輪廻を終える方法~無限進化と創造神の法則~

たぶり

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妖精界の騒乱

19話 驚異の黒髪女

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 後方に流れていく海底の美しい景色を横目に見ながら、僕は考え事をしていた。

 元居た世界である仮相界アースと真相界の違いについてだ。

 アースでは精神年齢の様々な人間が同時に存在できる、という。
 思い返せば、荒くれ者のような人物もいれば、聖人のような人物もいた。また、僕のようにその中間に位置する人達も沢山いた。

 それらの人が交わる中で、お互いを模範にしたり、反面教師にしたり、様々な成長があった。

 じゃあ、なぜ、メルシアなどの真相界がそうではないのだろうか?

 そこに疑問が生じてくる。

 エルモンテスでは全ての人が平均的に穏和で仲良く暮らしているが、どこか平和ボケしているというか”ただ日々を楽しむだけ”に終始している印象もある。

 カルーナが《エルモンテスが平和で閉鎖的ゆえにカツマラアが暴れるなどの出来事が起こったのかもしれない》という趣旨の事を話していたが、妙に納得できる。

 カツマラアが出現した事をきっかけに、街の人達の顔は引き締まったように思えた。きっと、これをきっかけに有事の危機管理にも取り組めるのではないだろうか。

 もちろん、争い事は誰かが傷つき誰かが悲しむ事があるので到底推奨できるものではない。

 しかし、メルシアがもう少し精神年齢の様々な人間が同時に存在できる場であるなら、争乱など無くても人々の成長遅滞が起こることは無いのでは??




 あれ?なんで僕はこんな事を考えてるんだろう.....?

 僕は自分が神様かなんかのつもりか?
 人様の精神の成長を考えるぐらいなら、自分の成長を考えろよ(笑)って自分に突っ込んでみる。

 ん?僕にとっての成長って野田周が消えるってことか?
 がーん。

 眉間に皺を寄せ苦悩していると

「め、めぐ君!!あれ観て!!!」
 母さんが慌てながら海底の一角を指さしている。

 うわ!なんだあれ!!

 海の底に未来都市っぽい建造物が立ち並んでいる。
 そして、街を中心にオーロラのような色彩の光を発しているのが見える。

 ん、よく見ると街の通りに誰か歩いている。
 それは僕たちと大して変わらない姿形の普通の人間である。

 あの海底の街、人が住んでいるのか!

 かなり驚いた。なぜ、あの人達は海の中でも普通に身動きができるのだろう。
 見た感じでは陸の上で歩いているのと変わらない。

 そう考えている間にも、ビクシー箱の乗り物は猛スピードで前進し、海底の街を後方へと追いやった。

 海底の街か....なんて浪漫溢れる場所なんだ。
 いつか行ってみたいな。

 と、後方にある海底の街をもう一回観ようと思って振り返ったら.....



 あれ?後ろからビクシーがもう一台やってくる。
 乗っているのは二人だ。黒いローブを着た男と....黒髪ショートカットの好戦的な顔をした若い女性。女性は明らかに武装してると分かるサイボーグのようなスーツを着ていた。

 って、あの黒いローブの男って、メルシアに来た時に襲ってきた輩じゃないか!

「テメー!!あの時はよくやってくれたよなぁ!
 ここで借りを返すぜッえええぇえ!!!」

「ヒャッハハハ!案外いい男じゃないかぁ。敵にしておくには惜しいねぇ」

 いかにもな事を言いながら後ろに迫ってくる。

 母さんは「あわわわ!めぐ君を襲ってきた人だ.....」と言いながら、前方からの風により顔にかかる髪を払っている。
 ニルバナさんは後ろを振り返りながら「しっかり掴まっていてください!」と言い、ビクシーは一段加速した。自動運転かと思ったら、何やらニルバナさんの意志らしきもので動いているらしい。

 それにしても、なぜここにいるんだろう?ミストラス大陸に僕達が行くと困る理由でもあるのだろうか。っていうか、僕、襲われすぎじゃない?

 と、考えている間に、黒いローブの輩の前に魔法陣が展開した。
 すると、魔法陣からドッジボールほどの火球がマシンガンのように連射されてきた!!
 ズドォン!!という爆発音を響かせながら路面や僕達のビクシーの横の路面に着弾する。
 ニルバナさんはビクシーのボディを左右に振ることで回避するが、それにも限界があるだろう。

 仕方がない。まずは足止めを試みよう。

 輩は炎のマシンガンを連射している。着弾したを路面を観るに、路面のアクリル?を破壊するほどの威力はなさそうだ。
 黒髪女は後頭部に両手を回し、前に足を投げ出してふんぞり返っている。

 僕は、路面のアクリルのような物が壁状に盛り上がり、奴らの乗るビクシーの前に立ちはだかるイメージを浮かべた。
 同時に、奴らの前にアクリルの壁が出現する。

「ッ!!!」
「ヒャハハッッ.....は!?」

 二人とも驚いたようだが、黒髪女が動いた。
 壁に対し、大きなライフルのような物を片手で構えると、ズドン!!と何かの発射音が聴こえた。
 アクリルの壁は破裂音を立て無惨にも砕け散る。




 輩の炎では砕けないと思ったのだが、あの黒髪女の持つ武器はヤバイ。
 魔法陣は出なかったし魔法ではないようだ。一体何なんだあれ。
 絶対に、母さんやニルバナさんに当てるわけにはいかない。

 僕たち3人の体表に魔法障壁がかかるイメージを浮かべ、3人に魔法障壁がかかるのを確認した。

「ヘぇー??本当に魔法陣が出ないんだ。発動のタイミングが読めないのは厄介だねー」
「ちっ!!」輩が舌打ちする。

 正直、人間に対して攻撃などしたくない。
 カツマラアやセトは人間じゃないのが明白だから攻撃しやすかったが、今回の相手は、明らかに人間である。
 特に、女性に手をあげたくはないのだ。

 だから、相手を退散させるか、ビクシーを破壊する方向で闘いを進めていきたい。
 今の奴らの感じだと自発的に退散させるのは難しいだろう。



 奴らの乗るビクシーを破壊する。

 僕は奴らの乗るビクシーのボンネット部分に転移し、拳を打ち込みビクシーが破壊されるイメージを浮かべた。
 同時に、僕は奴らの目の前ボンネットに出現する。瞬時に拳を打ち込.....



 目の前にライフルが突きつけられている。
 ズドォン!!

 僕は頭部にライフル弾を食らい、衝撃で吹き飛び路面に叩きつけられ一回転する。
 しまったと思い、瞬時に母さんの隣の席に転移するイメージを浮かべる。

 僕は母さんの隣の席に戻ってきた。
「めぐ君、大丈夫!!?」と、母さんが驚きつつ、僕が撃たれて路面に落下したことを心配する。

「ああ、多分、大丈夫.....」

 魔法障壁が無いとあれを食らったら危なかったかもしれない。
 それにしても、さっきのアクリル壁を破壊した時と言い、あの黒髪女、、、なんて反応速度だ。
 本当にサイボーグなのだろうか?



 ・・・・・

「あの男....あたしのベスビオを食らってもケロっとしてやがる。しかも、路面に一度落下したのにすぐに元の場所に瞬間移動しやがった.....バルド、あいつ一体何なんだ。」

「”元破壊神”ってやつらしいぜ....たくっ!!!頭にくるぜ。モロゾフの奴め、そういう事は初めから教えろっての」
 バルドは苛立ちを吐き捨てるように言った。

「お前もな。全然モロゾフの事言えねえぞ!それにしても、あたしの作った武器の中でも屈指の威力を持つあれが効かないなら、仕留めるのは難しいね.....母親を狙うか」

「まあ....それが無難だな。」

 ・・・・

 ん!?....黒髪女がボンネットに片足をかけて立っている。
 何か仕掛けてくるのか。

 黒髪女は軽く跳躍すると横の路面に着地した。

 なんだと!?僕は予想外の行動に驚きを隠せない。

 その瞬間、黒髪女のブーツ全体が鋭い光を放ち.......



 黒髪女は母さんの隣にいて、母さんにライフルを突きつけていた。
 こちらのビクシーの縁に片手で掴まり、片足をかけている。

 いつの間に!?

 って、おいおいおいおい!!

 なぜか、母さんにかけた魔法障壁が解けている。セトの時といい、なんでだ!!?

 あまりの出来事に猛スピードで流れるはずの景色がスローモーションに見える。
 咄嗟の事で何かをイメージする時間も無い。

「母さ.....」

 その瞬間、母さんから眩い光が発せられた。あれ......?

 同時に黒髪女が発砲したが、銃身がくぐもった炸裂音を立てて爆発した。
 黒髪女は「うあ!!?」と呻き声をあげ路面に転がり落ちていった。

「メレディス!!!」黒いローブの輩が黒髪女の名前を叫ぶのが聴こえた。

 一体何が起こったのだろう?
 眩い光の中で母さんが一瞬、黄金の髪になっていたように見えたけど。。。

「うわ~ん!!めぐ君、怖かったよぉ」
 母さんが泣きついてきた。

「ルーティアさん大丈夫ですか!!?」
 ニルバナさんが後ろを振り返りながら、母さんを気に掛ける。

「母さん、今起こったこと覚えてる?」

「黒髪のお姉さんが持ってた銃が爆発したぁ」
 その瞬間の記憶はあるらしい。

 母さんが光を発したこと、黄金の髪になっていた事については後で聴いてみよう。
 今は、後ろの奴を何とかしなければ。

 と、思ったら、すでに奴らのビクシーは追ってきていなかった。
 ローブの輩はメレディスとか言う黒髪女を助けにいったのかもしれない。

 何にせよ.....切り抜けることができた。僕は脱力し座席にズルズルと体を沈める。
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