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女児霊といっしょに。~学校の七不思議~
第五章:ミステリー・オブ・ミッドナイト 7
しおりを挟む深夜、だろう。
人の声は聞こえない。どの家の窓からも灯りは漏れていない。光っているのは街灯だけ。
その街灯の下に、誰かいる。
和服を身に纏った女の子だ。
どこかで見たことがある。……子供の時も、最近も。
そうだ、あの人形娘の霊だ。
でも、どうしてこんな場所にいるんだ?しかも、手招きをしている……?こっちに来い、ということだろうか?
オレは念力で引っ張られているような感覚で、人形娘の霊のいる街灯まで歩いていく。すると人形娘の霊は少しずつ遠くなっていく。後ろ向きで、スライドしていくように。
「ま、待て……っ」
どういうことなのか、うまく声が出ない。
これがあの娘の力なのか。
「……何の、つもりだっ」
人形娘の霊の動きが止まり、追いつくことが出来た。
だが、オレの質問に答えることはない。それどころか完全に無視して穴の中に入っていく。
見覚えのある、穴。
オレが昔見つけた、秘密の抜け道だ。
「おいおい、待てよ……」
あいつには聞きたいことが山ほどある。見失う訳にはいかない。
オレは迷わず後を追う。
排水溝跡の中へ入るが……狭い。当時より成長したせいでスムーズには進めない。
「ああ、くそ。暗いし狭いし……最悪だ」
必死に藻掻きながらコンクリートのトンネルを突き進む。すると段々暗さが深まっていき、視界は完全な闇一色に染まる。同時にコンクリートの質感も消えていき、奇妙な浮遊感が周囲を包んでいる。
「あれ、ここは……」
いつの間にか排水溝跡の中から、闇だけの真っ暗な空間になっていた。
何も見えない、漆黒の闇。上下左右が無限に続いているような感覚。もう狭苦しさはない。立ち上がれる。
視界の端に、揺らめきが映る。人形娘の霊かと振り向くと、その先には光がひとつ。
あれは、出口だろうか。
迷わずオレは光の先へと向かう――が、嫌な予感。でも止まれない。止まったところで闇しかない。
光の中へと入ると、その予感は的中。
ねじ曲がった空間。車酔いをしたような、絶叫マシンから降りた後のような、腹の底から湧き上がる気持ち悪さ。
揺らめく影。幾何学模様のオブジェ。そして、何者かの気配。
ここは、前例のない怪異。謎の空間。
まずい。このままこの場所にいたら何だか分からない奴に襲われる。
だが、もう逃げる時間は残されていなかった。
背後から、悪しき気配。ぐじゅぐじゅと湿った音を立てているそれは、邪怪。ザリガニと兎の頭を生やした肉塊。
馬鹿な。こいつは倒したはずなのに。ましろとななと一緒に協力して戦い、浄怪したはずなのに。
同じ形の邪怪の群れに、囲まれている。
戦わないと。でもオレは対邪処の念導者ではないし、それどころか浄霊道具すら持っていない。完全な丸腰。
逃げ場なし。
抵抗手段なし。
あとは食べられるのを待つだけの、まな板の鯉。
触手がオレの体に絡み付く。
締め上げられて、抗うことすら許されない。
そのまま、大きく開いた口の中へ。
牙が生えた口の中へ。
闇の底へ、落とされる。
牙が四方八方から迫る。
肌に、鋭い牙が、突き刺さる。
体中、噛まれて。
ずたずたに。
「うおぁぁああああっ!?」
がばっと起き上がると、そこは真っ暗な廊下。
五年生の女子トイレ近くの廊下だ。
「はぁっ……はぁっ……はぁっ……」
息が荒い。まだ心臓がばくばくと鳴っている。
なんだ、夢か。いや、夢でよかった。怪異のオンパレードじゃねーか。
時計を確認すると午後の十時を示している。トイレの窓はまだ開いていない。よかった、寝過ごしていなかった。
「もう……うるさいよ~…………ふわぁ~……」
目を擦りながら、なながふわふわやってくる。
「あぁ、悪かった。ちょっと嫌な夢を見たんだ。…………って、お前も寝てたんかい」
「だって……子供は……寝る………じ、かん…………………………」
「おい、寝るな」
まったく、いくらオレが焦っているからって夢にまで出てこないでほしい。むしろ人形娘の霊には現実世界で出てきてくれないと困るのだから。邪怪とか謎空間はいらないから、あいつだけさっさと出てきてくれ。
しかし、まさか秘密の抜け穴も夢に出てくるとは思わなかったな。
教材庫を探索している時に思い出したことが関係しているのだろうか。
確か夢は寝ている間に記憶の整理をしているせいで起こるって聞いたことがある。その時関連している過去の記憶も一緒に引っ張り出されて、ごちゃ混ぜになった塊が荒唐無稽で奇妙奇天烈な夢の原因……という話だったと思う。
つまりオレの家と同じくらいに脳味噌も片付いていないということだ。全然笑えないわ、馬鹿野郎。
……ん?関連……?
ちょっと待てよ、何かが引っ掛かる。
まさか。いや、もしかしたら。
あり得る。可能性は十分ある。
「なな、ちょっといいか?」
「……………………ぐぅ」
「寝たふりするな」
「はいはい起きてますよ。何ですか~?」
「お前に頼みたいことがある」
「…………ぐぅ」
「オイ」
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