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あなたはずるい

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「ねぇ、俺が何をしても俺のこと嫌いになりませんか?」

唐突に尋ねた俺に、お嬢様は一瞬目を丸くした後、あっさり言った。

「なるに決まってるじゃない!酷いことされるのは嫌よ!」

あまりにお嬢様らしい言い草に笑ってしまった。

「それでこそ俺のお嬢様です」

あの日以来、俺はお嬢様の前では自分のことを「私」ではなく「俺」と言っている。
ささやかな抵抗。
俺がお嬢様を好きだったことを、忘れて欲しくなくて。

「べ、別にあなたのってわけじゃ…」

「ないんですか?」

ちょっとだけ揶揄ってみる。
彼女は俺の仕えるお嬢様。
だから「俺のお嬢様」という言い方も間違いではないはずだ。

「ない…っていうか…ないこともないような気がしないでもないような…?」

自分が何を言っているのかわからなくなるお嬢様。
今日もとてもお可愛らしい。

「でも」

お嬢様は言葉を切った。

「酷いことをされるのは嫌。でも私は今、あなたが好きだわ」

まっすぐな視線で告げられた言葉が、胸に突き刺さる。

やめてください。
俺には気持ちを諦めさせたくせに、そうやって未だに「好きだ」と繰り返すのは…。

俺の心臓に、今日も新たな傷口が開いた。

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