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『ああいうの見ちまうとゲームのはずなのに辛いわ』
しおりを挟む「ちょい真面目な話だ。俺、さっき辺境街のギルドにいたんだよ。そこに大人数がいきなり転移してきたと思ったら薬師マックと門番さんも来て、何だ何だと見物してたんだけど」
「なんだなんだ?」
「なんか騒ぎか?」
「あ……私もそこにいた。『高橋と愉快な仲間たち』もいたわね。騒ぎの原因はレインがリーダーの『ジャンブル』ってところだったわ。でも」
「え、なんか深刻な話?」
「Σ(゜Д゜)」
「気になる」
「気になる」
「その『ジャンブル』のメンバーで唯一NPCのやつが、壁の向こうで無茶したらしくて、薬師マックに治して貰ったらしいんだわ」
「うわ…………それ、大変なやつじゃね……? 確かNPCが壁の向こうに出ると魔物化するって」
「ああ。でもあわや魔物化か? ってところで薬師マックが聖魔法で治してくれたみたいでな」
「薬師マック……パねえ」
「すげえ」
「なんか、尊敬」
「でもやっぱ魔物化治っただけじゃ根本的なところが全然問題解決してなくてさ」
「問題?」
「どんな問題……もしかして」
「ああ。一人だけ緊急依頼で魔大陸に行けねえからって、それがわだかまってて壁の向こうで無茶したらしいんだ。前に勇者がいた時にきいた話なんだけど、感情が高ぶるとそれに魔素が反応して魔物化しやすいとかなんとか。それで、なんかヤバかったらしいんだ」
「(゜д゜)(。_。)ウンうん」
「うわ……俺だったら泣くレベル」
「考えるよな……」
「うん、でもそのときね、門番さんがね……」
「ああ。『相手が大事なら、話し合え。自分と相手にとって何が一番最上なのかを見極めろ』って。あれはきっと、門番さんも一度は葛藤したんだと思う。何せ、薬師マックは絶対に魔大陸に行きそうだから」
「確かに行きそう」
「ってかもう行ってそう」
「わかる」
「私ね、その門番さんの言葉を聞いて、泣いちゃったわ。あの二人はそういう辛い選択の連続の元に、今も一緒にいるってことでしょ。それを考えちゃうと、切ないわよね」
「ああ……でも、それを乗り越えて婚姻の儀まで受けたんだろ」
「俺らに出来ることは、そっと二人を応援することだけだよな」
「そうだな」
「俺、魔大陸で薬師マックを見かけたら絶対に守るわ」
「俺も。むしろ魔物になんか手出しさせねえ」
「あ、俺も」
「俺、壁になる」
「俺も……魔大陸にまだいけないからそれ以外で」
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