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人類進歩の大役
77話 石英さんの母親が右腕を骨折
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山田石英さんの導きを続行中。
そんな中、彼のブログのイラストを褒めるコメントが入った。
龍神の花嫁という漫画に登場する、ムラサメ・アスカのイラストに対するものだ。
”漫画のアスカ様よりも、こちらのアスカ様のほうが私のイメージ通りです₍ᐢ⑅•ᴗ•⑅ᐢ₎♡”
と書いてある。
実は、ケンゴが、龍神の花嫁が好きそうな人間を探し出し、石英さんのブログを観るよう導いていた。このコメントの主は女性である。
石英さんは狂喜乱舞した。
文字通り、ゴミが積もった部屋の中で踊っていた。
「喜んでる!導いたかいがあったぜ」
「これでもっとやる気が出るといいね!」
ケンゴとマルメが言う。
石英さんは絵に自信を深めたらしく、次の絵を描き始めていた。
それを見て、俺は、これは少し俺が介入する必要がありそうだと判断した。
「.........石英さんのブログへと、新たに人を誘導するのは少し待ってくれ」
「え?なんでだ?ボス」
「代わりに、石英さんの母親、正代さんの右腕を骨折させる」
「んん.....!?い...今......それをやるんですか?」
ユーリが驚愕の表情を浮かべた。
人それぞれカルマの解消項目というのがある。俺達、人間を導く者はこれを閲覧できる。
正代さんのカルマの解消項目には”右腕の骨折”が入っていた。3にんはこの項目は知っているが、正代さんの前世については知らない。
そうした出来事が起こるのは彼女が前世、イギリスの農夫であった時、奥さんに暴力をふるい腕を骨折させたことに起因している。それがゆえに、いつか腕の骨折を経験しなくてはいけない。
ただ、俺は知っている。
正代さんの精神的課題である”家事を楽しみ、内的な幸せで満足できる精神を得ること”という部分がクリアできていたなら、骨折をせずともカルマは解消されていたであろうことを。
正代さんは家事が嫌いで暇さえあれば外に出て、パチンコに行っている。
彼女の生き方しだいでは、骨折を回避できたことを知っているがゆえ、ため息が出そうになるが、今、右腕の骨折という出来事を起こすのは、山田さん家族全員にとって長期的に良い結果になると確信している。
その後.........
正代さんは床に広がるゴミで転倒した際に、右腕を部屋の中にある棚にぶつけ骨折した。
俺のイメージにより正代さんが骨折するよう導いたからだ。
その結果、正代さんの代わりに、石英さんが朝ごはん、夜ご飯を作ることになった。
(石英さんの父親、仁王丸さんは家事などの一切を毛嫌いするタイプだ)
石英さんは母親想いな人間である。
そのため、自分から食事づくりを買って出たのだ。
だが、その裏ではやはり葛藤があるのを俺達は知っている。
《なんでこんな時に......》
《いつもそうだ、僕がやる気を出すと、決まって悪いことが起こる》
と、半ば絶望に近い気持ちが渦巻いている。
「ボス、今、正代さんを骨折させたには何か理由があるんだろ?」
「ああ.....」
俺は簡潔に答えると、モニターに、
『 山田石英さんに今回のアクシデントが起こらず、あのまま3人が山田さんのブログに人を集めていた場合の未来 』
を映し出すことにした。
なぜ、俺に、未来の投影といった事が出来るのか、自分でも分からないが。
モニターの中で山田さんは、自信に満ち溢れていた。ブログには人が集まり、リクエストに応えイラストを描きブログにアップする。その多くが絶賛されていた。
ただ.........評価の上昇と共に、彼の自信も上昇を続け、傲慢の域に達していた。
そんな中、彼に初の依頼がきて、突如として人気小説のイラストを手掛けることになる。
初の依頼から大躍進を遂げるような出来事だ。
が.......その結果は、無惨であった。
小説の雰囲気がほのぼの系であったのだが、彼の絵は圧力が強すぎたのだ。
グワッと迫るような勢いのイラストが彼の持ち味であったが.....この場合、裏目にでた。
傲慢さが小説の世界観との調和を忘れさせてしまったのだ。
その結果、小説のファンから反感の嵐が起こり、小説作者のチャンスを潰したとまで言われる始末であった。
それにより石英さんは失意のどん底に落ち、最悪の結末にいたる。
まだ心が強くない石英さんはそれをきっかけに命を絶つことになる。
俺はモニターに映った”避けるべき未来”の画面を消し、今の......絶望しつつ、不器用ながらも夕飯の準備をしている石英さんを映し出した。
「彼はまだ夢を叶えるべきじゃない。ファンの反応に過敏すぎるのと.....潜在的な傲慢さが解消できていないんだ。今まで無職で親に養われるという形で、内在していた傲慢さを徐々に解消していたが、まだ十分じゃない。今、イラストを認められては傲慢さが表面に噴出していくだろう。
そして、その傲慢さを刈り取るための悲劇が必要になる」
「まさか、私達の行動でそんな未来にいたるなんて.......」
マルメが片手に胸をあて、嘆く。
「で.....でも、ボス。無職で親に養われる過程で自信を喪失し続けたとして、内在している傲慢さが解消されるのに何年かかるんだ?
それに、傲慢なまま夢を叶えた人間は他にだっているだろう?なぜ、彼は傲慢でいることが許されないんだ?」
ケンゴは椅子から立ち上がり、疑問を口にする。
「おそらく、何十年たっても潜在的な傲慢さは解消できないだろう。本来、これは本人の努力によってしか解消できないものだからだ。
彼の場合では、家事や身の回りのことを丁寧にこなせるほどに、徐々に解消されていくようになっている。
あと、彼が傲慢さを早々に刈り取られる理由は.......彼が優秀だからだよ」
「優秀だと傲慢でいることが許されない.....?一体、どういうことなんだ??」
ケンゴは全く理解できない様子で首をひねっている。
「彼が優秀っていうのは知能でも能力でもなく、人格のことだ。
彼が生まれる前から備えていた人格は非常に優秀で、愛に溢れている。
すると、人格が歪まないよう保護される作用が大きく働く。
その結果、傲慢さが根付く前に、除去するための出来事が起こるんだ。
人格が美しい人間ほど、悪いやり方や傲慢さが染みつくようなやり方では上手くいかないようになっている。そうやって精神が保護されてるんだ。
ケンゴ達も思った事はあるんじゃないか?性格の悪い人間がアースで幅をきかせる一方、なぜ、人格者がうまくいかないケースがよく見られるのか」
「それは.....俺も、アースにいた時、つねづね思ったことがある。
なんで悪い男ばっかりモテて、優しい男はモテないんだって......」
ああ、それ、俺も思ってた。
俺が思うに、ケンゴはやんちゃそうな顔をしているが、それはメルシアに来る過程で容姿が変化したのだと思う。おそらく、アースでは俺と似たタイプだったんじゃないか?
「うーん.......それに関しては、人間の女性が持つ肉体的本能には群れのボスを好む性質があって、自分に見向きもしない男性、ボス性の高い不良っぽい男性に対し、本能から惹かれやすいとか色々な理由もある。
ただ......人格の良い男性が、駆け引きを弄して女性に心理的上に立とうとしても、モテないし、そもそも誠実じゃないやり方では、罪悪感があってできないだろうな。まさに、それ自体が、精神の保護作用によるものだ。
女性をぞんざいに扱ったまま生きていった奴は、長期的に観れば不幸せだよ」
「「.............」」
女性陣に変な誤解も起こりそうだから、これも話しておこう。
「あと、女性が悪い男性に惹かれやすい理由は、他にもあるんだ。
アースにおいては、より先に進歩している異性が片方の異性を導く役目を負っていることがよくある。この例えで分かるかな...し〇かちゃんがの〇太君と結婚して面倒を看るような関係だ。
二人は優しい男を選んできたかもしれないが、ユーリとマルメもいくらか心当たりがあるんじゃないかな」
「「あああぁああああ!!」」
二人で同時に驚いた。
心当たりがあるらしい。
「そうそう!!アースの時の旦那は、全然育児を手伝ってくれなくて....私が促してしぶしぶ....」
「んん......私の場合では、旦那は仕事以外にあまり関心を持たない感じでした。育児も私が全部やったんじゃないかな.....」
二人とも目を細め、ぶつぶつ言い合っている。
女性が、アースの時の旦那に口にする不満って6割ぐらいが育児に関するものなんだよな。
育児の壮絶さと、その時、手伝ってくれなかった怨念は真相界に来ても引きずるらしい。
「でも、その旦那は二人のお陰で少しは良くなったんじゃないか?」
「はい!私の旦那は粗暴な口の利き方をしていましたが、最終的には人に気を使った会話もできるようになったと思います」
「ん...そうだと思います。旦那も、二人きりでの旅行に連れ出してくれたりするようになりました」
マルメとユーリが柔らかい笑顔で口にする。
二人とも過酷な環境を乗り越えてきた人間独特の、晴れやかな表情である。
ただ、おそらく、マルメとユーリにとってアースの時の旦那さんは精神的課題が似通っていて、二人が圧倒的に精神年齢が高かったわけでは無いと思う。
おそらく、旦那さんからも良い影響を受けていたのだと俺は推察している。
ただ、この反応からして、今、二人がそれを理解するのは少し難しいかもしれない。
まだ”女性的視点”に囚われているように感じる。
ああ.......めちゃくちゃ話がそれちまったな。
「それで.....3人とも夢を叶えるって事に囚われていたようだが、もっと大切なのは精神の成長なんだ。夢を叶えるという意味では今回のやり方は不合理だろう。
しかし、精神の成長という意味だったら、それなりに良い導きになると思う」
「精神の成長か......何と無くは分かっているものの、つい、夢を叶えてやる方が良いと思っちまうな......」
ケンゴがそう呟いた。
他の二人も同意している。
・夢を叶える事
・精神の成長
この二つは対となるものでは無いのだが、どうしても、精神の成長の過程では”願望への執着”を消すよう導かなければいけない時が多々ある。
それにしても、メルシアは精神の進歩の進んだ界だと思っていたのだが、案外そうでもないのか?3人の内2人は学校で学んでいる割には、随分、精神の成長に対する理解が無いように思える。
ただ、そもそも、なぜ俺は人間の進歩についての知識があるんだ?
まあ、おそらくはエルトロンかイドの知識なのだろうが.....
そんな中、彼のブログのイラストを褒めるコメントが入った。
龍神の花嫁という漫画に登場する、ムラサメ・アスカのイラストに対するものだ。
”漫画のアスカ様よりも、こちらのアスカ様のほうが私のイメージ通りです₍ᐢ⑅•ᴗ•⑅ᐢ₎♡”
と書いてある。
実は、ケンゴが、龍神の花嫁が好きそうな人間を探し出し、石英さんのブログを観るよう導いていた。このコメントの主は女性である。
石英さんは狂喜乱舞した。
文字通り、ゴミが積もった部屋の中で踊っていた。
「喜んでる!導いたかいがあったぜ」
「これでもっとやる気が出るといいね!」
ケンゴとマルメが言う。
石英さんは絵に自信を深めたらしく、次の絵を描き始めていた。
それを見て、俺は、これは少し俺が介入する必要がありそうだと判断した。
「.........石英さんのブログへと、新たに人を誘導するのは少し待ってくれ」
「え?なんでだ?ボス」
「代わりに、石英さんの母親、正代さんの右腕を骨折させる」
「んん.....!?い...今......それをやるんですか?」
ユーリが驚愕の表情を浮かべた。
人それぞれカルマの解消項目というのがある。俺達、人間を導く者はこれを閲覧できる。
正代さんのカルマの解消項目には”右腕の骨折”が入っていた。3にんはこの項目は知っているが、正代さんの前世については知らない。
そうした出来事が起こるのは彼女が前世、イギリスの農夫であった時、奥さんに暴力をふるい腕を骨折させたことに起因している。それがゆえに、いつか腕の骨折を経験しなくてはいけない。
ただ、俺は知っている。
正代さんの精神的課題である”家事を楽しみ、内的な幸せで満足できる精神を得ること”という部分がクリアできていたなら、骨折をせずともカルマは解消されていたであろうことを。
正代さんは家事が嫌いで暇さえあれば外に出て、パチンコに行っている。
彼女の生き方しだいでは、骨折を回避できたことを知っているがゆえ、ため息が出そうになるが、今、右腕の骨折という出来事を起こすのは、山田さん家族全員にとって長期的に良い結果になると確信している。
その後.........
正代さんは床に広がるゴミで転倒した際に、右腕を部屋の中にある棚にぶつけ骨折した。
俺のイメージにより正代さんが骨折するよう導いたからだ。
その結果、正代さんの代わりに、石英さんが朝ごはん、夜ご飯を作ることになった。
(石英さんの父親、仁王丸さんは家事などの一切を毛嫌いするタイプだ)
石英さんは母親想いな人間である。
そのため、自分から食事づくりを買って出たのだ。
だが、その裏ではやはり葛藤があるのを俺達は知っている。
《なんでこんな時に......》
《いつもそうだ、僕がやる気を出すと、決まって悪いことが起こる》
と、半ば絶望に近い気持ちが渦巻いている。
「ボス、今、正代さんを骨折させたには何か理由があるんだろ?」
「ああ.....」
俺は簡潔に答えると、モニターに、
『 山田石英さんに今回のアクシデントが起こらず、あのまま3人が山田さんのブログに人を集めていた場合の未来 』
を映し出すことにした。
なぜ、俺に、未来の投影といった事が出来るのか、自分でも分からないが。
モニターの中で山田さんは、自信に満ち溢れていた。ブログには人が集まり、リクエストに応えイラストを描きブログにアップする。その多くが絶賛されていた。
ただ.........評価の上昇と共に、彼の自信も上昇を続け、傲慢の域に達していた。
そんな中、彼に初の依頼がきて、突如として人気小説のイラストを手掛けることになる。
初の依頼から大躍進を遂げるような出来事だ。
が.......その結果は、無惨であった。
小説の雰囲気がほのぼの系であったのだが、彼の絵は圧力が強すぎたのだ。
グワッと迫るような勢いのイラストが彼の持ち味であったが.....この場合、裏目にでた。
傲慢さが小説の世界観との調和を忘れさせてしまったのだ。
その結果、小説のファンから反感の嵐が起こり、小説作者のチャンスを潰したとまで言われる始末であった。
それにより石英さんは失意のどん底に落ち、最悪の結末にいたる。
まだ心が強くない石英さんはそれをきっかけに命を絶つことになる。
俺はモニターに映った”避けるべき未来”の画面を消し、今の......絶望しつつ、不器用ながらも夕飯の準備をしている石英さんを映し出した。
「彼はまだ夢を叶えるべきじゃない。ファンの反応に過敏すぎるのと.....潜在的な傲慢さが解消できていないんだ。今まで無職で親に養われるという形で、内在していた傲慢さを徐々に解消していたが、まだ十分じゃない。今、イラストを認められては傲慢さが表面に噴出していくだろう。
そして、その傲慢さを刈り取るための悲劇が必要になる」
「まさか、私達の行動でそんな未来にいたるなんて.......」
マルメが片手に胸をあて、嘆く。
「で.....でも、ボス。無職で親に養われる過程で自信を喪失し続けたとして、内在している傲慢さが解消されるのに何年かかるんだ?
それに、傲慢なまま夢を叶えた人間は他にだっているだろう?なぜ、彼は傲慢でいることが許されないんだ?」
ケンゴは椅子から立ち上がり、疑問を口にする。
「おそらく、何十年たっても潜在的な傲慢さは解消できないだろう。本来、これは本人の努力によってしか解消できないものだからだ。
彼の場合では、家事や身の回りのことを丁寧にこなせるほどに、徐々に解消されていくようになっている。
あと、彼が傲慢さを早々に刈り取られる理由は.......彼が優秀だからだよ」
「優秀だと傲慢でいることが許されない.....?一体、どういうことなんだ??」
ケンゴは全く理解できない様子で首をひねっている。
「彼が優秀っていうのは知能でも能力でもなく、人格のことだ。
彼が生まれる前から備えていた人格は非常に優秀で、愛に溢れている。
すると、人格が歪まないよう保護される作用が大きく働く。
その結果、傲慢さが根付く前に、除去するための出来事が起こるんだ。
人格が美しい人間ほど、悪いやり方や傲慢さが染みつくようなやり方では上手くいかないようになっている。そうやって精神が保護されてるんだ。
ケンゴ達も思った事はあるんじゃないか?性格の悪い人間がアースで幅をきかせる一方、なぜ、人格者がうまくいかないケースがよく見られるのか」
「それは.....俺も、アースにいた時、つねづね思ったことがある。
なんで悪い男ばっかりモテて、優しい男はモテないんだって......」
ああ、それ、俺も思ってた。
俺が思うに、ケンゴはやんちゃそうな顔をしているが、それはメルシアに来る過程で容姿が変化したのだと思う。おそらく、アースでは俺と似たタイプだったんじゃないか?
「うーん.......それに関しては、人間の女性が持つ肉体的本能には群れのボスを好む性質があって、自分に見向きもしない男性、ボス性の高い不良っぽい男性に対し、本能から惹かれやすいとか色々な理由もある。
ただ......人格の良い男性が、駆け引きを弄して女性に心理的上に立とうとしても、モテないし、そもそも誠実じゃないやり方では、罪悪感があってできないだろうな。まさに、それ自体が、精神の保護作用によるものだ。
女性をぞんざいに扱ったまま生きていった奴は、長期的に観れば不幸せだよ」
「「.............」」
女性陣に変な誤解も起こりそうだから、これも話しておこう。
「あと、女性が悪い男性に惹かれやすい理由は、他にもあるんだ。
アースにおいては、より先に進歩している異性が片方の異性を導く役目を負っていることがよくある。この例えで分かるかな...し〇かちゃんがの〇太君と結婚して面倒を看るような関係だ。
二人は優しい男を選んできたかもしれないが、ユーリとマルメもいくらか心当たりがあるんじゃないかな」
「「あああぁああああ!!」」
二人で同時に驚いた。
心当たりがあるらしい。
「そうそう!!アースの時の旦那は、全然育児を手伝ってくれなくて....私が促してしぶしぶ....」
「んん......私の場合では、旦那は仕事以外にあまり関心を持たない感じでした。育児も私が全部やったんじゃないかな.....」
二人とも目を細め、ぶつぶつ言い合っている。
女性が、アースの時の旦那に口にする不満って6割ぐらいが育児に関するものなんだよな。
育児の壮絶さと、その時、手伝ってくれなかった怨念は真相界に来ても引きずるらしい。
「でも、その旦那は二人のお陰で少しは良くなったんじゃないか?」
「はい!私の旦那は粗暴な口の利き方をしていましたが、最終的には人に気を使った会話もできるようになったと思います」
「ん...そうだと思います。旦那も、二人きりでの旅行に連れ出してくれたりするようになりました」
マルメとユーリが柔らかい笑顔で口にする。
二人とも過酷な環境を乗り越えてきた人間独特の、晴れやかな表情である。
ただ、おそらく、マルメとユーリにとってアースの時の旦那さんは精神的課題が似通っていて、二人が圧倒的に精神年齢が高かったわけでは無いと思う。
おそらく、旦那さんからも良い影響を受けていたのだと俺は推察している。
ただ、この反応からして、今、二人がそれを理解するのは少し難しいかもしれない。
まだ”女性的視点”に囚われているように感じる。
ああ.......めちゃくちゃ話がそれちまったな。
「それで.....3人とも夢を叶えるって事に囚われていたようだが、もっと大切なのは精神の成長なんだ。夢を叶えるという意味では今回のやり方は不合理だろう。
しかし、精神の成長という意味だったら、それなりに良い導きになると思う」
「精神の成長か......何と無くは分かっているものの、つい、夢を叶えてやる方が良いと思っちまうな......」
ケンゴがそう呟いた。
他の二人も同意している。
・夢を叶える事
・精神の成長
この二つは対となるものでは無いのだが、どうしても、精神の成長の過程では”願望への執着”を消すよう導かなければいけない時が多々ある。
それにしても、メルシアは精神の進歩の進んだ界だと思っていたのだが、案外そうでもないのか?3人の内2人は学校で学んでいる割には、随分、精神の成長に対する理解が無いように思える。
ただ、そもそも、なぜ俺は人間の進歩についての知識があるんだ?
まあ、おそらくはエルトロンかイドの知識なのだろうが.....
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