それでは今から可愛い悪魔の話をします

モウキンルイ

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本編※R-18

そいつは売れない俳優、名前は知らない

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*悪魔くんの昔のセフレの話、序
*十年くらい前なので、吸血鬼さんとは出会ってない
*ソ●プについて知識がないですが雰囲気で読んでおなしゃす



 そいつは自分を売れない俳優だと言った。名前を聞いたらそう返ってきた。
 これは確か十年かそれ以上前の話だけど。オレは人間とは記憶の仕方が違うのか、単にそいつがオレの好みで印象的だったからか、いつもこの間のことのように覚えていた。

 涼しい風を浴びに、バルコニーに出て下を眺めた。建物が密集しているから、景色なんてものは隣の壁か薄灰色の地面くらいだった。
 なんとなく猫でもいないかと路地を目で辿っていると、オレの視界の先にそいつはいた。猫じゃなくて、人間だった。なんであんな隅っこで、という場所で煙草を吸っていたのだ。くすんだ茶髪の彼は、目が合うと煙草を持った手を上げて、やる気なさそうにひらひらと振った。遠めにもはっきりした顔立ちなのが分かった。ああいった草臥れた場所には似合わない。
 バルコニーって言っても店の個室のであって、オレは仕事が入るまで休憩してるだけだから、そいつには軽く笑顔を返して戻った。
 そしたらすぐに指名が入って、その客というのがそいつだった。

「あ、あんた、ゲイだったのかよ」

「そういう店なんだろ、来ちゃ悪いかよ」

 ま、いーけど。上から見たときは分からなかったけど、こいつ背が高いな。手足が長くて、何というか。

「役者かモデルみたい」

「ん、当たり。俳優だよ」

 まぁクイズやってたつもりはないんだけど。オレそこそこドラマとか見てるけど、顔見ただけじゃ分かんないな。

「名前、は」

「......売れない俳優だ」

 名前は教えてくれなかった。顔見ても誰だか分かんないような三流だ、と自虐しているようだ。別にいいじゃん、顔良いしスタイル良いし声も良いんだから。ゲイだけど。

「俳優って、それじゃ呼び名がないじゃんて」

「こんなところで男とヤってても何のスキャンダルにもならないような奴さ」

 ......最中に呼ぶ名前聞いてるだけなのに。こいつ相当めんどくないか?卑屈過ぎてイラッとくる。引き攣った笑みで、マニュアル音読。

「俳優さん、当店は初めて?オレがリードしましょうか、それとも__」

「__黙って喘いでろ」

 どさっ......とベッドに押し倒される。タバコの匂い。どきっとした。人間の形に見えるように魔法をかけた耳がぴくんと震えた。いやいやそんな、乙女じゃあるまいに。どっちかと言うと、心臓をキュッと握られたような感じだ。てか黙って喘ぐって無茶振りだよな。




「んっ......はぁ、んひゃっ」

 あーーー、やばいな、まじで調子狂う。さっきから相手のペースに押されすぎて、間抜けな声しか出ない。当然黙って喘げない。
 柔らかい股関節を最大限に広げて、相手の身体を受け入れ、脚でしがみ付く。アホみたいにがくがく揺らされる。
 こいつ、仕事のイライラをそのままぶつけてないか?いやうんまあそうなのだろう。そうなのだろうが。
 ......もしかして俳優ってのもAV男優のことなのかな?の割に導入は雑。シャワーも浴びずに始めようとしやがって。顔だけ良くって、早く始めさせろと文句たらたらで。こんなの撮っても売れやしない。あ、だから売れない俳優なのか。

「おい、この店は客の要求にも応えられないのか?静かにしてろ」

 とか言いつつ下半身は滅茶苦茶ノリノリですがね?がつがつ来るな、まじで。セックスマシーンかよ。

「ぁんっ......!」

 こうなったらこっちもこっちで思っくそ喘いでやる。何で静かにして欲しいのか知らないけど、逆らって煽ってやりたくなる。
 それに、こんだけ激しいなら魔力も期待できそう。

「はぁっ......はぁ......俳優、さんっ」

「ああ......?」

 くっきりしたヘーゼルの瞳がオレの目を、余裕なさそうに見つめた。そういう化粧をしている訳でもないのに、濃いアイラインを引いたように目の縁どりがある。

「ああっ......ダメ、格好良すぎて、オレっ」

「う、だから......喘ぐなってまじで。えろいんだよホント」

 びゅるるるっ......。あっ、イった、この人。喘いで欲しくないの、早漏だからでした。煽って正解だった。可愛いなコイツ。
 もっと煽って、時間いっぱい魔力を注ぎ込ませよう。オレは俳優の耳元にキスをした。
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