24 / 25
24 亜里沙との休日
しおりを挟む
今回、玲は亜里沙と一緒に女性物の下着と、化粧品類を買うことになった。
もちろん、金が無い玲は出来る限り安く済ませたい。ということで、下着はある程度の物で、化粧品は出来るだけ100円ショップになった。
元男性の玲は、下着にや化粧品類に詳しくない。玲はデザインだけで選び、品質やメーカーの選択は亜里沙が担当することになった。サイズや細かいことは店員に任せるので、亜里沙は必要ないように思えるが、右も左もわからない玲には、亜里沙が必要だった。
ただ、亜里沙は胸が貧しかった。ぺったんこではないが、かなり小さい。
むしろ、玲の方が女らしい体をしている。背も高いし、お尻や胸もはちきれんばかりにムチムチしている。亜里沙が嫉妬するくらい、玲はグラマラスだ。
「あんた、信じられない体してるわね。男とは思えない肉体よ」
今、亜里沙と玲は服屋にいて、試着室で着替えていた。亜里沙は玲の下着をつける、手伝いをしてあげていた。
「しらねぇよ。胸が大きいのは、先生が遺伝だって言ってたぜ。子供時代の成長期とかないから、遺伝で大きくなったって言ってた」
玲は健康診断の時、担当医にいろいろと聞いていた。その一つに、胸の大きさも含まれていた。TS病での肉体変化は、両親の遺伝子が濃くあらわれる。母親の胸の大きさや、背の高い父親の遺伝子が、大きく関わっていた。
「ちっ。ふざけてるわ。途中から女になった奴が巨乳になると、ムカつくわね」
亜里沙は玲の大きな胸を、後ろから鷲掴みにした。試着室の中だから、遠慮が無かった。
「イタッ! そんなに強く掴むなよ!」
「くそう。私にもこれだけの胸があれば、彼氏も出来るのに」
亜里沙は玲の巨乳をギリギリと掴む。玲は亜里沙に胸を掴まれて悶絶する。
「は、離せ! 胸が千切れるだろうが!」
「チッ」
亜里沙は今も彼氏がいなかった。亜里沙は可愛いが、気の強い性格の所為で、男はいなかった。
それから亜里沙と玲は下着や服を買って化粧品をそろえた。玲の趣味ではなかったが、白のワンピースも買った。パーカーやレギンスだけではもったいないと、亜里沙が気を利かせたのだった。
★★★
玲は亜里沙の自宅に招かれ、今は化粧の仕方を学んでいた。
「まず保湿をするの。洗顔してから、美容液とか乳液をつけるの。化粧の乗りがよくなるわ」
「美容液か。まじか」
玲は自分が化粧をするとは思わず、複雑な気分である。玲は化粧をするような環境で育っていない。バンド活動をするために化粧をしたり、女装癖があったわけでもない。普通の男子高校生だったのだ。
「ほら! そこの洗面台で顔を洗って!」
玲は亜里沙に言われ、洗面所で顔を洗う。鏡を見ながら美容液の使い方を教わる。
「そうね。よく見たら眉毛とかきちんと整えてないし、眉毛を整えてからベースを塗ろうか」
「眉毛? ちゃんと整えてるだろ?」
玲は眉毛くらい、自分で整えている。かなり雑だが、ラインはきちんと出ている。
「無駄に飛びでた毛とかあるし、眉マスカラとか、パウダーとか、使ってないでしょう。いいから任せなさい」
亜里沙は武道に長け、サバサバした性格だが、自分磨きも忘れてはいない。化粧についても、それなりに詳しかった。
「わかった。教えてくれ」
「んじゃ、行くわよ」
「おう」
それから玲は亜里沙に化粧の仕方を学びながら、メイクをしてもらった。下地の作り方やファンデーションの扱い方を習った。亜里沙は化粧が上手いのか、玲はナチュラルな感じに仕上がった。
「すげえな。化粧ってやっぱり詐欺じゃねぇか?」
「うーん。詐欺とまでは言わないけど、やり方次第じゃない? 厚化粧に騙される男も悪いしね」
「そうなのか」
玲は化粧を施された自分を鏡で見て、驚く。特に目と唇がすごい。目だが、つけまつ毛とアイシャドウのおかげか、ぱっちりとした目に仕上がっている。唇もリップでプルプルしているように見える。まるでアイドルのような美しさだ。
「ここまで変われるものなのか」
「あんたはもともと美人顔だし、化粧をしたら綺麗になるのはあたり前よ」
「そうなのか? 俺って美人だったのか」
玲は自分の容姿が悪くないと思っていたが、まさか女になっても通用するとは思っていなかった。中性的な顔立ちが役に立った。
「あっ。そうだ。服屋で買ったワンピースを着なさいよ。それで完全に女の子じゃない?」
「え? 今着るのか?」
「そう。今着るの。ついでに、武尊も呼びましょう。女になったあんたを見たら、驚くわよ」
「は? ちょっと待て。なんで武尊が出てくるんだ」
「あんたの彼氏でしょ? 私も武尊が驚く顔が見たいしね」
そう言って亜里沙は、スマホで武尊に電話。玲がやめろと言ったが、武尊はすぐに来てくれることになった。
「マジか……」
★★★
一時間後、武尊が亜里沙の家にやってきた。
武尊は部屋に案内されて入ると、そこには白のワンピースを着て、化粧をした玲が鎮座していた。顔を上気させ、上目づかいに、武尊をチラチラと見ている。完全に、どこかのお嬢様という姿に、武尊は一撃でノックアウト。
「れ、玲? お前、玲か?」
「あぁそうだよ。なんだよ。わりぃかよ」
玲は頬を赤くして、うつむく。一つ一つの仕草が可愛らしく、武尊はグッと来てしまう。
「う、嘘だろ。こ、ここまで?」
武尊は玲の変わりように驚く。玲が着ていたワンピースはゆったりしていたが、胸やお尻が大きいので、出るところは出ている。
「どう武尊! 玲の化粧とコーディネート、あたしがやったんだよ!」
亜里沙がグイグイと武尊の背中を押す。もっと玲の近くに寄れと、武尊を押しまくる。
「ちょ、亜里沙ちゃん! 押さないでくれよ!」
「いいから! 彼氏なんでしょ!」
「彼氏ってそんな。俺は何のためにここへ呼ばれたんだ……」
武尊は玲を見る。玲は何かを期待している目で、武尊をじっと見ている。
「玲、そんな目で見るなよ」
「そ、そんな目って、どんな目だよ?」
玲は顔を真っ赤にしたまま、プイッとそっぽを向く。
そっぽを向かれた武尊は、どうしていいか分からずにあたふたしている。
亜里沙はそんな二人を見て、「これはもう、恋に落ちてるわね」とぼそっと呟いた。
★★★
亜里沙と別れた武尊と玲は、家に帰ることになった。武尊はいつものように玲を家まで送ることになったが、今は玲の格好がワンピースだ。化粧もばっちりキマっているので、武尊はドキドキしている。
玲が数歩先を歩き、武尊が後ろを付いて歩いたが、話しかける言葉が見つからず、無言になってしまう。武尊は女の子の扱い方を知らないので、こういう時、どんな言葉をかければいいかわからない。
無言で歩き続ける武尊と玲。気まずい雰囲気に、武尊はどうしたらいいか焦る。今日の天気は良いなとか、円安ドル高になったとか、ろくでもない話題しか思いつかない。前を歩くのは悪友だった玲なのに、なぜか緊張してしまう。
武尊が「どうしよどうしよ」と焦っていると、前を歩いていた玲が、ふわっとターンして、振り向いた。
「腹減ったな! 牛丼食っていこうぜ!」
「え? 牛丼?」
八重歯を見せて、二カッと笑っている玲。少しだけ、顔を赤くしている。玲は無言の空気が嫌だったのか、気を利かせて武尊に喋りかけた。
「おい、牛丼って、その格好でか? 俺は良いけど、お前、どこかのご令嬢って感じだぞ?」
「別にいいだろ。牛丼は俺のソウルフードだからな」
「ソウルフード? いつからお前のソウルフードになったんだよ」
「ははは。ずっと前からだな。ほら、行こうぜ!」
玲はトコトコと歩き、武尊に近寄る。自然な感じで近寄ると、武尊と手をつないだ。武尊のごつごつとした手が、玲のやわらかい手を包む。
「な、なんだよ。急に手をつないで」
「俺のナイト様なんだろ? だったら、ちゃんと近くで守って、俺を楽しませろ。無言で歩くな」
「な、なんだそりゃ。お前を楽しませる事まで仕事に入ってんのか?」
「当たり前だろ! ナイトは姫に尽くすもんだ! ははは!」
玲はカラカラと笑って、冗談を言う。
武尊はそんな玲を見て、「あっ、いつもの玲だ」と思った。
武尊は玲の行動がよく分からず少しドキドキしていたが、「牛丼食おうぜ」という玲に、安心した。美人になった玲にドギマギしていたが、女になっても、玲は玲だ。男の子と同じように、接すればいい。ただ、いつもより優しくエスコートしてやればいいだけだ。
武尊は玲の手をギュッとに握ると、こう言った。
「玲、その化粧とワンピース、似合ってるぜ」
「お! そうか! 似合ってるか! 安心したぜ! 気持ち悪いって言われるかと思って、ドキドキしてたんだ!」
「気持ち悪くなんかないさ。すげぇ、綺麗だと思うぜ」
「…………へへへ。そうか」
玲はつないだ武尊の手をブンブン振って、喜んだ。
「んじゃ! 牛丼特盛だな!」
「は? なんで特盛なんだよ。また残すんじゃねぇだろうな?」
「俺が残したら、武尊が食えばいいだろ。細かい事は気にすんなって!」
玲は最初から残す気満々だ。自分の残した食べ物を、武尊に食べてもらいたい感じだった。
「はぁ。ま、いいけどよ」
武尊は玲の頭をポンポンと叩いた。
「うわ! なにすんだ! 頭に触るな!」
「いや、ちょうどいい位置に頭があったからよ。他意は無い」
「馬鹿にされてるみたいだろ。やめろ!」
「ははは。玲の身長も縮んだから、手を置くのにちょうどいい高さだな」
「ふざけんな、どけろ!」
玲は頭を叩くな、撫でるなと、怒っていたが、顔は笑っていた。
おまけ
亜里沙の部屋にて。
「くうぅぅぅ!! 玲の奴! 女になったと思ったら、すぐに男を見つけて!」
亜里沙は部屋の中で地団太を踏む。
「今は玲のことを男として見てないからいいけど、やっぱりムカつくわ!!」
亜里沙はスマホを手に取り、女友達に連絡を取る。
「理子! そういえばあんた、合コン行くって言ってたわよね! あたしも行くわ!」
「えぇ!? あんたが行くの? 男と人数が合わなくなるよ!」
「知ったこっちゃないわ! あたしも行くから、場所を教えなさい!」
「え~……」
亜里沙の友人、理子は、とばっちりを受けてしまった。玲と武尊の幸せバカップルぶりに、頭にきたようだった。
もちろん、金が無い玲は出来る限り安く済ませたい。ということで、下着はある程度の物で、化粧品は出来るだけ100円ショップになった。
元男性の玲は、下着にや化粧品類に詳しくない。玲はデザインだけで選び、品質やメーカーの選択は亜里沙が担当することになった。サイズや細かいことは店員に任せるので、亜里沙は必要ないように思えるが、右も左もわからない玲には、亜里沙が必要だった。
ただ、亜里沙は胸が貧しかった。ぺったんこではないが、かなり小さい。
むしろ、玲の方が女らしい体をしている。背も高いし、お尻や胸もはちきれんばかりにムチムチしている。亜里沙が嫉妬するくらい、玲はグラマラスだ。
「あんた、信じられない体してるわね。男とは思えない肉体よ」
今、亜里沙と玲は服屋にいて、試着室で着替えていた。亜里沙は玲の下着をつける、手伝いをしてあげていた。
「しらねぇよ。胸が大きいのは、先生が遺伝だって言ってたぜ。子供時代の成長期とかないから、遺伝で大きくなったって言ってた」
玲は健康診断の時、担当医にいろいろと聞いていた。その一つに、胸の大きさも含まれていた。TS病での肉体変化は、両親の遺伝子が濃くあらわれる。母親の胸の大きさや、背の高い父親の遺伝子が、大きく関わっていた。
「ちっ。ふざけてるわ。途中から女になった奴が巨乳になると、ムカつくわね」
亜里沙は玲の大きな胸を、後ろから鷲掴みにした。試着室の中だから、遠慮が無かった。
「イタッ! そんなに強く掴むなよ!」
「くそう。私にもこれだけの胸があれば、彼氏も出来るのに」
亜里沙は玲の巨乳をギリギリと掴む。玲は亜里沙に胸を掴まれて悶絶する。
「は、離せ! 胸が千切れるだろうが!」
「チッ」
亜里沙は今も彼氏がいなかった。亜里沙は可愛いが、気の強い性格の所為で、男はいなかった。
それから亜里沙と玲は下着や服を買って化粧品をそろえた。玲の趣味ではなかったが、白のワンピースも買った。パーカーやレギンスだけではもったいないと、亜里沙が気を利かせたのだった。
★★★
玲は亜里沙の自宅に招かれ、今は化粧の仕方を学んでいた。
「まず保湿をするの。洗顔してから、美容液とか乳液をつけるの。化粧の乗りがよくなるわ」
「美容液か。まじか」
玲は自分が化粧をするとは思わず、複雑な気分である。玲は化粧をするような環境で育っていない。バンド活動をするために化粧をしたり、女装癖があったわけでもない。普通の男子高校生だったのだ。
「ほら! そこの洗面台で顔を洗って!」
玲は亜里沙に言われ、洗面所で顔を洗う。鏡を見ながら美容液の使い方を教わる。
「そうね。よく見たら眉毛とかきちんと整えてないし、眉毛を整えてからベースを塗ろうか」
「眉毛? ちゃんと整えてるだろ?」
玲は眉毛くらい、自分で整えている。かなり雑だが、ラインはきちんと出ている。
「無駄に飛びでた毛とかあるし、眉マスカラとか、パウダーとか、使ってないでしょう。いいから任せなさい」
亜里沙は武道に長け、サバサバした性格だが、自分磨きも忘れてはいない。化粧についても、それなりに詳しかった。
「わかった。教えてくれ」
「んじゃ、行くわよ」
「おう」
それから玲は亜里沙に化粧の仕方を学びながら、メイクをしてもらった。下地の作り方やファンデーションの扱い方を習った。亜里沙は化粧が上手いのか、玲はナチュラルな感じに仕上がった。
「すげえな。化粧ってやっぱり詐欺じゃねぇか?」
「うーん。詐欺とまでは言わないけど、やり方次第じゃない? 厚化粧に騙される男も悪いしね」
「そうなのか」
玲は化粧を施された自分を鏡で見て、驚く。特に目と唇がすごい。目だが、つけまつ毛とアイシャドウのおかげか、ぱっちりとした目に仕上がっている。唇もリップでプルプルしているように見える。まるでアイドルのような美しさだ。
「ここまで変われるものなのか」
「あんたはもともと美人顔だし、化粧をしたら綺麗になるのはあたり前よ」
「そうなのか? 俺って美人だったのか」
玲は自分の容姿が悪くないと思っていたが、まさか女になっても通用するとは思っていなかった。中性的な顔立ちが役に立った。
「あっ。そうだ。服屋で買ったワンピースを着なさいよ。それで完全に女の子じゃない?」
「え? 今着るのか?」
「そう。今着るの。ついでに、武尊も呼びましょう。女になったあんたを見たら、驚くわよ」
「は? ちょっと待て。なんで武尊が出てくるんだ」
「あんたの彼氏でしょ? 私も武尊が驚く顔が見たいしね」
そう言って亜里沙は、スマホで武尊に電話。玲がやめろと言ったが、武尊はすぐに来てくれることになった。
「マジか……」
★★★
一時間後、武尊が亜里沙の家にやってきた。
武尊は部屋に案内されて入ると、そこには白のワンピースを着て、化粧をした玲が鎮座していた。顔を上気させ、上目づかいに、武尊をチラチラと見ている。完全に、どこかのお嬢様という姿に、武尊は一撃でノックアウト。
「れ、玲? お前、玲か?」
「あぁそうだよ。なんだよ。わりぃかよ」
玲は頬を赤くして、うつむく。一つ一つの仕草が可愛らしく、武尊はグッと来てしまう。
「う、嘘だろ。こ、ここまで?」
武尊は玲の変わりように驚く。玲が着ていたワンピースはゆったりしていたが、胸やお尻が大きいので、出るところは出ている。
「どう武尊! 玲の化粧とコーディネート、あたしがやったんだよ!」
亜里沙がグイグイと武尊の背中を押す。もっと玲の近くに寄れと、武尊を押しまくる。
「ちょ、亜里沙ちゃん! 押さないでくれよ!」
「いいから! 彼氏なんでしょ!」
「彼氏ってそんな。俺は何のためにここへ呼ばれたんだ……」
武尊は玲を見る。玲は何かを期待している目で、武尊をじっと見ている。
「玲、そんな目で見るなよ」
「そ、そんな目って、どんな目だよ?」
玲は顔を真っ赤にしたまま、プイッとそっぽを向く。
そっぽを向かれた武尊は、どうしていいか分からずにあたふたしている。
亜里沙はそんな二人を見て、「これはもう、恋に落ちてるわね」とぼそっと呟いた。
★★★
