385 / 984
384
しおりを挟む
(どうしたものかな……)
年齢だけを見れば雪也は充分に大人であるが、ずっと流されるまま、心も意志も持たず外の世界を知ることも無い状態で生きてきたその人生に、生きるうえでの答えとなる経験や知識などはさほど無い。どこで間違ったのかさえ雪也にはわからないが、現状を見るにどこかで間違っていて、未だ解決策も教訓となるものも浮かんでは来ない。
小さく息をついた時、強い風が吹いて籠から薬草が飛ばされないよう手で押さえる。そして、静かに後ろを振り向いた。
「いらっしゃい、蒼」
いつも通りニコニコとした笑みを浮かべ、蒼が手を振っている。特に何も持っていないことから、先に庵の方へ行って、わざわざ雪也の元へ来たのだろう。その予想通り、彼は笑みを浮かべながら近づいてくる。
「お邪魔してるよ~。うちの親父が雪ちゃんにお願いがあるらしくてね~」
薬のことで、と蒼はペラペラと話し始めるが、それはつい昨日に父親本人から聞いていた内容と同じものだ。それは蒼もわかっているだろうに、彼は今初めて言いましたとばかりに話す。そしてゆっくりと雪也の側にしゃがみ込んだ。
「そんなわけだから、今度店に寄ってくれる~? たぶん話自体はすぐ終わると思うから」
そう手短に話して、雪也がわかったと応えれば、蒼は無言のままにガラリと雰囲気を変えた。
年齢だけを見れば雪也は充分に大人であるが、ずっと流されるまま、心も意志も持たず外の世界を知ることも無い状態で生きてきたその人生に、生きるうえでの答えとなる経験や知識などはさほど無い。どこで間違ったのかさえ雪也にはわからないが、現状を見るにどこかで間違っていて、未だ解決策も教訓となるものも浮かんでは来ない。
小さく息をついた時、強い風が吹いて籠から薬草が飛ばされないよう手で押さえる。そして、静かに後ろを振り向いた。
「いらっしゃい、蒼」
いつも通りニコニコとした笑みを浮かべ、蒼が手を振っている。特に何も持っていないことから、先に庵の方へ行って、わざわざ雪也の元へ来たのだろう。その予想通り、彼は笑みを浮かべながら近づいてくる。
「お邪魔してるよ~。うちの親父が雪ちゃんにお願いがあるらしくてね~」
薬のことで、と蒼はペラペラと話し始めるが、それはつい昨日に父親本人から聞いていた内容と同じものだ。それは蒼もわかっているだろうに、彼は今初めて言いましたとばかりに話す。そしてゆっくりと雪也の側にしゃがみ込んだ。
「そんなわけだから、今度店に寄ってくれる~? たぶん話自体はすぐ終わると思うから」
そう手短に話して、雪也がわかったと応えれば、蒼は無言のままにガラリと雰囲気を変えた。
2
あなたにおすすめの小説
愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない
了承
BL
卒業パーティー。
皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。
青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。
皇子が目を向けた、その瞬間——。
「この瞬間だと思った。」
すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。
IFストーリーあり
誤字あれば報告お願いします!
【完結】薄幸文官志望は嘘をつく
七咲陸
BL
サシャ=ジルヴァールは伯爵家の長男として産まれるが、紫の瞳のせいで両親に疎まれ、弟からも蔑まれる日々を送っていた。
忌々しい紫眼と言う両親に幼い頃からサシャに魔道具の眼鏡を強要する。認識阻害がかかったメガネをかけている間は、サシャの顔や瞳、髪色までまるで別人だった。
学園に入学しても、サシャはあらぬ噂をされてどこにも居場所がない毎日。そんな中でもサシャのことを好きだと言ってくれたクラークと言う茶色の瞳を持つ騎士学生に惹かれ、お付き合いをする事に。
しかし、クラークにキスをせがまれ恥ずかしくて逃げ出したサシャは、アーヴィン=イブリックという翠眼を持つ騎士学生にぶつかってしまい、メガネが外れてしまったーーー…
認識阻害魔道具メガネのせいで2人の騎士の間で別人を演じることになった文官学生の恋の話。
全17話
2/28 番外編を更新しました
果たして君はこの手紙を読んで何を思うだろう?
エスミ
BL
ある時、心優しい領主が近隣の子供たちを募って十日間に及ぶバケーションの集いを催した。
貴族に限らず裕福な平民の子らも選ばれ、身分関係なく友情を深めるようにと領主は子供たちに告げた。
滞りなく期間が過ぎ、領主の願い通りさまざまな階級の子らが友人となり手を振って別れる中、フレッドとティムは生涯の友情を誓い合った。
たった十日の友人だった二人の十年を超える手紙。
------
・ゆるっとした設定です。何気なくお読みください。
・手紙形式の短い文だけが続きます。
・ところどころ文章が途切れた部分がありますが演出です。
・外国語の手紙を翻訳したような読み心地を心がけています。
・番号を振っていますが便宜上の連番であり内容は数年飛んでいる場合があります。
・友情過多でBLは読後の余韻で感じられる程度かもしれません。
・戦争の表現がありますが、手紙の中で語られる程度です。
・魔術がある世界ですが、前面に出てくることはありません。
・1日3回、1回に付きティムとフレッドの手紙を1通ずつ、定期的に更新します。全51通。
流れる星、どうかお願い
ハル
BL
羽水 結弦(うすい ゆずる)
オメガで高校中退の彼は国内の財閥の一つ、羽水本家の次男、羽水要と番になって約8年
高層マンションに住み、気兼ねなくスーパーで買い物をして好きな料理を食べられる。同じ性の人からすれば恵まれた生活をしている彼
そんな彼が夜、空を眺めて流れ星に祈る願いはただ一つ
”要が幸せになりますように”
オメガバースの世界を舞台にしたアルファ×オメガ
王道な関係の二人が織りなすラブストーリーをお楽しみに!
一応、更新していきますが、修正が入ることは多いので
ちょっと読みづらくなったら申し訳ないですが
お付き合いください!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる