629 / 984
627 ※
しおりを挟む
大丈夫、ともう一度微笑んで、雪也は外へ出る。パタンと音を立てて扉を閉じ、正面に視線を向けた。そこには先程まで全くなかった人影が数多立っている。
見知らぬ者も大勢いたが、中には庵に運び込まれて雪也が治療したことのある者たちも幾人かいた。
「何か、私に御用でしょうか? 随分と物騒な物を持たれているようですが」
雪也の視界に映る者は皆、雪也と同じモノを持っていた。違うとすれば、彼らが持つモノは鞘から抜かれ白銀の輝きを放っているということだろうか。
「物騒なのはそなたも同じこと。抵抗さえしなければ、苦しませたりしない」
中央で刀を構えている男が迷いなく告げる。構えからして紫呉などに及ぶべくもないだろうが、それでも数が多い。さて、一人でどうにかできるだろうかと不安が霞めるが、それをおくびにも出さず雪也は刀に手をかけた。
「その言い方では、苦しむか苦しまないかの違いだけで、道の先は同じだと言われているようですが?」
「その通りだ。そなたに恨みは無いが、大儀の為に散っていただきたい。その犠牲を無駄にすることなく、この国の明るい未来への礎とすると約束しよう」
なるほど、と雪也は刀の柄を強く握った。やはり彼らは弥生の敵なのだろう。いち庶民であり、なんの力も持たない雪也達を葬ったところで春風家も、当然衛府も歩みを止めたりなどしないが、その事に気づく者がいないほど統率が取れず暴走しているのか、それとも歩みを止められずともその心に刃を突き立ててやりたいという私情に捕らわれているのか。どちらにせよ、彼らにとって雪也達が生きる道はない。それだけを確信できれば、雪也の迷いを捨てるには充分だろう。
カチッ、と小さな音を立てて雪也も白刃を抜く。
「ままならぬものですね。我が心さえ貫かせてもらえない、などと」
見知らぬ者も大勢いたが、中には庵に運び込まれて雪也が治療したことのある者たちも幾人かいた。
「何か、私に御用でしょうか? 随分と物騒な物を持たれているようですが」
雪也の視界に映る者は皆、雪也と同じモノを持っていた。違うとすれば、彼らが持つモノは鞘から抜かれ白銀の輝きを放っているということだろうか。
「物騒なのはそなたも同じこと。抵抗さえしなければ、苦しませたりしない」
中央で刀を構えている男が迷いなく告げる。構えからして紫呉などに及ぶべくもないだろうが、それでも数が多い。さて、一人でどうにかできるだろうかと不安が霞めるが、それをおくびにも出さず雪也は刀に手をかけた。
「その言い方では、苦しむか苦しまないかの違いだけで、道の先は同じだと言われているようですが?」
「その通りだ。そなたに恨みは無いが、大儀の為に散っていただきたい。その犠牲を無駄にすることなく、この国の明るい未来への礎とすると約束しよう」
なるほど、と雪也は刀の柄を強く握った。やはり彼らは弥生の敵なのだろう。いち庶民であり、なんの力も持たない雪也達を葬ったところで春風家も、当然衛府も歩みを止めたりなどしないが、その事に気づく者がいないほど統率が取れず暴走しているのか、それとも歩みを止められずともその心に刃を突き立ててやりたいという私情に捕らわれているのか。どちらにせよ、彼らにとって雪也達が生きる道はない。それだけを確信できれば、雪也の迷いを捨てるには充分だろう。
カチッ、と小さな音を立てて雪也も白刃を抜く。
「ままならぬものですね。我が心さえ貫かせてもらえない、などと」
3
あなたにおすすめの小説
兄の親友と恋人ごっこしています
さくら乃
BL
兄の親友を好きなことを隠して恋人ごっこをする話。
兄優雅の親友陸郎は兄が好き。そして、僕、温は陸郎が好き。
そのことを隠して「兄の代わりにしていいよ」と持ちかける。
恋人ごっこをしながらどうにか自分のことを本当に好きになって貰えないかと画策する。
表紙は自前の写真を加工して作りました。
愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない
了承
BL
卒業パーティー。
皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。
青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。
皇子が目を向けた、その瞬間——。
「この瞬間だと思った。」
すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。
IFストーリーあり
誤字あれば報告お願いします!
目標、それは
mahiro
BL
画面には、大好きな彼が今日も輝いている。それだけで幸せな気分になれるものだ。
今日も今日とて彼が歌っている曲を聴きながら大学に向かえば、友人から彼のライブがあるから一緒に行かないかと誘われ……?
果たして君はこの手紙を読んで何を思うだろう?
エスミ
BL
ある時、心優しい領主が近隣の子供たちを募って十日間に及ぶバケーションの集いを催した。
貴族に限らず裕福な平民の子らも選ばれ、身分関係なく友情を深めるようにと領主は子供たちに告げた。
滞りなく期間が過ぎ、領主の願い通りさまざまな階級の子らが友人となり手を振って別れる中、フレッドとティムは生涯の友情を誓い合った。
たった十日の友人だった二人の十年を超える手紙。
------
・ゆるっとした設定です。何気なくお読みください。
・手紙形式の短い文だけが続きます。
・ところどころ文章が途切れた部分がありますが演出です。
・外国語の手紙を翻訳したような読み心地を心がけています。
・番号を振っていますが便宜上の連番であり内容は数年飛んでいる場合があります。
・友情過多でBLは読後の余韻で感じられる程度かもしれません。
・戦争の表現がありますが、手紙の中で語られる程度です。
・魔術がある世界ですが、前面に出てくることはありません。
・1日3回、1回に付きティムとフレッドの手紙を1通ずつ、定期的に更新します。全51通。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる