3 / 25
3
しおりを挟む3
「お、戻ってきた。どうだった?」
ふと気が付くと、最初に居た、二体の人形のいる空間だった。
過去に行く直前までいた人形の前に私は座っていて、その隣に日高がいてニヤニヤと笑っている。
「どうって、何が……」
「過去。変えられた?」
正直私の頭の中では、さっきの血まみれの光景が再生されていたが、彼がそれを聞いてくれたおかげで、過去を変える事が出来たという事を思い出した。
「あぁ、やり直せたけど」
「へぇ。でもそれって、今何か変わった確証みたいな物を、得られたりはしないの?」
変わったっていう確証、ね……。
もし、あの通りに変わって、そのまま仲が良かったとすれば、今でも友達でいれたのだろうか? その辺は微妙だけど、私は何気なく制服のポケットに手を突っ込んだ。
あった。ポケットに入れっぱなしだったケータイ電話を取り出して、アドレス帳を見る。
「日高。確実に変わってる」
「何? どうなったの?」
あまり登録している人はいないおかげで、あっさりと見つかった。
本来であれば入っているはずのない名前。『三橋(みつはし)亜美(あみ)』――アミちゃんの名前だ。
「私、幼稚園時代にさかのぼって、その時大喧嘩した子との関係を修復してきたの。その結果、今私のケータイには彼女のアドレスと番号が入ってる」
「普通じゃあ、ありえない事?」
私は「ありえない」と即答した。
「でも、それじゃあ弱くない? メールや電話でもして証明出来ないの?」
日高はそう言うが、仮にメールや電話が出来たとしても、ありえなかった事の証明にはならないだろう。しかし、少なくとも、アドレスだけ登録したように見せかけた『ミエッパリ友達』でない事だけは証明出来そうだ。
それに、私の友達である事を、他ならぬ私に証明できるチャンスでもある。
私はケータイ電話の電波を確認すると、三本立っていた。変な空間にも、電波という奴は来ているらしい。
私は思い切って電話してみる事にした。
数コールの後、ケータイ電話からは女性の声が聞こえてきた。
「あ、えっと、」
「どうしたの? 橙子ちゃん」
何と言った物かと口ごもっていると、先に相手が私の名を呼ぶ。向こうは私の事を知っているらしい。
「アミちゃん?」
「うん、そうだよ。アミだよ。橙子ちゃんから電話って珍しいね」
本当に、アミちゃんなんだ……。
「私、アミちゃんと友達?」
「当たり前じゃん。何で?」
電話の向こう側で、アミちゃんが笑ったようだった。私の手が震える。
私は、どうやって友達になったのか、だとか、私との関係性、だとかを尋ねると、彼女は不思議そうにしながらも答えてくれた。
曰く、友達になったのは幼稚園での事だから詳しくは覚えていない。関係性は、幼稚園、小学校、中学校と、ずっと一緒で所謂幼馴染、という事らしい。
本来なら、小学校すら違ったのに。
私はアミちゃんに「ありがとう」と告げて、半ば無理やりに電話を切った。
「本当に友達になってた」
じっとこちらを見ていた日高に、私は告げる。
彼はニヤニヤしながら、大きく頷いた。
「どうやら本当にありえない事だったのは分かったよ。百瀬が一番動揺してるみたいだし、ね」
「それにしても」と、今度はずっと貼り付けていたニヤニヤ笑いを消しながら呟く。
「ちょっと面白そうだね」
「興味、持ったの?」
「まぁね。最初に百瀬が消えた時はどうなったかと思ったんだけど」
私は眉をひそめて「消えた?」と聞き返した。
「そう、消えたんだよ。リプレイするって言った瞬間に、すぅっとね」
それなら、その間私の肉体はどこにあったんだろう?
分からないけど、これに関して日高に聞いても多分意味はない。私にしろ、彼にしろ、なんの情報も持っていなんだから。
私が考えている間に、日高は自分そっくりの人形に手を伸ばした。
「リプレイしますか?」
「はい」
「え……?」
私が何かを言う前に、日高はあっという間に行動し、そして……スッと消えてしまった。
消えたって、こんな感じだったんだ。何だか心配になる。
でも、彼は何か変えたい事があったのだろうか? 笑いもしない顔で、あれほど自分から何かをするのを嫌がっていたとは思えないほどあっさりと動いた。
気になりつつ、私は私にそっくりな人形に手を伸ばす。
「リプレイしますか?」
硝子玉の瞳が私を見る。
さっきの恐ろしい光景が頭をチラついて、私は躊躇った。自分から人形に手を伸ばしたくせに。とんだ臆病者だ。
どうせ死んでるんだ。どうせ訳が分からないんだ。そんな風に思いながらも、何故かおびえる。
でも……過去を変えるのは、悪くない。ずっと喉に引っかかっていた小骨を取っていく作業とでも思えば、魅力的ですらあった。
今は日高も行っちゃったし。
「リプレイしますか?」
私一人で、人形に「リプレイしますか?」と聞かれてばかりで待っているのも、暇だ。
それに、アレ以外でも変えたい過去の一つや二つある。ゲーム感覚だから気軽に出来るわけだし……。
「リプレイしますか?」
「……うん、もう一度……」
私は頷く。
また目の前が真っ白になって、次に気が付いた時には病院の待合室のような空間。やっぱり黒い文字で『GAME START』と、表示されている。
うん、これはゲームなんだ。そう思えば簡単にできる。
簡単に過去を変えられるゲーム。
深く考えなくてもいい。考えたって、私には何かを導き出せるだけの情報は備わっていないんだから。
私は、ゆっくり目を閉じて……変えたい過去へ思いを馳せた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
つまらない妃と呼ばれた日
柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。
舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。
さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。
リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。
――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
🥕おしどり夫婦として12年間の結婚生活を過ごしてきたが一波乱あり、妻は夫を誰かに譲りたくなるのだった。
設楽理沙
ライト文芸
2026.1.4 73話見直した際、瑛士の台詞《本音/懺悔》を加筆しました。😇
☘ 累計ポイント/ 200万pt 超えました。ありがとうございます。
―― 備忘録 ――
第8回ライト文芸大賞では大賞2位ではじまり2位で終了。 最高 57,392 pt
〃 24h/pt-1位ではじまり2位で終了。 最高 89,034 pt
◇ ◇ ◇ ◇
紳士的でいつだって私や私の両親にやさしくしてくれる
素敵な旦那さま・・だと思ってきたのに。
隠された夫の一面を知った日から、眞奈の苦悩が
始まる。
苦しくて、悲しくてもののすごく惨めで・・
消えてしまいたいと思う眞奈は小さな子供のように
大きな声で泣いた。
泣きながらも、よろけながらも、気がつけば
大地をしっかりと踏みしめていた。
そう、立ち止まってなんていられない。
☆-★-☆-★+☆-★-☆-★+☆-★-☆-★
2025.4.19☑~
17歳男子高生と32歳主婦の境界線
MisakiNonagase
恋愛
32歳の主婦・加恋。冷え切った家庭で孤独に苛まれる彼女を救い出したのは、ネットの向こう側にいた二十歳(はたち)と偽っていた17歳の少年・晴人だった。
「未成年との不倫」という、社会から断罪されるべき背徳。それでも二人は、震える手で未来への約束を交わす。少年が大学生になり、社会人となり、守られる存在から「守る男」へと成長していく中で、加恋は自らの手で「妻」という仮面を脱ぎ捨てていく…
後宮祓いの巫女は、鬼将軍に嫁ぐことになりました
由香
キャラ文芸
後宮で怪異を祓う下級巫女・紗月は、ある日突然、「鬼」と噂される将軍・玄耀の妻になれと命じられる。
それは愛のない政略結婚――
人ならざる力を持つ将軍を、巫女の力で制御するための契約だった。
後宮の思惑に翻弄されながらも、二人は「契約」ではなく「選んだ縁」として、共に生きる道を選ぶ――。
~後宮のやり直し巫女~私が本当の巫女ですが、謂れのない罪で処刑されたので後宮で人生をやり直すことにしました
深水えいな
キャラ文芸
明琳は国を統べる最高位の巫女、炎巫の候補となりながらも謂れのない罪で処刑されてしまう。死の淵で「お前が本物の炎巫だ。このままだと国が乱れる」と謎の美青年・天翼に言われ人生をやり直すことに。しかし巫女として四度人生をやり直すもののうまくいかず、次の人生では女官として後宮入りすることに。そこで待っていたのは後宮で巻き起こる怪事件と女性と見まごうばかりの美貌の宦官、誠羽で――今度の人生は、いつもと違う!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる