......」
戸惑って答えるシルフ。あぁそうか。雑魚寝。邪念に歪んでいたオレが馬鹿だった。オレが意識しすぎているのだ。ロロめあいつ、悪乗りして囃し立てやがって......などと思っていた。
「というか、俺とシアンは寝る時間が違うだろ?」
「え」
「俺は昼間寝るし......お前とは少しくらいしか寝る時間被らないと思う」
なっ......。寝るのが1人ずつなら、オレとお前が並んで寝る事態にはならないじゃないか......!それに気づかなかったことに、かぁぁっと顔が熱くなった。
「じゃ、じゃあ今日からはオレもお前に合わせて日が出たら寝るよっ」
微妙な意地が発動してしまい、雑魚寝宣言をしてしまうオレ。シルフの返事を待たず、ぷいと顔を背けて荷物を開けに向かう。
__意地やけた悪魔は見ていなかったが、取り残された吸血鬼は、一瞬だけとても嬉しそうに微笑んだ。
*
「シアン、これ昨日ポロロッカさんが餞別にくれたんだが」
「んー、何......。!!」
それ、どう見ても恋人用のペアになってるマグカップじゃないか......!荷解きの最中。備え付けの家具が多かったので、すでに小物類を出して並べる段になっている。
「棚に置いていいよな」
「あのちょっと、それ意味わかってる......?」
なにしれっとしてんだ!お前、さては意図を理解していないな?
「ん?セットのマグカップだろ」
んんん~そうだけど!
「いや、柄」
それらはご丁寧にも並べればハート型が完成するような絵になっている。
「?」
「ああああもういいよ、うん、ありがたい!そうだなっ、ココアでも入れるか!」
シルフは1人慌てたり顔を赤くしたりしているオレを見て不思議そうにしている。
「どうしたんだ?まだ荷解き残ってるぞ」
「ああう......」
オレとあいつはなにも恋人として同棲しているんじゃなくて、わざわざ2部屋も借りる理由がないから、シェアハウスの体になってるだけ。そう思おうとしたんだけど、どうにも波乱が起こりそうな初日だった。
0
あなたにおすすめの小説
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
平凡ワンコ系が憧れの幼なじみにめちゃくちゃにされちゃう話(小説版)
優狗レエス
BL
Ultra∞maniacの続きです。短編連作になっています。
本編とちがってキャラクターそれぞれ一人称の小説です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる