7ガツ5カのアナタ

海棠エマ(水無月出版)

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2024年1月

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2024年 1月

 「お酒買って部屋で飲もうぜ」
 めぐが手前の冷蔵庫から取り出したビール瓶を掲げて茗に行った。
 「私ら以外部屋帰っているし、2人で楽しくやろー!」
 夕飯時にお酒を飲んだ母はもうすでに酔っ払っていた。
 今2人はハワイにいる。家族旅行と称して、祖母とめぐの弟、そしてめぐ茗親子の4人で楽しむ久しぶりの旅行だった。
 ワイキキビーチの手前、夕日がお店の入り口海と共に見える、薄紫の空と濃い青の海のマッチがとても素敵に見えた。
 「ダイアモンドヘッドも行ったし、海にも入った。かなり思い切ったけど、来れて良かったよね。冬に楽しむ夏って本当に贅沢だね」
そう、めぐが言った瞬間、けたたましい音声が鳴り響いた。
 『地震です。地震です。強い揺れに注意してください。地震です。地震です。強い揺れに注意してください』
 日本人なら絶対一回は聞いたことのある音。地震警報音だ。
 「なに?え?地震?ハワイで?」
 パニックになった茗は慌てて携帯を取り出した。めぐの携帯も茗の携帯も地震の来襲を告げていた。お店にはほかにも日本人観光客が訪れていたらしく、かなりうるさかった。めぐも慌てているがその手にはしっかりと酒瓶が握られている。


*5分後*

 「ハワイに揺れが来るのかと思った…」
 「能登だったね…」
 茗がつぶやくと自分に向けての言葉だと思っためぐが言った。
 「久しぶりだったから地震警報びっくりしたわー」
 めぐは少し呑気に地震を捉えていたが、その呑気さは翌朝完璧に変わってしまった。
「地震、大変そうだよ」
「こんなこと言って良いのかわかんないけど、今日本にいなくて良かった…」
 茗は本心だった。そして、めぐもそれに同意した。
 「2025年って来年だよね。あと一年半。本当に都市伝説なのかな。それとも本当に起こることなのかな?」茗は、説明できない不安を抱えはじめていた。
 「防災グッズもう一回見直すわ」めぐが言った。
 
***

 地震、津波、噴火、疫病。日本を襲う災害は数知れない。もしその全てが一度に来たら?
 『周りの人間と助け合えば乗り越えられると思うんだよね。パンデミックもそうだったでしょ?』
 近藤の声が頭によみがえる。確かに、乗り越えられるだろう。だって人間だもの。人間の生命力は凄まじいのだ。
 「去年、いや一昨年か金沢行ったな。能登って金沢の近くだよね」
 被った場所でないとはいえ、帰国してから見た能登被害状況を報道した画面に、茗は凄まじい驚きを隠せずにはいられなかった。
 昨日まで見ていた景色がなくなるってどんな気分だろう。右側にあったはずの団地、左側にあったはずの家屋の群れ。それらが一夜にして瓦礫にかわり、目の前に広がるのだ。それは、宝物を失くすのと同じくらい辛いことのはずだ。それは即ち、日常を失うことだ。失くしてからその大切さに気づくものだとよく人は言うが、茗は「もう大切さには気づいているから失くしたくない」と言う気持ちの方が強かった。
 誰かが言った。東京がなくなるかもしれない、と。
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