必ず会いに行くから、どうか待っていて

十時(如月皐)

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「雪也ッ、雪也大丈夫!?」
 今日も後ろをこっそりついてきていた周が、泣きそうな声で雪也の名を呼びながら駆け寄る。濡れた肩に触れる周の手が震えていて、しまった、と雪也は胸の内で眉根を寄せる。かつて死んでもおかしくなかったほどの暴力を受け続けていた周に、見せてはいけない光景だったというのに。迂闊なことをしてしまった。
「母さんッ、雪也さんに何するのッ」
 濡れ鼠で地に伏した雪也を見て、何が起こったのかわからないとばかりに呆然としていた多恵が、慌てて末子を背中から抱き込むようにして抑える。しかし少し遅かったのか、末子の手から放たれた湯呑が雪也の顔を掠め、地で砕け散る。ガチャンッと激しく鳴るそれから庇うように、雪也は周を抱き込んだ。その姿に周は唇を噛むが、それに気づく余裕は、雪也にはない。
「やっぱり、おかしいと思ってたんだッ。急に現れた薬売りなんて! 男の身で媚びを売って贅沢してきたんだろうッ。なんて汚らわしいッ。その上、お多恵の縁を潰すなんてッ!」
 ウワンウワンと末子の怒声が頭に響く。あぁ……、と雪也は湧き上がる名づけようもない感情を抑え込むように、眉間に皺を寄せた。
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