女児霊といっしょに。シリーズ

黒糖はるる

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女児霊といっしょに。~学校の七不思議~

第七章:最後の一週間 7

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「いや~、これでお仕事完了だねっ。やったね、駆郎にぃ!」
「……まだだ。仕事はまだ残っている」
「え~?七不思議は全部解決したじゃ~ん」

 七不思議の解明は終わり、残りは本部に委託した“謎の空間に繋がる穴”だけになった。それ以外の危険性や異常性は全て解決しており、奥部小からの依頼はこれで終了だ。
 だが、オレにはもう一つの仕事がある。

「忘れたのか?オレにはもう一つ、お前の記憶を取り戻して気持ちよく浄霊させるという仕事が残っている」

 そう、オレに課された二つ目の仕事。こちらはまだ解決していないのだ。

「それって、何か手掛かりがあったってこと!?え~、ななそんなの聞いてないよ~」

 自分が知らない間に話が進んでいたことにむくれて、駄々をこねるように文句を言ってくるなな。
 怒らないでほしい。オレもつぼみちゃんの証言が得られるまで、確証が持てなかったんだ。

「それでそれで!何が分かったの!?教えて教えて教えて!」

 ななは目を輝かせて詰め寄り、オレの胸ぐらを掴んで思いっきり揺らしてくる。まさかこんなお転婆で騒がしい奴が好きだったなんて、幼い頃の記憶というのはやはり当てにならない。

「なな。お前は……オレの初恋の相手だった」
「……へ?」

 口をぽかんと開けていて、間抜け面のなな。
 だが、オレはお構いなしに続ける。

「お前の本当の名前は童乃わらしの四季しき。オレが以前話した公園で出会った女の子は、君だったんだ」

 思いもよらぬ真実の告白に、なな――四季は目を白黒させていた。

 オレがこの真実に辿り着いたのは偶然、いや必然だっただろう。
 今週の初め、つぼみちゃんが発した「折角戻ってこれた」という言葉と謎の空間に繋がる穴にオレを誘ったこと、そして四季が覚えている一番古い記憶が三階の教材庫だったこと。以上のことから四季は奥部小内の怪異による犠牲者である可能性が濃厚だと考えた。
 つぼみちゃんは魔の年の犠牲者であることが“ラッキー・キララを知っている発言”から分かっていたため、それ以降の奥部小関連の犠牲者に関する記事を図書館にて震名さんに集めてもらった。そしてその中につぼみちゃんの件以外でもう一件、行方不明になった子に関する記事があった。
 それが童乃四季という女の子が下校後に行方不明になった、という記事だった。
 彼女は誰とでも仲良く遊ぶ子であったが放課後は一人で遊んでいることが多く、近所の人が一人でいるところを度々目撃している。当初は変質者による誘拐説、シングルファーザーであった父親による殺害説などが有力視されていたが、結局遺体も証拠も見つからないまま真相は分からずじまい。
 それら記事には、彼女の顔写真とよく遊んでいた公園の写真が載せられていた。
 その二つの写真を同時に見た時、オレの記憶の中で靄が掛かっていた初恋相手の顔――共に七不思議の解決に奔走した相棒の顔が鮮明になった。
 どうしてこんなにそばにいたのに気付かなかったのだろうか。初恋の相手が、オレの大切な思い出を共有する相手が隣にずっといたというのに。

 ここから先は、オレの仮説が中心になるが。
 四季は恐らく下校後もう一度学校に戻ってつぼみちゃんと同様に三階の教材庫に入り、あの穴の中へと入ってしまったのだろう。そして向こう側の謎空間で死亡して、霊体だけが現実世界に戻ってきた。つぼみちゃんと多少の差はあるものの、ほぼ同時期に教材庫からこちらの世界に戻ってきていることからもその可能性が高い。
 何故四季だけが記憶を失ってしまったのかは不明だが、彼女のことだから案外ドジ踏んで頭を打ってしまったなんて理由かもしれない。

「じゃあ、つまりさ。ななはシキって名前で、駆郎にぃがロリコンになる原因を作ったってことなのね」
「ロリコンじゃなくて年上好きだけどな」

 四季はまだ混乱しているようだったが、どこかに落ちたような笑みを浮かべていた。

「シキ、しき、四季……。うん、そうねの名前は四季だったね……」
「思い出したみたいだな」
「うん。……そうだね、いたいた。珍しく知らない男の子が来て、色々遊び方教えてあげたな~……。あれが駆郎にぃだったんだ……」

 頭が痛むのか片手を添えて支えるようにしながら、四季はぶつぶつと思い出したことを呟き続けている。

「駆郎にぃの言う通りだよ。どうしてなのかは忘れちゃったけど、……変な穴に入っちゃったんだよね……他のことは、覚えてないけど」

 地に足がついていないような(実際についていないけど)呆けた笑みだった四季だが、段々と頬を紅潮させてにやにやとし始めた。

「そっか……。なぁんだ、駆郎にぃも……一緒だったんだ……」











 勝手に何かに納得したように独り言を紡いでいる。
 オレと一緒、と言ったのか。それはどういう意味だ?

「ねぇ、駆郎にぃ。ちょっと目を閉じて」
「どうした、急に」
「いーからっ!」

 文脈から読み取れない、突然のお願い。
 オレは戸惑いながらも頼まれた通りに両目を閉じる。
 一体何がしたいんだよ――

 ぷにゅっ、と。
 マシュマロのような柔らかさを、くちびるが感じ取った。

 まさか、これは。
 接吻せっぷん、口づけ、オレのファーストキス。

「おい、どういうつもり――」

 目をかっと開き押し返すように腕を振るうが、空を切るだけ。
 オレの目の前には、誰もいない。
 どこを見渡しても、誰もいない。
 四季の姿はどこにもなくて、朝日が照らす廊下だけが真っ直ぐ伸びているだけだった。
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