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1-3:悪役令嬢レティシア・ウォールトンの誤算
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幽閉塔にきて約二ヶ月。
レティシアは居室を見回してぼそりと呟いた。
「部屋が、花に侵食されていく……」
マントルピースの水盤から咲きこぼれる白バラは、昨日フレデリックが持ってきたものだ。
小さく丸い花がいくつもついた蔓バラで、王城の庭園に咲くレティシアお気に入りの品種である。
鉄格子の代わりに植物紋様の鉄製レリーフをはめ直した窓辺も。
石膏細工の花台の花瓶は、最初は小さいものだったのが、いまは両腕で抱える壺になっている。
「本当にもう~っ!」
薄紅から薄紫の数本の花に、繊細な葉が美しいグリーンが追加され、翌日にはアクセントになる茜色の薄く透ける花弁を重ねた大輪の花。
一日置いて、淡い空色の小花つける細い蔓植物……と、日に日に増える花を足していったら壺になった。
ご丁寧に日持ちするよう保存魔法がかけてある。
円卓の上を飾るサーモンピンクのバラは……たしか三日前。
「ちゃんと取り合わせも考えられててマメすぎる! 毎日のように、王太子って暇なの!?」
「愛ですわね」
寝室も図書室も廊下も階段も同様の状態だ。
「絶対、人をからかって楽しんでる!」
「婚約者なのに、かたくなにそう思うお嬢様が不思議です」
侍女の言葉に、だってそれは幼馴染みだし、子供の頃の延長で……と、もごもご両手の指の先を合わせレティシアは言い澱む。
(フレデリックは小説の登場人物。いまは仲がいい親戚の子みたいなもの。子供の頃は病弱で、背もわたしより低くて、そこらの美少女よりかわいくて……)
当時は立場が弱そうだった王子に、宰相家の後ろ盾を意図した婚約なのは明らかだった。
フレデリックのことは好きだけれど、恋とか愛とかそういった好きかと考えるとレティシアは戸惑う。
「いや、愛はあるかな、成長を見守ってきた的な……」
「お認めになったほうが楽になれますよ、ほらっ、さあ!」
「あなたは黙ってて」
「若いって、素晴らしいですわね」
侍女の生温いまなざしに、若くないとレティシアは心の中で反論する。
だって前世享年二十五歳プラス十八歳で、四十三。
だめだ十八の王子なんて犯罪すぎる。
そう思うものの、実際は子供から大人になるのを二度繰り返しているだけだ。
レティシアは寝椅子に座ってクッションを抱え、ぽすんと横になった。
(キスされて抱きしめられたけど。そもそも普段から挨拶で頬や額は普通だったし、そこまで深い意味ではないのかもだし……)
急に大人の男の人みたいになってと、わずかに目を伏せる。
レティシアが引き離そうとしても、全然びくともしなかった。
(この世界は十五、六歳で大人扱いされる。王太子って立場もあるからかな)
それに彼の尋ねる通り、ちくんとはした。
大広間の階段で、フレデリックとアリシアが寄り添う姿を見て。
嫉妬というよりは、仲のいい幼馴染を取られた気がしてだ。だから砂粒ひとつと答えた。
アリシアは、レティシアが思っていたようなヒロインとはどうやら違っていたようだけれど。
(小説と現実は違う)
物語は、孤児院で奉仕活動をしていたヒロインと、視察で訪れたフレデリックが出会い、親しくなり、ヒロインの身に降りかかる事件を通じて恋を深め、黒幕の公爵令嬢を断罪して結ばれるまで。
その期間はたった八ヶ月。ヒロイン視点で語られ、その前後はない。
レティシアとフレデリックが八歳から積み重ねてきた時間も、関係性も、一切書かれていない。
生まれた時から時間はひとつながりだ。そして物語が終わっても人生は続く。
「誤算……」
「なにが?」
ひょいと頭上を覆った影に、レティシアは心臓がはねるほど驚いた。
視界に淡い金髪がきらめき、花の香りが鼻腔をくすぐって、額を掠めるだけの挨拶の口付けが降ってくる。
挨拶なのに少しどきりとする。一瞬だけ、息が詰まり胸の奥が苦しいような……そんなどきりを打ち消すため、レティシアはがばっと勢いよく起き上がった。
「無断で入らないっ!」
「衛兵にも看守にも君の侍女にも伝えている」
「お嬢様。王太子殿下がいらっしゃいましたと、お声がけはしました」
「ね?」
ね、じゃない。でも侍女が声をかけていたなら、これ以上非難できない。
聞こえなかったのは、目の前にいるフレデリックのことを考えてだから余計に。
「もう花は……」
「そうだね、次からお菓子にしようか。それとも本?」
顰め面でレティシアが言う前に、右耳の上にすっと青紫の一輪を挿して飾られる。
とうとうレティシア自身も侵食されてしまった……。
それに次からって、まだここに通う気なのだろうか。
公には断罪ではなく保護のためでも、幽閉塔に送らないといけない婚約者なんて難ありだ。
近づくのも憚られる場所なのに、王太子の立場なのによくないのではとレティシアは心配になる。
「ここはいいね、静かで」
細めた青い瞳が綺麗でなんだか毒気を抜かれてしまう。
なんとなく促されてレティシアが端に寄ると、隣に座ったフレデリックは疲れたとこぼした。
「昼寝ができるレティが羨ましい」
「ええ、だから出ませんからね」
レティシアを羨ましがりながら、ごく自然に寄りかかってきた彼が膝に頭を乗せてくる。
左手を伸ばしレティシアの髪を弄び始めたのを、払い除けようとして止めた。本当に疲れている時の声色だから諦めて好きにさせる。
前世社会人だから、つい年上ぶってフレデリックの世話を焼いていたためか、時折甘えてくる時がある。
寝椅子から長い足がかなりはみ出す、大きな図体をしているのに。
「一度は裁かれ世間を騒がせたからじゃなかったの? 単純にさぼりたいからみたいに聞こえる」
薄々勘づかれているとわかっている。少し意地になっている自覚もある。
王太子妃の重責も、貴族の義務も、億劫だけど耐えられないほどじゃない。
見たくなかった、断罪エンド後の……その先を。
後ろめたさを誤魔化して侍女に目配せすると、侍女はレティシアの書き物机から四つ折りの紙を取り出し、フレデリックに渡した。
来月の献立案だ。レティシアは前世で管理栄養士だった。
(まさか前世の仕事を今世でもやるとは……楽しいからいいけど)
いまはそうでもないけれど、王侯貴族の食事は贅沢さ重視で、栄養や年齢や体調に合わせてといった概念がなかった。ある日、病床のフレデリックを見舞いその配慮のなさを知って以来、成り行きで彼の献立監修をしている。
「ありがとう。料理長に渡しておく」
「もういいかなと思いましたが、作っちゃったので」
「何年も当たり前に書いてくれるけど、よく考えるよね……もう木苺が出る時期か」
原作は大事。そう考えて断罪エンドを迎え、フレデリックの人生から退場したつもりだった。
けれども好物を思い浮かべて表情を緩ませる、彼との時間が続いていることに、レティシアは身勝手ながらほっとしている。
「レティ、王太子の私を作ったのは君だ。さぼるのはいいけど約束は守ってほしい」
「約束?」
「大人達が決めたのとは別の、私と結婚する約束。まさか忘れた?」
「いえ……」
レティシアの髪を指に巻きつけ、じっと圧の強い眼差しで見つめるフレデリックに困惑する。
世の令嬢達がうっとりしそうな彼の言葉だけれど、レティシアの記憶では幼稚園児が「大人になったら先生と結婚する」と口走るのに似た……そう思っていた。結構、最近まで。
「あっ、そうそう。君が取り替えた窓の鉄格子。装飾的で防犯にいいって貴族から鍛治工房に注文が殺到している。建材ギルドと揉めて、大きめの商会から仲裁依頼が王城に回ってきた」
「え?」
「この塔、“北の宮”とか“北の離宮”って呼ばれてるらしいよ」
「んん?」
「君を匿うためと公表したからかな。かつて幽閉塔だった休眠施設を君の離宮にしたって、皆が“勝手に”思ったようだ。父上もなら私的別荘ってことでいいだろうって」
「そんな雑な、離宮認定あります!?」
思わずレティシアは声を張り上げてしまった。
これはもしや、小さくてかわいかった男の子に捕まったのではないのだろうか。
いまもレティシアは彼の婚約者のまま。誤算だ……本当に。
*****
八歳の時に引き合わされた婚約者。
フレデリックにとって、レティシアは出会った時から特別である。
型通りの挨拶を交わし、「よろしくね」と言った彼女に少しばかり面食らった。
なぜか彼女は、完全にフレデリックを年下の小さい子として見ていた。
大人のように挨拶しても、綺麗な髪や装いを褒めても流される。それも侍女や乳母のような微笑ましいといった表情で。一言で表現すれば彼女は「変」だった。
(面倒だから、会話は聞き役に徹する気でいたけれど……)
レティシアは、「フレデリック様は食べ物はなにが好きですか?」「今日はなにをしてましたか?」「王城で迷子になったりしませんか?」「秘密通路の噂は本当?」「国王陛下や王妃様って普段はどんな感じなの?」などなど、貴族令嬢としてどうかと思う質問もあったけれど、屈託なくにこにこと彼の話を聞きたがる。
藤色の瞳は、フレデリック自身を見ていた。
王子ではなく、政略結婚の相手でもなく。
レティシアが興味を向けるのは、いつもフレデリック自身なのだ。
(変な子だけど……可愛い)
そんなレティシアの「変な令嬢」ぶりは、フレデリックが長く体調を崩した時に最高潮を迎えた。
ある日、フレデリックを見舞いにきたレティシアは、“豪華だが食べる気がしない”彼の食事を見て、「弱った子供になによこれは!」と烈火のごとく怒りだした。
さらにフレデリックの侍女や侍従、専属料理人まで呼びつけ、目の前で「療養食とは」と、食材の効能など語りだした。
医官も呼ばれて問いただされ「え、胃腸が弱いとわかってて!?」「まさか、いやがらせ!?」「陛下や王妃様はご存じなの!?」と怒り狂うレティシアに、全員真っ青になって震えていた。
レティシアは当時十歳。しかし王子の婚約者で公爵令嬢だから大人といえども逆らえない。
「この部屋に入った時から思っていたの。お城の人達、王子を治す気があるのかしらって!」
何人かぎくっと顔をこわばらせた者がいて、フレデリックは覚えて後日解雇しようとベッドの中で思った。
以降、レティシア監修のもと、フレデリックの食事や居住区画の衛生管理が徹底されるようになった。
一部のことでも十歳で王城の一画を取り仕切る。
王妃の資質十分だ。変な令嬢でも、さすが歴代宰相を務める公爵家の娘だった。
衰弱しかけていたフレデリックは持ち直し、食も増えた。
重いカーテンに閉ざされていた窓も、開かれるようになった。
「お加減はいかがですか?」
窓から入る穏やかな陽の光が明るく、空気も清浄なフレデリックの部屋に、花束を手にレティシアがやってくる。銀色の髪が綺麗な可憐で愛らしい婚約者。
「ずいぶんよくなったよ」
「よかった。あ、聞いてください。弟ができるんです!」
「へえ、それは公爵夫人に懐妊のお祝いを贈らないとね」
「え、違います。お父様が養子を迎えるって」
「ん?」
養子というのが引っ掛かる。
ベッドから身を起こしてフレデリックが尋ねれば、遠い親戚の子供を引き取るという。すぐさま後継者に違いないと、彼は察した。
フレデリックは自分の立場をよく理解していた。ウォールトン公爵が忠臣であると同時に、狡猾な人物であることも。王子として頼りにならないとフレデリックを見限った後、王家に嫁ぐ必要がなくなったレティシアの入婿候補もきっと兼ねている。
「未来の弟か、落ち着いたら紹介して」
フレデリックは、ベッド脇の椅子に座るレティシアに呼びかけ、その手を取った。
「婚約自体は王家から持ちかけたものだけど、それとは別に約束しよう。レティシア、王太子になったら結婚してくれる?」
「……いいですよ」
しばしじっと思案げにフレデリックを見つめた後、にっこり微笑んだレティシアを絶対に離すまいと、彼は彼の意思で決めた。
(まずは意地でも健康で丈夫な体になる。王子として完璧な教養や立ち居振る舞い、父上や公爵にならい王族としてやっていく術を身につけなければ……彼女の天真爛漫さは守れない)
十歳の王子の決意は固く、数年でみるみるうちに人々の評価を覆した。
そして、現在に至る――。
*****
この膝枕はいつまで続ければって表情だと、とりとめのない会話を続けながら、フレデリックはレティシアの顔を見上げて考える。
ふと思いついて、とりとめない会話に貴族達の長々とした議論で時間を食いつぶされた議題を混ぜたら、ものの数分で解決の糸口がつかめてしまった。
「……こんなに簡単に目処が立つなら、最初からここで過ごせばよかった」
足が痺れてもかわいそうだ。フレデリックは身を起こして彼女の隣に座り直す。
混ぜた話は、失脚したバルドズ卿の資産処理。
立派過ぎて買い手がつかない、両翼建ての王都屋敷の使い道だ。
一度、伯爵夫人のお茶会に招かれことがあるレティシアは、あの屋敷に注目していたらしい。
「もしかして、伯爵家から屋敷を奪うことでも考えていた?」
「どうしてそんな物騒なことになるのっ!」
むくれるのは可愛いけれど、「あの屋敷のサロン、庭に面して明るくてティールームを開業したらよさそうで……」と語るのを聞いたら、どう考えてもそういった計画だと誰もが思う。
まさか公爵家を出奔し、自活するつもりでいたのだろうか。だとしたら油断できない。
「そうではなく。ただの趣味ですっ。よそのお屋敷を見てあれこれ考えるの楽しいでしょ?」
「……うん、そんな愉快な趣味は君くらいだろうね」
成長しても、レティシアの「変な令嬢」ぶりは健在だ。
幽閉塔のなかにいてさえ大商会が頭を抱える利権を発生させ、昔と変わらずフレデリックを王家を助ける。
「両翼の棟を、新興貴族向けの貸住居と商用施設に分け、王城を窓口に人を雇って育成する案は悪くないけど……どうしてそういうのぱっと出てくるのかな」
前例がなく型破りだが、実現不可能でもない。貴族・商人・平民それぞれに利益がある。
(これだから父上が「多少の便宜は図るから、ウォールトンの娘を絶対逃すな!」などと……公爵が娘は王妃の地位など望んでいないと伝えているから……言われなくても逃す気はないけれど)
この塔は、父の言葉通り私的別荘にしようとフレデリックは考える。
王太子ゆえに容易に外出できない彼にとって、塔が王城敷地内という利点は大きい。城内の延長で簡単に行き来できる。逃亡と侵入防止結界付きなのもいい。レティシアが勝手に出ていく心配もなく、侵入防止結界は登録した者と王族しか通れない。
(いいこと尽くめだ。誰にも邪魔されずレティを独占できる)
「あの、お茶でも用意しましょうか?」
「レティ、そんなにここから出たくない? だったら出なくてもいいよ」
レティシアが尋ねてきたのとほぼ同時に、彼女の右頬にそっと手を添えてフレデリックはにっこり微笑んだ。
「え?」
「でも出たくなったらいつでも言って、逃亡防止結界は登録したままだから」
「え、でも……あれ、まって、なにかおかし……」
「おかしくない。私は婚約者の望みは叶えるよ……レティ、だから約束守って」
「えっ……え? 出なくてのんびりでも約束で……出たら以前と同じく色々と……」
両手の指を動かしぶつぶつと口の中で呟き、考え込んでいるレティシアを横目に、フレデリックは涼しい顔で彼女の侍女にお茶を頼む。
すぐに天板付きのティーワゴンに用意された、お茶が出てきた。
「お見事です」
「まあね」
給仕だけして、すっと退室するなんて優秀な侍女だ。
お茶だよと、頭を抱えているレティシアに声を掛ければ銀髪を揺らし、藤色の瞳がフレデリックを縋るように見上げる。
戸惑っている様子が可愛い。
少しずつ、少しずつ、好きになってと願いながら側にいた。
彼女の右耳の上に挿した花が目に入って、その近くに口付ける。
これまで額や頬に口付けても挨拶の延長、何度甘く囁いても白いままだった頬に赤みが差すのを見て、口元がゆるみそうになる。レティシアがフレデリックを意識してくれるのを待ち、我慢できなくもなりそうで唇は避けていたけれど、効果はあったようだ。
「そういえば、誤算ってなに?」
「断罪エンド後の悪役令嬢なのに……毎日のようにやってくるから……」
「ふうん。悪い令嬢なら、きちんと閉じ込めて様子を見にいくのは当然だ」
レティと囁いて、フレデリックは今度はちゃんと口付けた。
先日みたいに軽く触れ合わせるのじゃない、お茶を飲む前から口の中が熱くなるような口付けだった。
レティシアは居室を見回してぼそりと呟いた。
「部屋が、花に侵食されていく……」
マントルピースの水盤から咲きこぼれる白バラは、昨日フレデリックが持ってきたものだ。
小さく丸い花がいくつもついた蔓バラで、王城の庭園に咲くレティシアお気に入りの品種である。
鉄格子の代わりに植物紋様の鉄製レリーフをはめ直した窓辺も。
石膏細工の花台の花瓶は、最初は小さいものだったのが、いまは両腕で抱える壺になっている。
「本当にもう~っ!」
薄紅から薄紫の数本の花に、繊細な葉が美しいグリーンが追加され、翌日にはアクセントになる茜色の薄く透ける花弁を重ねた大輪の花。
一日置いて、淡い空色の小花つける細い蔓植物……と、日に日に増える花を足していったら壺になった。
ご丁寧に日持ちするよう保存魔法がかけてある。
円卓の上を飾るサーモンピンクのバラは……たしか三日前。
「ちゃんと取り合わせも考えられててマメすぎる! 毎日のように、王太子って暇なの!?」
「愛ですわね」
寝室も図書室も廊下も階段も同様の状態だ。
「絶対、人をからかって楽しんでる!」
「婚約者なのに、かたくなにそう思うお嬢様が不思議です」
侍女の言葉に、だってそれは幼馴染みだし、子供の頃の延長で……と、もごもご両手の指の先を合わせレティシアは言い澱む。
(フレデリックは小説の登場人物。いまは仲がいい親戚の子みたいなもの。子供の頃は病弱で、背もわたしより低くて、そこらの美少女よりかわいくて……)
当時は立場が弱そうだった王子に、宰相家の後ろ盾を意図した婚約なのは明らかだった。
フレデリックのことは好きだけれど、恋とか愛とかそういった好きかと考えるとレティシアは戸惑う。
「いや、愛はあるかな、成長を見守ってきた的な……」
「お認めになったほうが楽になれますよ、ほらっ、さあ!」
「あなたは黙ってて」
「若いって、素晴らしいですわね」
侍女の生温いまなざしに、若くないとレティシアは心の中で反論する。
だって前世享年二十五歳プラス十八歳で、四十三。
だめだ十八の王子なんて犯罪すぎる。
そう思うものの、実際は子供から大人になるのを二度繰り返しているだけだ。
レティシアは寝椅子に座ってクッションを抱え、ぽすんと横になった。
(キスされて抱きしめられたけど。そもそも普段から挨拶で頬や額は普通だったし、そこまで深い意味ではないのかもだし……)
急に大人の男の人みたいになってと、わずかに目を伏せる。
レティシアが引き離そうとしても、全然びくともしなかった。
(この世界は十五、六歳で大人扱いされる。王太子って立場もあるからかな)
それに彼の尋ねる通り、ちくんとはした。
大広間の階段で、フレデリックとアリシアが寄り添う姿を見て。
嫉妬というよりは、仲のいい幼馴染を取られた気がしてだ。だから砂粒ひとつと答えた。
アリシアは、レティシアが思っていたようなヒロインとはどうやら違っていたようだけれど。
(小説と現実は違う)
物語は、孤児院で奉仕活動をしていたヒロインと、視察で訪れたフレデリックが出会い、親しくなり、ヒロインの身に降りかかる事件を通じて恋を深め、黒幕の公爵令嬢を断罪して結ばれるまで。
その期間はたった八ヶ月。ヒロイン視点で語られ、その前後はない。
レティシアとフレデリックが八歳から積み重ねてきた時間も、関係性も、一切書かれていない。
生まれた時から時間はひとつながりだ。そして物語が終わっても人生は続く。
「誤算……」
「なにが?」
ひょいと頭上を覆った影に、レティシアは心臓がはねるほど驚いた。
視界に淡い金髪がきらめき、花の香りが鼻腔をくすぐって、額を掠めるだけの挨拶の口付けが降ってくる。
挨拶なのに少しどきりとする。一瞬だけ、息が詰まり胸の奥が苦しいような……そんなどきりを打ち消すため、レティシアはがばっと勢いよく起き上がった。
「無断で入らないっ!」
「衛兵にも看守にも君の侍女にも伝えている」
「お嬢様。王太子殿下がいらっしゃいましたと、お声がけはしました」
「ね?」
ね、じゃない。でも侍女が声をかけていたなら、これ以上非難できない。
聞こえなかったのは、目の前にいるフレデリックのことを考えてだから余計に。
「もう花は……」
「そうだね、次からお菓子にしようか。それとも本?」
顰め面でレティシアが言う前に、右耳の上にすっと青紫の一輪を挿して飾られる。
とうとうレティシア自身も侵食されてしまった……。
それに次からって、まだここに通う気なのだろうか。
公には断罪ではなく保護のためでも、幽閉塔に送らないといけない婚約者なんて難ありだ。
近づくのも憚られる場所なのに、王太子の立場なのによくないのではとレティシアは心配になる。
「ここはいいね、静かで」
細めた青い瞳が綺麗でなんだか毒気を抜かれてしまう。
なんとなく促されてレティシアが端に寄ると、隣に座ったフレデリックは疲れたとこぼした。
「昼寝ができるレティが羨ましい」
「ええ、だから出ませんからね」
レティシアを羨ましがりながら、ごく自然に寄りかかってきた彼が膝に頭を乗せてくる。
左手を伸ばしレティシアの髪を弄び始めたのを、払い除けようとして止めた。本当に疲れている時の声色だから諦めて好きにさせる。
前世社会人だから、つい年上ぶってフレデリックの世話を焼いていたためか、時折甘えてくる時がある。
寝椅子から長い足がかなりはみ出す、大きな図体をしているのに。
「一度は裁かれ世間を騒がせたからじゃなかったの? 単純にさぼりたいからみたいに聞こえる」
薄々勘づかれているとわかっている。少し意地になっている自覚もある。
王太子妃の重責も、貴族の義務も、億劫だけど耐えられないほどじゃない。
見たくなかった、断罪エンド後の……その先を。
後ろめたさを誤魔化して侍女に目配せすると、侍女はレティシアの書き物机から四つ折りの紙を取り出し、フレデリックに渡した。
来月の献立案だ。レティシアは前世で管理栄養士だった。
(まさか前世の仕事を今世でもやるとは……楽しいからいいけど)
いまはそうでもないけれど、王侯貴族の食事は贅沢さ重視で、栄養や年齢や体調に合わせてといった概念がなかった。ある日、病床のフレデリックを見舞いその配慮のなさを知って以来、成り行きで彼の献立監修をしている。
「ありがとう。料理長に渡しておく」
「もういいかなと思いましたが、作っちゃったので」
「何年も当たり前に書いてくれるけど、よく考えるよね……もう木苺が出る時期か」
原作は大事。そう考えて断罪エンドを迎え、フレデリックの人生から退場したつもりだった。
けれども好物を思い浮かべて表情を緩ませる、彼との時間が続いていることに、レティシアは身勝手ながらほっとしている。
「レティ、王太子の私を作ったのは君だ。さぼるのはいいけど約束は守ってほしい」
「約束?」
「大人達が決めたのとは別の、私と結婚する約束。まさか忘れた?」
「いえ……」
レティシアの髪を指に巻きつけ、じっと圧の強い眼差しで見つめるフレデリックに困惑する。
世の令嬢達がうっとりしそうな彼の言葉だけれど、レティシアの記憶では幼稚園児が「大人になったら先生と結婚する」と口走るのに似た……そう思っていた。結構、最近まで。
「あっ、そうそう。君が取り替えた窓の鉄格子。装飾的で防犯にいいって貴族から鍛治工房に注文が殺到している。建材ギルドと揉めて、大きめの商会から仲裁依頼が王城に回ってきた」
「え?」
「この塔、“北の宮”とか“北の離宮”って呼ばれてるらしいよ」
「んん?」
「君を匿うためと公表したからかな。かつて幽閉塔だった休眠施設を君の離宮にしたって、皆が“勝手に”思ったようだ。父上もなら私的別荘ってことでいいだろうって」
「そんな雑な、離宮認定あります!?」
思わずレティシアは声を張り上げてしまった。
これはもしや、小さくてかわいかった男の子に捕まったのではないのだろうか。
いまもレティシアは彼の婚約者のまま。誤算だ……本当に。
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八歳の時に引き合わされた婚約者。
フレデリックにとって、レティシアは出会った時から特別である。
