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24 亜里沙との休日
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今回、玲は亜里沙と一緒に女性物の下着と、化粧品類を買うことになった。
もちろん、金が無い玲は出来る限り安く済ませたい。ということで、下着はある程度の物で、化粧品は出来るだけ100円ショップになった。
元男性の玲は、下着にや化粧品類に詳しくない。玲はデザインだけで選び、品質やメーカーの選択は亜里沙が担当することになった。サイズや細かいことは店員に任せるので、亜里沙は必要ないように思えるが、右も左もわからない玲には、亜里沙が必要だった。
ただ、亜里沙は胸が貧しかった。ぺったんこではないが、かなり小さい。
むしろ、玲の方が女らしい体をしている。背も高いし、お尻や胸もはちきれんばかりにムチムチしている。亜里沙が嫉妬するくらい、玲はグラマラスだ。
「あんた、信じられない体してるわね。男とは思えない肉体よ」
今、亜里沙と玲は服屋にいて、試着室で着替えていた。亜里沙は玲の下着をつける、手伝いをしてあげていた。
「しらねぇよ。胸が大きいのは、先生が遺伝だって言ってたぜ。子供時代の成長期とかないから、遺伝で大きくなったって言ってた」
玲は健康診断の時、担当医にいろいろと聞いていた。その一つに、胸の大きさも含まれていた。TS病での肉体変化は、両親の遺伝子が濃くあらわれる。母親の胸の大きさや、背の高い父親の遺伝子が、大きく関わっていた。
「ちっ。ふざけてるわ。途中から女になった奴が巨乳になると、ムカつくわね」
亜里沙は玲の大きな胸を、後ろから鷲掴みにした。試着室の中だから、遠慮が無かった。
「イタッ! そんなに強く掴むなよ!」
「くそう。私にもこれだけの胸があれば、彼氏も出来るのに」
亜里沙は玲の巨乳をギリギリと掴む。玲は亜里沙に胸を掴まれて悶絶する。
「は、離せ! 胸が千切れるだろうが!」
「チッ」
亜里沙は今も彼氏がいなかった。亜里沙は可愛いが、気の強い性格の所為で、男はいなかった。
それから亜里沙と玲は下着や服を買って化粧品をそろえた。玲の趣味ではなかったが、白のワンピースも買った。パーカーやレギンスだけではもったいないと、亜里沙が気を利かせたのだった。
★★★
玲は亜里沙の自宅に招かれ、今は化粧の仕方を学んでいた。
「まず保湿をするの。洗顔してから、美容液とか乳液をつけるの。化粧の乗りがよくなるわ」
「美容液か。まじか」
玲は自分が化粧をするとは思わず、複雑な気分である。玲は化粧をするような環境で育っていない。バンド活動をするために化粧をしたり、女装癖があったわけでもない。普通の男子高校生だったのだ。
「ほら! そこの洗面台で顔を洗って!」
玲は亜里沙に言われ、洗面所で顔を洗う。鏡を見ながら美容液の使い方を教わる。
「そうね。よく見たら眉毛とかきちんと整えてないし、眉毛を整えてからベースを塗ろうか」
「眉毛? ちゃんと整えてるだろ?」
玲は眉毛くらい、自分で整えている。かなり雑だが、ラインはきちんと出ている。
「無駄に飛びでた毛とかあるし、眉マスカラとか、パウダーとか、使ってないでしょう。いいから任せなさい」
亜里沙は武道に長け、サバサバした性格だが、自分磨きも忘れてはいない。化粧についても、それなりに詳しかった。
「わかった。教えてくれ」
「んじゃ、行くわよ」
「おう」
それから玲は亜里沙に化粧の仕方を学びながら、メイクをしてもらった。下地の作り方やファンデーションの扱い方を習った。亜里沙は化粧が上手いのか、玲はナチュラルな感じに仕上がった。
「すげえな。化粧ってやっぱり詐欺じゃねぇか?」
「うーん。詐欺とまでは言わないけど、やり方次第じゃない? 厚化粧に騙される男も悪いしね」
「そうなのか」
玲は化粧を施された自分を鏡で見て、驚く。特に目と唇がすごい。目だが、つけまつ毛とアイシャドウのおかげか、ぱっちりとした目に仕上がっている。唇もリップでプルプルしているように見える。まるでアイドルのような美しさだ。
「ここまで変われるものなのか」
「あんたはもともと美人顔だし、化粧をしたら綺麗になるのはあたり前よ」
「そうなのか? 俺って美人だったのか」
玲は自分の容姿が悪くないと思っていたが、まさか女になっても通用するとは思っていなかった。中性的な顔立ちが役に立った。
「あっ。そうだ。服屋で買ったワンピースを着なさいよ。それで完全に女の子じゃない?」
「え? 今着るのか?」
「そう。今着るの。ついでに、武尊も呼びましょう。女になったあんたを見たら、驚くわよ」
「は? ちょっと待て。なんで武尊が出てくるんだ」
「あんたの彼氏でしょ? 私も武尊が驚く顔が見たいしね」
そう言って亜里沙は、スマホで武尊に電話。玲がやめろと言ったが、武尊はすぐに来てくれることになった。
「マジか……」
★★★
一時間後、武尊が亜里沙の家にやってきた。
武尊は部屋に案内されて入ると、そこには白のワンピースを着て、化粧をした玲が鎮座していた。顔を上気させ、上目づかいに、武尊をチラチラと見ている。完全に、どこかのお嬢様という姿に、武尊は一撃でノックアウト。
「れ、玲? お前、玲か?」
「あぁそうだよ。なんだよ。わりぃかよ」
玲は頬を赤くして、うつむく。一つ一つの仕草が可愛らしく、武尊はグッと来てしまう。
「う、嘘だろ。こ、ここまで?」
武尊は玲の変わりように驚く。玲が着ていたワンピースはゆったりしていたが、胸やお尻が大きいので、出るところは出ている。
「どう武尊! 玲の化粧とコーディネート、あたしがやったんだよ!」
亜里沙がグイグイと武尊の背中を押す。もっと玲の近くに寄れと、武尊を押しまくる。
「ちょ、亜里沙ちゃん! 押さないでくれよ!」
「いいから! 彼氏なんでしょ!」
「彼氏ってそんな。俺は何のためにここへ呼ばれたんだ……」
武尊は玲を見る。玲は何かを期待している目で、武尊をじっと見ている。
「玲、そんな目で見るなよ」
「そ、そんな目って、どんな目だよ?」
玲は顔を真っ赤にしたまま、プイッとそっぽを向く。
そっぽを向かれた武尊は、どうしていいか分からずにあたふたしている。
亜里沙はそんな二人を見て、「これはもう、恋に落ちてるわね」とぼそっと呟いた。
★★★
亜里沙と別れた武尊と玲は、家に帰ることになった。武尊はいつものように玲を家まで送ることになったが、今は玲の格好がワンピースだ。化粧もばっちりキマっているので、武尊はドキドキしている。
玲が数歩先を歩き、武尊が後ろを付いて歩いたが、話しかける言葉が見つからず、無言になってしまう。武尊は女の子の扱い方を知らないので、こういう時、どんな言葉をかければいいかわからない。
無言で歩き続ける武尊と玲。気まずい雰囲気に、武尊はどうしたらいいか焦る。今日の天気は良いなとか、円安ドル高になったとか、ろくでもない話題しか思いつかない。前を歩くのは悪友だった玲なのに、なぜか緊張してしまう。
武尊が「どうしよどうしよ」と焦っていると、前を歩いていた玲が、ふわっとターンして、振り向いた。
「腹減ったな! 牛丼食っていこうぜ!」
「え? 牛丼?」
八重歯を見せて、二カッと笑っている玲。少しだけ、顔を赤くしている。玲は無言の空気が嫌だったのか、気を利かせて武尊に喋りかけた。
「おい、牛丼って、その格好でか? 俺は良いけど、お前、どこかのご令嬢って感じだぞ?」
「別にいいだろ。牛丼は俺のソウルフードだからな」
「ソウルフード? いつからお前のソウルフードになったんだよ」
「ははは。ずっと前からだな。ほら、行こうぜ!」
玲はトコトコと歩き、武尊に近寄る。自然な感じで近寄ると、武尊と手をつないだ。武尊のごつごつとした手が、玲のやわらかい手を包む。
「な、なんだよ。急に手をつないで」
「俺のナイト様なんだろ? だったら、ちゃんと近くで守って、俺を楽しませろ。無言で歩くな」
「な、なんだそりゃ。お前を楽しませる事まで仕事に入ってんのか?」
「当たり前だろ! ナイトは姫に尽くすもんだ! ははは!」
玲はカラカラと笑って、冗談を言う。
武尊はそんな玲を見て、「あっ、いつもの玲だ」と思った。
武尊は玲の行動がよく分からず少しドキドキしていたが、「牛丼食おうぜ」という玲に、安心した。美人になった玲にドギマギしていたが、女になっても、玲は玲だ。男の子と同じように、接すればいい。ただ、いつもより優しくエスコートしてやればいいだけだ。
武尊は玲の手をギュッとに握ると、こう言った。
「玲、その化粧とワンピース、似合ってるぜ」
「お! そうか! 似合ってるか! 安心したぜ! 気持ち悪いって言われるかと思って、ドキドキしてたんだ!」
「気持ち悪くなんかないさ。すげぇ、綺麗だと思うぜ」
「…………へへへ。そうか」
玲はつないだ武尊の手をブンブン振って、喜んだ。
「んじゃ! 牛丼特盛だな!」
「は? なんで特盛なんだよ。また残すんじゃねぇだろうな?」
「俺が残したら、武尊が食えばいいだろ。細かい事は気にすんなって!」
玲は最初から残す気満々だ。自分の残した食べ物を、武尊に食べてもらいたい感じだった。
「はぁ。ま、いいけどよ」
武尊は玲の頭をポンポンと叩いた。
「うわ! なにすんだ! 頭に触るな!」
「いや、ちょうどいい位置に頭があったからよ。他意は無い」
「馬鹿にされてるみたいだろ。やめろ!」
「ははは。玲の身長も縮んだから、手を置くのにちょうどいい高さだな」
「ふざけんな、どけろ!」
玲は頭を叩くな、撫でるなと、怒っていたが、顔は笑っていた。
おまけ
亜里沙の部屋にて。
「くうぅぅぅ!! 玲の奴! 女になったと思ったら、すぐに男を見つけて!」
亜里沙は部屋の中で地団太を踏む。
「今は玲のことを男として見てないからいいけど、やっぱりムカつくわ!!」
亜里沙はスマホを手に取り、女友達に連絡を取る。
「理子! そういえばあんた、合コン行くって言ってたわよね! あたしも行くわ!」
「えぇ!? あんたが行くの? 男と人数が合わなくなるよ!」
「知ったこっちゃないわ! あたしも行くから、場所を教えなさい!」
「え~……」
亜里沙の友人、理子は、とばっちりを受けてしまった。玲と武尊の幸せバカップルぶりに、頭にきたようだった。
もちろん、金が無い玲は出来る限り安く済ませたい。ということで、下着はある程度の物で、化粧品は出来るだけ100円ショップになった。
元男性の玲は、下着にや化粧品類に詳しくない。玲はデザインだけで選び、品質やメーカーの選択は亜里沙が担当することになった。サイズや細かいことは店員に任せるので、亜里沙は必要ないように思えるが、右も左もわからない玲には、亜里沙が必要だった。
ただ、亜里沙は胸が貧しかった。ぺったんこではないが、かなり小さい。
むしろ、玲の方が女らしい体をしている。背も高いし、お尻や胸もはちきれんばかりにムチムチしている。亜里沙が嫉妬するくらい、玲はグラマラスだ。
「あんた、信じられない体してるわね。男とは思えない肉体よ」
今、亜里沙と玲は服屋にいて、試着室で着替えていた。亜里沙は玲の下着をつける、手伝いをしてあげていた。
「しらねぇよ。胸が大きいのは、先生が遺伝だって言ってたぜ。子供時代の成長期とかないから、遺伝で大きくなったって言ってた」
玲は健康診断の時、担当医にいろいろと聞いていた。その一つに、胸の大きさも含まれていた。TS病での肉体変化は、両親の遺伝子が濃くあらわれる。母親の胸の大きさや、背の高い父親の遺伝子が、大きく関わっていた。
「ちっ。ふざけてるわ。途中から女になった奴が巨乳になると、ムカつくわね」
亜里沙は玲の大きな胸を、後ろから鷲掴みにした。試着室の中だから、遠慮が無かった。
「イタッ! そんなに強く掴むなよ!」
「くそう。私にもこれだけの胸があれば、彼氏も出来るのに」
亜里沙は玲の巨乳をギリギリと掴む。玲は亜里沙に胸を掴まれて悶絶する。
「は、離せ! 胸が千切れるだろうが!」
「チッ」
亜里沙は今も彼氏がいなかった。亜里沙は可愛いが、気の強い性格の所為で、男はいなかった。
それから亜里沙と玲は下着や服を買って化粧品をそろえた。玲の趣味ではなかったが、白のワンピースも買った。パーカーやレギンスだけではもったいないと、亜里沙が気を利かせたのだった。
★★★
玲は亜里沙の自宅に招かれ、今は化粧の仕方を学んでいた。
「まず保湿をするの。洗顔してから、美容液とか乳液をつけるの。化粧の乗りがよくなるわ」
「美容液か。まじか」
玲は自分が化粧をするとは思わず、複雑な気分である。玲は化粧をするような環境で育っていない。バンド活動をするために化粧をしたり、女装癖があったわけでもない。普通の男子高校生だったのだ。
「ほら! そこの洗面台で顔を洗って!」
玲は亜里沙に言われ、洗面所で顔を洗う。鏡を見ながら美容液の使い方を教わる。
「そうね。よく見たら眉毛とかきちんと整えてないし、眉毛を整えてからベースを塗ろうか」
「眉毛? ちゃんと整えてるだろ?」
玲は眉毛くらい、自分で整えている。かなり雑だが、ラインはきちんと出ている。
「無駄に飛びでた毛とかあるし、眉マスカラとか、パウダーとか、使ってないでしょう。いいから任せなさい」
亜里沙は武道に長け、サバサバした性格だが、自分磨きも忘れてはいない。化粧についても、それなりに詳しかった。
「わかった。教えてくれ」
「んじゃ、行くわよ」
「おう」
それから玲は亜里沙に化粧の仕方を学びながら、メイクをしてもらった。下地の作り方やファンデーションの扱い方を習った。亜里沙は化粧が上手いのか、玲はナチュラルな感じに仕上がった。
「すげえな。化粧ってやっぱり詐欺じゃねぇか?」
「うーん。詐欺とまでは言わないけど、やり方次第じゃない? 厚化粧に騙される男も悪いしね」
「そうなのか」
玲は化粧を施された自分を鏡で見て、驚く。特に目と唇がすごい。目だが、つけまつ毛とアイシャドウのおかげか、ぱっちりとした目に仕上がっている。唇もリップでプルプルしているように見える。まるでアイドルのような美しさだ。
「ここまで変われるものなのか」
「あんたはもともと美人顔だし、化粧をしたら綺麗になるのはあたり前よ」
「そうなのか? 俺って美人だったのか」
玲は自分の容姿が悪くないと思っていたが、まさか女になっても通用するとは思っていなかった。中性的な顔立ちが役に立った。
「あっ。そうだ。服屋で買ったワンピースを着なさいよ。それで完全に女の子じゃない?」
「え? 今着るのか?」
「そう。今着るの。ついでに、武尊も呼びましょう。女になったあんたを見たら、驚くわよ」
「は? ちょっと待て。なんで武尊が出てくるんだ」
「あんたの彼氏でしょ? 私も武尊が驚く顔が見たいしね」
そう言って亜里沙は、スマホで武尊に電話。玲がやめろと言ったが、武尊はすぐに来てくれることになった。
「マジか……」
★★★
一時間後、武尊が亜里沙の家にやってきた。
武尊は部屋に案内されて入ると、そこには白のワンピースを着て、化粧をした玲が鎮座していた。顔を上気させ、上目づかいに、武尊をチラチラと見ている。完全に、どこかのお嬢様という姿に、武尊は一撃でノックアウト。
「れ、玲? お前、玲か?」
「あぁそうだよ。なんだよ。わりぃかよ」
玲は頬を赤くして、うつむく。一つ一つの仕草が可愛らしく、武尊はグッと来てしまう。
「う、嘘だろ。こ、ここまで?」
武尊は玲の変わりように驚く。玲が着ていたワンピースはゆったりしていたが、胸やお尻が大きいので、出るところは出ている。
「どう武尊! 玲の化粧とコーディネート、あたしがやったんだよ!」
亜里沙がグイグイと武尊の背中を押す。もっと玲の近くに寄れと、武尊を押しまくる。
「ちょ、亜里沙ちゃん! 押さないでくれよ!」
「いいから! 彼氏なんでしょ!」
「彼氏ってそんな。俺は何のためにここへ呼ばれたんだ……」
武尊は玲を見る。玲は何かを期待している目で、武尊をじっと見ている。
「玲、そんな目で見るなよ」
「そ、そんな目って、どんな目だよ?」
玲は顔を真っ赤にしたまま、プイッとそっぽを向く。
そっぽを向かれた武尊は、どうしていいか分からずにあたふたしている。
亜里沙はそんな二人を見て、「これはもう、恋に落ちてるわね」とぼそっと呟いた。
★★★
亜里沙と別れた武尊と玲は、家に帰ることになった。武尊はいつものように玲を家まで送ることになったが、今は玲の格好がワンピースだ。化粧もばっちりキマっているので、武尊はドキドキしている。
玲が数歩先を歩き、武尊が後ろを付いて歩いたが、話しかける言葉が見つからず、無言になってしまう。武尊は女の子の扱い方を知らないので、こういう時、どんな言葉をかければいいかわからない。
無言で歩き続ける武尊と玲。気まずい雰囲気に、武尊はどうしたらいいか焦る。今日の天気は良いなとか、円安ドル高になったとか、ろくでもない話題しか思いつかない。前を歩くのは悪友だった玲なのに、なぜか緊張してしまう。
武尊が「どうしよどうしよ」と焦っていると、前を歩いていた玲が、ふわっとターンして、振り向いた。
「腹減ったな! 牛丼食っていこうぜ!」
「え? 牛丼?」
八重歯を見せて、二カッと笑っている玲。少しだけ、顔を赤くしている。玲は無言の空気が嫌だったのか、気を利かせて武尊に喋りかけた。
「おい、牛丼って、その格好でか? 俺は良いけど、お前、どこかのご令嬢って感じだぞ?」
「別にいいだろ。牛丼は俺のソウルフードだからな」
「ソウルフード? いつからお前のソウルフードになったんだよ」
「ははは。ずっと前からだな。ほら、行こうぜ!」
玲はトコトコと歩き、武尊に近寄る。自然な感じで近寄ると、武尊と手をつないだ。武尊のごつごつとした手が、玲のやわらかい手を包む。
「な、なんだよ。急に手をつないで」
「俺のナイト様なんだろ? だったら、ちゃんと近くで守って、俺を楽しませろ。無言で歩くな」
「な、なんだそりゃ。お前を楽しませる事まで仕事に入ってんのか?」
「当たり前だろ! ナイトは姫に尽くすもんだ! ははは!」
玲はカラカラと笑って、冗談を言う。
武尊はそんな玲を見て、「あっ、いつもの玲だ」と思った。
武尊は玲の行動がよく分からず少しドキドキしていたが、「牛丼食おうぜ」という玲に、安心した。美人になった玲にドギマギしていたが、女になっても、玲は玲だ。男の子と同じように、接すればいい。ただ、いつもより優しくエスコートしてやればいいだけだ。
武尊は玲の手をギュッとに握ると、こう言った。
「玲、その化粧とワンピース、似合ってるぜ」
「お! そうか! 似合ってるか! 安心したぜ! 気持ち悪いって言われるかと思って、ドキドキしてたんだ!」
「気持ち悪くなんかないさ。すげぇ、綺麗だと思うぜ」
「…………へへへ。そうか」
玲はつないだ武尊の手をブンブン振って、喜んだ。
「んじゃ! 牛丼特盛だな!」
「は? なんで特盛なんだよ。また残すんじゃねぇだろうな?」
「俺が残したら、武尊が食えばいいだろ。細かい事は気にすんなって!」
玲は最初から残す気満々だ。自分の残した食べ物を、武尊に食べてもらいたい感じだった。
「はぁ。ま、いいけどよ」
武尊は玲の頭をポンポンと叩いた。
「うわ! なにすんだ! 頭に触るな!」
「いや、ちょうどいい位置に頭があったからよ。他意は無い」
「馬鹿にされてるみたいだろ。やめろ!」
「ははは。玲の身長も縮んだから、手を置くのにちょうどいい高さだな」
「ふざけんな、どけろ!」
玲は頭を叩くな、撫でるなと、怒っていたが、顔は笑っていた。
おまけ
亜里沙の部屋にて。
「くうぅぅぅ!! 玲の奴! 女になったと思ったら、すぐに男を見つけて!」
亜里沙は部屋の中で地団太を踏む。
「今は玲のことを男として見てないからいいけど、やっぱりムカつくわ!!」
亜里沙はスマホを手に取り、女友達に連絡を取る。
「理子! そういえばあんた、合コン行くって言ってたわよね! あたしも行くわ!」
「えぇ!? あんたが行くの? 男と人数が合わなくなるよ!」
「知ったこっちゃないわ! あたしも行くから、場所を教えなさい!」
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