俺は大型トラックになった~トラックで無双する異世界旅~

無名

文字の大きさ
15 / 17

15 魔石屋ヒサギ2

しおりを挟む
 俺はイリスに持ってきた魔石を売りたいと言った。

「どんな魔石を売ってくれるの?」

「これ」

 俺はクマさんの絵柄が書いてある幼稚園児用のポーチを渡した。中にはぎっしりと魔石が詰まっている。これでもトラックにある魔石の10分の一もない。

 イリスは渡されたポーチの中身を見て、驚愕の表情を浮かべる。

「な! なにこれ!!」

 そんなに驚くほどの物だろうか? 確かに、大型モンスターの魔石を大目に持ってきたが、この店に置いてある魔石もかなりの物だと思うぞ。騒ぐほどのことか?

「ど、どこでこれだけの魔石を!? カッティングする前の魔石で、こんなに大きいのはすごいよ!!」

 カッティング? ああ、ダイヤの指輪みたいに綺麗にカットする奴だな? 確か日本で主流なカットはブリリアントカットだったな。ここでも似たようなカットをしているな。昔、安物のダイヤを彼女にプレゼントしたなぁ。

 日本での懐かしい記憶を思い出したが、そんなこと今はどうでもいいな。

 俺はよく分からないので、とにかく買取してくれと頼んだ。ジェーンの知り合いなら、ボッタくりをすることはないだろう。

「こ、これ全部買取? あ、あのね? エルちゃん。査定をするのはいいんだけどね? うちじゃ買い取れないよこんなに」

 ん? どういうことだ? すこしおかしなことを言うな。

「え? そうなの?」

「どういうことだイリス。買い取れないのか?」

 ジェーンもイリスの言葉に不思議に思った。

「その、うちはさ。旦那が無くなったし、恥だけど、そのね。赤字続きなの」

 イリスは恥ずかしそうに頭を掻いた。

「赤字だと? 半年前は繁盛しているように見えたが」

「ここ最近出店してきた大手の魔石店がね。それで売上もってかれちゃって」

「大手の高級魔石店?」

「この村の大通りにあるだろ? 見なかったかい? 最近魔石屋が増えてるんだ。うちは個人経営の弱小の魔石屋だからさ。商売あがったりだよ。はぁ~。うちの旦那もなんであんな馬鹿なことしたんだか……。魔物に勝てるわけないのに、魔石を取ろうとして……」

 もしかして、イリスの旦那というのは、あれか?

 商売がうまくいかなくなったから、一人で魔石を仕入れに行ったのか? そしてイリスの旦那は魔物に殺されてしまった。ヒバリが言っていたことはマジなのか? 

 これが本当だとすると、何とも惨めで、悲しい死に方だな。

「お店として、このくらいの量は買い取れるお金を用意しなきゃいけないんだけどね。ほんとにごめんね」 
   
 ふうむ。そうか。ならば仕方ないか。

 俺はその「大手の魔石店」とやらで買い取ってもらおうとしたが、ジェーンが言った。

「エル! 私から頼みがある!」

 ジェーンが何か鼻息を荒くしている。

「な、なんだよ急に。改まって」

「エル! イリスの話を聞いたら居ても立っても居られない!! 頼む!」

 ポーチを返してもらおうと手を伸ばしたら、ジェーンが頭を下げてきた。

「この店で私たちの魔石を売ってもらおう!!」

「え?」

 魔石を売ってもらう? 急に何を言い出すんだ?

「私はこの店にたくさん世話になっている。イリスの旦那のことも、もっと早くに知っていればこんなことにはさせなかった。本当に後悔している。イリスやヒバリまで苦しい思いをさせたくない」

 そ、それはそうだな。美人親子の彼女たちまで死んだら、俺だって悲しい。さっきはめちゃくちゃ愛でてもらったし。撫でまわされて気持ちよかったし。

「どうだ? ダメか? この店が繁盛すれば、結果的にエルの懐が潤うぞ」

 相変わらず思い切りがいい女だな。思ったら即行動ってやつだな。

「うーん。まぁそうだな。今すぐ金が必要ってわけじゃないしな」

 俺が欲しいのは、魔素だしな。特殊な魔石でもあれば儲けたお金で買おうと思ってだけだ。

「別に俺は構わないぞ。でもどうするんだ? ただ売っても、客は戻ってくるのか?」

 俺は商売ことなど何も知らんぞ。急に出来るもんじゃないはずだ。

「ふはは。なぁに、それは簡単だ。高級な魔石を大安売りすればいい。魔石はエルがタダで手に入れられるんだ。問題ない。後はエルとヒバリ。私がエロい格好でもして、売り子をすれば男が寄ってくる」

 …………。

 こいつは本当に騎士なのか? 考え方がエグイぞ。騎士道精神なんてないぞこの女には。

「あのさ、あんたたち何言ってるの? 話を聞いていれば、私の店で魔石を売る? あんたたちの魔石を?」

「そうだイリス。私も騎士の端くれ。受けた恩は必ず返す。それにイリスはお金が無くて困っているんだろう? 新しい魔石を仕入れることも大変なんじゃ、この店はつぶれるぞ。私はヒサギにたくさん助けてもらったし、イリスも好きだ。今度は私が助ける」

「そ、それは嬉しいけど、ねぇ? 売るって言ったって、今はお客が取られちゃってるし」

 イリスとヒバリが困惑している。

 当たり前だよな。部外者の俺たちが勝手に決めちゃってるんだ。

「イリスさんも考えてみてよ。俺の魔石あげるから、この店で売ってみてよ。俺の取り分はいくらでもいいからさ」

「え? エルちゃんも本気で言ってるの?」

「うん。ジェーンに言われてみたけど、お店のスポンサーってのも悪くない。面白そうだ」

「すぽんさー?」 

 話が唐突すぎるかもしれんが、良いな。お店経営か。悪くない。ごり押しで俺の魔石を売ってもらうか。この店をこの村で一番の魔石屋にする。楽しそうだ。

 一つ問題を上げるとすれば、俺たちが目立つと、騎士団の奴らに目を付けられる可能性がある。ジェーンは騎士団に所属しているらしいから、副業ってまずくないか? 仮にも騎士だろ?

「エル。良いことを思いついたぞ。さっきエルが魔石を上げた娼婦の女。ここに連れてこよう。あの女に裸になって魔石を売ってもらおう」

 ジェーンはとんでもないことを言い出す。

 こいつは頭のねじがどっか緩んでいないか? 機械騎士ってのは常識が無いのか?

「よし! そうだ! あの女を連れてこよう!」

 ジェーンは歓楽街に走り出す。 

「ちょ、ちょっとまてジェーン! お前おかしいぞ!! まてったら!」

 ジェーンは娼婦の女を連れてこようと、走り出すのだった。




  
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました

しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、 「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。 ――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。 試験会場を間違え、隣の建物で行われていた 特級厨師試験に合格してしまったのだ。 気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの “超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。 一方、学院首席で一級魔法使いとなった ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに―― 「なんで料理で一番になってるのよ!?  あの女、魔法より料理の方が強くない!?」 すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、 天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。 そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、 少しずつ距離を縮めていく。 魔法で国を守る最強魔術師。 料理で国を救う特級厨師。 ――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、 ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。 すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚! 笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。

異世界成り上がり物語~転生したけど男?!どう言う事!?~

ファンタジー
 高梨洋子(25)は帰り道で車に撥ねられた瞬間、意識は一瞬で別の場所へ…。 見覚えの無い部屋で目が覚め「アレク?!気付いたのか!?」との声に え?ちょっと待て…さっきまで日本に居たのに…。 確か「死んだ」筈・・・アレクって誰!? ズキン・・・と頭に痛みが走ると現在と過去の記憶が一気に流れ込み・・・ 気付けば異世界のイケメンに転生した彼女。 誰も知らない・・・いや彼の母しか知らない秘密が有った!? 女性の記憶に翻弄されながらも成り上がって行く男性の話 保険でR15 タイトル変更の可能性あり

相続した畑で拾ったエルフがいつの間にか嫁になっていた件 ~魔法で快適!田舎で農業スローライフ~

ちくでん
ファンタジー
山科啓介28歳。祖父の畑を相続した彼は、脱サラして農業者になるためにとある田舎町にやってきた。 休耕地を畑に戻そうとして草刈りをしていたところで発見したのは、倒れた美少女エルフ。 啓介はそのエルフを家に連れ帰ったのだった。 異世界からこちらの世界に迷い込んだエルフの魔法使いと初心者農業者の主人公は、畑をおこして田舎に馴染んでいく。 これは生活を共にする二人が、やがて好き合うことになり、付き合ったり結婚したり作物を育てたり、日々を生活していくお話です。

無自覚チートで無双する気はなかったのに、小石を投げたら山が崩れ、クシャミをしたら魔王が滅びた。俺はただ、平穏に暮らしたいだけなんです!

黒崎隼人
ファンタジー
トラックに轢かれ、平凡な人生を終えたはずのサラリーマン、ユウキ。彼が次に目覚めたのは、剣と魔法の異世界だった。 「あれ?なんか身体が軽いな」 その程度の認識で放った小石が岩を砕き、ただのジャンプが木々を越える。本人は自分の異常さに全く気づかないまま、ゴブリンを避けようとして一撃でなぎ倒し、怪我人を見つけて「血、止まらないかな」と願えば傷が癒える。 これは、自分の持つ規格外の力に一切気づかない男が、善意と天然で周囲の度肝を抜き、勘違いされながら意図せず英雄へと成り上がっていく、無自覚無双ファンタジー!

【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活

シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!

老女召喚〜聖女はまさかの80歳?!〜城を追い出されちゃったけど、何か若返ってるし、元気に異世界で生き抜きます!〜

二階堂吉乃
ファンタジー
 瘴気に脅かされる王国があった。それを祓うことが出来るのは異世界人の乙女だけ。王国の幹部は伝説の『聖女召喚』の儀を行う。だが現れたのは1人の老婆だった。「召喚は失敗だ!」聖女を娶るつもりだった王子は激怒した。そこら辺の平民だと思われた老女は金貨1枚を与えられると、城から追い出されてしまう。実はこの老婆こそが召喚された女性だった。  白石きよ子・80歳。寝ていた布団の中から異世界に連れてこられてしまった。始めは「ドッキリじゃないかしら」と疑っていた。頼れる知り合いも家族もいない。持病の関節痛と高血圧の薬もない。しかし生来の逞しさで異世界で生き抜いていく。  後日、召喚が成功していたと分かる。王や重臣たちは慌てて老女の行方を探し始めるが、一向に見つからない。それもそのはず、きよ子はどんどん若返っていた。行方不明の老聖女を探す副団長は、黒髪黒目の不思議な美女と出会うが…。  人の名前が何故か映画スターの名になっちゃう天然系若返り聖女の冒険。全14話+間話8話。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

みそっかす銀狐(シルバーフォックス)、家族を探す旅に出る

伽羅
ファンタジー
三つ子で生まれた銀狐の獣人シリル。一人だけ体が小さく人型に変化しても赤ん坊のままだった。 それでも親子で仲良く暮らしていた獣人の里が人間に襲撃される。 兄達を助ける為に囮になったシリルは逃げる途中で崖から川に転落して流されてしまう。 何とか一命を取り留めたシリルは家族を探す旅に出るのだった…。

処理中です...