大嫌いなこの世界で

十時(如月皐)

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「あなたからの歓迎を、俺は心から嬉しく思う。凪殿の言葉を胸に置けば、あと二日、俺はきっとこの国のすべてを楽しく思えるだろう」
 ありがとう。
 そう言って微笑んだ彼に、凪はパッと顔を明るくさせた。彼に凪の真意が伝わり、そして大好きな自国を楽しんでくれるという。嬉しくて、嬉しくて、凪は先程とは別の意味で頬が赤らむのを感じた。
「あの! 春興通りはごぞんじですか? さくらなみきの先にあるのですが、おいしいお店や、でんとうあるものを売るお店がたくさんならんでいるのです!」
 あの店はこんなものが売っている。ここの店は見た目にも美しい甘味が沢山ある。それからこの店には可愛らしい看板猫が。
「それと〝ちいさなまんげつや〟っていうおまんじゅう屋さんがあるんです。ボクはそこの〝まんげつ〟っていうおまんじゅうがだいすきなんです! とってもおいしいんですよ」
 あれも、これも、凪が一番大好きなものも、全部ヒバリに教えてあげたかった。そうすればもっともっと、ヒバリはこの国を楽しんでくれるような気がしたのだ。
 先程ヒバリは〝あと二日〟と言っていた。ずっと自由な時間ではないだろうから全部を見て回ることはできないかもしれないが、凪としては〝満月〟だけでも絶対に食べてほしい。可能ならば凪が買って、どうにかプレゼントすることはできないだろうか?
 あれこれと店を紹介しながら、幼いなりにうんうんと凪が頭を悩ませていると、カサリと小さく葉を揺らす音が聞こえた。驚いて振り返ると、そこには異国の男が立っていた。
 晩餐会の時に見た、あの長身の男ではない。だが、彼はどう見ても兎都の者ではなかった。
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