18 / 149
女児霊といっしょに。~学校の七不思議~
第一章:夕暮れの忘れ物 12
しおりを挟む
友子ちゃんとの接触は無事(?)終わった。ガールズ霊トークが少々長かったせいで夜になりそうだが、走ればまだ間に合いそうだ。
「どこに行くのー?どんどん家から離れていってるけど」
走るオレの後ろをふわふわとなながついてくる。小学生が涼しい顔でほぼ併走している異様な光景だが、霊だしそもそも普通の人には見えていないから気にすることではないか。
「ちょいと調べ物に行くんだよ、図書館に」
そう、目的地は晩出市立図書館だ。
蔵書数は周辺の図書館では最大。児童書から新書、洋書に郷土資料まで何でも揃っている。市内で販売されている新聞もほぼ全て保管されているおかげで、対霊処の仕事絡みの事件や事故の調査でよく利用している。
「図書館かー。駆郎にぃの漫画みたいなのはあるの?」
「流石に漫画はないぞ。まぁ偉人の漫画とかはあるかもな」
「じゃあ、ななはその漫画読んでていい?」
「閉館ぎりぎりだから無理だな」
「えー」
「そもそもポルターガイストで読んでたら司書さんびっくりするだろ」
霊現象がよく起こる街だから騒動になることはないが、説明と後始末をするのが面倒だからやめてもらいたい。
だが、何をしでかすか分からない奴を横に連れているよりはその辺で漫画を読んでいてもらった方がマシかも、なんて考えている間に図書館に着いていた。
閉館までまだ三十分以上ある。これだけ時間があれば調べ物に支障は問題なしだ。
「さっきの漫画の件だけどさ、読んでいいぞ」
「え、いいの!?ポルっちゃうよ!?」
「好きにしろ。でもちゃんと自分で片付けろよ」
「わーい、駆郎にぃサンキューベリーマッチ!」
大はしゃぎで飛び回るななが自動ドアをすり抜け、入館していく。
後で怒られるかもしれないなぁ、なんて内心思いながらも、オレはななの後を追って自動ドアを潜った。
「まったく……もう少し早く来られないんですか?こっちだって忙しいんですけど」
カウンターにて、眼鏡越しに鋭い目つきでオレを睨む司書――震名蒼さん。対霊処の関係で書物を探してもらったり取り寄せてくれたりと、オカルト関係を担当してくれている。仕事が山積みでもそれらを後回しにしてオレ達念導者の案件を最優先してくれる。
「忙しいのは重々承知です。でもどうしても急ぎで調べたいんです」
「仕方ないですね。で、今日は何を?」
「二十五年前の七月九日頃の新聞が見たいんです」
友子ちゃんが事故に遭ったと言っていた日付だ。彼女の記憶が正しいのか確かめることと、解決に役立つヒントがないかどうかを調べるためだ。
「そう。前後一週間分持ってくるわ。一社だけでいいわね?」
「はい。お願いします」
「それじゃ、行ってくるわ」
事務的な態度で震名さんは保管庫に消えていった。
もう少し笑顔があれば可愛く見えるのに。それに年中長袖にロングスカートを着るのをやめてみたらきっと魅力的だろうに、なんてセクハラオヤジのようなことを考えている間に震名さんが戻ってきた。
ばさり、と二週間分の新聞がカウンターに置かれる。
相変わらず仕事が早い。
「これでいい?」
「ええ、ありがとうございます」
「今度はもっと早く来てほしいわ」
やはり震名さんの態度は冷たい。優秀なのにこういうところがもったいない。美人なのに本当にもったいない。
オレは新聞を受け取り、椅子に腰掛けて読み始める。
ぱらぱら、と。見出しだけを目で追う。
奥部小、女児、事故、土倉友子。関連する単語がないか探していると、すぐに目当ての記事が見つかった。
七月十日付の朝刊。見出しは「奥部小に通う女児、事故死」。清々しい程直球の文章だ。事故が起きたのは昨日、つまり九日の夕方で下校途中にトラックに撥ねられた。事故直後は息があったが、その後病院に搬送されたが間に合わず死亡した模様。そして被害者の名前は土倉友子さん六歳。
友子ちゃんの証言と全て一致していた。
事故の原因は信号のない交差点から飛び出したこと。トラックは急ブレーキを掛けたが間に合わずぶつかってしまったようだ。恐らくキーホルダーを探しに戻ろうと走っていたのだろう。
他には当時の校長や担任教師に対するインタビューが掲載されており、「物静かだが真面目な子だった」とか「友達思いの子でした」などと書かれていたが、解決の糸口になりそうなことは記述されてなかった。
「事故死か……。そういえばこの年って“魔の年”って呼ばれていたわね」
ぬるっと、突然震名さんが割り込んできた。
「どこかで聞いた気がするんですけど、何でしたっけ?」
「この年って良くないことが続いたでしょ。対霊処なら知ってるはずよね?まさかその程度のことも知らないの?」
「う…。そういえば母さんが話してくれたな……」
いつも通りの口の悪さだがおかげで思い出した。母さん、あと可児校長(当時は教頭だったが)がことあるごとにこの件を口にしていた。
奥部小学校は立地の都合上怪異が集まりやすく、事故や事件が度々起こる。ただ大抵の場合大事に至る前に解決する。どんなに悪くても犠牲者は一名以内に抑えられていた。しかし二十五年前は事故と事件が頻繁に起き、結果児童が一名死亡、一名行方不明になったのだ。二名以上の犠牲者が出るのは奥部小が開校して以来初めてのことで、それが理由で“魔の年”と呼ばれるようになった。
その死亡した子が土倉友子ちゃんだったのか。
「ところで、アレはあなたが連れてきたの?」
「はい?アレとは……?」
「そこで本が飛んでるのよ」
震名さんが指さす先で、児童書が羽ばたいている。正確に言うとなながポルターガイストで本を読んでいるだけなのだが、震名さんにはなな本体が見えていない。
「驚かないんですか?」
「お宅らの担当をしているとよくあることよ」
慣れっこか。
まぁ、怒られなかったから良かった良かった。
「迷惑だからアレ、何とかしてくれる?」
「申し訳ないです。まだあいつも子供なもんで……はは」
愛想笑いで誤魔化し、ななの元へ向かおうとして――
「ちょっと待って」
――震名さんに呼び止められた。
「アレはあなたの知り合いなの?で、子供?」
「知り合いというか、まぁ、相棒みたいなもんです。最近奥部小で出会った女の子の霊でななって言う子なんですけど――」
「ぶほふぇっ!」
形容しがたい音がした。
音の発生源は間違いなく震名さんからだ。
右手で鼻と口を押さえ、左手で腹を抱えている。
体はマナーモードで小刻みに震えている。
「え……、笑ってます?」
「ひぇっ?だっ、だって……ひふぅ、あひょひょっ」
駄目だ、完全にツボに入っていて謎言語を話し始めた。
顔が真っ赤になって、ひーひー呼吸が辛そうだ。
他の司書の方々や利用者は困惑しているようでこちらに 訝しんだ視線を送っている。
「オレ、面白いこと言いましたか?」
「言っひぇ、言ったじゃにゃい…れすかっ!おんにゃ、のこ連れて……しかも女子じっ児童の事件、調べっ…てるって……」
「それのどこが――」
「だって、それ……しょ、小児性愛っ……ひーっひぃっ苦しっ、お腹痛いぃぃっ!おひょひょひょひょひょひょひょ」
そこから先はもはや言語とは到底思えないような奇声のオンパレードで、震名さんは炒められ中のしめじになって床でのたうち回っていた。
震名さんが他の司書に担架で運ばれるまで、そう時間はかからなかった。
震名さんのツボは毎度のことながら全然分からない。そしてここでもロリコン扱いされるオレって何なんだ。ロリコンと罵られて死んでいった紳士の霊に呪われているのか?
仕方ないじゃないか。今回の仕事が小学校関係で、偶然ななに出会ってしまったんだから。ちびっ子とは嫌でも関わらないといけないし、自然とそういう事故や事件を調べないと解決出来ないんだから。
仕事が終わる頃には全知全能のロリコン神なんて二つ名がついてそうだ。
いかん、冗談に聞こえない。
「ねぇねぇ、ショーニセーアイって何?」
なながシャツを引っ張っているが、答える気が起きなかった。
答えたところで、いじりのネタが増えるだけだろ。
しつこいようだが、オレはロリコンじゃないぞ。断じて。
「どこに行くのー?どんどん家から離れていってるけど」
走るオレの後ろをふわふわとなながついてくる。小学生が涼しい顔でほぼ併走している異様な光景だが、霊だしそもそも普通の人には見えていないから気にすることではないか。
「ちょいと調べ物に行くんだよ、図書館に」
そう、目的地は晩出市立図書館だ。
蔵書数は周辺の図書館では最大。児童書から新書、洋書に郷土資料まで何でも揃っている。市内で販売されている新聞もほぼ全て保管されているおかげで、対霊処の仕事絡みの事件や事故の調査でよく利用している。
「図書館かー。駆郎にぃの漫画みたいなのはあるの?」
「流石に漫画はないぞ。まぁ偉人の漫画とかはあるかもな」
「じゃあ、ななはその漫画読んでていい?」
「閉館ぎりぎりだから無理だな」
「えー」
「そもそもポルターガイストで読んでたら司書さんびっくりするだろ」
霊現象がよく起こる街だから騒動になることはないが、説明と後始末をするのが面倒だからやめてもらいたい。
だが、何をしでかすか分からない奴を横に連れているよりはその辺で漫画を読んでいてもらった方がマシかも、なんて考えている間に図書館に着いていた。
閉館までまだ三十分以上ある。これだけ時間があれば調べ物に支障は問題なしだ。
「さっきの漫画の件だけどさ、読んでいいぞ」
「え、いいの!?ポルっちゃうよ!?」
「好きにしろ。でもちゃんと自分で片付けろよ」
「わーい、駆郎にぃサンキューベリーマッチ!」
大はしゃぎで飛び回るななが自動ドアをすり抜け、入館していく。
後で怒られるかもしれないなぁ、なんて内心思いながらも、オレはななの後を追って自動ドアを潜った。
「まったく……もう少し早く来られないんですか?こっちだって忙しいんですけど」
カウンターにて、眼鏡越しに鋭い目つきでオレを睨む司書――震名蒼さん。対霊処の関係で書物を探してもらったり取り寄せてくれたりと、オカルト関係を担当してくれている。仕事が山積みでもそれらを後回しにしてオレ達念導者の案件を最優先してくれる。
「忙しいのは重々承知です。でもどうしても急ぎで調べたいんです」
「仕方ないですね。で、今日は何を?」
「二十五年前の七月九日頃の新聞が見たいんです」
友子ちゃんが事故に遭ったと言っていた日付だ。彼女の記憶が正しいのか確かめることと、解決に役立つヒントがないかどうかを調べるためだ。
「そう。前後一週間分持ってくるわ。一社だけでいいわね?」
「はい。お願いします」
「それじゃ、行ってくるわ」
事務的な態度で震名さんは保管庫に消えていった。
もう少し笑顔があれば可愛く見えるのに。それに年中長袖にロングスカートを着るのをやめてみたらきっと魅力的だろうに、なんてセクハラオヤジのようなことを考えている間に震名さんが戻ってきた。
ばさり、と二週間分の新聞がカウンターに置かれる。
相変わらず仕事が早い。
「これでいい?」
「ええ、ありがとうございます」
「今度はもっと早く来てほしいわ」
やはり震名さんの態度は冷たい。優秀なのにこういうところがもったいない。美人なのに本当にもったいない。
オレは新聞を受け取り、椅子に腰掛けて読み始める。
ぱらぱら、と。見出しだけを目で追う。
奥部小、女児、事故、土倉友子。関連する単語がないか探していると、すぐに目当ての記事が見つかった。
七月十日付の朝刊。見出しは「奥部小に通う女児、事故死」。清々しい程直球の文章だ。事故が起きたのは昨日、つまり九日の夕方で下校途中にトラックに撥ねられた。事故直後は息があったが、その後病院に搬送されたが間に合わず死亡した模様。そして被害者の名前は土倉友子さん六歳。
友子ちゃんの証言と全て一致していた。
事故の原因は信号のない交差点から飛び出したこと。トラックは急ブレーキを掛けたが間に合わずぶつかってしまったようだ。恐らくキーホルダーを探しに戻ろうと走っていたのだろう。
他には当時の校長や担任教師に対するインタビューが掲載されており、「物静かだが真面目な子だった」とか「友達思いの子でした」などと書かれていたが、解決の糸口になりそうなことは記述されてなかった。
「事故死か……。そういえばこの年って“魔の年”って呼ばれていたわね」
ぬるっと、突然震名さんが割り込んできた。
「どこかで聞いた気がするんですけど、何でしたっけ?」
「この年って良くないことが続いたでしょ。対霊処なら知ってるはずよね?まさかその程度のことも知らないの?」
「う…。そういえば母さんが話してくれたな……」
いつも通りの口の悪さだがおかげで思い出した。母さん、あと可児校長(当時は教頭だったが)がことあるごとにこの件を口にしていた。
奥部小学校は立地の都合上怪異が集まりやすく、事故や事件が度々起こる。ただ大抵の場合大事に至る前に解決する。どんなに悪くても犠牲者は一名以内に抑えられていた。しかし二十五年前は事故と事件が頻繁に起き、結果児童が一名死亡、一名行方不明になったのだ。二名以上の犠牲者が出るのは奥部小が開校して以来初めてのことで、それが理由で“魔の年”と呼ばれるようになった。
その死亡した子が土倉友子ちゃんだったのか。
「ところで、アレはあなたが連れてきたの?」
「はい?アレとは……?」
「そこで本が飛んでるのよ」
震名さんが指さす先で、児童書が羽ばたいている。正確に言うとなながポルターガイストで本を読んでいるだけなのだが、震名さんにはなな本体が見えていない。
「驚かないんですか?」
「お宅らの担当をしているとよくあることよ」
慣れっこか。
まぁ、怒られなかったから良かった良かった。
「迷惑だからアレ、何とかしてくれる?」
「申し訳ないです。まだあいつも子供なもんで……はは」
愛想笑いで誤魔化し、ななの元へ向かおうとして――
「ちょっと待って」
――震名さんに呼び止められた。
「アレはあなたの知り合いなの?で、子供?」
「知り合いというか、まぁ、相棒みたいなもんです。最近奥部小で出会った女の子の霊でななって言う子なんですけど――」
「ぶほふぇっ!」
形容しがたい音がした。
音の発生源は間違いなく震名さんからだ。
右手で鼻と口を押さえ、左手で腹を抱えている。
体はマナーモードで小刻みに震えている。
「え……、笑ってます?」
「ひぇっ?だっ、だって……ひふぅ、あひょひょっ」
駄目だ、完全にツボに入っていて謎言語を話し始めた。
顔が真っ赤になって、ひーひー呼吸が辛そうだ。
他の司書の方々や利用者は困惑しているようでこちらに 訝しんだ視線を送っている。
「オレ、面白いこと言いましたか?」
「言っひぇ、言ったじゃにゃい…れすかっ!おんにゃ、のこ連れて……しかも女子じっ児童の事件、調べっ…てるって……」
「それのどこが――」
「だって、それ……しょ、小児性愛っ……ひーっひぃっ苦しっ、お腹痛いぃぃっ!おひょひょひょひょひょひょひょ」
そこから先はもはや言語とは到底思えないような奇声のオンパレードで、震名さんは炒められ中のしめじになって床でのたうち回っていた。
震名さんが他の司書に担架で運ばれるまで、そう時間はかからなかった。
震名さんのツボは毎度のことながら全然分からない。そしてここでもロリコン扱いされるオレって何なんだ。ロリコンと罵られて死んでいった紳士の霊に呪われているのか?
仕方ないじゃないか。今回の仕事が小学校関係で、偶然ななに出会ってしまったんだから。ちびっ子とは嫌でも関わらないといけないし、自然とそういう事故や事件を調べないと解決出来ないんだから。
仕事が終わる頃には全知全能のロリコン神なんて二つ名がついてそうだ。
いかん、冗談に聞こえない。
「ねぇねぇ、ショーニセーアイって何?」
なながシャツを引っ張っているが、答える気が起きなかった。
答えたところで、いじりのネタが増えるだけだろ。
しつこいようだが、オレはロリコンじゃないぞ。断じて。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
17歳男子高生と32歳主婦の境界線
MisakiNonagase
恋愛
32歳の主婦・加恋。冷え切った家庭で孤独に苛まれる彼女を救い出したのは、ネットの向こう側にいた二十歳(はたち)と偽っていた17歳の少年・晴人だった。
「未成年との不倫」という、社会から断罪されるべき背徳。それでも二人は、震える手で未来への約束を交わす。少年が大学生になり、社会人となり、守られる存在から「守る男」へと成長していく中で、加恋は自らの手で「妻」という仮面を脱ぎ捨てていく…
なお、スピンオフもございます。
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
ママはヤンママ女子高生! ラン&ジュリー!!
オズ研究所《横須賀ストーリー紅白へ》
キャラ文芸
神崎ラン(♂)の父親の再婚相手は幼馴染みで女子高生の高原ジュリー(♀)だった。
ジュリーは金髪美少女だが、地元では『ワイルドビーナス』の異名を取る有名なヤンキーだった。
学校ではジュリーは、ランを使いっ走りにしていた。
当然のようにアゴで使われたが、ジュリーは十八歳になったら結婚する事を告白した。
同級生のジュリーが結婚するなんて信じられない。
ランは密かにジュリーの事を憧れていたので、失恋した気分だ。
そう言えば、昨夜、ランの父親も再婚すると言っていた。
まさかとは思ったが、ランはジュリーに結婚相手を聞くと、ランの父親だと判明した。
その夜、改めて父親とジュリーのふたりは結婚すると報告された。
こうしてジュリーとの同居が決まった。
しかもジュリーの母親、エリカも現われ、ランの家は騒然となった。
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
