女児霊といっしょに。シリーズ

黒糖はるる

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女児霊といっしょに。~学校の七不思議~

第一章:夕暮れの忘れ物 8

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 一年生は他の学年より早く下校する。そのためオレの学習サポーターとしての役目も早めに終わり、現在静かになった一年生のフロアを散策中だ。
 夕方――つまり女の子の霊が出現する時間まで、手掛かりになる物を探すためだ。

「女子の私物に触っちゃダメだよ?」

 ななが背後から余計なことを忠告してくる。

「分かっているよ……って言いたいけど、必要な時は触るからな」
「えー、鍵盤ハーモニカとかリコーダーを舐めたりペロペロしたりよだれまみれにしたりするの!?」
「しないわ!つーか全部同じだし変態行為過ぎるぞ!?」
「じゃあ他に何するつもり?」

 オレは不審者前提か。それもこれも、母さんが余計な知識を教えたせいだけど。

「例えば誰かの物に執着がある霊とか物自体に宿っている霊とかがいるんだよ。……で、仕事上やむを得ず触ることがあるってことだ」
「へー、そうなんだ」

 散々人のことを疑っておいて反応が薄い。切ないぞ。

「そういえばさー、駆郎にぃは知ってるの?その、美羽ちゃんが見た女の子のこと」
「まぁな。少なくともオレが奥部小に入学した時からいる」
「じゃあずっとその子のことは知ってたんだ。んー?でも何でほったらかしにしてたの?可哀想じゃん」
「あのなぁ…、当時のオレはただ見えるだけの子供だぞ?浄霊も出来ないし話しかけようとしたことはあったけどすぐ逃げちゃうし…」
「このはさんに相談しなかったの?」
「母さんはちゃんとした依頼じゃないと仕事してくれないんだよ。ビジネス……要するにきっちり料金を払えってことだ」
「駆郎にぃが出せば良かったんじゃない?」
「オレの小遣い、その時は千円もなかった」
「うわ~、少ない」
「哀れみの目で見るな」

 なんて雑談をしながら校内を徘徊しているうちに時刻は五時。日の光が橙色になり、教室を鮮やかに染め上げていた。
 そろそろ時間だ。
 オレは足音を最小限に、一年二組の教室へ向かう。

 夕日の光に混じり、揺らめく人影。
 しかし、その影に実体はない。
 影こそがその正体なのだから。

 若草色のトップスとミニスカート、大きな三つ編みの髪に眼鏡。
 美羽ちゃんの証言と一致する外見。そしてオレがかつて見た霊とも一致した。
 彼女こそ、七不思議の一つ。
 一年生の怪……一年二組で彷徨っている女の子の霊だ。

 霊に気付かれぬよう、オレは静かに浄霊道具をかばんから取り出す。
  念導杖ねんどうじょう― 黒烏コクウ―。そして 念導札ねんどうさつ― 浄魂ジョウコン―。
 オレが対霊処の修行を始めた時から使い続けている愛用の武器だ。
 黒烏はその名の通り からすのような翼状の刃、それと 龍鎧石りゅうがいせきという名前の透明な鉱物が付いた杖だ。杖と言っても長さは三十センチメートル程度のバトンだが、キャリアアップすればそれだけ長くしてもらえる。母さんの杖なんて二メートルくらいあって、長すぎて出掛けるときによく玄関で引っ掛かっている。
 浄魂も名前の通り浄霊効果を持つお札だ。オレの「霊を浄霊したい」という思いを練り込んである。直接貼っても良いが龍鎧石に巻いて使えば効能が増す。他にも色んな効果のあるお札があるが、浄魂が一番ベーシックだ。また、消耗品なので随時作ってストックしておかないとすぐ品切れになる。
 因みに黒烏も浄魂もオレが命名した。見たまんま効果まんまの名前だ。ネーミングセンスのなさがキラリと光る一品です。はい。

 女の子の霊は何かを探しているようにふらふらと歩き回り、時折机やロッカーの中を覗いている。猫背でどこか自信なさげに歩いている。
 オレはその様子を見ながらゆっくり、そっと近づく。
 以前は逃げられてしまったが、今度こそはしっかりコミュニケーションを取らなくては。そして最悪の場合は浄魂で強制浄霊しなくては。
 緊張が入り交じりながら、まずは第一声。

「……何か捜し物かな?」

 びくり、と霊の小さな身体が震えた。
 どうやら怯えているようだ。霊に怖がられるというのも不思議な気分だ。

「だ、大丈夫。怪しい人じゃないから――」

 安心させようとしたのだが、言い終わる前に女の子の霊は三つ編みを棚引かせ、猛ダッシュで教室を飛び出していった。

「え、ちょっと待って…!」

 急いで後を追うが、廊下にその姿はなく霊気も残っていなかった。
 マジか、また逃げられてしまった。












「ダメダメじゃん、駆郎にぃ」

 茶化すようにひじで小突いてくるなな。
 やっぱりイラっとくるな。

「喧しいっつーの。初仕事で緊張してただけだから」
「ううん、違うよ。駆郎にぃが怖すぎたんだよー」
「どういうことだよ?」
「も~、そんなことも分からないの?女の子のこと全然分かってないねー。はぁ、仕方ないなぁ。それではななちゃんがレクチャーしてあげましょう!」

 やけに偉そうだな。一応年下だろお前、と怒りたかったがそれをぐっと飲み込んで女子の意見とやらを聞いてみることにした。

「まずその一。声のかけ方が変態さんです。不審者っぽかったよ。
 続いてその二。後ろから声をかけたら誰だって怖いです。霊でも女の子ですよ?
 それからその三。杖とか言ってるけどそれ、完全に刃物だから。どう見ても危険物。
 で、まとめると、刃物を持ったロリコン不審者さんにしか見えません!危ない人、即通報でおしまい!」
「だからオレはロリコンじゃないから!」

 ツッコミはノルマだと思ってしておいたが……なかなか鋭いな。客観的に見たらオレのやり方はどう考えてもヤバイ奴にしか見えない。相手が霊じゃなかったらななの言う通り今頃不審者情報が街中に出回って、カツ丼食ってブタ箱行きだ。
 まずはこのロリコン……に間違われるオーラをどうにかしないとな。だが、どうやって直したら良いのか。

「ねぇねぇ、よかったらなながあの子とお話してあげよっか?」
「は?ダメに決まってるだろ。これはオレの仕事ってことになってるんだから。……まぁ、母さんがOKしてくれたらいいと思うけど」
「じゃあ聞いてみようよ!ななもあの子とおしゃべりしたいし~」
「遊びじゃないからな。おふざけはなしだぞ」
「はーい」

 ということで、オレとななは帰宅することにした。
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