女児霊といっしょに。シリーズ

黒糖はるる

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女児霊といっしょに。~学校の七不思議~

第一章:夕暮れの忘れ物 4

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 で、学習サポーターとして子供達に勉強を教え始めたのだが。

「お兄さーん。どうして数字って繰り上がるのー?」
「それはね、えっと…」

 想像以上に大変だった。
 単純な足し算引き算は当然出来るが、それを教えるとなると別だ。子供の素朴な疑問とか理屈とか、普段オレ達が考えないようなことがいっぱい出てくる。しかも質問に対して一年生の頭に分かりやすく伝えなくてはいけない。低学年の学習なんて楽勝だろ、と思っていた昨日の自分をぶん殴りたい。マウントポジションで殴りたい。

「算数つまんなーい。外で遊ぶー」

 しかも集中が続かない。つい数ヶ月前まで幼稚園児だったことを考えると当たり前なのだが、授業中にそんなこと言われても困る。なんとかして計算に興味を持ってもらおうと声を掛けていくが、適当な言葉が思いつかない。
 自由人ばかりの子供と過ごせる先生って凄いな、と思いました。まる。

「これで算数の授業を終わります」
「『「ありがとうございました!」』」

 一斉に挨拶して、ようやく授業が終わった。どっと疲れが押し寄せてくるが、まだ一時間目だ。昼休みまで遠いぞ、畜生。

「次は体育ですから、皆さん体操服に着替えて下さいね」
「『「はーい」』」

 しかも次は思い切り身体を動かす体育だ。ぼろぼろになること必至だ……って――

「ぬおっ!?」

 突然、目の前の女の子が服を脱ぎ始める。
 可愛らしいハートのマークが散りばめられた、薄ピンクの肌着が視界に飛び込んできた。
 思わず後ずさり。
 しまった、低学年は着替えの時に男女を分けないのか。
 急いで教室を飛び出し、廊下にもたれかかる。
 心臓がまだばくばくと鳴っている。

「なーにドキドキしてるの?ひょっとして駆郎にぃってロリコン?」

 ななのニヤニヤした笑顔が、頭上から逆さまになって覗き込んでくる。

「違うに決まってるだろ。あとどこでそんな言葉覚えたんだ?」
「んー、このはさんから」

 母さん、何教えてるんだよ!

「だってねー、駆郎にぃは小っちゃい子が好きかもしれないから気をつけろって言ってたんだよ」
「おいおい、酷い勘違いされてるな」

 登校前に言っていたっていうのはそれかよ。実母にロリコンを疑われているとは、最悪だ。

「いいか、先に言っておく。オレは断じてロリコンではない。むしろ年上好きだ」
「そーなの?」
「そうなの。そう、あれはオレがまだ幼い頃だった…」
「うわー、なんか語り出した」

 オレがまだ五歳か六歳だった頃。
 対霊処の仕事が忙しく帰りが遅い母さんを待つため、オレはよく近所の公園で遊んでいた。遊び始めは友達がいるが日が沈むにつれ少しずつ減っていき、最後には自分一人になってしまう。橙色の公園は静かで自分の影だけ、それがとても寂しかった。
 ある日、いつもより早く友達全員が帰ってしまったことがあった。寂しさに耐えられなかったオレはあてもなくふらふらと歩き回った。
 どこかに遊び相手はいないか。その思いだけで歩き続けていた。
 気付いたら普段遊んだことのない公園に辿り着いていた。
 そこには小学生くらいの女の子が一人いた。
 見知らぬ子。もう、顔も覚えていない子。
 その子も親の帰りを待っているのか、一人で遊んでいた。同じような立場だったためかすぐに仲良くなり、オレはその子と一緒に遊んだ。
 その子は幼いオレをリードしてくれて、当時出来なかった雲梯うんていや鉄棒を教えてくれた。ブランコの立ちこぎやジャングルジムからの飛び降りも。オレは下手っぴで転んでしまいひざを擦り剥いたが、その子は優しく手当てをしてくれた。
 オレはその子にドキリとしてしまった。間違いなくあれは初恋だった。でも当時のオレに暴れる胸の高鳴りの正体は分からず、もやもやしていた。
 結局その日は夜遅くまで遊んで、その子は「そろそろ家に戻るね」と言って帰っていった。オレも帰路についたが道に迷ってなかなか家に着かず、後で母さんにジャイアントスイングされた。
 次の日。オレはもう一度あの公園に行ったが初恋の子はいなくて、結局二度と会うことはなかった……。
 それからというもの、オレは自分をリードしてくる包容力のある年上の女の子が好みになったのだ。

「……という訳だ。だからオレはロリコンじゃない」
「へー。なるほど~」

 ふむふむと、ななはうなずきながら聞いてくれた。
 これでやっと理解してくれたか……と思ったのだが。

「でもさー、駆郎にぃの初恋の相手って小学生くらいの子じゃん?」
「まぁ、そうだけど」
「それって結局小さい子が好きってことじゃない?」
「……あー、確かに」

 うん、それも一理ある。
 ――いやいやいやいやいや、納得しちゃいかん!

「だ・か・ら、それがきっかけで年上好きになったの!その時は相手が小学生でも今は違うってこと!分かる!?」
「ちょ、必死過ぎだよ駆郎にぃ……鼻息フガフガしないでよ」

 思わず興奮気味に叫んでしまった。
 駄目だ、あくまでも冷静に、冷静に。クールで格好良いお兄さんとして振る舞わなくては。
 だが、時既に遅し。

「駆郎さん。一人で騒いでないで早く運動場に来て下さいね」
「す、すみません…」

 担任教師に怒られてしまった。
 指の関節バキボキ鳴らしているし、怖い。

「あーあ、大人の女性に怒られちゃったね。年上の、ねぇ~?」

 ななの言い方に、モノすっご~くイラっときた。
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