亜里沙と別れた武尊と玲は、家に帰ることになった。武尊はいつものように玲を家まで送ることになったが、今は玲の格好がワンピースだ。化粧もばっちりキマっているので、武尊はドキドキしている。
玲が数歩先を歩き、武尊が後ろを付いて歩いたが、話しかける言葉が見つからず、無言になってしまう。武尊は女の子の扱い方を知らないので、こういう時、どんな言葉をかければいいかわからない。
無言で歩き続ける武尊と玲。気まずい雰囲気に、武尊はどうしたらいいか焦る。今日の天気は良いなとか、円安ドル高になったとか、ろくでもない話題しか思いつかない。前を歩くのは悪友だった玲なのに、なぜか緊張してしまう。
武尊が「どうしよどうしよ」と焦っていると、前を歩いていた玲が、ふわっとターンして、振り向いた。
「腹減ったな! 牛丼食っていこうぜ!」
「え? 牛丼?」
八重歯を見せて、二カッと笑っている玲。少しだけ、顔を赤くしている。玲は無言の空気が嫌だったのか、気を利かせて武尊に喋りかけた。
「おい、牛丼って、その格好でか? 俺は良いけど、お前、どこかのご令嬢って感じだぞ?」
「別にいいだろ。牛丼は俺のソウルフードだからな」
「ソウルフード? いつからお前のソウルフードになったんだよ」
「ははは。ずっと前からだな。ほら、行こうぜ!」
玲はトコトコと歩き、武尊に近寄る。自然な感じで近寄ると、武尊と手をつないだ。武尊のごつごつとした手が、玲のやわらかい手を包む。
「な、なんだよ。急に手をつないで」
「俺のナイト様なんだろ? だったら、ちゃんと近くで守って、俺を楽しませろ。無言で歩くな」
「な、なんだそりゃ。お前を楽しませる事まで仕事に入ってんのか?」
「当たり前だろ! ナイトは姫に尽くすもんだ! ははは!」
玲はカラカラと笑って、冗談を言う。
武尊はそんな玲を見て、「あっ、いつもの玲だ」と思った。
武尊は玲の行動がよく分からず少しドキドキしていたが、「牛丼食おうぜ」という玲に、安心した。美人になった玲にドギマギしていたが、女になっても、玲は玲だ。男の子と同じように、接すればいい。ただ、いつもより優しくエスコートしてやればいいだけだ。
武尊は玲の手をギュッとに握ると、こう言った。
「玲、その化粧とワンピース、似合ってるぜ」
「お! そうか! 似合ってるか! 安心したぜ! 気持ち悪いって言われるかと思って、ドキドキしてたんだ!」
「気持ち悪くなんかないさ。すげぇ、綺麗だと思うぜ」
「…………へへへ。そうか」
玲はつないだ武尊の手をブンブン振って、喜んだ。
「んじゃ! 牛丼特盛だな!」
「は? なんで特盛なんだよ。また残すんじゃねぇだろうな?」
「俺が残したら、武尊が食えばいいだろ。細かい事は気にすんなって!」
玲は最初から残す気満々だ。自分の残した食べ物を、武尊に食べてもらいたい感じだった。
「はぁ。ま、いいけどよ」
武尊は玲の頭をポンポンと叩いた。
「うわ! なにすんだ! 頭に触るな!」
「いや、ちょうどいい位置に頭があったからよ。他意は無い」
「馬鹿にされてるみたいだろ。やめろ!」
「ははは。玲の身長も縮んだから、手を置くのにちょうどいい高さだな」
「ふざけんな、どけろ!」
玲は頭を叩くな、撫でるなと、怒っていたが、顔は笑っていた。
おまけ
亜里沙の部屋にて。
「くうぅぅぅ!! 玲の奴! 女になったと思ったら、すぐに男を見つけて!」
亜里沙は部屋の中で地団太を踏む。
「今は玲のことを男として見てないからいいけど、やっぱりムカつくわ!!」
亜里沙はスマホを手に取り、女友達に連絡を取る。
「理子! そういえばあんた、合コン行くって言ってたわよね! あたしも行くわ!」
「えぇ!? あんたが行くの? 男と人数が合わなくなるよ!」
「知ったこっちゃないわ! あたしも行くから、場所を教えなさい!」
「え~……」
亜里沙の友人、理子は、とばっちりを受けてしまった。玲と武尊の幸せバカップルぶりに、頭にきたようだった。
20
あなたにおすすめの小説
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる