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第7章 文化祭
賢者と弟子の戯れ
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いよいよ文化祭当日。
お化け屋敷と化した教室棟にやってきたノーラを見て、バレンシアは目を丸くした。
「誰かと思ったら……ノーラ?」
「お、おはよう」
別人のようだ。
まだドレスは着ていないものの、入れたメッシュはそのまま。
髪型も化粧も、いつもと雰囲気がまったく違う。
「わたし、変じゃないかな?」
「まったく……どこのご令嬢かと思ったわ。社交界の最前線にいても不思議じゃないわね。ええ、よくお似合いよ」
「よかったぁ……レオカディア様のセンスを信じて正解だったか」
見目の善し悪しなど自分ではわからないものだ。
バレンシアからお褒めの言葉をいただき、安堵が押し寄せてくる。
クラスの生徒たちも驚いたようにノーラを見ていて少し気恥ずかしいが……このくらいで恥ずかしがっていたら演劇の舞台には立てない。
「さあ、ノーラ。お化け屋敷の準備はほとんど終わっているわ。あとは全力で怖がらせるだけね」
「うん……! がんばる!」
ノーラは午前の部の担当だ。
気合を入れまくって驚かしてやろう。
◇◇◇◇
「へぇ……ノーラのクラスはお化け屋敷かぁ。おもしろそうだな!」
コルラードはお化け屋敷の看板を見つめて呟いた。
そして……隣には茶髪を結った大柄な男性。
コルラードの師匠、『サンロックの賢者』ことアロルドである。
今はもっぱら皇帝の病を治す手段を研究しているアロルドだが、たまの息抜きにと弟子から文化祭に誘われたのだ。
「お化けなぁ……俺はあんまし信じちゃいねぇが」
「そうなんですか? 師匠、強がらなくてもいいんですよ? 俺は正直、めっちゃ怖いです! ノーラのクラスの出し物なんで入りますけど」
「お化け屋敷なんざ、ぜんぶ仕掛けに過ぎん。ま、いっちょお手並み拝見といこうじゃねえか」
アロルドはそう言って、コルラードを連れてお化け屋敷に入った。
中は暗く、じめじめしている。
鳴り響くのは不気味な音色ではなく、リラックス作用のある音色だった。
どうやらよくあるお化け屋敷ではないらしい。
コルラードは師とともに、少し気後れしながら進む。
途中で人形や血糊などの恐ろしいものが飛び出したり、人が徐々に怪物に変身していったり。
アロルドは数々の仕掛けを冷静に見て、コルラードに説明していく。
「こいつは人を感知して動く仕掛けだ。人が近づくと魔力が流れて、この魔法人形が動き出すようだな」
「これは録音された声だな。音を記録できる魔石の応用か……興味深いじゃねえか」
「血糊だ。赤い色素と水で作ったものか。もちろん本物の血じゃねえな」
「魔法による鏡像の生成で、人を徐々に怪物に見せかけてるのか」
「す、すごいっすね師匠……博識すぎてお化け役の人、萎えた表情してますけど。もうちょっと驚いてあげません?」
「ははっ。たしかに少し大人げないかもなぁ。アイデア自体はかなり斬新なんだが……」
コルラードはアロルドに従って、お化け屋敷の仕掛けを見ていった。
だんだんと薄れていく恐怖心。
師匠のおかげで、お化け屋敷の裏側が筒抜けである。
「相変らず師匠はすごいっすね! お化け屋敷、ぜんぜん怖くなくなりましたよ」
「大したことねえだろ? ――本当に怖いものは、また別にあるのさ」
アロルドはそう言って、コルラードとともに最後の部屋に入った。
最後の部屋は、お化け屋敷の中で一番暗くて何も見えない。
「師匠、ここにはどういう仕掛けが?」
コルラードは尋ねる。
すると、アロルドは急にドアを閉めた。
暗中で不意に響いた閉扉音。
コルラードは驚いて師の姿を探したが、見つからなかった。
ドアの向こうから響くアロルドの低い声。
「……コルラード、ここには本物のお化けがいる。俺は……霊を研究するために、ここに霊体を集めているんだ。お前には……俺の実験台になってもらおう」
「へ……? し、師匠? 悪ふざけが過ぎますって!」
アロルドはそう言って、悪魔のように笑った。
コルラードは助けを求めたが返事はない。
瞬間、部屋中から謎の異音が響いた。
「う、うわぁぁーっ!?」
◇◇◇◇
「……どういうことやねん?」
教室から絶叫して飛び出していくコルラードを見て、ノーラは困惑した。
ノーラだけではない。
周囲の生徒たちも混乱している。
そんな生徒たちに、アロルドは愉快そうに笑いながら語りかける。
「悪いな! ちょいと弟子を怖がらせるために使わせてもらったぜ。お前さんたちのお化け屋敷は斬新で、それでいて見ごたえがあった!」
どうやらノーラたちのお化け屋敷は、アロルドに都合よく利用されてしまったらしい。
今までの客はすごく怖がってくれただけに、彼の無茶苦茶な作戦には動揺せざるを得ない。
これが賢者と謳われる者の破天荒か。
アロルドはノーラに近寄って手招きした。
「よ、皇城以来だな姉ちゃん」
「ごきげんよう、賢者様。ええと……」
「右目の研究は順調か? 俺が渡した魔眼大全が役に立ってるかはわからんが」
「あ、はい。今はじっくりと読み進めていますが……わたしの右目に近い性質のものは見つけられていませんね」
「そうか……俺も時間が空いたときに探ってはいるんだかな。どうにも見当がつかん」
世間話のように話すアロルドとノーラを見て、クラスの生徒たちは興味を失したように仕事へ戻っていく。
ちなみにコルラードは飛び出していったきり帰ってきていない。
「それで……さっきのなんだったんです? コルラード様をびっくりさせてたやつ」
「ああ、さっき言った通りさ。弟子をちょっくら驚かしてやろうと思ってな。それと、あいつを追っ払って個人的に姉ちゃんに聞こうと思ってたこともあったんだ」
しばし視線を泳がせた後、アロルドは声をひそめて尋ねた。
「姉ちゃん。コルラードが変なやつと絡んでる場面を見たとか、噂を聞いたことはねえか? 交友関係の情報でもいいんだが」
「変なやつ? ええと、どういう質問でしょうか。コルラード様の交友関係は……いたって普通かと。も、もしかして不良と絡んでいたり!?」
「あーいや、そういうわけじゃねえんだ。最近はコルラードにはあまり干渉してないんだが、どうにも違和感を覚えててな。ちょいと脅かして反応を見てみたんだが……まあ、なんでもない。営業の邪魔して悪かったな!」
アロルドは豪放に笑って去っていく。
相変わらず嵐のような人だ。
それにしても……質問の意図はなんだったのだろうか。
お化け屋敷と化した教室棟にやってきたノーラを見て、バレンシアは目を丸くした。
「誰かと思ったら……ノーラ?」
「お、おはよう」
別人のようだ。
まだドレスは着ていないものの、入れたメッシュはそのまま。
髪型も化粧も、いつもと雰囲気がまったく違う。
「わたし、変じゃないかな?」
「まったく……どこのご令嬢かと思ったわ。社交界の最前線にいても不思議じゃないわね。ええ、よくお似合いよ」
「よかったぁ……レオカディア様のセンスを信じて正解だったか」
見目の善し悪しなど自分ではわからないものだ。
バレンシアからお褒めの言葉をいただき、安堵が押し寄せてくる。
クラスの生徒たちも驚いたようにノーラを見ていて少し気恥ずかしいが……このくらいで恥ずかしがっていたら演劇の舞台には立てない。
「さあ、ノーラ。お化け屋敷の準備はほとんど終わっているわ。あとは全力で怖がらせるだけね」
「うん……! がんばる!」
ノーラは午前の部の担当だ。
気合を入れまくって驚かしてやろう。
◇◇◇◇
「へぇ……ノーラのクラスはお化け屋敷かぁ。おもしろそうだな!」
コルラードはお化け屋敷の看板を見つめて呟いた。
そして……隣には茶髪を結った大柄な男性。
コルラードの師匠、『サンロックの賢者』ことアロルドである。
今はもっぱら皇帝の病を治す手段を研究しているアロルドだが、たまの息抜きにと弟子から文化祭に誘われたのだ。
「お化けなぁ……俺はあんまし信じちゃいねぇが」
「そうなんですか? 師匠、強がらなくてもいいんですよ? 俺は正直、めっちゃ怖いです! ノーラのクラスの出し物なんで入りますけど」
「お化け屋敷なんざ、ぜんぶ仕掛けに過ぎん。ま、いっちょお手並み拝見といこうじゃねえか」
アロルドはそう言って、コルラードを連れてお化け屋敷に入った。
中は暗く、じめじめしている。
鳴り響くのは不気味な音色ではなく、リラックス作用のある音色だった。
どうやらよくあるお化け屋敷ではないらしい。
コルラードは師とともに、少し気後れしながら進む。
途中で人形や血糊などの恐ろしいものが飛び出したり、人が徐々に怪物に変身していったり。
アロルドは数々の仕掛けを冷静に見て、コルラードに説明していく。
「こいつは人を感知して動く仕掛けだ。人が近づくと魔力が流れて、この魔法人形が動き出すようだな」
「これは録音された声だな。音を記録できる魔石の応用か……興味深いじゃねえか」
「血糊だ。赤い色素と水で作ったものか。もちろん本物の血じゃねえな」
「魔法による鏡像の生成で、人を徐々に怪物に見せかけてるのか」
「す、すごいっすね師匠……博識すぎてお化け役の人、萎えた表情してますけど。もうちょっと驚いてあげません?」
「ははっ。たしかに少し大人げないかもなぁ。アイデア自体はかなり斬新なんだが……」
コルラードはアロルドに従って、お化け屋敷の仕掛けを見ていった。
だんだんと薄れていく恐怖心。
師匠のおかげで、お化け屋敷の裏側が筒抜けである。
「相変らず師匠はすごいっすね! お化け屋敷、ぜんぜん怖くなくなりましたよ」
「大したことねえだろ? ――本当に怖いものは、また別にあるのさ」
アロルドはそう言って、コルラードとともに最後の部屋に入った。
最後の部屋は、お化け屋敷の中で一番暗くて何も見えない。
「師匠、ここにはどういう仕掛けが?」
コルラードは尋ねる。
すると、アロルドは急にドアを閉めた。
暗中で不意に響いた閉扉音。
コルラードは驚いて師の姿を探したが、見つからなかった。
ドアの向こうから響くアロルドの低い声。
「……コルラード、ここには本物のお化けがいる。俺は……霊を研究するために、ここに霊体を集めているんだ。お前には……俺の実験台になってもらおう」
「へ……? し、師匠? 悪ふざけが過ぎますって!」
アロルドはそう言って、悪魔のように笑った。
コルラードは助けを求めたが返事はない。
瞬間、部屋中から謎の異音が響いた。
「う、うわぁぁーっ!?」
◇◇◇◇
「……どういうことやねん?」
教室から絶叫して飛び出していくコルラードを見て、ノーラは困惑した。
ノーラだけではない。
周囲の生徒たちも混乱している。
そんな生徒たちに、アロルドは愉快そうに笑いながら語りかける。
「悪いな! ちょいと弟子を怖がらせるために使わせてもらったぜ。お前さんたちのお化け屋敷は斬新で、それでいて見ごたえがあった!」
どうやらノーラたちのお化け屋敷は、アロルドに都合よく利用されてしまったらしい。
今までの客はすごく怖がってくれただけに、彼の無茶苦茶な作戦には動揺せざるを得ない。
これが賢者と謳われる者の破天荒か。
アロルドはノーラに近寄って手招きした。
「よ、皇城以来だな姉ちゃん」
「ごきげんよう、賢者様。ええと……」
「右目の研究は順調か? 俺が渡した魔眼大全が役に立ってるかはわからんが」
「あ、はい。今はじっくりと読み進めていますが……わたしの右目に近い性質のものは見つけられていませんね」
「そうか……俺も時間が空いたときに探ってはいるんだかな。どうにも見当がつかん」
世間話のように話すアロルドとノーラを見て、クラスの生徒たちは興味を失したように仕事へ戻っていく。
ちなみにコルラードは飛び出していったきり帰ってきていない。
「それで……さっきのなんだったんです? コルラード様をびっくりさせてたやつ」
「ああ、さっき言った通りさ。弟子をちょっくら驚かしてやろうと思ってな。それと、あいつを追っ払って個人的に姉ちゃんに聞こうと思ってたこともあったんだ」
しばし視線を泳がせた後、アロルドは声をひそめて尋ねた。
「姉ちゃん。コルラードが変なやつと絡んでる場面を見たとか、噂を聞いたことはねえか? 交友関係の情報でもいいんだが」
「変なやつ? ええと、どういう質問でしょうか。コルラード様の交友関係は……いたって普通かと。も、もしかして不良と絡んでいたり!?」
「あーいや、そういうわけじゃねえんだ。最近はコルラードにはあまり干渉してないんだが、どうにも違和感を覚えててな。ちょいと脅かして反応を見てみたんだが……まあ、なんでもない。営業の邪魔して悪かったな!」
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