型通りの挨拶を交わし、「よろしくね」と言った彼女に少しばかり面食らった。
なぜか彼女は、完全にフレデリックを年下の小さい子として見ていた。
大人のように挨拶しても、綺麗な髪や装いを褒めても流される。それも侍女や乳母のような微笑ましいといった表情で。一言で表現すれば彼女は「変」だった。
(面倒だから、会話は聞き役に徹する気でいたけれど……)
レティシアは、「フレデリック様は食べ物はなにが好きですか?」「今日はなにをしてましたか?」「王城で迷子になったりしませんか?」「秘密通路の噂は本当?」「国王陛下や王妃様って普段はどんな感じなの?」などなど、貴族令嬢としてどうかと思う質問もあったけれど、屈託なくにこにこと彼の話を聞きたがる。
藤色の瞳は、フレデリック自身を見ていた。
王子ではなく、政略結婚の相手でもなく。
レティシアが興味を向けるのは、いつもフレデリック自身なのだ。
(変な子だけど……可愛い)
そんなレティシアの「変な令嬢」ぶりは、フレデリックが長く体調を崩した時に最高潮を迎えた。
ある日、フレデリックを見舞いにきたレティシアは、“豪華だが食べる気がしない”彼の食事を見て、「弱った子供になによこれは!」と烈火のごとく怒りだした。
さらにフレデリックの侍女や侍従、専属料理人まで呼びつけ、目の前で「療養食とは」と、食材の効能など語りだした。
医官も呼ばれて問いただされ「え、胃腸が弱いとわかってて!?」「まさか、いやがらせ!?」「陛下や王妃様はご存じなの!?」と怒り狂うレティシアに、全員真っ青になって震えていた。
レティシアは当時十歳。しかし王子の婚約者で公爵令嬢だから大人といえども逆らえない。
「この部屋に入った時から思っていたの。お城の人達、王子を治す気があるのかしらって!」
何人かぎくっと顔をこわばらせた者がいて、フレデリックは覚えて後日解雇しようとベッドの中で思った。
以降、レティシア監修のもと、フレデリックの食事や居住区画の衛生管理が徹底されるようになった。
一部のことでも十歳で王城の一画を取り仕切る。
王妃の資質十分だ。変な令嬢でも、さすが歴代宰相を務める公爵家の娘だった。
衰弱しかけていたフレデリックは持ち直し、食も増えた。
重いカーテンに閉ざされていた窓も、開かれるようになった。
「お加減はいかがですか?」
窓から入る穏やかな陽の光が明るく、空気も清浄なフレデリックの部屋に、花束を手にレティシアがやってくる。銀色の髪が綺麗な可憐で愛らしい婚約者。
「ずいぶんよくなったよ」
「よかった。あ、聞いてください。弟ができるんです!」
「へえ、それは公爵夫人に懐妊のお祝いを贈らないとね」
「え、違います。お父様が養子を迎えるって」
「ん?」
養子というのが引っ掛かる。
ベッドから身を起こしてフレデリックが尋ねれば、遠い親戚の子供を引き取るという。すぐさま後継者に違いないと、彼は察した。
フレデリックは自分の立場をよく理解していた。ウォールトン公爵が忠臣であると同時に、狡猾な人物であることも。王子として頼りにならないとフレデリックを見限った後、王家に嫁ぐ必要がなくなったレティシアの入婿候補もきっと兼ねている。
「未来の弟か、落ち着いたら紹介して」
フレデリックは、ベッド脇の椅子に座るレティシアに呼びかけ、その手を取った。
「婚約自体は王家から持ちかけたものだけど、それとは別に約束しよう。レティシア、王太子になったら結婚してくれる?」
「……いいですよ」
しばしじっと思案げにフレデリックを見つめた後、にっこり微笑んだレティシアを絶対に離すまいと、彼は彼の意思で決めた。
(まずは意地でも健康で丈夫な体になる。王子として完璧な教養や立ち居振る舞い、父上や公爵にならい王族としてやっていく術を身につけなければ……彼女の天真爛漫さは守れない)
十歳の王子の決意は固く、数年でみるみるうちに人々の評価を覆した。
そして、現在に至る――。
*****
この膝枕はいつまで続ければって表情だと、とりとめのない会話を続けながら、フレデリックはレティシアの顔を見上げて考える。
ふと思いついて、とりとめない会話に貴族達の長々とした議論で時間を食いつぶされた議題を混ぜたら、ものの数分で解決の糸口がつかめてしまった。
「……こんなに簡単に目処が立つなら、最初からここで過ごせばよかった」
足が痺れてもかわいそうだ。フレデリックは身を起こして彼女の隣に座り直す。
混ぜた話は、失脚したバルドズ卿の資産処理。
立派過ぎて買い手がつかない、両翼建ての王都屋敷の使い道だ。
一度、伯爵夫人のお茶会に招かれことがあるレティシアは、あの屋敷に注目していたらしい。
「もしかして、伯爵家から屋敷を奪うことでも考えていた?」
「どうしてそんな物騒なことになるのっ!」
むくれるのは可愛いけれど、「あの屋敷のサロン、庭に面して明るくてティールームを開業したらよさそうで……」と語るのを聞いたら、どう考えてもそういった計画だと誰もが思う。
まさか公爵家を出奔し、自活するつもりでいたのだろうか。だとしたら油断できない。
「そうではなく。ただの趣味ですっ。よそのお屋敷を見てあれこれ考えるの楽しいでしょ?」
「……うん、そんな愉快な趣味は君くらいだろうね」
成長しても、レティシアの「変な令嬢」ぶりは健在だ。
幽閉塔のなかにいてさえ大商会が頭を抱える利権を発生させ、昔と変わらずフレデリックを王家を助ける。
「両翼の棟を、新興貴族向けの貸住居と商用施設に分け、王城を窓口に人を雇って育成する案は悪くないけど……どうしてそういうのぱっと出てくるのかな」
前例がなく型破りだが、実現不可能でもない。貴族・商人・平民それぞれに利益がある。
(これだから父上が「多少の便宜は図るから、ウォールトンの娘を絶対逃すな!」などと……公爵が娘は王妃の地位など望んでいないと伝えているから……言われなくても逃す気はないけれど)
この塔は、父の言葉通り私的別荘にしようとフレデリックは考える。
王太子ゆえに容易に外出できない彼にとって、塔が王城敷地内という利点は大きい。城内の延長で簡単に行き来できる。逃亡と侵入防止結界付きなのもいい。レティシアが勝手に出ていく心配もなく、侵入防止結界は登録した者と王族しか通れない。
(いいこと尽くめだ。誰にも邪魔されずレティを独占できる)
「あの、お茶でも用意しましょうか?」
「レティ、そんなにここから出たくない? だったら出なくてもいいよ」
レティシアが尋ねてきたのとほぼ同時に、彼女の右頬にそっと手を添えてフレデリックはにっこり微笑んだ。
「え?」
「でも出たくなったらいつでも言って、逃亡防止結界は登録したままだから」
「え、でも……あれ、まって、なにかおかし……」
「おかしくない。私は婚約者の望みは叶えるよ……レティ、だから約束守って」
「えっ……え? 出なくてのんびりでも約束で……出たら以前と同じく色々と……」
両手の指を動かしぶつぶつと口の中で呟き、考え込んでいるレティシアを横目に、フレデリックは涼しい顔で彼女の侍女にお茶を頼む。
すぐに天板付きのティーワゴンに用意された、お茶が出てきた。
「お見事です」
「まあね」
給仕だけして、すっと退室するなんて優秀な侍女だ。
お茶だよと、頭を抱えているレティシアに声を掛ければ銀髪を揺らし、藤色の瞳がフレデリックを縋るように見上げる。
戸惑っている様子が可愛い。
少しずつ、少しずつ、好きになってと願いながら側にいた。
彼女の右耳の上に挿した花が目に入って、その近くに口付ける。
これまで額や頬に口付けても挨拶の延長、何度甘く囁いても白いままだった頬に赤みが差すのを見て、口元がゆるみそうになる。レティシアがフレデリックを意識してくれるのを待ち、我慢できなくもなりそうで唇は避けていたけれど、効果はあったようだ。
「そういえば、誤算ってなに?」
「断罪エンド後の悪役令嬢なのに……毎日のようにやってくるから……」
「ふうん。悪い令嬢なら、きちんと閉じ込めて様子を見にいくのは当然だ」
レティと囁いて、フレデリックは今度はちゃんと口付けた。
先日みたいに軽く触れ合わせるのじゃない、お茶を飲む前から口の中が熱くなるような口付けだった。
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