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第五話 その壱(第5.2話) ※大ボリュームの為、第五話を複数分割公開
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織田清州高校に入学して授業が始まった二日目。
冨喜蒼蝶が所属する一年一組のクラスは、入学初日の夜に一年一組の男子生徒の約九割が寮の自室でそれぞれ何らかの悪態をして一定期間の謹慎処分となったおかげで、今日も男子の空席がかなり目立つ。
それだけには留まらず、今朝になって、蒼蝶の知らないところで今度は一年一組の一部の女子数人も、また何らかの悪態をしていたところを教職員や寮監に見つかり、彼女らもまた一定期間の謹慎処分となってしまった。
だだでさえ半分が空席状態なのに更に空席が増えてしまい、インフルエンザが流行っているわけでもないのに、もはや学級崩壊寸前の事態となってしまった。日に日に空席率が増していくので、もしかしたら一週間経たない内に数人しか残っていないんじゃないかと勘繰ってしまう。
しかし、ここは織田信長が校長に君臨し、世間から不良の巣窟と呼ばれた悪評高い織田清州高校だ。品行方正な一般生徒は蒼蝶と、一年二組に在籍し蒼蝶と寮が同部屋の白峰優希の女子二人だけで、それ以外の生徒は男女とも全員が性格も見た目もかなり荒れた不良生徒たちなので、この学校では、それほど珍しい事ではないらしい。蒼蝶と白峰の二人が入学するまでは、この学校の男女生徒全員が不良だったのだから、当然と言えば当然なのだろうが、蒼蝶や白峰にすれば目が点の状態である。
空席率半分以上のなかで迎えた授業開始二日目の一時間目の授業は、佐々成政による数学である。
佐々は隣の一年二組の担任であり、スーツ姿がよく似合う二十代後半の爽やかなイケメン青年で、良い意味で女子生徒から人気は高く、逆に男子生徒からの人気は悪い。持前のスタイルの良さで特に男子生徒から抜群の人気をもつ保健室の養護教員の生駒吉乃とは、生徒人気では対照的な存在だ。
この一年一組でも、蒼蝶を除く女子たちは見た目も性格もかなり荒れた不良だが、佐々が無意識のうちに放つ独特の爽やかさと色気にやられ、思わず終始見惚れてしまうようだ。それを、謹慎処分となった男子たちとは無関係であり、蒼蝶曰く、『このクラスでは数少ない、不良でも割とまともな部類』と評する男子生徒の堀本健次郎と和良品慎二の二人が、気に食わない顔で睨んでいた。
その時、健次郎はハッと何かに気づき、左隣の席にいる蒼蝶をチラッと見た。自分が密かに好意を抱いている蒼蝶が、他の女子たちと同様、佐々の野郎に見惚れてしまっているのではないかと思ったからだ。
その当の蒼蝶本人はと言うと、授業が始まった時から佐々の顔をあまり見ず、その代わり、自分の机の上に置かれた数学の教科書とまだ未使用の数学用の大学ノートを、頬杖をついて俯き加減に終始ずっと眺めていた。健次郎が見る限りでは、蒼蝶は何だか考え事に意識が集中していて佐々まで気が回らない様子なので、健次郎はホッと胸をなでおろした。しかし、今度は蒼蝶が何を考え込んでいるのか気になってしまう。
「蒼蝶ちゃん、どうしたの?」
健次郎は蒼蝶にだけ聞こえるような小声で蒼蝶に呼びかけた。しかし、よほど深い考え事なのか、呼びかけに無反応だ。
「ねえ、どうしたの、蒼蝶ちゃん。ねえ!」
健次郎は何度も小声で呼びかけた。しかし蒼蝶は相変わらず無反応のままで、健次郎の右隣の席にいた慎二が逆に気づいた。
「何をやっているんだ、健次郎?」
慎二の声には気にも留めず、健次郎は蒼蝶に何度も呼びかけ続けた。しかし、無念にも隣の席の蒼蝶に全く届かず、さすがに佐々も気づき、蒼蝶の席の前までやってくると、蒼蝶の机の上に置かれた数学の教科書を手に取って、それを使って蒼蝶の頭を軽く叩いた。そこでようやく蒼蝶がハッと気づいて顔を上げると、そこに爽やかな笑顔を蒼蝶に見せて立っている佐々がいた。
「どうしたんですか、冨喜さん。何か深い考え事をしていたようですが……」
「あっ、い、いえ、何でもないです。すいません……」
「さては、キミも僕の爽やかな笑顔に見惚れてしまったんですか?」
「えっ?」
「分かりますよ、分かります。これまで大勢の女生徒達が、僕のこの笑顔に見惚れてしまっているのですから。それでどうしようか迷って考え込んでいたんですよね? 特待生の女生徒まで見惚れさせてしまうなんて、僕はなんて罪作りな男なんだ!」
自信満々で爽やかそうに自分の髪をかきあげる佐々を見て、何を言っているんだコイツは、と健次郎は怪訝な顔をしながら思った。
愛しの蒼蝶がそんな事で考えているなんてあり得ない。しかし、万が一という事もある。
健次郎は気をハラハラさせながら、蒼蝶の返答を待った。その蒼蝶の返答は……。
「先生、何を仰っているんですか?」
蒼蝶にしては珍しい、少し冷たく突き放す口調と台詞で否定した事に、佐々は髪をかきあげる動作のまま、突然ピシッと音を立てて一瞬で全身石化したかのように固まってしまった。それを見て、健次郎は机の下に右手を隠して密かにガッツポーズをした。
「そ、そ、そ、そうですか。で、でも、深い考え事は休み時間にして、僕の授業はしっかり聞いていて下さいね」
石化した状態から少しだけ再び爽やかそうな笑顔を蒼蝶に見せると、佐々は振り返って教壇へと戻っていったが、その足取りは所々ふらついていた。蒼蝶に言われた一言が、よっぽど痛かったらしい。健次郎や慎二は二ヒヒ…と嬉しそうに微笑していた。
教壇に戻った佐々は心に深い傷を負いながらも、数学の授業を再開させた。
蒼蝶は最初こそ授業を聞いていたが、少しずつまた考え事の方に意識が傾いてしまっていた。そして、チラッと横目で、窓際一番後ろの席から、頬杖をついて窓の外を眺めている金髪頭で強面の体格の良い不良男子生徒の木下を見た。
蒼蝶が授業そっちのけで考えていたこと――。
それは今朝、寮から校舎の教室へ白峰と一緒に向かっていた時、突然現れた木下が蒼蝶の手を掴み、強引に人気のない寮の裏手へと連れて来られた時の事だ。その木下から言われた木下の妹の沙智の事を思い返していたのだ。
『俺の妹の沙智はもう……長くないかもしれないんだ』
木下からのその言葉を聞いた衝撃で、蒼蝶は言葉を失った。
蒼蝶が知る沙智は、昨日が初対面だったが、歳は十歳とまだ幼い女の子ながら、しっかり妹の面倒をみてくれる兄の木下を心から尊敬する優しい子だ。しかし、木下の家である古い木造ボロアパートの一室で一人、ずっとパジャマを着て寝込んでいたことから、蒼蝶は沙智が何か病気でも患っているのではないかと気にしていた。
『長くないかも……って、沙智ちゃんって、そんな重たい病気を持っていたの? 余命残り僅かなの?』
『は? テメェ、何を言っているんだ?』
『えっ!? だって、長くないって、そう言う事じゃないの?』
『そこまで沙智は悪い病気じゃないぞ』
『えっ、でも……』
『まあ、当たらずとも遠からず、か……』
『どういうこと?』
『察しの通り、沙智はああ見えて、生まれつき病気を患っているんだ。でも、そこまで重い病気ではない。専門病院に入院して、しっかり適切な治療をしてやれば将来的に十分完治する見込みのある病気なんだ』
『だったら、今すぐにでも入院させた方が良いんじゃないの?』
『昨日密かに俺を尾行して俺の家に上がりこんだオマエなら知っているだろ、俺の親。親父は沙智が生まれた直後に酒に溺れて死んでいるし、その数ヶ月後にお袋は仕事が忙しいと言って滅多に家に帰って来ないけれど本当は仕事先で男が出来たとかで、とっくの昔に俺らを捨てて蒸発した。そのおかげで俺らは、ほぼ無一文のまま沙智と二人で生活している、と。何とか俺が幾つかバイトを掛け持ちしているからギリギリ生活できているけれど、俺が高校生になったおかげで学費を払う必要も出てきて、沙智の治療費や入院費まで払える余裕は無ぇんだ』
『生活保護とかに頼る事は?』
蒼蝶のその質問に対し、木下は首を振った。
『もちろん、すぐ申請したさ。でもな、お袋にキャバクラで稼いだお金を沢山持っている事が分かって申請却下された。毎月じゃなくて金額も微々たるもんだったけれど、生活費名目で家に送ってきていたんだ。けれど、それももう昔の話で、今じゃすっかり途絶えちまっているけどな』
『だったら、それも含めて改めて申請すれば……』
蒼蝶の助言に、木下は再度首を振った。
『治らない病気じゃないとは言ったが、日々弱っているんだ。今は元気そうに振舞っているけれど、体はもうボロボロだ。いつ死んだっておかしくない状況だ。再申請しても、どうせまた色々難癖つけられて却下されちまうのが目に見えている』
『そうかもしれないけれど、でも……』
『俺はさ、最初は高校に通うつもりはなかったんだ。中学出て、そのまま働こうと思っていた。でもな、沙智のヤツ、絶対高校に言った方が良い、って強く言うんだ。自分は学校に行けないけど、せめて兄である俺に自分の分も含めて一度しかない高校生活を楽しんでほしい、って笑顔を見せて言うんだぜ。テメェは学校も通えず家で一人ずっと寝込んでいるのに、俺が高校に通わなければ、その分をテメェの入院費や治療費に充てられるって言うのによぉッ!』
木下の悲痛なる叫びに、蒼蝶は言葉を失った。
『今でもアイツは、家で一人ずっと寝込んでいるんだ。部屋に一つしかないベッドの上で寝ながら、窓から見える空を静かに見つめている。アイツをどうにか助けたくて、少しでも元気づけたくて、考えた末に思いついたのが、寮の食事をアイツに食べさせてやることくらいだった……』
『それだけじゃないと思うよ。もっと他にも何か良い方法がきっとあるはずだよ。例えば……、ほら! この学校の校長先生に相談するとか! きっと力になってくれるんじゃないかな』
『……俺は沙智に説得されて、高校へ進学する事を決めた。学校は入学さえ出来れば、どこでも良かった。ただ、少しでも学費を抑える為に、俺はバイトの休み時間中も、寝る間も惜しんで、ひたすら勉強続けた。狙うは、ただ一つ。校長が合格者の中から一人を選ぶ、学費が全額免除となる「特待生」。必死に勉強したおかげで筆記試験は難なく出来たし、面接試験も校長らに俺らの現状を踏まえてアピールした。特待生に選ばれる自信は誰よりもあった。だが、俺はこの学校へ入学は出来たが、目標だった特待生には選ばれなかった……。何故だか分かるか?』
そのまま木下はいきなり蒼蝶の制服の胸倉を掴み、大声で叫んだ。
『テメェが特待生に選ばれたからだよ!!』
『!』
『何が、「校長ならきっと力になってくれる」だ! フザけるなッ!! だったら、何故校長は俺を選ばない!? なんで、テメェなんだよッ!?』
蒼蝶自身も、なぜ自分が特待生に選ばれたのか分からない。選んだ理由を校長の織田信長本人に直接聞きたいくらいだ。木下にそう言い返そうと思ったが、木下の強い圧におされて言い返せなかった。思わず泣きそうになった。
それに気づいた木下はハッと我に返り、蒼蝶の胸倉を掴んでいた手を放して距離を取ると、蒼蝶に背を向けて言った。
『テメェの面は見たくない。夕べ「沙智の話し相手になってやってくれ」とテメェに言ったが、忘れてくれ。俺の事も、沙智の事も全部忘れろ。これらの事は誰にも話すんじゃねえぞ。良いな?』
木下は蒼蝶にそう言い残すと、蒼蝶を置いて、その場を立ち去った。蒼蝶は後を追いかけず、その場に残って木下が立ち去るのを見送った。
その出来事があってから、それが頭の中にずっと渦を巻いて残っていた為、蒼蝶は佐々の授業に集中できなかった。
どうにかして良い方法が何かないか、ずっと悩んでもいたが、良い案は浮かばなかった。そして、どうして自分が特待生に選ばれたのか、その疑問も頭から消えなかった。
結局、午前中の授業、蒼蝶は、ほとんど意識がそちらに向けられてしまい、終始ずっと上の空状態だった。何の教科の授業だったのかも、ほぼ記憶になかった。
授業の合間の休み時間、上の空状態が続く蒼蝶が女子トイレから出てきた時、偶然木下とすれ違ったが、木下は蒼蝶をまるで最初から何も関わりがなかったかのように無視し、目が合うことも会話も一切なく、そのまま女子トイレの隣の男子トイレへと入っていった。なんだかとても気まずかった。
昼休み時間になっても、蒼蝶の意識は上の空だった。
昼食を食べに来た多くの生徒達で賑わっていた食堂の片隅で、今日のBランチのメニューであるアジフライと白身魚のフライ定食が目の前にして、ほとんど箸が進んでいない様子の蒼蝶を見て、向かい側の席で同じくBランチを食べていた白峰優希が心配そうな顔で見ていた。
「……蒼蝶? 蒼蝶!」
「えっ!? あっ、ゴメン……。何、優希?」
「今日もどうしたの、蒼蝶。ずっとため息ばかりついて、意識も遠くの方へいっちゃって、箸もまったく進んでいないよ」
「ゴメン……、ちょっと色々あって……」
蒼蝶はそう言って、無意識で、ふと手元の水に入ったプラスチック製の透明コップを口をつけた。
「それで、告られた返事はどうしたの?」
優希のその一言にビックリして、蒼蝶はコップに入った水を口でブッと勢いよく吐き出してしまった。吐き出した水の一部が蒼蝶の制服のスカートの表面に付着したので、蒼蝶は慌ててハンカチなどでスカートに付いた水を拭いた。
「な、何よ、告られた返事って!」
「今朝、例の木下君に腕を掴まれて人気のない場所へ連れて行かれていたじゃん。それって、木下君から愛の告白をされたんでしょ? その返事、どうしたの?」
「ち、違うわよ。返事もなにも、そもそも告られてなんかいないよ!」
「じゃあ、彼は何の用事だったの?」
「そ、それは……」
白峰が抱く誤解を解くには、木下の秘密について話すべきなのだが、それは木下から誰にも話すなと止められているので、蒼蝶は何も言えなかった。
「何も言えないって事は、やっぱり告られたんじゃん」
「ち、違う。それは絶対に違うから!」
「じゃあ隠すことないでしょ。この際だから話しちゃいなよ」
「そ、それはダメだから!」
「いいじゃん。同じ相部屋同士の仲でしょ~」
「そうだけど、でもダメなんだってば~!」
蒼蝶と白峰のやり取りはまだ続いていたが、そのやり取りを少し離れた席で昼食のAランチである豪華海鮮丼(数量限定)を食べながら聞き耳を立てて窺っている男がいた。蒼蝶と同じ一年一組で、蒼蝶の右隣の席の堀本健次郎である。
健次郎は、二人の会話を聞いて、腸が煮えくり返るほどの怒りを滲ませ、その勢いで、健次郎が手にしていた箸を片手で真っ二つに折った。それを健次郎と対面の席にいた和良品慎二が驚いて、その拍子で海鮮丼の米粒が喉に詰まり咽ていた。慎二は怒りを露わにする健次郎と違って蒼蝶と白峰の二人の会話は興味なく、ただ目の前の豪華な海鮮丼を無我夢中で「旨ぇ! マジ旨ぇ!!」と豪快に食べていただけだ。だから、なぜ慎二が怒りに満ちた様子なのか分からず首を傾げていた。
「どったの、健次郎?」
と言いながら、慎二は、まだ食べ途中だった健次郎の海鮮丼に箸を付けようとした。
「あっ、この野郎! ドサクサに紛れて、なに俺の海鮮丼を食べようとしているんだよ。誰が食べて良い、って言ったよ!」
「箸をへし折っちゃったから、もう食べないのかと思ったじゃんか。って言うか、突然怒り出して、どうしたのさ」
「俺の愛すべき女が、横取りされそうになっていやがるんだ」
「ええっ、マジ!?」
「ああ。俺が入手した情報によると、どうやら今朝、人気のない寮の裏手で密かに告られたらしい」
「告られた!? 誰に!?」
「あまり聞き取れなかったけれど、おそらく木下だ」
「木下……。って、同じクラスのあの強面の金髪野郎か!?」
「ああ、そうだ。そいつだ」
「ヤバいじゃん。どうするのさ、健次郎。アイツ、確か昨日、隣クラスの番長だと名乗っていた蜂須賀って野郎と、謹慎喰らっていたうちのクラスの野郎たち十数人を相手に、アイツ一人で勝負して勝った奴だろ」
「俺もアイツに勝負を吹っかける!」
「ええっ!? アイツに勝つ勝算でもあるの?」
「オマエも一緒だ」
「えっ、俺が勝算なの!? って言うか、俺も巻き添えなの!?」
「俺とオマエが二人で掛かれば勝てる。それに、愛しの女が奪われそうになっているんだ。その女を我が物にするのは、どこの誰でもなく、この俺。その想いが力となって絶対勝てる!」
「せっかく今食べたこのメチャ旨い海鮮丼が全部吐き出してしまいそうな未来しか見えないんだけど……」
その頃、当の木下本人は、Aランチを今日もほぼ一口も付けず、そのまま食堂カウンターの係員に渡して、いつも通りタッパに詰めてもらうよう当番の調理師に頼むと、そのまま食堂を後にした。それを見た健次郎が「行くぞ」と言って立ち上がった。慎二は「え~、マジで行くの?」と嫌そうな顔をしていた。
「あっ、ちょっと待って、健次郎」
「どうした、慎二」
「健次郎の海鮮丼、残っているなら俺貰うよ」
「………」
健次郎は食堂カウンターに代わりの箸を受け取って席へ戻ると、健次郎の海鮮丼に手を付けようとしていた慎二の顔を殴り、残っていた海鮮丼を全て食すと、殴られた頬をコップに入っていた氷を充てて冷やしていた慎二を強引に引っ張って食堂から連れだした。
その間、蒼蝶と白峰はまだ食事途中で、木下が今日も昼食を一口も食べずに食堂カウンターに返却して食堂を出て行った事は自分の席から見えていたので知っていたが、健次郎と慎二がやろうとしている事には全く無関心だった。
食堂を出た健次郎と健次郎に強制連行されている慎二の二人は、寮の中に一人でいた木下を見つけると、人気のない寮の裏手へと木下を誘いだした。そこで健次郎と渋々顔の慎二が木下にケンカを吹っかけ、木下も売られたケンカを勝った。その結果、木下一人の瞬殺勝ちだった。健次郎と慎二は地面に倒れ落ち、木下はほとんど無傷でその場を立ち去った。慎二の予想通り、二人は木下に腹を強く殴られた衝撃で気持ち悪くなり、食べたばかりの海鮮丼が吹き出しそうになっていた。
その後、二人とも保健室に強制送還にされ、保健医の生駒吉乃の手当を受けていたが、二人とも服の上からでも分かる生駒の巨乳を見て興奮し、瞬時に気づいた生駒にトドメの鉄拳を食らい、その日の放課後まで気を失っていたのは言うまでもない。
その日の放課後、木下はいつものようにタッパに詰めてもらった昼食を受け取りに寮内の食堂へとやって来た。食堂カウンターでは昼食時に頼んだ時に応対した調理師が今回も応対した。
入学してから、ほぼ毎日のように同じ事をしている為、もうすっかり顔を覚えられてしまい、木下が顔を出すと用件もまだ言わないのに「ああ、もう出来ているよ」と調理師に言われてしまった。
いつもなら昼食のオカズが詰まったタッパと、ご飯が詰まったタッパの二つが保温されて、その二つのタッパが入るくらいの大きさのビニール袋に割り箸も付けて、まとめられて渡される。今日のAランチは海鮮丼だったので、いつもとは違い、使い捨ての丼に酢飯と様々な海鮮の刺身が載った状態で受け取るはずだった。だがそれとは別に、なぜかAランチには含まれていない、アジフライと白身魚のフライが一匹ずつ、その下に付け合せと思われる千切りキャベツが入ったタッパが一つ追加されていた。フライもキャベツもそれはBランチのメニューで、Aランチだった木下はこれを頼んだ覚えはない。
「俺、Aランチだったんだけど……」
と、木下は応対した調理師に尋ねた。
「ああ、それね。実は、昼間キミに頼まれた後すぐにBランチを持った女の子がやって来て、『これも一緒に詰めて今来た彼に渡してほしい』って、Bランチのオカズを差し出されてしまってね。コチラとしても対応に困ったが、その女の子が強くお願いしてきたもんだから、仕方なく承諾したんだ」
つまり、木下が頼んだすぐ後に女子生徒がやって来て、自分が食べるはずだった昼食を木下にあげた、という事だ。そんな事をする女子生徒は、木下が知る限りでは一人しかいない。
「自分の分をキミにあげるなんて、その女の子、もしかしてキミの彼女かい?」
と、その調理師がニヤニヤした顔をしながら、木下に聞いた。
「違う。そんなんじゃない。ただの超お節介女だ」
木下は海鮮丼とフライが入ったタッパを入れたビニール袋を受け取ると食堂を後にすると、そのまま一目散に一年一組の教室へと向かった。
一年一組の教室に着くと、そこには一人で黙々と清掃している冨喜蒼蝶がいた。蒼蝶の他には誰もおらず、ひっそりと静まり返っていた。
木下は蒼蝶がいるのを視認すると、すぐ蒼蝶に駆け寄った。蒼蝶も木下に気づき、木下を見た。
「……テメェ、いったいどういうつもりだ?」
「えっ、何のこと?」
「しらばっくれるんじゃねえ。コレの事だ!」
木下は手に持っていたビニール袋から、フライが入ったタッパを取り出して、近くの机の上に置いた。
「コレやったの、テメェだろ」
蒼蝶はドキッとした。
「こんな事をするのは、俺が知る限りじゃあテメェ一人しかいねぇ。テメェなんだろ?」
「……そうだよ、私だよ」
蒼蝶が認めた瞬間、木下は蒼蝶の制服の胸倉を掴んだ。
「どういうつもりだ、テメェ! どうして、こんな事を!」
「……見捨てるなんてこと、私には出来ないよ」
「は?」
蒼蝶は、木下に摑まれた胸倉を自分の手で振りほどいた。
「俺らが可哀想で不憫だから見ていられないってか? そんな同情やお情けはいらねぇんだよ! テメェは、俺達を見下して面白がっているんだろ。そうなんだろ!?」
「違うよ。面白がってもいないし、見下してもいないよ。そんなつもり全然ない」
「だったら、何故だ!」
「……私も同じだよ。キミと」
「は? 同じ?」
「私も家族いないんだ。生まれた時から既にね」
「え?」
「私の両親は、母は私が生まれて少し経った後に病気で死んじゃって、父は私が生まれる前から既に蒸発してた。今は他の家に養女として引き取られたけれど、私の本当の家族は誰もいない。義理の両親には頼れないし、お金は自分で何とかやりくりしてコツコツと貯めてはいるけれど、ずっと貧乏で一人ぼっちだった。そんな時、キミとキミの妹の沙智ちゃんの事を知った。私と同じような環境なんだな、って思った。でも違う。キミは一人じゃない。だって、キミには大切な妹がいるから。そんな妹を絶対失くしてほしくはない。私のように本当の一人になってほしくはない! 見捨てられない! 今の私にはコレくらいの事しか出来ないけれど、沙智ちゃんには元気になってもらいたくて……。だから、それ、沙智ちゃんに食べさせてあげてほしいな」
と、蒼蝶は最後に小さな笑みを見せて言った。同時に、蒼蝶のお腹が空腹を知らせる音が教室中に響き渡った。
「オマエ……」
「あ、あれ、可笑しいな。何か鳴ったかな。……あっ、全然気にしないでね。夕食の時間もあと少しだから、大丈夫だから!」
蒼蝶は恥ずかしそうに顔を赤らめながら、必死に言い訳した。
「――冨喜。悪いが、コレは受け取れねぇよ」
「だ、大丈夫だって。私、お腹、全然空いていないから! 定食の味噌汁とご飯と漬物は食べたし。だから、ね?」
「そうじゃねぇ……。コレを沙智に渡すのは俺じゃねぇ。テメェだ、冨喜。それに、沙智の話し相手になってくれるんだろ?」
それを聞いて、蒼蝶の顔が少しずつ明るくなっていった。
「ほら。俺の気が変わらんうちに、さっさと掃除終わらせやがれ。夕食前には帰って来たいだろ」
「――うん!」
蒼蝶はすっかり笑顔になって、すぐに掃除を再開した。木下もフッと微笑した。
「……って言うか、木下君も見ていないで掃除手伝ってよね。キミ、仮にも私と同じ学級委員なんだから」
「だ・か・ら、俺は学級委員になった覚えは無い、っつーの!!」
「そうは言っても、昨日は男子寮の点呼ちゃんとやってくれたみたいじゃん」
「それは、沙智に『やって来い!』って家から追い出されたから仕方なくだ。それに、これ以上、面倒くさい事は増やしたくないしな」
「じゃあ私が沙智ちゃんに『木下君が放課後の掃除をいつもサボっている』と言えば、沙智ちゃんが喝を出してくれるのかな?」
「……前言撤回。やっぱオマエ、俺ん家に来るな」
「ええ~、何でよ~!!」
「これ以上、面倒事は増やすな、と言っただろ!!」
「あっ、それから私が今言った秘密、皆には内緒だからね」
「知らん。オマエの腹の虫が大きかった事はバラすわ」
「ちょ……、それも内緒にして~!」
蒼蝶と木下は談笑していたが、その様子を三人の人間が教室の外の廊下からこっそり伺っていたのを二人は気づいていなかった。
結局、木下は掃除を手伝ってくれないまま、蒼蝶はようやく一人で掃除を終わらせた。そして、そのまま沙智がいる木下の家に向かおうと教室を出ようとした時、突然、蒼蝶のスマートフォンに着信が入った。見ると、沙智からの電話だった。沙智には、緊急連絡用に、低額料金の携帯電話を持たせているらしい。
「もしもし蒼蝶だけど、沙智ちゃん、どうしたの?」
「――助けて!」
「えっ!?」
蒼蝶がすぐに聞き返そうとしたが、その途端、電話が切れてしまった。すぐに蒼蝶から電話をかけ直したが応答がない。聞き耳を立てていた木下は只事ではないと分かると、すぐに教室を出て行った。蒼蝶も急いで後を追った。廊下で隠れて様子を伺っていた三人の人物――白峰優希、そして保健室から帰ってきたばかりの堀本健次郎と和良品慎二は、蒼蝶と木下が慌てた様子で教室を出て行こうとしたので、こちらも慌てて咄嗟に近くの物陰などに身を隠し、二人をやり過ごした。只事ではない様子に、三人は驚きつつ互いの顔を見合わせた。
【 第五話その弐)に続く 】
(※作者より皆様へ:第5話の内容があまりに大ボリュームになった為、第5話を計3回(予定)に分割して順次公開します。第5.2話(第五話その壱 ※今回)、第5.5話(第五話その弐 ※次話)、第5.8話(第五話その参 ※予定)の順になります。ご面倒をお掛け致しますが、ご了承ください。)
冨喜蒼蝶が所属する一年一組のクラスは、入学初日の夜に一年一組の男子生徒の約九割が寮の自室でそれぞれ何らかの悪態をして一定期間の謹慎処分となったおかげで、今日も男子の空席がかなり目立つ。
それだけには留まらず、今朝になって、蒼蝶の知らないところで今度は一年一組の一部の女子数人も、また何らかの悪態をしていたところを教職員や寮監に見つかり、彼女らもまた一定期間の謹慎処分となってしまった。
だだでさえ半分が空席状態なのに更に空席が増えてしまい、インフルエンザが流行っているわけでもないのに、もはや学級崩壊寸前の事態となってしまった。日に日に空席率が増していくので、もしかしたら一週間経たない内に数人しか残っていないんじゃないかと勘繰ってしまう。
しかし、ここは織田信長が校長に君臨し、世間から不良の巣窟と呼ばれた悪評高い織田清州高校だ。品行方正な一般生徒は蒼蝶と、一年二組に在籍し蒼蝶と寮が同部屋の白峰優希の女子二人だけで、それ以外の生徒は男女とも全員が性格も見た目もかなり荒れた不良生徒たちなので、この学校では、それほど珍しい事ではないらしい。蒼蝶と白峰の二人が入学するまでは、この学校の男女生徒全員が不良だったのだから、当然と言えば当然なのだろうが、蒼蝶や白峰にすれば目が点の状態である。
空席率半分以上のなかで迎えた授業開始二日目の一時間目の授業は、佐々成政による数学である。
佐々は隣の一年二組の担任であり、スーツ姿がよく似合う二十代後半の爽やかなイケメン青年で、良い意味で女子生徒から人気は高く、逆に男子生徒からの人気は悪い。持前のスタイルの良さで特に男子生徒から抜群の人気をもつ保健室の養護教員の生駒吉乃とは、生徒人気では対照的な存在だ。
この一年一組でも、蒼蝶を除く女子たちは見た目も性格もかなり荒れた不良だが、佐々が無意識のうちに放つ独特の爽やかさと色気にやられ、思わず終始見惚れてしまうようだ。それを、謹慎処分となった男子たちとは無関係であり、蒼蝶曰く、『このクラスでは数少ない、不良でも割とまともな部類』と評する男子生徒の堀本健次郎と和良品慎二の二人が、気に食わない顔で睨んでいた。
その時、健次郎はハッと何かに気づき、左隣の席にいる蒼蝶をチラッと見た。自分が密かに好意を抱いている蒼蝶が、他の女子たちと同様、佐々の野郎に見惚れてしまっているのではないかと思ったからだ。
その当の蒼蝶本人はと言うと、授業が始まった時から佐々の顔をあまり見ず、その代わり、自分の机の上に置かれた数学の教科書とまだ未使用の数学用の大学ノートを、頬杖をついて俯き加減に終始ずっと眺めていた。健次郎が見る限りでは、蒼蝶は何だか考え事に意識が集中していて佐々まで気が回らない様子なので、健次郎はホッと胸をなでおろした。しかし、今度は蒼蝶が何を考え込んでいるのか気になってしまう。
「蒼蝶ちゃん、どうしたの?」
健次郎は蒼蝶にだけ聞こえるような小声で蒼蝶に呼びかけた。しかし、よほど深い考え事なのか、呼びかけに無反応だ。
「ねえ、どうしたの、蒼蝶ちゃん。ねえ!」
健次郎は何度も小声で呼びかけた。しかし蒼蝶は相変わらず無反応のままで、健次郎の右隣の席にいた慎二が逆に気づいた。
「何をやっているんだ、健次郎?」
慎二の声には気にも留めず、健次郎は蒼蝶に何度も呼びかけ続けた。しかし、無念にも隣の席の蒼蝶に全く届かず、さすがに佐々も気づき、蒼蝶の席の前までやってくると、蒼蝶の机の上に置かれた数学の教科書を手に取って、それを使って蒼蝶の頭を軽く叩いた。そこでようやく蒼蝶がハッと気づいて顔を上げると、そこに爽やかな笑顔を蒼蝶に見せて立っている佐々がいた。
「どうしたんですか、冨喜さん。何か深い考え事をしていたようですが……」
「あっ、い、いえ、何でもないです。すいません……」
「さては、キミも僕の爽やかな笑顔に見惚れてしまったんですか?」
「えっ?」
「分かりますよ、分かります。これまで大勢の女生徒達が、僕のこの笑顔に見惚れてしまっているのですから。それでどうしようか迷って考え込んでいたんですよね? 特待生の女生徒まで見惚れさせてしまうなんて、僕はなんて罪作りな男なんだ!」
自信満々で爽やかそうに自分の髪をかきあげる佐々を見て、何を言っているんだコイツは、と健次郎は怪訝な顔をしながら思った。
愛しの蒼蝶がそんな事で考えているなんてあり得ない。しかし、万が一という事もある。
健次郎は気をハラハラさせながら、蒼蝶の返答を待った。その蒼蝶の返答は……。
「先生、何を仰っているんですか?」
蒼蝶にしては珍しい、少し冷たく突き放す口調と台詞で否定した事に、佐々は髪をかきあげる動作のまま、突然ピシッと音を立てて一瞬で全身石化したかのように固まってしまった。それを見て、健次郎は机の下に右手を隠して密かにガッツポーズをした。
「そ、そ、そ、そうですか。で、でも、深い考え事は休み時間にして、僕の授業はしっかり聞いていて下さいね」
石化した状態から少しだけ再び爽やかそうな笑顔を蒼蝶に見せると、佐々は振り返って教壇へと戻っていったが、その足取りは所々ふらついていた。蒼蝶に言われた一言が、よっぽど痛かったらしい。健次郎や慎二は二ヒヒ…と嬉しそうに微笑していた。
教壇に戻った佐々は心に深い傷を負いながらも、数学の授業を再開させた。
蒼蝶は最初こそ授業を聞いていたが、少しずつまた考え事の方に意識が傾いてしまっていた。そして、チラッと横目で、窓際一番後ろの席から、頬杖をついて窓の外を眺めている金髪頭で強面の体格の良い不良男子生徒の木下を見た。
蒼蝶が授業そっちのけで考えていたこと――。
それは今朝、寮から校舎の教室へ白峰と一緒に向かっていた時、突然現れた木下が蒼蝶の手を掴み、強引に人気のない寮の裏手へと連れて来られた時の事だ。その木下から言われた木下の妹の沙智の事を思い返していたのだ。
『俺の妹の沙智はもう……長くないかもしれないんだ』
木下からのその言葉を聞いた衝撃で、蒼蝶は言葉を失った。
蒼蝶が知る沙智は、昨日が初対面だったが、歳は十歳とまだ幼い女の子ながら、しっかり妹の面倒をみてくれる兄の木下を心から尊敬する優しい子だ。しかし、木下の家である古い木造ボロアパートの一室で一人、ずっとパジャマを着て寝込んでいたことから、蒼蝶は沙智が何か病気でも患っているのではないかと気にしていた。
『長くないかも……って、沙智ちゃんって、そんな重たい病気を持っていたの? 余命残り僅かなの?』
『は? テメェ、何を言っているんだ?』
『えっ!? だって、長くないって、そう言う事じゃないの?』
『そこまで沙智は悪い病気じゃないぞ』
『えっ、でも……』
『まあ、当たらずとも遠からず、か……』
『どういうこと?』
『察しの通り、沙智はああ見えて、生まれつき病気を患っているんだ。でも、そこまで重い病気ではない。専門病院に入院して、しっかり適切な治療をしてやれば将来的に十分完治する見込みのある病気なんだ』
『だったら、今すぐにでも入院させた方が良いんじゃないの?』
『昨日密かに俺を尾行して俺の家に上がりこんだオマエなら知っているだろ、俺の親。親父は沙智が生まれた直後に酒に溺れて死んでいるし、その数ヶ月後にお袋は仕事が忙しいと言って滅多に家に帰って来ないけれど本当は仕事先で男が出来たとかで、とっくの昔に俺らを捨てて蒸発した。そのおかげで俺らは、ほぼ無一文のまま沙智と二人で生活している、と。何とか俺が幾つかバイトを掛け持ちしているからギリギリ生活できているけれど、俺が高校生になったおかげで学費を払う必要も出てきて、沙智の治療費や入院費まで払える余裕は無ぇんだ』
『生活保護とかに頼る事は?』
蒼蝶のその質問に対し、木下は首を振った。
『もちろん、すぐ申請したさ。でもな、お袋にキャバクラで稼いだお金を沢山持っている事が分かって申請却下された。毎月じゃなくて金額も微々たるもんだったけれど、生活費名目で家に送ってきていたんだ。けれど、それももう昔の話で、今じゃすっかり途絶えちまっているけどな』
『だったら、それも含めて改めて申請すれば……』
蒼蝶の助言に、木下は再度首を振った。
『治らない病気じゃないとは言ったが、日々弱っているんだ。今は元気そうに振舞っているけれど、体はもうボロボロだ。いつ死んだっておかしくない状況だ。再申請しても、どうせまた色々難癖つけられて却下されちまうのが目に見えている』
『そうかもしれないけれど、でも……』
『俺はさ、最初は高校に通うつもりはなかったんだ。中学出て、そのまま働こうと思っていた。でもな、沙智のヤツ、絶対高校に言った方が良い、って強く言うんだ。自分は学校に行けないけど、せめて兄である俺に自分の分も含めて一度しかない高校生活を楽しんでほしい、って笑顔を見せて言うんだぜ。テメェは学校も通えず家で一人ずっと寝込んでいるのに、俺が高校に通わなければ、その分をテメェの入院費や治療費に充てられるって言うのによぉッ!』
木下の悲痛なる叫びに、蒼蝶は言葉を失った。
『今でもアイツは、家で一人ずっと寝込んでいるんだ。部屋に一つしかないベッドの上で寝ながら、窓から見える空を静かに見つめている。アイツをどうにか助けたくて、少しでも元気づけたくて、考えた末に思いついたのが、寮の食事をアイツに食べさせてやることくらいだった……』
『それだけじゃないと思うよ。もっと他にも何か良い方法がきっとあるはずだよ。例えば……、ほら! この学校の校長先生に相談するとか! きっと力になってくれるんじゃないかな』
『……俺は沙智に説得されて、高校へ進学する事を決めた。学校は入学さえ出来れば、どこでも良かった。ただ、少しでも学費を抑える為に、俺はバイトの休み時間中も、寝る間も惜しんで、ひたすら勉強続けた。狙うは、ただ一つ。校長が合格者の中から一人を選ぶ、学費が全額免除となる「特待生」。必死に勉強したおかげで筆記試験は難なく出来たし、面接試験も校長らに俺らの現状を踏まえてアピールした。特待生に選ばれる自信は誰よりもあった。だが、俺はこの学校へ入学は出来たが、目標だった特待生には選ばれなかった……。何故だか分かるか?』
そのまま木下はいきなり蒼蝶の制服の胸倉を掴み、大声で叫んだ。
『テメェが特待生に選ばれたからだよ!!』
『!』
『何が、「校長ならきっと力になってくれる」だ! フザけるなッ!! だったら、何故校長は俺を選ばない!? なんで、テメェなんだよッ!?』
蒼蝶自身も、なぜ自分が特待生に選ばれたのか分からない。選んだ理由を校長の織田信長本人に直接聞きたいくらいだ。木下にそう言い返そうと思ったが、木下の強い圧におされて言い返せなかった。思わず泣きそうになった。
それに気づいた木下はハッと我に返り、蒼蝶の胸倉を掴んでいた手を放して距離を取ると、蒼蝶に背を向けて言った。
『テメェの面は見たくない。夕べ「沙智の話し相手になってやってくれ」とテメェに言ったが、忘れてくれ。俺の事も、沙智の事も全部忘れろ。これらの事は誰にも話すんじゃねえぞ。良いな?』
木下は蒼蝶にそう言い残すと、蒼蝶を置いて、その場を立ち去った。蒼蝶は後を追いかけず、その場に残って木下が立ち去るのを見送った。
その出来事があってから、それが頭の中にずっと渦を巻いて残っていた為、蒼蝶は佐々の授業に集中できなかった。
どうにかして良い方法が何かないか、ずっと悩んでもいたが、良い案は浮かばなかった。そして、どうして自分が特待生に選ばれたのか、その疑問も頭から消えなかった。
結局、午前中の授業、蒼蝶は、ほとんど意識がそちらに向けられてしまい、終始ずっと上の空状態だった。何の教科の授業だったのかも、ほぼ記憶になかった。
授業の合間の休み時間、上の空状態が続く蒼蝶が女子トイレから出てきた時、偶然木下とすれ違ったが、木下は蒼蝶をまるで最初から何も関わりがなかったかのように無視し、目が合うことも会話も一切なく、そのまま女子トイレの隣の男子トイレへと入っていった。なんだかとても気まずかった。
昼休み時間になっても、蒼蝶の意識は上の空だった。
昼食を食べに来た多くの生徒達で賑わっていた食堂の片隅で、今日のBランチのメニューであるアジフライと白身魚のフライ定食が目の前にして、ほとんど箸が進んでいない様子の蒼蝶を見て、向かい側の席で同じくBランチを食べていた白峰優希が心配そうな顔で見ていた。
「……蒼蝶? 蒼蝶!」
「えっ!? あっ、ゴメン……。何、優希?」
「今日もどうしたの、蒼蝶。ずっとため息ばかりついて、意識も遠くの方へいっちゃって、箸もまったく進んでいないよ」
「ゴメン……、ちょっと色々あって……」
蒼蝶はそう言って、無意識で、ふと手元の水に入ったプラスチック製の透明コップを口をつけた。
「それで、告られた返事はどうしたの?」
優希のその一言にビックリして、蒼蝶はコップに入った水を口でブッと勢いよく吐き出してしまった。吐き出した水の一部が蒼蝶の制服のスカートの表面に付着したので、蒼蝶は慌ててハンカチなどでスカートに付いた水を拭いた。
「な、何よ、告られた返事って!」
「今朝、例の木下君に腕を掴まれて人気のない場所へ連れて行かれていたじゃん。それって、木下君から愛の告白をされたんでしょ? その返事、どうしたの?」
「ち、違うわよ。返事もなにも、そもそも告られてなんかいないよ!」
「じゃあ、彼は何の用事だったの?」
「そ、それは……」
白峰が抱く誤解を解くには、木下の秘密について話すべきなのだが、それは木下から誰にも話すなと止められているので、蒼蝶は何も言えなかった。
「何も言えないって事は、やっぱり告られたんじゃん」
「ち、違う。それは絶対に違うから!」
「じゃあ隠すことないでしょ。この際だから話しちゃいなよ」
「そ、それはダメだから!」
「いいじゃん。同じ相部屋同士の仲でしょ~」
「そうだけど、でもダメなんだってば~!」
蒼蝶と白峰のやり取りはまだ続いていたが、そのやり取りを少し離れた席で昼食のAランチである豪華海鮮丼(数量限定)を食べながら聞き耳を立てて窺っている男がいた。蒼蝶と同じ一年一組で、蒼蝶の右隣の席の堀本健次郎である。
健次郎は、二人の会話を聞いて、腸が煮えくり返るほどの怒りを滲ませ、その勢いで、健次郎が手にしていた箸を片手で真っ二つに折った。それを健次郎と対面の席にいた和良品慎二が驚いて、その拍子で海鮮丼の米粒が喉に詰まり咽ていた。慎二は怒りを露わにする健次郎と違って蒼蝶と白峰の二人の会話は興味なく、ただ目の前の豪華な海鮮丼を無我夢中で「旨ぇ! マジ旨ぇ!!」と豪快に食べていただけだ。だから、なぜ慎二が怒りに満ちた様子なのか分からず首を傾げていた。
「どったの、健次郎?」
と言いながら、慎二は、まだ食べ途中だった健次郎の海鮮丼に箸を付けようとした。
「あっ、この野郎! ドサクサに紛れて、なに俺の海鮮丼を食べようとしているんだよ。誰が食べて良い、って言ったよ!」
「箸をへし折っちゃったから、もう食べないのかと思ったじゃんか。って言うか、突然怒り出して、どうしたのさ」
「俺の愛すべき女が、横取りされそうになっていやがるんだ」
「ええっ、マジ!?」
「ああ。俺が入手した情報によると、どうやら今朝、人気のない寮の裏手で密かに告られたらしい」
「告られた!? 誰に!?」
「あまり聞き取れなかったけれど、おそらく木下だ」
「木下……。って、同じクラスのあの強面の金髪野郎か!?」
「ああ、そうだ。そいつだ」
「ヤバいじゃん。どうするのさ、健次郎。アイツ、確か昨日、隣クラスの番長だと名乗っていた蜂須賀って野郎と、謹慎喰らっていたうちのクラスの野郎たち十数人を相手に、アイツ一人で勝負して勝った奴だろ」
「俺もアイツに勝負を吹っかける!」
「ええっ!? アイツに勝つ勝算でもあるの?」
「オマエも一緒だ」
「えっ、俺が勝算なの!? って言うか、俺も巻き添えなの!?」
「俺とオマエが二人で掛かれば勝てる。それに、愛しの女が奪われそうになっているんだ。その女を我が物にするのは、どこの誰でもなく、この俺。その想いが力となって絶対勝てる!」
「せっかく今食べたこのメチャ旨い海鮮丼が全部吐き出してしまいそうな未来しか見えないんだけど……」
その頃、当の木下本人は、Aランチを今日もほぼ一口も付けず、そのまま食堂カウンターの係員に渡して、いつも通りタッパに詰めてもらうよう当番の調理師に頼むと、そのまま食堂を後にした。それを見た健次郎が「行くぞ」と言って立ち上がった。慎二は「え~、マジで行くの?」と嫌そうな顔をしていた。
「あっ、ちょっと待って、健次郎」
「どうした、慎二」
「健次郎の海鮮丼、残っているなら俺貰うよ」
「………」
健次郎は食堂カウンターに代わりの箸を受け取って席へ戻ると、健次郎の海鮮丼に手を付けようとしていた慎二の顔を殴り、残っていた海鮮丼を全て食すと、殴られた頬をコップに入っていた氷を充てて冷やしていた慎二を強引に引っ張って食堂から連れだした。
その間、蒼蝶と白峰はまだ食事途中で、木下が今日も昼食を一口も食べずに食堂カウンターに返却して食堂を出て行った事は自分の席から見えていたので知っていたが、健次郎と慎二がやろうとしている事には全く無関心だった。
食堂を出た健次郎と健次郎に強制連行されている慎二の二人は、寮の中に一人でいた木下を見つけると、人気のない寮の裏手へと木下を誘いだした。そこで健次郎と渋々顔の慎二が木下にケンカを吹っかけ、木下も売られたケンカを勝った。その結果、木下一人の瞬殺勝ちだった。健次郎と慎二は地面に倒れ落ち、木下はほとんど無傷でその場を立ち去った。慎二の予想通り、二人は木下に腹を強く殴られた衝撃で気持ち悪くなり、食べたばかりの海鮮丼が吹き出しそうになっていた。
その後、二人とも保健室に強制送還にされ、保健医の生駒吉乃の手当を受けていたが、二人とも服の上からでも分かる生駒の巨乳を見て興奮し、瞬時に気づいた生駒にトドメの鉄拳を食らい、その日の放課後まで気を失っていたのは言うまでもない。
その日の放課後、木下はいつものようにタッパに詰めてもらった昼食を受け取りに寮内の食堂へとやって来た。食堂カウンターでは昼食時に頼んだ時に応対した調理師が今回も応対した。
入学してから、ほぼ毎日のように同じ事をしている為、もうすっかり顔を覚えられてしまい、木下が顔を出すと用件もまだ言わないのに「ああ、もう出来ているよ」と調理師に言われてしまった。
いつもなら昼食のオカズが詰まったタッパと、ご飯が詰まったタッパの二つが保温されて、その二つのタッパが入るくらいの大きさのビニール袋に割り箸も付けて、まとめられて渡される。今日のAランチは海鮮丼だったので、いつもとは違い、使い捨ての丼に酢飯と様々な海鮮の刺身が載った状態で受け取るはずだった。だがそれとは別に、なぜかAランチには含まれていない、アジフライと白身魚のフライが一匹ずつ、その下に付け合せと思われる千切りキャベツが入ったタッパが一つ追加されていた。フライもキャベツもそれはBランチのメニューで、Aランチだった木下はこれを頼んだ覚えはない。
「俺、Aランチだったんだけど……」
と、木下は応対した調理師に尋ねた。
「ああ、それね。実は、昼間キミに頼まれた後すぐにBランチを持った女の子がやって来て、『これも一緒に詰めて今来た彼に渡してほしい』って、Bランチのオカズを差し出されてしまってね。コチラとしても対応に困ったが、その女の子が強くお願いしてきたもんだから、仕方なく承諾したんだ」
つまり、木下が頼んだすぐ後に女子生徒がやって来て、自分が食べるはずだった昼食を木下にあげた、という事だ。そんな事をする女子生徒は、木下が知る限りでは一人しかいない。
「自分の分をキミにあげるなんて、その女の子、もしかしてキミの彼女かい?」
と、その調理師がニヤニヤした顔をしながら、木下に聞いた。
「違う。そんなんじゃない。ただの超お節介女だ」
木下は海鮮丼とフライが入ったタッパを入れたビニール袋を受け取ると食堂を後にすると、そのまま一目散に一年一組の教室へと向かった。
一年一組の教室に着くと、そこには一人で黙々と清掃している冨喜蒼蝶がいた。蒼蝶の他には誰もおらず、ひっそりと静まり返っていた。
木下は蒼蝶がいるのを視認すると、すぐ蒼蝶に駆け寄った。蒼蝶も木下に気づき、木下を見た。
「……テメェ、いったいどういうつもりだ?」
「えっ、何のこと?」
「しらばっくれるんじゃねえ。コレの事だ!」
木下は手に持っていたビニール袋から、フライが入ったタッパを取り出して、近くの机の上に置いた。
「コレやったの、テメェだろ」
蒼蝶はドキッとした。
「こんな事をするのは、俺が知る限りじゃあテメェ一人しかいねぇ。テメェなんだろ?」
「……そうだよ、私だよ」
蒼蝶が認めた瞬間、木下は蒼蝶の制服の胸倉を掴んだ。
「どういうつもりだ、テメェ! どうして、こんな事を!」
「……見捨てるなんてこと、私には出来ないよ」
「は?」
蒼蝶は、木下に摑まれた胸倉を自分の手で振りほどいた。
「俺らが可哀想で不憫だから見ていられないってか? そんな同情やお情けはいらねぇんだよ! テメェは、俺達を見下して面白がっているんだろ。そうなんだろ!?」
「違うよ。面白がってもいないし、見下してもいないよ。そんなつもり全然ない」
「だったら、何故だ!」
「……私も同じだよ。キミと」
「は? 同じ?」
「私も家族いないんだ。生まれた時から既にね」
「え?」
「私の両親は、母は私が生まれて少し経った後に病気で死んじゃって、父は私が生まれる前から既に蒸発してた。今は他の家に養女として引き取られたけれど、私の本当の家族は誰もいない。義理の両親には頼れないし、お金は自分で何とかやりくりしてコツコツと貯めてはいるけれど、ずっと貧乏で一人ぼっちだった。そんな時、キミとキミの妹の沙智ちゃんの事を知った。私と同じような環境なんだな、って思った。でも違う。キミは一人じゃない。だって、キミには大切な妹がいるから。そんな妹を絶対失くしてほしくはない。私のように本当の一人になってほしくはない! 見捨てられない! 今の私にはコレくらいの事しか出来ないけれど、沙智ちゃんには元気になってもらいたくて……。だから、それ、沙智ちゃんに食べさせてあげてほしいな」
と、蒼蝶は最後に小さな笑みを見せて言った。同時に、蒼蝶のお腹が空腹を知らせる音が教室中に響き渡った。
「オマエ……」
「あ、あれ、可笑しいな。何か鳴ったかな。……あっ、全然気にしないでね。夕食の時間もあと少しだから、大丈夫だから!」
蒼蝶は恥ずかしそうに顔を赤らめながら、必死に言い訳した。
「――冨喜。悪いが、コレは受け取れねぇよ」
「だ、大丈夫だって。私、お腹、全然空いていないから! 定食の味噌汁とご飯と漬物は食べたし。だから、ね?」
「そうじゃねぇ……。コレを沙智に渡すのは俺じゃねぇ。テメェだ、冨喜。それに、沙智の話し相手になってくれるんだろ?」
それを聞いて、蒼蝶の顔が少しずつ明るくなっていった。
「ほら。俺の気が変わらんうちに、さっさと掃除終わらせやがれ。夕食前には帰って来たいだろ」
「――うん!」
蒼蝶はすっかり笑顔になって、すぐに掃除を再開した。木下もフッと微笑した。
「……って言うか、木下君も見ていないで掃除手伝ってよね。キミ、仮にも私と同じ学級委員なんだから」
「だ・か・ら、俺は学級委員になった覚えは無い、っつーの!!」
「そうは言っても、昨日は男子寮の点呼ちゃんとやってくれたみたいじゃん」
「それは、沙智に『やって来い!』って家から追い出されたから仕方なくだ。それに、これ以上、面倒くさい事は増やしたくないしな」
「じゃあ私が沙智ちゃんに『木下君が放課後の掃除をいつもサボっている』と言えば、沙智ちゃんが喝を出してくれるのかな?」
「……前言撤回。やっぱオマエ、俺ん家に来るな」
「ええ~、何でよ~!!」
「これ以上、面倒事は増やすな、と言っただろ!!」
「あっ、それから私が今言った秘密、皆には内緒だからね」
「知らん。オマエの腹の虫が大きかった事はバラすわ」
「ちょ……、それも内緒にして~!」
蒼蝶と木下は談笑していたが、その様子を三人の人間が教室の外の廊下からこっそり伺っていたのを二人は気づいていなかった。
結局、木下は掃除を手伝ってくれないまま、蒼蝶はようやく一人で掃除を終わらせた。そして、そのまま沙智がいる木下の家に向かおうと教室を出ようとした時、突然、蒼蝶のスマートフォンに着信が入った。見ると、沙智からの電話だった。沙智には、緊急連絡用に、低額料金の携帯電話を持たせているらしい。
「もしもし蒼蝶だけど、沙智ちゃん、どうしたの?」
「――助けて!」
「えっ!?」
蒼蝶がすぐに聞き返そうとしたが、その途端、電話が切れてしまった。すぐに蒼蝶から電話をかけ直したが応答がない。聞き耳を立てていた木下は只事ではないと分かると、すぐに教室を出て行った。蒼蝶も急いで後を追った。廊下で隠れて様子を伺っていた三人の人物――白峰優希、そして保健室から帰ってきたばかりの堀本健次郎と和良品慎二は、蒼蝶と木下が慌てた様子で教室を出て行こうとしたので、こちらも慌てて咄嗟に近くの物陰などに身を隠し、二人をやり過ごした。只事ではない様子に、三人は驚きつつ互いの顔を見合わせた。
【 第五話その弐)に続く 】
(※作者より皆様へ:第5話の内容があまりに大ボリュームになった為、第5話を計3回(予定)に分割して順次公開します。第5.2話(第五話その壱 ※今回)、第5.5話(第五話その弐 ※次話)、第5.8話(第五話その参 ※予定)の順になります。ご面倒をお掛け致しますが、ご了承ください。)
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