6 / 30
6
しおりを挟む
「次は勇者。お前との交渉と行こうではないか」
わーお、レイラさんやる気ー!
「報酬を準備して貰おうか」
「今?」
「約束出来るのなら、今じゃなくてもいい。約束を反故された場合は、貴様らをまとめて潰せばいいだけだ」
過激だなぁ。
でも、俺達の生活を良くする為の交渉をしてくれるらしい。しっかり者だ。
「さぁ、ボク達に何をくれるんだ?」
「愛情!」
「そんな食えもしないもの、いらん! もっと実用的なものにしろ!」
愛情はエッセンスにはなっても、齧りつけるものではないもんな。
「それじゃあ、君達の土地を増やそう」
「……他に?」
「何が欲しいんだい?」
よくばりだな。まだ何か貰うのか!
「貴様達が遊びに来ない権利」
「それはダメー。折角の古民家カフェなのに」
「コミンカカフェ?」
勇者は相変わらず訳の分からない話をする。コミンカカフェって何だ?
「それじゃあ、街で自由に買い物が出来る権利を寄越せ」
街で買い物!?
俺達は人間ではなく、どちらかと言えば恐れられている存在だ。その上、通貨も持っていない。
レイラの要求はあまりにもハードルの高い物で、驚いた俺は彼女を見た。表情は、どこか楽しげだ。
「魔王城で、皆で力を合わせた自給自足をしていた時とは違い、今は二人だからな。使える部分は使いたい」
人間に歩み寄って効率化する、って事だな。
「何、瘴気の影響を受けているものでも構わん。だが、ボク達は人間の通貨など持っていない。そこで、その辺をどうにかして貰いたい」
俺達は瘴気の影響を受けた物をどうにかする術を持ってるしなー。あぁ、レイラさえ納得すれば、勇者にも教える事ではあるんだけど。
「ふむ……」
勇者は顎に手を当てて、暫し沈黙。
「それじゃあ、何かカードのようなものを作って、周知させよう」
やがて口を開いた時には、なんだかよくわからない事を言った。
店の人とカードでゲームでもすればいいのか?
「君達はそのカードを見せて買い物をする。買い物の内容は店側が記録しておき、後日こちらで支払う」
あー、つまり、勇者が買い物の手助けになるアイテムをくれるって事か。
「即興クレジットカードって感じになるから、あまり使いすぎないで欲しいけど……。これでどうかな?」
「クレなんとかは知らないが、悪くは無いな」
クレなんとかカードが有れば、大分便利そうだな。えーっと、纏めると……勇者のおごり、ただし後払い、って事だな!
「何、使いすぎる予定は無い。ただ、塩はどうやったって買った方が楽だからな」
「そう言えば君達、買い物せずに今までどうやって……」
ふと疑問に思ったらしい。ふっふっふ、これはレイラの助けがあってこそだ。自慢してやろう。
「レイラは飛べるし、力持ちだから、ちょっと海まで行って海水を汲んで来て貰って、塩を作ってた!」
「砂糖は?」
「樹液から作る。お前らだって、そうやってるだろ?」
パンが甘かったからだろうか。俺はごく一般的な作り方をしているつもりだったが、人間は違うのだろうか。
「でも、この気候じゃ……」
「ん? そりゃあ、魔王パワーでどうにか」
なるほど。
考えてみれば、年中樹液が取れるわけではない。環境を整えなければ、生産量は落ちる一方だ。
これが人間界の縮図、か?
「よし、じゃあ見せてやろう」
どんな環境で何を育てているのか。
まぁ、大体は魔王城にもあるんだけど、それにしたって魔王パワーが無くなった今、あの場所の植物は上手く育てていないかもしれない。
あ、悲しくなってきた。いやいや、今から頑張って手塩にかけて育てて貰えるかもしれないし、きっと大丈夫だ。
俺は一人でコクンと頷くと、手元のサンドイッチとコウヒイに目を落とした。そういえば、まだ食べている途中だったな。美味しく食べきらないと。
「で、そこで色々説明してやるから、とりあえず食べよう。な?」
「……まぁ、話しも纏まったしな」
よし、レイラのお許しが出たぞ!
見れば、勇者とオリヴィアも少し表情を和らげ、サンドイッチに手を伸ばす。よーしよし、その調子でお食べ。
俺も、レイラも同様に食べ始める。少し冷めたが、やっぱり美味しい事には変わりがなかった。
***
わーお、レイラさんやる気ー!
「報酬を準備して貰おうか」
「今?」
「約束出来るのなら、今じゃなくてもいい。約束を反故された場合は、貴様らをまとめて潰せばいいだけだ」
過激だなぁ。
でも、俺達の生活を良くする為の交渉をしてくれるらしい。しっかり者だ。
「さぁ、ボク達に何をくれるんだ?」
「愛情!」
「そんな食えもしないもの、いらん! もっと実用的なものにしろ!」
愛情はエッセンスにはなっても、齧りつけるものではないもんな。
「それじゃあ、君達の土地を増やそう」
「……他に?」
「何が欲しいんだい?」
よくばりだな。まだ何か貰うのか!
「貴様達が遊びに来ない権利」
「それはダメー。折角の古民家カフェなのに」
「コミンカカフェ?」
勇者は相変わらず訳の分からない話をする。コミンカカフェって何だ?
「それじゃあ、街で自由に買い物が出来る権利を寄越せ」
街で買い物!?
俺達は人間ではなく、どちらかと言えば恐れられている存在だ。その上、通貨も持っていない。
レイラの要求はあまりにもハードルの高い物で、驚いた俺は彼女を見た。表情は、どこか楽しげだ。
「魔王城で、皆で力を合わせた自給自足をしていた時とは違い、今は二人だからな。使える部分は使いたい」
人間に歩み寄って効率化する、って事だな。
「何、瘴気の影響を受けているものでも構わん。だが、ボク達は人間の通貨など持っていない。そこで、その辺をどうにかして貰いたい」
俺達は瘴気の影響を受けた物をどうにかする術を持ってるしなー。あぁ、レイラさえ納得すれば、勇者にも教える事ではあるんだけど。
「ふむ……」
勇者は顎に手を当てて、暫し沈黙。
「それじゃあ、何かカードのようなものを作って、周知させよう」
やがて口を開いた時には、なんだかよくわからない事を言った。
店の人とカードでゲームでもすればいいのか?
「君達はそのカードを見せて買い物をする。買い物の内容は店側が記録しておき、後日こちらで支払う」
あー、つまり、勇者が買い物の手助けになるアイテムをくれるって事か。
「即興クレジットカードって感じになるから、あまり使いすぎないで欲しいけど……。これでどうかな?」
「クレなんとかは知らないが、悪くは無いな」
クレなんとかカードが有れば、大分便利そうだな。えーっと、纏めると……勇者のおごり、ただし後払い、って事だな!
「何、使いすぎる予定は無い。ただ、塩はどうやったって買った方が楽だからな」
「そう言えば君達、買い物せずに今までどうやって……」
ふと疑問に思ったらしい。ふっふっふ、これはレイラの助けがあってこそだ。自慢してやろう。
「レイラは飛べるし、力持ちだから、ちょっと海まで行って海水を汲んで来て貰って、塩を作ってた!」
「砂糖は?」
「樹液から作る。お前らだって、そうやってるだろ?」
パンが甘かったからだろうか。俺はごく一般的な作り方をしているつもりだったが、人間は違うのだろうか。
「でも、この気候じゃ……」
「ん? そりゃあ、魔王パワーでどうにか」
なるほど。
考えてみれば、年中樹液が取れるわけではない。環境を整えなければ、生産量は落ちる一方だ。
これが人間界の縮図、か?
