必ず会いに行くから、どうか待っていて

十時(如月皐)

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 他の店と同様に扉を締め切った玉子屋に顔を出し、少し多めに購入して蒼の店に向かう。周を先に店の中に入れて、周りをザッと見てから自分も店の中に入った雪也はそこに誰もいないことに気づいて目を見開いた。
「あれ……? 由弦も蒼もいない?」
 蒼は店の用事でいないこともあるかもしれないが、由弦がここにいないのはおかしい。だが店の中には誰もおらず、シンと静まり返っていた。
「もしかして、庵に戻ってる?」
 あるいは湊を見つけたのだろうか、と周は首を傾げた。
 由弦がここに残ったのは、湊のことを蒼に聞くためであろうことは周も雪也も理解していた。もしも何か事件などが起こたのならばこんなにも静かであるのはおかしい。見たところ店の中は先程と同じく綺麗に整えられていて、例えば抗ったり争ったりしたような形跡はどこにも無い。ならば、考えられる可能性としては湊を見つけて一足早く庵に戻った、ということくらいだろう。
(……ここで合流しようと言った由弦が、何も言わずに庵に帰ったりするのかな)
 どうにも引っかかりを覚える雪也であったが、由弦は気が急くとすぐに行動してしまう傾向もある。周の言うように湊を見つけて、それで蒼の店ではできないような話があれば、先に庵に帰ることもあるだろう。
「じゃぁ、僕たちも庵に戻ろうか。周の言う通り、庵にいるかもしれないからね」
 この誰もいない空間で考え込んでいても仕方がない。庵に居なければ、その時にまた探しに行けば良い。
 静かな街並みに、ほんの少しの騒めき。異常な日常が続けば人間は慣れてしまう。常に警戒している雪也も周も異変に気付くことなく、由弦のいない庵へと向かった。
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