必ず会いに行くから、どうか待っていて

十時(如月皐)

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 誰もが雪也を大事にしてくれる。怒りを露わにしたこととて、雪也を想ってのこと。わかっている。わかっているというのに表面上を取り繕うことしかできず、自分の心さえもままならない事実に腹が立つ。それでも、どうしても感情に呑まれて笑みを浮かべることが難しくなって、雪也は物を取りに行くフリをして庭のある裏へ出た。
 周が作る味噌汁の匂いを感じながら、紅く染まる空をボンヤリと眺める。もうじき夕食になるから早く気持ちを落ち着けていつも通りに振る舞わないといけないのに、焦れば焦るほど心は波立って顔が凍り付く。眉間に深く皺を寄せた時、表の方で微かに馬の嘶きが聞こえた。
(――ッッ!)
 この庵に馬でやって来る者など少ない。それに、先程嘶きは三つ聞こえた。それが誰を指し示すのか容易に想像ができて、雪也の肩がビクリと跳ねる。
 会いたかった。もう随分と長い間会えていなかったから、寂しくて会える日を心待ちにしていたはずなのに――今は、会いたくない。
 出かけるとは言っていないから、雪也が顔を出さないのは不自然だ。考え事をしていて聞こえなかったという言い訳もできるだろうが、そうなれば彼らはここまで様子を見に来るだろう。会いたかったと微笑んで、いつも通りに振る舞う。それが一番の良策で、雪也が恐れるものを避ける術であるはずなのに、なぜか雪也の身体は考えに反して庵から逃げるように駆けだしていた。
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