「よし、じゃあ見せてやろう」
どんな環境で何を育てているのか。
まぁ、大体は魔王城にもあるんだけど、それにしたって魔王パワーが無くなった今、あの場所の植物は上手く育てていないかもしれない。
あ、悲しくなってきた。いやいや、今から頑張って手塩にかけて育てて貰えるかもしれないし、きっと大丈夫だ。
俺は一人でコクンと頷くと、手元のサンドイッチとコウヒイに目を落とした。そういえば、まだ食べている途中だったな。美味しく食べきらないと。
「で、そこで色々説明してやるから、とりあえず食べよう。な?」
「……まぁ、話しも纏まったしな」
よし、レイラのお許しが出たぞ!
見れば、勇者とオリヴィアも少し表情を和らげ、サンドイッチに手を伸ばす。よーしよし、その調子でお食べ。
俺も、レイラも同様に食べ始める。少し冷めたが、やっぱり美味しい事には変わりがなかった。
***
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています
浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】
ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!?
激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。
目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。
もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。
セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。
戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。
けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。
「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの?
これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、
ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。
※小説家になろうにも掲載中です。
卒業パーティーのその後は
あんど もあ
ファンタジー
乙女ゲームの世界で、ヒロインのサンディに転生してくる人たちをいじめて幸せなエンディングへと導いてきた悪役令嬢のアルテミス。 だが、今回転生してきたサンディには匙を投げた。わがままで身勝手で享楽的、そんな人に私にいじめられる資格は無い。
そんなアルテミスだが、卒業パーティで断罪シーンがやってきて…。
元王城お抱えスキル研究家の、モフモフ子育てスローライフ 〜スキル:沼?!『前代未聞なスキル持ち』の成長、見守り生活〜
野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ファンタジー
「エレンはね、スレイがたくさん褒めてくれるから、ここに居ていいんだって思えたの」
***
魔法はないが、神から授かる特殊な力――スキルが存在する世界。
王城にはスキルのあらゆる可能性を模索し、スキル関係のトラブルを解消するための専門家・スキル研究家という職が存在していた。
しかしちょうど一年前、即位したばかりの国王の「そのようなもの、金がかかるばかりで意味がない」という鶴の一声で、職が消滅。
解雇されたスキル研究家のスレイ(26歳)は、ひょんな事から縁も所縁もない田舎の伯爵領に移住し、忙しく働いた王城時代の給金貯蓄でそれなりに広い庭付きの家を買い、元来からの拾い癖と大雑把な性格が相まって、拾ってきた動物たちを放し飼いにしての共同生活を送っている。
ひっそりと「スキルに関する相談を受け付けるための『スキル相談室』」を開業する傍ら、空いた時間は冒険者ギルドで、住民からの戦闘伴わない依頼――通称:非戦闘系依頼(畑仕事や牧場仕事の手伝い)を受け、スローな日々を謳歌していたスレイ。
しかしそんな穏やかな生活も、ある日拾い癖が高じてついに羊を連れた人間(小さな女の子)を拾った事で、少しずつ様変わりし始める。
スキル階級・底辺<ボトム>のありふれたスキル『召喚士』持ちの女の子・エレンと、彼女に召喚されたただの羊(か弱い非戦闘毛動物)メェ君。
何の変哲もない子たちだけど、実は「動物と会話ができる」という、スキル研究家のスレイでも初めて見る特殊な副効果持ちの少女と、『特性:沼』という、ヘンテコなステータス持ちの羊で……?
「今日は野菜の苗植えをします」
「おー!」
「めぇー!!」
友達を一千万人作る事が目標のエレンと、エレンの事が好きすぎるあまり、人前でもお構いなくつい『沼』の力を使ってしまうメェ君。
そんな一人と一匹を、スキル研究家としても保護者としても、スローライフを通して褒めて伸ばして導いていく。
子育て成長、お仕事ストーリー。
ここに爆誕!
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる