89 / 149
女児霊といっしょに。~学校の七不思議~
第七章:最後の一週間 7
しおりを挟む「いや~、これでお仕事完了だねっ。やったね、駆郎にぃ!」
「……まだだ。仕事はまだ残っている」
「え~?七不思議は全部解決したじゃ~ん」
七不思議の解明は終わり、残りは本部に委託した“謎の空間に繋がる穴”だけになった。それ以外の危険性や異常性は全て解決しており、奥部小からの依頼はこれで終了だ。
だが、オレにはもう一つの仕事がある。
「忘れたのか?オレにはもう一つ、お前の記憶を取り戻して気持ちよく浄霊させるという仕事が残っている」
そう、オレに課された二つ目の仕事。こちらはまだ解決していないのだ。
「それって、何か手掛かりがあったってこと!?え~、ななそんなの聞いてないよ~」
自分が知らない間に話が進んでいたことにむくれて、駄々をこねるように文句を言ってくるなな。
怒らないでほしい。オレもつぼみちゃんの証言が得られるまで、確証が持てなかったんだ。
「それでそれで!何が分かったの!?教えて教えて教えて!」
ななは目を輝かせて詰め寄り、オレの胸ぐらを掴んで思いっきり揺らしてくる。まさかこんなお転婆で騒がしい奴が好きだったなんて、幼い頃の記憶というのはやはり当てにならない。
「なな。お前は……オレの初恋の相手だった」
「……へ?」
口をぽかんと開けていて、間抜け面のなな。
だが、オレはお構いなしに続ける。
「お前の本当の名前は童乃四季。オレが以前話した公園で出会った女の子は、君だったんだ」
思いもよらぬ真実の告白に、なな――四季は目を白黒させていた。
オレがこの真実に辿り着いたのは偶然、いや必然だっただろう。
今週の初め、つぼみちゃんが発した「折角戻ってこれた」という言葉と謎の空間に繋がる穴にオレを誘ったこと、そして四季が覚えている一番古い記憶が三階の教材庫だったこと。以上のことから四季は奥部小内の怪異による犠牲者である可能性が濃厚だと考えた。
つぼみちゃんは魔の年の犠牲者であることが“ラッキー・キララを知っている発言”から分かっていたため、それ以降の奥部小関連の犠牲者に関する記事を図書館にて震名さんに集めてもらった。そしてその中につぼみちゃんの件以外でもう一件、行方不明になった子に関する記事があった。
それが童乃四季という女の子が下校後に行方不明になった、という記事だった。
彼女は誰とでも仲良く遊ぶ子であったが放課後は一人で遊んでいることが多く、近所の人が一人でいるところを度々目撃している。当初は変質者による誘拐説、シングルファーザーであった父親による殺害説などが有力視されていたが、結局遺体も証拠も見つからないまま真相は分からずじまい。
それら記事には、彼女の顔写真とよく遊んでいた公園の写真が載せられていた。
その二つの写真を同時に見た時、オレの記憶の中で靄が掛かっていた初恋相手の顔――共に七不思議の解決に奔走した相棒の顔が鮮明になった。
どうしてこんなにそばにいたのに気付かなかったのだろうか。初恋の相手が、オレの大切な思い出を共有する相手が隣にずっといたというのに。
ここから先は、オレの仮説が中心になるが。
四季は恐らく下校後もう一度学校に戻ってつぼみちゃんと同様に三階の教材庫に入り、あの穴の中へと入ってしまったのだろう。そして向こう側の謎空間で死亡して、霊体だけが現実世界に戻ってきた。つぼみちゃんと多少の差はあるものの、ほぼ同時期に教材庫からこちらの世界に戻ってきていることからもその可能性が高い。
何故四季だけが記憶を失ってしまったのかは不明だが、彼女のことだから案外ドジ踏んで頭を打ってしまったなんて理由かもしれない。
「じゃあ、つまりさ。ななはシキって名前で、駆郎にぃがロリコンになる原因を作ったってことなのね」
「ロリコンじゃなくて年上好きだけどな」
四季はまだ混乱しているようだったが、どこか腑に落ちたような笑みを浮かべていた。
「シキ、しき、四季……。うん、そうねあたしの名前は四季だったね……」
「思い出したみたいだな」
「うん。……そうだね、いたいた。珍しく知らない男の子が来て、色々遊び方教えてあげたな~……。あれが駆郎にぃだったんだ……」
頭が痛むのか片手を添えて支えるようにしながら、四季はぶつぶつと思い出したことを呟き続けている。
「駆郎にぃの言う通りだよ。どうしてなのかは忘れちゃったけど、あたし……変な穴に入っちゃったんだよね……他のことは、覚えてないけど」
地に足がついていないような(実際についていないけど)呆けた笑みだった四季だが、段々と頬を紅潮させてにやにやとし始めた。
「そっか……。なぁんだ、駆郎にぃも……一緒だったんだ……」
勝手に何かに納得したように独り言を紡いでいる。
オレと一緒、と言ったのか。それはどういう意味だ?
「ねぇ、駆郎にぃ。ちょっと目を閉じて」
「どうした、急に」
「いーからっ!」
文脈から読み取れない、突然のお願い。
オレは戸惑いながらも頼まれた通りに両目を閉じる。
一体何がしたいんだよ――
ぷにゅっ、と。
マシュマロのような柔らかさを、唇が感じ取った。
まさか、これは。
接吻、口づけ、オレのファーストキス。
「おい、どういうつもり――」
目をかっと開き押し返すように腕を振るうが、空を切るだけ。
オレの目の前には、誰もいない。
どこを見渡しても、誰もいない。
四季の姿はどこにもなくて、朝日が照らす廊下だけが真っ直ぐ伸びているだけだった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ママはヤンママ女子高生! ラン&ジュリー!!
オズ研究所《横須賀ストーリー紅白へ》
キャラ文芸
神崎ランの父親の再婚相手は幼馴染みで女子高生の高原ジュリーだった。
ジュリーは金髪美少女だが、地元では『ワイルドビーナス』の異名を取る有名なヤンキーだった。
学校ではジュリーは、ランを使いっ走りにしていた。
当然のようにアゴで使われたが、ジュリーは十八歳になったら結婚する事を告白した。
同級生のジュリーが結婚するなんて信じられない。
ランは密かにジュリーの事を憧れていたので、失恋した気分だ。
そう言えば、昨夜、ランの父親も再婚すると言っていた。
まさかとは思ったが、ランはジュリーに結婚相手を聞くと、ランの父親だと判明した。
その夜、改めて父親とジュリーのふたりは結婚すると報告された。
こうしてジュリーとの同居が決まった。
裏切りの代償
中岡 始
キャラ文芸
かつて夫と共に立ち上げたベンチャー企業「ネクサスラボ」。奏は結婚を機に経営の第一線を退き、専業主婦として家庭を支えてきた。しかし、平穏だった生活は夫・尚紀の裏切りによって一変する。彼の部下であり不倫相手の優美が、会社を混乱に陥れつつあったのだ。
尚紀の冷たい態度と優美の挑発に苦しむ中、奏は再び経営者としての力を取り戻す決意をする。裏切りの証拠を集め、かつての仲間や信頼できる協力者たちと連携しながら、会社を立て直すための計画を進める奏。だが、それは尚紀と優美の野望を徹底的に打ち砕く覚悟でもあった。
取締役会での対決、揺れる社内外の信頼、そして壊れた夫婦の絆の果てに待つのは――。
自分の誇りと未来を取り戻すため、すべてを賭けて挑む奏の闘い。復讐の果てに見える新たな希望と、繊細な人間ドラマが交錯する物語がここに。
霊和怪異譚 野花と野薔薇
野花マリオ
ホラー
その“語り”が始まったとき、世界に異変が芽吹く。
静かな町、ふとした日常、どこにでもあるはずの風景に咲きはじめる、奇妙な花々――。
『霊和怪異譚 野花と野薔薇』は、不思議な力を持つ語り部・八木楓と鐘技友紀以下彼女達が語る怪異を描く、短編連作形式の怪異譚シリーズ。
一話ごとに異なる舞台、異なる登場人物、異なる恐怖。それでも、語りが始まるたび、必ず“何か”が咲く――。
語られる怪談はただの物語ではない。
それを「聞いた者」に忍び寄る異変、染みわたる不安。
やがて読者自身の身にも、“あの花”が咲くかもしれない。
日常にひっそりと紛れ込む、静かで妖しいホラー。
あなたも一席、語りを聞いてみませんか?
完結いたしました。
タイトル変更しました。
旧 彼女の怪異談は不思議な野花を咲かせる
※この物語はフィクションです。実在する人物、企業、団体、名称などは一切関係ありません。
エブリスタにも公開してますがアルファポリス の方がボリュームあります。
表紙イラストは生成AI
短い怖い話 (怖い話、ホラー、短編集)
本野汐梨 Honno Siori
ホラー
あなたの身近にも訪れるかもしれない恐怖を集めました。
全て一話完結ですのでどこから読んでもらっても構いません。
短くて詳しい概要がよくわからないと思われるかもしれません。しかし、その分、なぜ本文の様な恐怖の事象が起こったのか、あなた自身で考えてみてください。
たくさんの短いお話の中から、是非お気に入りの恐怖を見つけてください。
島猫たちのエピソード2025
BIRD
エッセイ・ノンフィクション
「Cat nursery Larimar 」は、ひとりでは生きられない仔猫を預かり、保護者&お世話ボランティア達が協力して育てて里親の元へ送り出す「仔猫の保育所」です。
石垣島は野良猫がとても多い島。
2021年2月22日に設立した保護団体【Cat nursery Larimar(通称ラリマー)】は、自宅では出来ない保護活動を、施設にスペースを借りて頑張るボランティアの集まりです。
「保護して下さい」と言うだけなら、誰にでも出来ます。
でもそれは丸投げで、猫のために何かした内には入りません。
もっと踏み込んで、その猫の医療費やゴハン代などを負担出来る人、譲渡会を手伝える人からの依頼のみ受け付けています。
本作は、ラリマーの保護活動や、石垣島の猫ボランティアについて書いた作品です。
スコア収益は、保護猫たちのゴハンやオヤツの購入に使っています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
